どんぐりと民主主義 4回目シンポジウム「地方分権と民主主義」 2013.6.30

記事公開日:2013.6.30取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・曽我/奥松)

 2013年6月30日(日)19時より、東京都小平市のルネこだいらで「どんぐりと民主主義 4回目シンポジウム『地方分権と民主主義』」が行われた。東京都小平市では、都市計画道路の計画案の見直しについて、住民の意思を問う住民投票が行なわれ、その投票率が50%に満たなかったために、投票は不成立・不開票となった。これを受けて、今後の対応や問題点について議論が交わされた。

■ハイライト

  • 概要説明 水口和恵氏(小平都市計画道路に住民の意思を反映させる会 共同代表)
  • 座談会 中沢新一氏(明治大学野生の科学研究所所長)、宮台真司氏(首都大学東京教授)、いとうせいこう氏(俳優、小説家、タレント)、國分功一郎氏(高崎経済大学経済学部准教授)

 はじめに、水口和恵氏が、市民の憩いの場であり、絶滅危惧種の動植物も見られる貴重な雑木林が、道路建設によって失われることへの懸念と、住民投票への経緯を、写真を示して説明した。さらに、「住民投票を説明する市報では、東京都や小平市の主張が大きく提示され、私たちの意見は小さく扱われた」と、小平市の情報提供が偏っていたことを指摘した。その上で、「有権者の3分の1(約5万人)が投票した結果を、開票もせず処分するという小平市に対し、情報公開請求、異議申し立てを行なっている。また、東京都、国土交通省にも要望書を提出した。さらに、小平市議会への請願提出を計画中である」と、現在の取り組みについて話した。

 座談会では、まず、小平市が決めた「投票率50%以上」という成立要件について議論をした。中沢新一氏は「住民投票を行なうと決めたあとに、50%という数値を決めている。この点を攻めれば、どうか」と述べ、國分功一郎氏は「50%という数値は、徳島市の吉野川可動堰建設の住民投票条例を決める際、きわめて政治的な力学から出てきたもの。そもそも法的拘束力がないのに、住民投票に成立要件を付けることに問題がある」と指摘した。

 それに対し、宮台真司氏は「日本では、住民投票とは異議申し立て、と理解されてしまっている。これを改善しない限り、投票率は伸びない」と異なる視点から意見を述べた。宮台氏は「原発都民投票条例の制定を求める運動をしていた際に、『原発について、みんなの意思で政策に影響を与えていきましょう。原発推進派の人こそ署名してください』と訴えて、推進派からも多くの署名を集めることができた。住民投票のイメージを改善し、賛成派や推進派の人からも受け入れられる努力が必要だ。住民投票は、共同体自治を回復するためのプロセスである」と述べた。

 地方自治に関して、中沢氏は「国土交通省にとって、地方自治は触れてはいけない領域。かつては、行き過ぎた計画への指導をしていたが、今は方針的にできない」と述べた。宮台氏は「地方は予算が少ないために、県や国が予算を交付する事業しかできない。地域の自立的な経済圏を作ることと、政治的な自立を達成することは、表裏一体だ」と、地方自治の難しさを指摘した。國分氏は「地方分権の時代だと言われているが、実際には、地方の首長に権限が集まり、地方首長分権になっている。地方分権は民主主義とセットにしなければ、地方自治にならない」と述べ、いとうせいこう氏が「地方自治の中に住民が含まれず、欲望と儲けが市長や議員に分配されるだけでは、何のための地方分権なのか」と補足した。中沢氏は「小平の5万人の投票を開示しないのは異常事態だと、住民がはっきり意思表示しなくてはいけない」と述べた。

 今後の方向について、いとう氏は「小平の若いミュージシャンが、駅前で歌やラップで意見を主張してくれたら面白い。雑木林で音楽フェスをやるのも良い。参加者は、森の素晴らしさを感覚的に知ることができる」と語った。宮台氏は「道路を作る側と、作らない側とで、未来のビジョンをシェアすることが大切だ。建設賛成派を排除してはいけない。住民運動に祝祭的な要素を盛り込み、その延長線上に、雑木林を守ると小平に良い未来がある、と思わせることが大事だ」と述べた。

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