「被害者にかわって対抗言論を行使するのは『民主主義社会のあるべき姿』」 ~新大久保・排外デモ暴行事件、152人の弁護団による刑事告訴後の記者会見 2013.6.24

記事公開日:2013.6.24取材地: テキスト動画
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(IWJ・ぎぎまき)

 「警視総監、よく聞いて下さい。甘い捜査をやるようであれば、検察審査会に申立てをし、国民の名において捜査を断罪します」

 6月16日、新大久保で行われた排外デモ中に、2件の暴行事件が起きた。排外デモの参加者が沿道の市民(NさんとKさん)に対して、蹴る、倒すなどの暴行を加えたのである。24日、この2つの暴行事件に対して全国152人の弁護士が名を連ね、告訴人代理人として新宿警察署に刑事告訴した。同日開かれた記者会見に参加した弁護士の一人、梓澤和幸弁護士は冒頭、強い口調でこのように語った。

■ハイライト

 受理された告訴状は2通。趣旨は、告訴人であるNさんとKさんに対する暴行、傷害に対し、厳重なる処罰を求めるもの。記者会見に出席したのはNさんのみだったが、参加できなかったKさんについては本人が綴った心情が文書で寄せられ、弁護士がこれを代読した。

 「一歩間違えれば怪我では済まなかった。今でも恐い。今後、在特会とは関わりたくないが、ヘイトスピーチがヘイトクライムに発展することを食い止めることができるのであれば、より一層、自分がなんとかしなければと思った。今ならまだ間に合うはずです」

 Kさんは16日、排外デモに抗議するため、新大久保を訪れていた。デモ開始後、デモ参加者の一人がKさんの抗議の声に腹を立て、体当たりし、転倒させる暴行を加えたのだ。Kさんは、右側頭部を打ち付けてその場で気絶。救急車で運ばれ、全治一週間の被害を受けた。しかし、文面に綴られているように、更に事態がエスカレートすることを危惧し、告訴人として立ち上がった。

 一方、記者会見に臨んだNさんは当日、夫とともに抗議に参加。「レイシズムは日本の恥」、裏面には「歴史を学べ、歴史に学べ」と書いたプラカードを持参した。デモが始まってからNさんは、自分の靴紐がほどけていることに気づき、靴ひもを結び終わり立ち上がると、プラカードがなくなっていることに気づいた。正面にいたデモ参加者の一人が取ったのではないかと接近を試みたが、デモ隊の圧力に押されて、仰向けに倒れた。その瞬間、同じ人物に左内側ふとももを蹴りつけられた。Nさんの足には今でも、ハイヒールのかかとで蹴られたような後が残っている。

 KさんとNさんに暴行を加えた2人はそれぞれ、現行犯逮捕され、現在も拘留中である。

 「この事件に関わっている弁護士は普段、憲法の21条にある『言論の自由』を大切にしている立場です。しかし、社会的弱者の基本的人権をないがしろにする内容の言論であってはならない」

 記者会見に出席した澤藤統一郎弁護士はこう述べ、社会的強者が言論の自由を行使し他者の人権を蹂躙する時、対象となった社会的弱者が、対抗言論の自由を行使することは不可能である、と指摘。その上で、差別の対象となっている被害者にかわって対抗言論を行使するNさんやKさんの行為は、「民主主義社会のあるべき姿」だと評した。「社会的良識をもって立ち上がった市民を守るため、法的にできる最大限のことをやるつもりです」と語った。

 宇都宮健児弁護士については、3月末に警視庁と公安委員会に対し申入を行ったことに言及。こうした事態を予見し、適切な行政活動を求めたにも関わらず、被害者が出る事態を防げなかった警視庁と公安の対応を問題視。同時に、ヘイトスピーチについて国会で答弁した安倍総理が、未だに具体的な対策を講じていないことを挙げ、「国際的な視点が欠けている」と批判した。

 現在、2件の刑事事件についてはすでに捜査が行われているが、6月末に出る結果が不起訴の場合、弁護士らは検察審査会に申立てを行う予定である。

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「「被害者にかわって対抗言論を行使するのは『民主主義社会のあるべき姿』」 ~新大久保・排外デモ暴行事件、152人の弁護団による刑事告訴後の記者会見」への2件のフィードバック

