「本当の戦場を知らない人たちが、勇ましいことを言う」 ~山中光茂×志葉玲「今、ガザで起きていること」 2014.9.13

記事公開日:2014.9.22取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・阿部玲)

特集 中東|特集 集団的自衛権

 7月から8月にかけて、イスラエル攻撃下のパレスチナ・ガザ地区を取材した戦場ジャーナリストの志葉玲氏と、三重県松阪市長で、アフリカでの医療支援の経験もある山中光茂氏の講演と対談「今、ガザで起きていること」が、2014年9月13日、松阪市産業振興センターで開かれた。

 志葉氏と山中氏は、ガザやイラクなどの紛争地の実態、集団的自衛権が日本にもたらす危険性、平和な社会を維持していくためにできることなどを論じ合った。特に安倍内閣の、閣議決定による集団的自衛権の行使容認については、「安倍総理や政府のブレーンは、国際感覚や現場感覚に欠ける。憲法についても勉強不足ではないか」と痛烈に批判した。

■(再配信映像)
・1/2(18:30ごろ~ 1時間10分)志葉氏講演

・2/2(19:47ごろ~ 1時間1分)山中市長講演/対談/質疑応答
※動画データ変換不良のため、動画と音声にズレのある箇所がございます。

  • 講演
    志葉玲氏(戦場ジャーナリスト)「イスラエル軍のガザ侵攻の現状~今パレスチナ・ガザで一体何が起こっているのか」
    山中光茂氏(三重県松阪市長)「平和な社会を維持・実現する為に~集団的自衛権解釈改憲違憲提訴に向けて」
  • 対談 山中光茂氏×志葉玲氏「イスラエル軍のガザ侵攻と集団的自衛権~平和な社会を維持・実現する為に」
  • 日時 2014年9月13日(土)18:30〜21:00
  • 場所 松阪市産業振興センター(三重県松阪市)
  • 主催 ガザと日本の平和を求めて!志葉玲さん・山中松阪市長の講演会を実現する有志の会/共催 ピースウイング詳細、PDF)

逃げ場のないガザの住民たち

 まず、志葉氏の講演からスタートした。今回、なぜ、イスラエルはガザを空爆したのか。志葉氏は次のように話す。「イスラエルによるパレスチナ自治区の占領に反対しているハマスについて、よく『イスラム原理主義勢力』と伝えられていれるが、選挙で選ばれた政党である。ただ、ハマスは武装しているので、イスラエルがパレスチナを攻撃する口実となっている」。

 東京23区ほどの広さのガザには170万人が暮らしており、人口密度も高い。車で動くと狙われるので、志葉氏は徒歩で移動していたという。それぐらい狭い地域で、しかも国境は封鎖されているため、住民はガザの外には出ることができない。イスラエルは「空爆するから避難せよ」と警告はするものの、ガザの人々が避難する場所はない。

 志葉氏は「自分が訪れた時も、全域に空爆が行われていた。ホテルで寝ていると、ドーンという音とともに衝撃波で窓ガラスが割れたこともあった。ガザ東地区のシュザイヤで主に取材を行ったが、街はめちゃくちゃに破壊されていた」と話す。

 「これまでイラクやレバノンなど、さまざまな戦場に行ったが、ガザのように街が破壊されているのは初めて見た」という志葉氏。「たとえ戦争だからといって、何をやってもいいわけではない。やたらと人を殺していいわけではないのだ。国際人道法では『戦闘員ではない民間人は保護されなくてはいけない』と規定されている」と口調を強めた。

 志葉氏は「結果的に、ガザの人口50万人のうち、3分の1が自宅から追われた。多くは国連が運営する学校に逃げたが、収容人数2000人のところに4000人という状態。しかたなく交代で寝ているが、枕と布団が200組しかない。子どもがガレキから枕を引っ張り出している写真があるのは、そのためだ」と説明した。

