泉田知事の発言は個性的 ~原子力規制委員会 田中俊一委員長定例記者会見 2013.7.3

記事公開日:2013.7.3取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

 2013年7月3日(水)14時より、東京都港区の原子力規制委員会庁舎において、田中俊一委員長 定例記者会見が行われた。午前中の第13回原子力規制委員会会合で承認された、大飯原発3、4号機の評価について質問が集中した。また、東京電力が柏崎刈羽原発の再稼働へ向けて、安全審査を申請する方針であることに、泉田裕彦新潟県知事が不快感を示した件などにも触れた。

■全編動画

  • 日時 2013年7月3日(水)14:00~
  • 場所 原子力規制庁(東京都千代田区)

 今回は、特に田中俊一委員長からの発言がないため、記者からの質問を受けて始まった。最初に、テレビ朝日の松井氏が、第13回原子力規制委員会での、大飯原発3、4号機の評価結果を改めて訊いた。田中委員長は「4月以来、現状調査から安全レベルが一段向上したと判断し、現状で直ちに運転を止める必要はない、と決まった」と答えた。

 中村佳代子委員などが「まだ、電力会社の意識が変わっていない」と指摘している一方、今回の報告書を規制委が了承したことについての受け止め方を、NHKの記者が尋ねた。田中委員長は「安全文化の問題だ。アドバイザーのアンドレ=クロード・ラコスト氏(仏原子力安全局前局長)も、安全文化の欠如を指摘したが、今回、議論での激しいやりとりもあり、事業者の一定の進歩はあった」と述べた。

 同記者が「規制庁の発足当時、『失墜した信頼を取り戻す』との委員長の言葉があった。しかし、規制庁には旧保安院や文科省からの職員も多く、前体制と同じとの批判もある。能力面と体制面を、どう評価するか」と尋ねると、田中委員長は「能力面はかなり高いと思うが、体制面では、以前から批判もあるので、独立した3条委員会としての努力を続ける」と答えた。同記者は、最後に「7月8日、新規制基準が施行される際に、規制委員会の会見が予定されていない。国内外に知らしめるためにも、会見の開催を願う」と要望した。

 東洋経済の記者が「大飯3、4号機は特例措置だと思うが」と言うと、田中委員長は「例外ではない。9月の定期点検で止めてから、新基準のバックフィットを適用させ、条件を満たせばいい。40年ルールを、その時点で適用していくことにも例外はない」と答えた。

 次に、ロイターの記者が「世界一厳しい基準ができたという、その根拠は」と尋ねた。田中委員長が「具体的な規制基準、シビア・アクシデント対策、重大事故対策の防止、発災のリスクマネジメントは世界一厳しいと言える」と答えると、同記者は「では、国民の安全が確保され、原発と共存できるのか。太鼓判を押せるのか」と重ねて問いかけた。田中委員長は「福島のようなことは、起こらないように要求しているので、大丈夫だ」と答えた。

 共同通信の記者が「大飯原発3、4号機は、致命傷ではないが細部にはまだいろいろ問題がある、と評価書には書いてある。他の原発は止まっているのに、大飯だけ100点満点ではないのに稼働していることに、国民の理解は得られない」と言うと、田中委員長は「将来、何10機と動いた時、新しい基準ができるたびに、何10機も止めることはできない」と答えた。

 次に、新潟日報の記者が「新潟県の泉田知事が、柏崎刈羽6、7号機の再稼働申請について、東電と揉めているが」と尋ねると、田中委員長は「ノーコメント。事業者と地元の問題だ」と答えた。

 朝日新聞の記者から「直下の活断層が認められれば、停止するのか」と訊かれると、田中委員長は「指針がそうなっているので、そうだと思う」と答えた。続けて同記者が「安倍政権が『安全が確認されれば、即再稼働』という考え方では、安全文化は育たないのではないか」と問いかけると、田中委員長は「規制委員会の新基準は、あくまでひとつの条件であって、リスクすべてをクリアした、ということではない」と答えた。

 同記者は「泉田新潟知事は『地元の意見も聞かずに災害時避難計画の指針を立てることはおかしい、信頼できない』と言っている」と続けた。田中委員長は「だいたいの地方自治体の首長さんは、納得している。その中でも、泉田知事の発言は個性的だ」と応じた。原子力規制庁の森本英香次長が「対策指針の策定では、オープンな議論やパブコメで、地方自治体とも十分に協議を重ねている」と補足した。

 さらに質疑は続き、作業員の緊急被曝時の基準100ミリシーベルトを超えた場合の議論がないこと、30キロ圏外での放射性プルームなどへの対策、大飯原発F6破砕帯トレンチ調査の実施範囲の縮小問題などが挙げられた。また、「現在、規制庁には、経産省から応援要員が数名きているが、辞令に1年間とあり、当初謳っていたノーリターン人事の精神に反していないか」と指摘されると、森本次長は「法律に5年間の猶予期間を設けているので、問題ない」と、あくまで正当性を主張した。

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