  1. あのねあのね より:

     新宿区は20年前でも他民族多国籍融和の街であった。20年前の新宿区の外国人登録2位はビルマ(当事者がビルマと呼称)国籍の方々だった。その当時のゴミ置き場の表示は6ヶ国後だったのを覚えている。
     30年前には寂れた商店街であった大久保や新大久保は、韓国の方々のおかげで栄えた街になった。新大久保駅でホームから転落した日本人を助けるために亡くなった方は、韓国からの留学生の方と日本人のカメラマンの方で映画にもなり、天皇皇后両陛下が映画を御覧になり韓国の方にお礼を述べられたのである。じつは、その後に起きた転落事故で救助をされたのも韓国からの留学生の方で、その方は亡くなられずに済んだ。この方は、とっさに亡くなられた留学生の方が頭に浮かんだそうである。
     民族や国籍を超えて住民達が長らく融和して暮らしているいる新宿区に、新宿区や東京都出身ですら無い人間が大挙して押しかけて追い出しを図る目的は何だろうか。税務署通りの拡張に伴う立ち退きによる再開発のように、この地域も立ち退きさせて再開発をする先兵なのではないかと勘ぐってしまうのは考えすぎだろうか。かつての西新宿6丁目のように、立ち退きさせて再開発をするのが目的なんだろうか。在特会の資金源は善意の一般人の寄付だけなんだろうか。
     新宿を本陣とする創価学会や公明党は何故動かないのか。警察は何故、狭い大久保通りで稼ぎ時の土日のデモを許可するのだろうか。自称愛国者は、何故、天皇皇后両陛下のお気持ちを踏みにじるのだろうか、本当に愛国者なのかは怪しいと言わざるを得ない。

  2. 金智治 より:

     領土問題や拉致問題など政治的対立が問題視される中、韓国朝鮮が「嫌い」「憎い」という感情が生まれる事は自然なことであり、この感情に対しては私は残念ではありますが仕方のないことだと思っています。しかし、私たち在日は、日本に日本にンとして生まれてきた人たちと同じように、生まれた時から、在日を選択して生まれてきたわけではありません。
    気がついた時点で在日であっただけであり、後は日本の教育を受け日本のものを食べ、日本の文化の中で普通に育ってきた日本を愛する人間です。
     私たち在日の多くは、多かれ少なかれ残念ながら差別や中傷、いやがらせ、無視、いじめ等を経験して育ってます。しかしながら昨今のヘイトスピーチデモやネットでの書き込みは我々在日に対する憎悪そのものであり、我々にとってはいつか大きな流れになる兆候、大事件が起こる前触れではないかとこれまでの経験の比ではない、恐怖におののいております。特に子供を持つ親として、不安でなりません。かつてナチスがユダヤ人に対しておこなった排外主義は、ホロコーストという凄惨な結末をうみました。底までの流れにならないにしてもネットやデモの流れを見る限り、この趨勢は日々大きくなっているように感じます。
     そんな不安の中ヘイトスピーチデモに対して日本人の中から、これを止めようとする抗議は本当に日本という国の素晴らしさを象徴していると私は思います、またそのためにケガをされた方については、心からお見舞い申し上げたいと思います。本来であれば在日同士で団結してこのヘイトスピーチに対抗していかなければならない筈なのに、先頭にたってヘイトに対抗しているのが日本人である事は、本当に在日として感謝しなければならないと思うと同時に尊敬に値する勇気ある人達であると思います。
     本国の韓国人もそれ以上に日本人を差別しヘイトしているではないかという意見がありますが、それは当然それとして非難されるべきであり、安倍さんも仰られているように国旗を燃やしたり、踏みつけたりする非礼は絶対にしてはならない行為であると思っています。
     在特会をはじめ日本における今後ヘイトスピーチやレイシズムの潮流に対し、政治的なヘイトスピーチ規制が言論の自由を侵害しない範囲において法制化される契機になる事を、子供の未来のため、日本の未来のため、ひいては韓国・中国・アジア・世界の潮流ともなるように願ってやみません。
     最後に、レイシズム・ヘイトスピーチと戦う全ての日本人の皆さんに心から敬意と感謝を致します。

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