学校、子ども、救急車も攻撃対象に

 「問題は、国連の学校ですら安全ではない、ということだ」と志葉氏は言う。ハマスの拠点を叩くというのが、イスラエル側の表向きの攻撃理由だが、結果的に学校の壁は穴だらけとなり、ガレキからは人の歯が見つかり、教室のクッションは血で赤く染まっていたという。

 ジュネーブ条約では医療関係者への攻撃は禁止されているが、志葉氏によると、イスラエルは救急車を破壊しているという。「病院は救急車を走らせる時、赤十字を通してイスラエルにその旨を知らせるが、毎回、救急車が狙われて、手当てをすれば助かる負傷者が死んでいく。それぐらい、イスラエルは手加減しない」。

 日本でガザの報道が少ないことについて、志葉氏は「大手メディアの記者でも、やる気のある人はいる。しかし、攻撃が激しくなってくると、本人の意志とは関係なく、会社が『戻れ』と指示を出す」と述べ、1991年の雲仙普賢岳噴火で報道関係者に死者が出て以降、メディア各社は神経質になったようだと話した。

 さらに、「イラク戦争の時は、橋田信介さん、小川功太郎さんと同じホテルだったが、2人とも殺されてしまった。日本のメディアはなかなか戦地へ行かなくなり、フリーランスも命を落とす。今回、ガザに入った日本人のフリージャーナリストは3人しかいない」と語り、リスクはあっても、現地の知り合いからSNSなどを通じて惨状を知ると、「自分も行かなくては」と思ってしまう、と続けた。

葬儀に集まる人々を無人機が攻撃

 志葉氏は「どんな大義名分を掲げていても、戦争で犠牲になるのは一番弱い存在だ。現地では、へその緒がついた赤ちゃんでさえ犠牲になっていた。責任のある連中は、安全な所に隠れている。それは不公平だと思うから、自分は戦争に反対する」と述べて、次のような例を挙げた。

 「ガザでは大家族で住んでいる人が多いが、ひとつの家だけで22人が亡くなったケースもある。冷蔵庫もなく、遺体は腐敗してしまうので、すぐ埋葬するのだが、その頭上でもブーンという音とともに無人攻撃機(ドローン)が飛んでいる」。

 埋葬時には野外に人が大勢集まるので、それを狙ってイスラエルが対人ミサイルを打ってくるのだという。イスラエル側は、遠隔操作でパレスチナの人々がどこにいるかを把握しており、「操縦者は、その気になればいつでも住民を殺すことができる」と志葉氏は言う。

 また、「日本の放送規定では遺体の映像は放送できず、戦争の現実を知らされない。そのせいか、いざとなったら国のために戦う、などと勇ましいことを言う人がいる。そういう人たちは、現地で吐き気がするような匂いを嗅いで来たのか」と志葉氏。「写真の悲惨さだけではなく、実際の現場では匂いがきつい。血の匂い、遺体の匂い。何度経験しても慣れるものではない」と言葉を重ねた。

イスラエルの情報操作と容赦ない現実

 また、「戦争では必ず情報操作、印象操作が行われる」とも述べて、「今回もイスラエルは『われわれは子どもを殺したくない。だが、ハマスが子ども達を楯にしているので、やむを得ず攻撃している』と言う。その実際はどうか?」と問いかけた。

 「1ヵ月続く断食月の終わりは、日本でいう正月の三が日。家族でご飯を食べたり、子ども達はお金をもらってお菓子を買いに行く。そんな子どもたちに向けて、無人攻撃機のドローンがミサイルを撃ち、何人か死んだ。しかも、一時停戦の最中だ。緊張が続いて、ようやく解放されたと思った矢先に、子ども達は殺されてしまった」と、イスラエルの容赦ないやり方を批判した。

 さらに、現地の写真を見せながら、「普段、パレスチナの子ども達は明るく元気だ。東洋人の自分を見つけて『ジャッキー・チェンだ!』とからかってくる。ところが、悲惨な光景に遭遇した子どもは、目が死んでしまっている。殺された者だけでなく、生き残った子ども達の精神的なショックを想像すると、のちにどういう影響が出るのか心配だ」と続けた。イスラエルの空爆は深夜0時過ぎに行われることが多く、人々は「寝ている間に殺されるのではないか」という不安で、夜も眠れないという。

