パレスチナ問題を「中立、公平ではない」と認めながらも、イスラエルへの軍事・経済協力を続けるという政府・外務省の態度が明らかに 2014.10.22

記事公開日:2014.10.27取材地: テキスト動画
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( 記事構成:IWJテキストスタッフ・関根かんじ)

特集中東

 この夏、イスラエルによるパレスチナ・ガザ地区への爆撃が続き、多くの民間人が犠牲になった。2014年7月、国連人権理事会ではイスラエルを非難する決議案が可決されたが、唯一アメリカだけが反対し、日本はアメリカの顔色をうかがうように評決を棄権。これに対し、国内からも疑問の声があがっている。深刻な人権侵害が起きているガザ攻撃について、日本政府の見解はどのようなものなのか──。

 ヒューマンライツ・ナウ事務局長で弁護士の伊藤和子氏、ジャーナリストの志葉玲氏による、外務省担当者を迎えた政府交渉「外務省にガザ攻撃への対応を問う」が2014年10月22日、東京都千代田区の参議院会館にて開催された。

 現地の事情に詳しい伊藤氏と志葉氏が、イスラエルのガザ攻撃の問題点を指摘し、外務省担当者である外務省中東アフリカ局中東第一課・下川鞠子氏、総合外交政策局安全保障政策課・金子弘之氏、総合外交政策局人権人道課・小暮康高氏、総合外交政策局人権人道課・安田ユキ子氏の4名が各質問に答えていった。

 「日本が、イスラエル非難の決議案の評決を棄権した理由は何か」と問われると、外務省の担当者は「その決議案は、イスラエルを一方的に非難する内容。わが国の中立、公平の立場や、中東和平を実現していくという立場からは乖離しているため」と答えた。

 また、担当者は「イスラエル、パレスチナ双方に停戦を働きかけている。入植地の問題に関しては、強くイスラエルに改善を求めてきている」とし、「イスラエルへの軍事・経済協力を凍結する考えはない。また、日本が入植活動を助長しているという認識はない」との見解を示した。

 さらに、「武器輸出三原則の撤廃により、日本製の部品が組み込まれたF35戦闘機がイスラエルに売却される。日本の平和、軍縮外交に悪影響をおよぼすのではないか」という質問に、担当者は「国連憲章を遵守するという平和国家としての理念と歩みを堅持している。武器の移転に関する取り組みでは、国際社会をリードしていきたい」と答えた。

記事目次

■ハイライト

  • 志葉玲氏(ジャーナリスト)によるガザ現地報告/外務省との交渉/交渉を踏まえた論点整理と今後の呼びかけ
  • 日時 2014年10月22日(水) 15:40~
  • 場所 参議院議員会館(東京都千代田区)
  • 主催 ガザの人々を殺すな!実行委員会

※以下、実況ツイートをリライトし再構成したものを掲載します

調査に非協力的なイスラエルの姿勢

 冒頭、今回の政府交渉に携わった福島みずほ議員が、ガザ攻撃に関して、「私たちは、いかなる戦争にも、いかなる虐殺にも、いかなる人権侵害にも反対の立場で取り組みたい」と挨拶した。  続いて、伊藤和子氏が論点の説明を行った。まず、2014年9月に発表された国連人権高等弁務官事務所長のステートメントから、最近のガザ紛争では2131人のパレスチナ人が殺され、そのうち501人の子どもを含む1473人が民間人だったこと、イスラエル側では4人の民間人を含む71人が犠牲になったことを紹介した。  伊藤氏は「西岸地区への入植、壁の建設、家屋破壊、ガザ地区の封鎖など、国際法を踏みにじるイスラエルの行為が繰り返されてきたが、国際社会によって是正されていない。日本は、このような違法行為の責任を問わずに、単に開発援助や人道支援だけをしていていいのか」と問いかけた。  さらに、テロップを見せながら、「2008年から2009年までのガザ紛争では、1400人以上の市民が殺害された。国際調査団が派遣されたが、(イスラエルなどが)調査団長ゴールドストーン氏に圧力をかけ、調査内容を撤回させ、事態をうやむやにした」と前例を挙げた。  今回の紛争では、イスラエルは完全に調査に非協力の態度をとり、「調査団は信頼できない」と批判しているという。伊藤氏は「国際社会は、2009年の失敗を繰り返すのか?」と訴えた。

