「自衛隊にいられなくしてやる、と脅された」 ~米軍車両事故で後遺症、イラク派遣の元自衛官が告発 2014.3.13

記事公開日:2014.3.14取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

特集 中東

 「ドスンと音がして、気がつくと米軍のベッドの上だった。薬4錠を飲まされ、再び眠りに落ちた。目覚めた時は身体がまったく動かず、首のあたりがすごく痛かった。クウェートで一番良い病院へ行ったが、言葉での意思疎通ができず、痛む顎や首も無理やり動かされ、治療どころではなかった」。元自衛官の池田頼将(よりまさ)氏は、不自由な体で事故当時を振り返った。

 2014年3月13日、大阪市中央区のエル・おおさかで、イラク派遣の元自衛官、池田頼将氏への支援を呼びかける会が開かれた。池田氏は、イラク戦争の際、クウェートに派遣された元航空自衛官。2006年7月、現地で米軍の大型バスにはねられ、大怪我をしたにもかかわらず、満足な治療を受けられず、早期帰国もできなかった。

 その結果、今では顔や腕に障害が残り、身体障害者4級に認定されている。池田氏の事故直後から、航空自衛隊によるバグダットヘの米兵の空輸が始まったため、米軍と自衛隊が事故隠しを図ったのではないか、との憶測を呼んでいる。

 現在、池田氏は、名古屋地裁で、国を相手取り損害賠償の裁判中であり、川口創弁護士、ジャーナリストの志葉玲氏らが支援を呼びかけている。

■全編動画

  • 報告 「イラク戦争における自衛隊の実相」 志葉玲氏(戦場ジャーナリスト)
  • 鼎談 志葉玲氏、池田頼将氏(元自衛官)、服部良一氏(前衆議院議員)

 冒頭、前衆議院議員の服部良一氏が「議員時代に、イラク戦争を検証する活動をする中、志葉玲氏を通して、池田さんのことを知った。私は、自衛官のいじめによる自殺の裁判にも関わっており、その遺族の方から、池田さんへの支援を頼まれた」などと経緯を語り、池田氏を紹介した。

 事故の後遺症で口を大きく開けない池田氏は、短く感謝の言葉を述べた。続いて、ジャーナリストの志葉玲氏がマイクを握った。

「イラク復興支援」の実態

 志葉氏は「現在、安倍首相は独自の憲法解釈によって、集団的自衛権の行使を認めようとしている。これは『米国の戦争に巻き込まれ権』だ。米空軍の公式サイト、Air Force Link(エア・フォース・リンク)では、『日本の自衛隊は、同盟国軍の要だ』とベタぼめしていた」と述べ、近年、より密接になりつつある米軍と自衛隊の関係を懸念した。

 「第1次安部内閣は、自衛隊のイラク派遣を『復興支援のため』と発表したが、実際には、航空自衛隊は現地で米兵や物資を運んでいた。当時、政治家たちに尋ねまくったが、ほとんどの議員は、その事実を知らなかった」。

 このように語った志葉氏は、続けて、米軍が現地が何を行っていたかを、写真を映しながら報告した。米軍が攻撃したイラクのアンバル州ラマディやファルージャでの悲惨な光景、白旗を掲げながら撃ち殺された少年の遺体の写真などを見せ、「遺体を戦車で轢き潰してミンチにしたり、建物にイラク人を詰め込み、建物ごと爆破して生き埋めにした」など、現地で行われた残虐な行為を紹介した。さらに、奇形児の映像も見せて、米軍による劣化ウラン弾の使用を指摘した。

米軍が作った「シーアvsスンニ」宗派間紛争

 「現在のイラクは、シリアと似た状況だ。独裁的な現マリキ首相はシーア派で、イラン影響下にあり、スンニ派を差別する。それに対し、スンニ派たちも抵抗、ラマディやファルージャでは大きな内戦に拡大してしまった」。

 志葉氏は、内戦の原因は米軍のイラク占領にあると言い、「イラク戦争前までは、シーア派とスンニ派は共存し、結婚をしている人たちもいた。ところが、シーア派の治安部隊が、スンニ派に残虐な行為を繰り返し、米軍はそれを煽り立てた。そのような米軍を支援していた日本も、他人事ではない」と断じた。

 その上で、「イギリスやオランダ、デンマークなどは、イラク戦争の検証を始めた。オランダでは『イラク戦争に大義はなかった』と結論づけ、政府も間違いを認めている」と述べ、「池田さんのことも含め、イラク戦争で何があったかを検証していく必要がある」と主張した。

航空自衛隊「米兵輸送作戦」開始直前の事故

 次に、池田氏の国家賠償請求訴訟を担当する川口創弁護士が、事件の概要と裁判の経過を報告した。川口弁護士は、2008年、名古屋高裁が「航空自衛隊による多国籍軍兵士の輸送は違憲」という見解を示した、自衛隊イラク派遣訴訟にも関わっている。

 「2006年4月、池田さんは通信班としてクウェートに派遣された。7月4日、米軍主催のマラソン大会に出場し、そこで事故に遭った。事故当時の2006年7月は、陸上自衛隊のサマワ撤退の時期で、日本では『自衛隊、撤退』と大きく報じられた。しかし、米軍からサマワ撤退の代りに輸送活動を要求され、航空自衛隊は残り、それまで行かなかった危険地帯のバグダットへ、武装した米兵や物資などを輸送し始めていた」。

 このように、事故当時の状況を語った川口弁護士は、「池田さんは、マラソン大会でトップ集団で走っていて、米兵を追い抜こうとした時に、女性兵士の運転する民間軍事会社のバスに後ろから轢かれた。かなり重傷だったにもかかわらず、米軍は事故扱いにせず、池田さんを治療もしないまま、自衛隊に引き渡した」と説明。