 なぜ、イスラエルはわざわざ民間人を殺すのか。これについて、志葉氏は「自分の憶測だが」と前置きした上で、次のように語った。 「イスラエルの攻撃は、パレスチナ人にショックを与えることが目的ではないのか。ガザ唯一の発電所を爆破したり、生活に必要なインフラなどを破壊する。ガザでは1日に1時間しか電気が来なくなった。燃料もなく、封鎖されているので物資もどんどん限られてきて、薬も十分にない。困った挙げ句、人々は外に通じるトンネルを掘るのだが、今度はそれが狙われる。確かに、ハマスの兵器があるトンネルもあるかもしれないが、それなら出口を防げばいいだけ。破壊する必要などないのに、イスラエルは、わざと犠牲の大きなことをするのだ」。

メイドインJAPANの兵器が、ガザを狙う?

 そんなイスラエルに対して、アメリカは年間30億ドルの軍事支援を行っている。パレスチナの人たちは、「私たちは毎日『メイドインUSA』で殺されている」と訴えていた、と志葉氏は語る。

 さらに、「問題はアメリカだけだろうか。昨年の3月、安倍首相は『アメリカの戦闘機F35の開発に、日本企業も参加できるように』と突然言い出した。日本には武器輸出三原則があったにもかかわらず、『これは例外だ』ということにしてしまった」と、日本政府の対応にも疑問を表明した。

 「F35はイスラエルが買うことが決定しているので、今度は『メイドインJAPAN』の兵器が、パレスチナ人の命を奪う可能性が高い」と、志葉氏は表情を曇らせた。

 続けて、「安倍政権は、今年の3月には武器輸出三原則さえも撤廃した。元イラク復興支援隊長である佐藤正久参議院議員は『積極的装備交流』などと言っている。装備とは、つまり兵器のこと。こういった遠回しの言葉を使うところが、いやらしいと思う」と憤った。

 志葉氏は、日本国憲法の前文にある「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」という文章を紹介し、「平和的生存権と呼ばれている、この部分が、自民党の憲法改正草案では、まるごと削除の対象となっている」と指摘した。

 また、「自国の戦争のみならず、よその国の戦争にも加担しない、ということも破られようとしている」と危機感を表明し、「集団的自衛権とは、アメリカの戦争に付いて行くもので、『集団的攻撃権』と言うべきものだ。ガザのことは遠い国の話ではない。これからは、日本も戦争に加担させられそうな状況だ。しかも、私たちの税金を使って。この点を周知していかなければ、ガザの悲劇は何度でも繰り返される」と主張した。

どちらが悪いではなく、戦争が悪い

 次に、山中氏の講演に移った。山中氏は今年7月、市民団体ピースウイングを設立し、集団的自衛権行使を容認する閣議決定の違憲確認を求めて、国を提訴する意向を明らかにしている。

 「今回、志葉さん撮影のガザの写真を見せてもらい、この会場の中で一番驚いていないのが、私ではないかと思う。なぜなら、アフリカだけで10数ヵ国、戦争の跡地や貧困地域などで、現地の人々と一緒に生活してきたからだ」。このように話す山中氏は、松阪市長になる前に、医師としてアフリカで医療支援を行ってきた。

 山中氏は「戦争というものが当たり前にある中で生活している人々が、この世界には大勢いる。皆さんに、その情報が十分に届いていないということが、一番大きな問題だと思う」と語る。

 また、「逆に今日の志葉さんの話を聞き、『イスラエルは悪い国だ。ガザの人たちは可哀想だ』ということだけで思考停止してほしくない。ユダヤ人の側から見れば、アラブ人に対してさまざまな不満があるのが実状。どちらが悪いということではなく、戦争が悪い、と思うことが大事だ」と述べた。