無人攻撃機で子どもを狙うイスラエル軍

 次に志葉玲氏が登壇し、ガザ攻撃について、「ジュネーブ条約第一追加議定書の『軍事目標主義の確認』が違反されている。軍事用以外の物、施設(家屋や病院、工場)が破壊され、殺された人々の80パーセントは民間人、その4分の1が未成年者だ」と述べた。  この夏、ガザで取材を行った志葉氏は、「爆撃を受けた国連の学校は、犠牲者の方々の血の匂いがした。悪質なケースとして、停戦時に子どもを狙った攻撃というのがある。断食月の最後の祝日、買い物に出かける子どもたちを、イスラエルのドローン(無人攻撃機)がわざと狙い、7人が死亡した」など、現地で目にしたショッキングな事実を語った。  志葉氏は「ガザ唯一の発電所も攻撃の対象となった。米国や国連を通じて、『攻撃しないでくれ』と何度もイスラエルに申し入れていたにもかかわらず、爆撃された。ガザの電力は1日1時間しか来なくなった。国際社会が十分な対策をとらなかったために、こうしたことが何度も繰り返されてきた」と憤る。  そして、「誰が悪いのか? 日本を含めた国際社会が声をあげない、行動しないことが一番罪深いことだ。まして、イスラエルに対して武器を売買、供与するということが許されるのか」と訴えた。

イスラエル非難決議案を棄権した日本政府、その理由は?

 続いて、政府交渉に移った。交渉は事前提出した質問に、外務省担当者4名が答えていくという形式で行われた。  最初の質問は「イスラエル非難決議案を、日本は『さらなる検討が必要である』としたが、どういうことか?」というもの。担当者は「国連には既存の枠組み(特別報告者、国連人権弁務官事務所)があり、新たな(真相)調査委員会が本当に必要となっているのか、設置することで作業が重複するのではないか、という懸念がある」と答えた。  続いて、「国際刑事裁判所で、イスラエルを裁くことのどこに問題があるのか。決議を棄権した理由とは何か?」と問われると、「すでに人権理事会など、これまでの作業、プロセスがあるので、国際刑事裁判所のアプローチが事態の解決に役立つのか、という観点から、政府としての懸念を有した」などと述べた。  そして、「その決議案は、イスラエルを一方的に非難する内容。わが国の中立、公平の立場や、中東和平を実現していくという立場からは乖離しているため棄権した」と続けた。

安保理決議2425「二階堂談話」を踏まえた対応を

 「ガザの方が、圧倒的に人的、物的被害が大きい。『どっちもどっち』という態度は、かえって強い者の側に立つことにはならないか。何をもって中立、公平とするのか?」との質問に、担当者は、「中東和平の問題については、イスラエル、パレスチナ双方に停戦を働きかけている。入植地の問題に関しては、強くイスラエルに改善を求めてきている」とした。  続いて、「1974年の二階堂談話を基礎にした安保理決議の2425、『イスラエルは速やかに撤退すべき。さもなければ、さらなる手段を考えなければならない』という、この現実を踏まえた考え方こそ、中立、公平ではないか」と問われると、 担当者は「まったくその通りだと思うので、外務省に持ち帰って検討したい」と応じた。  次の質問は、「日本政府は、パレスチナのICC(国際刑事裁判所)への加入をどう考えているのか。イスラエル、米国、EU諸国は資金援助の凍結を盾に、加入しないように圧力をかけているが、(日本は)説得して加入を後押しすべきではないのか」というもの。  担当者は「現時点では、パレスチナはICCへの加盟申請をしていない。後押しすべきかということも、まだ考えていない。イスラエルとパレスチナの双方に和平交渉を働きかけている」とだけ答えた。

イスラエルこそが賠償すべき、ガザの殺戮と破壊

 さらに質問は続き、「岸信夫外務副大臣が、イスラエル、パレスチナの首脳らと会談を行い、安倍首相はイスラエルのネタニヤフ首相と電話会談を行っている。イスラエルに対し、どのような実効性のある働きかけをし、どのような成果があったのか」と尋ねると、担当者は「日本政府の立場、つまり最大限の自制と停戦の決断を働きかけている」と答えた。

 また、「ガザ復興国際会議が開かれ、日本を含む世界各国から支援が表明されている。しかし、ガザの虐殺と破壊に関しては、一義的にイスラエルこそが賠償すべきものではないのか」と日本政府としての見解を問われると、担当者は「長期的なガザ復興のためには、国際社会が復興支援を後押ししていくべきだと思う」と応じた。

「生きながらの死」「屋根のない監獄」のガザ封鎖

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「パレスチナ問題を「中立、公平ではない」と認めながらも、イスラエルへの軍事・経済協力を続けるという政府・外務省の態度が明らかに」への1件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    パレスチナ問題を「中立、公平ではない」と認めながらも、イスラエルへの軍事・経済協力を続けるという政府・外務省の態度が明らかに http://iwj.co.jp/wj/open/archives/188815 … @iwakamiyasumi
    この国の外交には正義も倫理もない。それは内政の問題でもあるのです。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/527064046466392064

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