 「自衛隊でも、薬1錠を処方されたのが、唯一の治療だった。そして、言葉が通じない現地の病院で、頸椎、左肩打撲と診断された池田さんは、上司に何度も帰国を要求したが、任期満了までの1ヵ月半、帰国できなかった。池田さんは一見、頑健そうに見えるが、顎が開かず、頸椎を痛めたせいでしびれがあり、文字を書くにも時間がかかる」と述べた。

事実を隠すことに専念した自衛隊

 さらに川口弁護士は、その後、池田氏が自衛隊から受けた、数々のひどい対応を明かしていった。

 「帰国前、石破茂自民党議員や原口一博民主党議員などとの食事会に参加した際、治療用コルセットを外せと命令された。帰国後は、職場で嫌がらせを受け、11ヵ月後にやっと公務災害(公務員の労災)と認定された。新潟へ異動となるが、そこで、さらなるいじめが続いた。公務災害の認定も、上司が恫喝するようにして、打ち切りに同意させた」。

 最後に、川口弁護士は「今、集団的自衛権行使、と抽象的な言葉が踊っているが、具体的には、イラクやシリアで正面切って戦闘に参加するということだ。そこで自衛隊員たちは、どう扱われるか。池田さんを見て、考えてほしい」と警鐘を鳴らした。

「自分のような被害者を二度と出してほしくない」

 続けて、服部氏が池田氏に質問し、話をすることが不自由な池田氏は、ゆっくりと答えていった。

 池田氏は事故当時について、「ノイローゼ状態になり、何度も帰国を願い出たが、上司は聞き入れてくれなかった。自分の事故の2〜3日前、アキレス腱を切った自衛官は、すぐに帰国できたのだが。小牧基地へ帰国した際も、首が動かせない状態だったのに、治療用コルセットを外して行進すよう命令された。自分の両親に『完治するまで転勤はさせない』と約束した幹部が退官したとたん、新潟に配属された。民主党から自民党に政権が変わると、公務災害を突然、打ち切られ、嫌がらせもひどくなった」と話した。

 「上司からは『身体障害者になったら、階級も給料も上がらない。退官しても就職を斡旋しない』と言われたが、身体障害者手帳をもらった。そうすると、さらに、いろいろな嫌がらせを受けた。仕事中、部下に難癖をつけられ、加担した他の自衛官から暴行されて、全治2週間の怪我を負った。ところが、基地のトップ幹部5人から『自分が悪かったことにしろ』と強要された。納得できないので(自衛隊の中で警察にあたる)警務隊に通報する、と言ったとたん、『自衛隊にいられなくしてやる』とトップ幹部に脅された」。

 「しかし、警務隊に通報した。即日、過酷な庶務係に異動になった。その職場の上司からもいじめを受け、2ヵ月後に依願退職した。家から出たくないし、人と会いたくもない。トイレに行くことすら億劫になってしまった。眼球、頸椎、腰の痛みは、痛み止めの薬も効かない状態。食事も(口が開かないため)流動食しか食べることができない」。

 最後に、自衛隊に対する感情を尋ねられると、池田氏は「自分のような被害者を、二度と出さないでほしい。これ以上、被害者や自殺者を、隊員から出さないためにも、裁判を起こした」と切実な心情を訴えた。

荒れる自衛隊と日米地位協定の影

 続いて、参加者からの意見表明に移った。池田氏の小学校の担任教師の石毛氏は、「護憲、反戦の思いを持って教育に携わってきたが、自分の教え子がこういうことになり、大きなショックを受けている。教育関係者にも裁判への支援を呼びかけているが、自衛隊の事件ということで、引いてしまう人もいる」と語った。

 高槻市議会議員の和田たかお氏は、現在、高槻市に住む池田氏への支援に動いていることを話し、「池田さんは生活保護を受給しているが、申請の際、『損害賠償請求権を行使する場合は、それまで受給した全額を返済する』という誓約書を書かされている。これまでの医療費も返済することになり、裁判に勝っても手元には一銭も残らない。これを何とかしないといけない」と問題提起をした。

 平和のための元自衛官連絡会のメンバーは、「海外派兵で負傷をした隊員を、きちんと手当もせず、ぼろくずのように追い出すとは許しがたい。池田さんへの正しい対応を求めて第3師団へ申し入れを行う」と述べ、申し入れ書を読み上げた。

 「今回の件は、日米地位協定の問題を鋭く突きつけている。本来ならば、自衛隊は事故を隠蔽するのではなく、池田さんの立場で、米軍と交渉する義務がある」とし、さらに、「3月10日、海上自衛隊幹部候補生学校での暴行事件と被害者の自殺未遂の報道があった。戦争が近づくと、隊内の空気は荒れる。安倍政権の戦争政策の下、自衛隊は今、暴力が支配する状況になっているのではないか」と訴えた。

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「「自衛隊にいられなくしてやる、と脅された」 ~米軍車両事故で後遺症、イラク派遣の元自衛官が告発」への3件のフィードバック

  1. 清沢満之 より:

    航空自衛隊・・・田母神の居た所か、どうしようもないな。
    民間軍事会社のバスを運転していた女ってレイシスト(差別主義者)かなんか?いずれにせよ、治療も何もせず引き渡して、自衛隊も一緒になって事故隠蔽に奔走、挙げ句、帰国後イジメ倒すってどこまで属国・奴隷化してんだ日本人は。

  2. 清沢満之 より:

    追記
    民間軍事会社の有様については、YOU TUBEにある「ブラックウォーター 町山智浩」を参照。 

  3. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見より) より:

    不幸な事に仲間である自衛隊も『米軍側が異常なしと言っているのに、それと反する診断ができるわけない』といって事故を隠蔽したのだ。

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