「平和な武力」など、ない

 今年7月23日、 国連の人権委員会においてイスラエルへの非難決議が採択された。29の国が賛成する中で、反対したのはアメリカ1国のみ。日本を含め17の国は棄権をした。

 「こういったことはメディアでもあまり流れないし、どちらが正しいと言うつもりもない。ただ、集団的自衛権というものは、このように国際社会が反対していても、アメリカ1国の判断のみで日本が戦争に巻き込まれる、というものなのだ」と山中氏は危惧する。

 そして、自身が体験したアフリカの状況を語った。「ケニアでも、43民族ある中で、日常的に実質的な戦争が行われていた。ソマリアからの難民受け入れに我慢のできなくなったケニアは、今から2年前、とうとうソマリアの内戦に干渉した。その結果、難民キャンプの人数は2倍以上に膨れ上がった。平和な武力というものはない。よく『平和平和というだけで、平和を守れるはずがない』などと言われるが、武力による平和ほど不条理なものはない」。

 山中氏は、昔からほとんどの国家が「自分の国を守るため、どこかの国を守るため」と、さまざまな理由を作って戦争を行ってきたことを指摘する。「イラク戦争では、ドイツやフランスなど国連安保理のほとんどの国が反対する中で、アメリカとイギリスのみが『先制的自衛権』なるものを主張した。そのアメリカやイギリスの判断が、必ずしも正しかったわけではない。そんな中、なぜ今、集団的自衛権なのか」と問いかけた。

田母神氏の奇妙な理屈

 日本政府は4月、武器輸出三原則を撤廃した。その過程において、紛争当事国には武器を輸出しない、との議論があったが、これについて山中氏は、「武器って、紛争以外の何かに使えるんでしょうか?」と疑問を投げかける。

 「一度、それを田母神俊雄氏に訊いてみたら、『平和な武器もあるんです』と答えた。多くの人が、こういう理屈をつけて戦争を始める」とした山中氏は、次のように続けた。「戦争を始める時の、『自分たちは正しい、国家の方向性は間違っていない、武器は的確に管理する、平和のために侵略する』という理屈が、この世界で、おそらく何千年と繰り返されてきた」。

 山中氏は「しかし、日本という国は、第2次世界大戦の反省から、平和主義を徹底することによって、平和を守れる国家になったはず。他国からの侵略の危険を覚悟してでも、私たちは平和主義を徹底するという自覚で、この国の平和を70年間守ってきたではないか」と力説。「日本国憲法が、アメリカが作ったものでもかまわない。誰が作ろうが、それを守って来たのは私たちだ」と強調した。

安倍総理は憲法の破壊者

 また、先の集団的自衛権行使の閣議決定には問題が2つある、と山中氏は言う。「ひとつは、他国の論理によって戦争に巻き込まれてしまうこと。こんな権利は、求めるべきではない」。

 もうひとつについては、「憲法というのは、愚かな権力者が出てくることを想定して、権力者に抑制をかけるもの。その憲法を、まったく無視した総理大臣が、国民的議論もせず、『集団的自衛権は平和に資する』という理屈で憲法を乗り越えようとしていることだ」と述べ、その危険性を指摘した。

 そして、「安倍総理は、70年間守ってきた、平和主義という明文化された規定に基づく憲法を、破壊しようとしている。このような、立憲主義体制を破壊しようとする愚かな暴政は、私たちの声で止めなくてはいけない。そのために、国民の平和的生存権が侵害されるという『実害』があるんだと、集団提訴を通じて問題提起をしたい。『たかが総理大臣』に鉄槌を食らわしていきたい」と熱弁を振るうと、会場からは拍手がわき起こった。

「平和って60年も続くのか?」と驚く紛争地

 続いて、山中氏と志葉氏の対談になった。志葉氏は「日本では、本当の戦場を知らないのに、田母神さんのように勇ましいことをいう人が多い。しかし、山中さんのケニアの話は、現場を歩いた人ならではのリアリティがある」と評価した。

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