広域震災廃棄物3日間連続講演会(2日目)「『低線量』内部被曝から子どもたちのいのちと人権をまもるために」 2013.6.28

記事公開日:2013.6.28取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

 2013年6月28日(金)19時から、愛知県名古屋市の愛知県産業労働センター・ウインクあいちで、「広域震災廃棄物(放射性廃棄物瓦礫)全国拡散被曝地域拡大から二年!何がこの国で、今起きているのか 中部地域3日間連続講演会」の2日目が開かれた。

 1日目は豊橋市で行なわれ、IWJは、2日目から中継をした。松井英介医師は、放射能の基礎知識を説明し、チェルノブイリ事故の実例を挙げて、福島の子どもたちの危険性を指摘した。平山誠議員は脱原発を説き、途中で前双葉町町長の井戸川克隆氏に電話。井戸川氏は、メッセージを電話越しに訴えた。大沼淳一氏は、岡山大学の津田教授のアウトブレーク疫学に基づいた、福島の甲状腺がんに関する論文を紹介。また、子どもたちの保養の重要性について説明した。

■全編動画

  • テーマ 「低線量」内部被曝から子どもたちのいのちと人権をまもるために
  • 講演者 松井英介氏(医師、岐阜環境医学研究所)、大沼淳一氏(金城学院大学非常勤講師、市民放射能測定センター運営委員、高木仁三郎市民科学基金顧問)、平山誠氏(参議院議員)

 冒頭、放射性廃棄物全国拡散阻止!3・26政府交渉ネット事務局の藤原寿和氏が、会の進行と趣旨を述べたあと、松井英介氏が「もうひとつの選択肢=『脱ひばく』集団移住の権利」と題した講演を行なった。

 松井氏は核燃料について、「ことの始まりはウランの核分裂だ。ウランは、核分裂でセシウムとストロンチウム、ヨウ素などに変わり、中性子2個を放出する。だが、プルトニウムは中性子を3個放出するので、効率がいいとMOX燃料が作られた」と話した。その上で、放射能汚染、ストロンチウム90などの概要を説明。そして、放射能汚染を拡げる4つのルートとして、事故現場、除染作業、がれき広域処理、食べ物を挙げた。また、「政府と福島県は、被曝地の年間放射線量を20ミリシーベルト以下に除染で抑えて、被災者に住み続けることを要請する。仮の町構想を立て、住民を福島に戻して封じ込めようとしている」と非難した。

 次に松井氏は、なぜ、子どもの基準値が年間20ミリシーベルトなのか、について話した。まず、アメリカのトーマス・マンクーゾ医師が「被曝は年間1ミリシーベルト以下にすべき」とした報告書(1977年)を紹介。続いて、現在でも双葉町や避難者用仮設住宅などは、異常に高い線量であることを報告した。さらに、原発事故子ども・被災者支援法がいまだに進展しないこと、環境省主導の鮫川村の高濃度放射性廃棄物処理場の計画、汚染下水汚泥の貯蔵施設の問題などを語った。そして、「放射能汚染された自治体を分断して、補償額に差をつけようとしている」として、政府や東電の方針を批判した。

 松井氏は「福島第一原発事故の発災前と後では、未成年者の病死は1.5倍に、心疾患での死亡率が2倍になっている。ストロンチウム90は、乳歯を調べることで被曝の程度がわかるが、日本では調査機関がないので、海外に活路を求めている」と述べ、続けて「甲状腺がんについては、チェルノブイリでは事故3年後から急に増加した。併せてダウン症、心疾患、白内障なども増えた」と、データを示して警告した。

 また、大手マスコミがまったく無視した、国連特別報告者アナンド・グローバー氏による、今年5月の国連人権理事会への、福島に関する調査報告と勧告について話した。最後に、脱被曝のための集団移住権利法を提案して、松井氏は講演を終えた。質疑応答では、トリチウム、ストロンチウムの危険性、原発輸出などについて、さらに説明した。

 続いて、平山誠氏が「私は、もんじゅオタクといわれるほど、国会でもんじゅ廃炉を訴え続けてきた。現在、みどりの風に所属し、脱原発、福島復興を使命にしている」と自己紹介をした。そして、「来年から消費税が8%になる。高齢者の保障制度に使うといわれているが、明確な用途はいまだ不明だ。さらに復興特別税として、来年6月から、住民税の年間1000円プラスが10年間続く。所得税は、今年から2.1%増えて、25年間徴収される。ところが、復興財源は、海外への原発売り込み調査費にも使われている。余った予算はプールして、がれき処分に関係のない市町村の、ごみ焼却場建設に使われた」と述べ、大阪府堺市の広域がれき処理を例に挙げて、政府と環境省の予算の無駄使いを指摘した。

 平山氏は、スピーチの途中で、前双葉町町長の井戸川克隆氏に電話をかけた。井戸川氏は「私は原発事故の責任追求、住民の健康相談などを行なってきたが、本当のことを言い過ぎて、町議会から罷免されてしまった。詭弁を使わず、本当のことを言える社会を目指す。子どもたちを放射能から守る。原発より大事なのは、子どもたちと彼らの未来だ」と、電話を通してメッセージを伝えた。

 次に大沼淳一氏がスピーチに立った。まず、甲状腺がんに関して、岩波書店の雑誌『科学』5月号に掲載された、岡山大学の津田秀敏教授の、アウトブレーク疫学の観点から論じた、被曝地の小児甲状腺がんについての論文を紹介。「通常、甲状腺がんの発症確立は100万分の1。福島での甲状腺検査の数字は異常だ。だが、統計的優位性はない。もし、悪い予想がはずれて、対策が無駄に終わっても、無事でよかった、で終わらせればいい」と説明した。

 また、「福島で、現在、農作物の放射性物質の全品検査をしているのは米だけだ。それも基準は25ベクレル/キログラム以下で、それ以下は流通している」と憂慮の念を示した。次に、子どもの保養と被曝について説明。「毎日10ベクレル/キログラムを食べていたら、1年で580ベクレル/キログラムほどになる。チェルノブイリの結果では、68%の子どもに心疾患が現れる数字だ。しかし、福島の子どもたちを40日間、よそで保養させると効果が現れる」と説明し、保養計画について持論を展開した。

 その後、松井氏、平山氏、大沼氏が揃って登壇し、お互いへの感想や質疑応答を行なった。「保養は、学校ごと移すのがいい。中学生ぐらいまでは保養が必要」などと話し合い、最後に平山氏が「怒りましょうよ。われわれは、25年間、復興税を払い続けるのだ。それで、保養の資金が十分まかなえる」と訴えた。

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