【IWJブログ】映画『世界が食べられなくなる日』の監督に遺伝子組み換え作物の危険性を聞く ~ジャン=ポール・ジョー監督、独占インタビュー! 2013.5.9

記事公開日:2013.5.9 テキスト動画
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(構成:IWJテキストスタッフ・齊藤八重、大西雅明 文責:岩上安身)

特集 TPP問題

「20世紀に世界を激変させたテクノロジーが2つあります。それは、核エネルギーと遺伝子組み換え技術。そして、これらは密接に関係しているのです」

 これは、6月8日から日本公開が始まるドキュメンタリー映画『世界が食べられなくなる日』の冒頭の台詞だ。IWJ代表の岩上安身が、この映画を撮ったジャン=ポール・ジョー(Jean-Paul Jaud)監督にインタビューを行った。

 ジョー監督は、『未来の食卓(2008年製作)』で、給食の材料をすべてオーガニックにすると宣言した南フランスの村に密着して、食と環境問題の密接な関係を提示し、その続編として製作した『セヴァンの地球のなおし方(2010年製作)』では、自然と共存した生活を送る人々の姿を追い、子どもの未来を守るために行動するときは今だと訴えかけた。

 そして、続く本作『世界が食べられなくなる日』で、ジョー監督は、遺伝子組み換え作物を2年間という長期にわたってラットに与え続けるとどのような影響が出るのか、という実験に密着した。この実験結果(※1)は2012年9月に発表され、世界中に波紋を呼んだ。

(※1)フランス・カーン大学のセラリーニ教授らは、マウスを使った実験によって、モンサントが開発した除草剤・ラウンドアップへの耐性を持つ遺伝子組み換えトウモロコシに「毒性がある」とする論文を2012年9月19日に発表した。

■ イントロ動画

IWJは、2012年9月30日にメルマガ「IWJ特報第49号」を発行し、その中でこのセラリーニ教授らの報告を紹介しています。こちらも是非お読みください。

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 本作品は、生命を脅かすテクノロジーとして、遺伝子組み換え技術と同時に、核問題にも目を向けている。ジョー監督は、世界中の人間や動物、植物、さらには微生物に至るまでの多くの生物が、この2つのテクノロジーによって被害を受けていると指摘。「我々は、第3次世界大戦下にいるのです」と警鐘を鳴らした。

 5月3日には、本作品を扱ったシネマトークカフェを開催した。そこでは岩上安身が、原子力技術のリスクや原子力コンソーシアムの実態、遺伝子組み換え作物の危険性、特にモンサントがつくり出すトウモロコシの毒性について、またTPPによってそうした作物が流入してくる可能性など、映画からより掘り下げた内容を解説している。この模様は、今後会員限定用に動画配信を行う予定ですので、こちらも是非御覧ください。

※フル動画を含む記事本編

■以下、インタビュー実況ツイートのまとめに加筆・訂正をしたものを掲載します。

「遺伝子組み換え」と「核」を補償する人

岩上安身「素晴らしい映画でした。特に日本人にとっては、非常に考えさせられるテーマでした。それは、日本人がいま直面している2つの問題があるからです。1つ目は原発で、2つ目はTPPです。TPPに入ると、モンサントが日本に本格的に参入してきます。

 映画で、核問題とGM(遺伝子組み換え)作物を重ねて描こうと思ったのはなぜですか?」

ジャン=ポール・ジョー監督(以下、敬称略)「実は、もともとこういう組み合わせにするつもりはありませんでした。最初は、セラリーニ教授の世界初の実験に焦点を当てていました。

 今までモンサントは、3カ月間のラットの実験でGM作物を安全としてきましたが、セラリーニ教授はラットの寿命である2年間をかけて、GM作物の影響を調査しました。

 そして撮影の途中、耐え難いような事故が起こりました。それが福島第一原発事故です。

 以前から思っていたのですが、この2つのテクノロジー(=核と遺伝子組み換え)は人類史上最大のスキャンダルです。この2つを結び付けて語らないわけにはいきません。これらは、人間では制御不可能なテクノロジーなのです。

 世界中のどの保険会社も、GM作物と原子力は補償の対象にはしません。なぜなら、GM作物が引き起こしている被害額は、計算できないほど大きいからです。

 しかし実は、そういうカタストロフィー(=大惨事、破滅)に対する補償をしている人たちがいます。それは、(岩上を指差しながら)あなたであり、私です。というのは、私たちが納税者だからです。納税者であるがゆえに、(チェルノブイリや福島の原発事故に)間接的に加担してしまっている。我々は不透明な情報の下に置かれていて、知らないうちに保険会社のような役割を担っているのです」

秘密裏に行われた実験

岩上「セラリーニ教授の実験グラフについて、解説していただけますか?」

ジョー「このグラフで大事なのは、実験開始から4カ月後にラットの最初の死が訪れていることです。モンサントやほかの企業は、すべて3カ月間で実験を終えているのです。まるで偶然のように」

岩上「セラリーニ教授の実験は秘密裏に行われ、情報を漏れないようにされていました。それはなぜですか?」

ジョー「外部からの干渉がなく、高い独立性を確保して検証する必要があったためです。外部の干渉者というのは多国籍企業のことです。昔、イギリスで、あるハンガリーの研究者が行った除草剤の実験は、途中で情報が漏れてしまいました。その結果、モンサントをはじめとする多国籍企業の人たちが手を回して、研究の信用を失墜させました」

常に妨害されている

岩上「今、彼らから攻撃を受けたり、圧力がかかったりしていませんか?」

ジョー「常に妨害されています。前作『未来の食卓』(2008年)の頃からそうです。彼らには『お金』という武器があります。さらに、いろんなところに共犯者がいます。欧州議会では、1人の議員につき10人のロビイストが控えていて情報を流しています。

 また、私の映画はメディアのプレスからボイコットされました。ボイコットというのは、テレビ・新聞・ラジオが、私の映画をまったく語らないということです」

我々は第3次世界大戦下にいる

岩上「核とGM作物の技術を結びつけて世界を支配しようとしているのは、アメリカなのでしょうか、それとも多国籍の資本でしょうか?」

ジョー「ほんのひと握りの多国籍企業の経営者が、世界を制覇しようと目論んだのです。そして、強力な共犯者がアメリカの政府にいました。アメリカのジョージ・W・ブッシュ元大統領(父)は、モンサントと密接な利益関係にありました。テキサス州で石油を発見した人たちが、世界を制覇しようと目論んだ、と私は解釈しています。

 けれども、私は『アメリカ国民が』などという主語は絶対に使いません。私はアメリカ人を尊敬しています。

 これは言っておきたいのですが、この映画(=『世界が食べられなくなる日』)の内容は、すべて検証されています。私は映画監督ですが、ブレーンには科学者などの専門家がいて、ちゃんとサポートを受けています。映画に嘘は入っていません。モンサントのような多国籍企業が、何か欠点がないかと目を凝らしていますから」

岩上「監督は、TPPのような自由貿易協定に、どういう問題があるとお思いですか?」

ジョー「危険です。本当に人類の未来のために危険なのです。しかし、私たちが危険と言ったところで、ロビー団体は力を持っており、こうした法律は(議会を)通ってしまうでしょう。

 ただ、映画の冒頭で言っていることを思い出してください。我々は、第3次世界大戦下にいるのです。人類の歴史において、これほど多くの生物に被害を与えてしまった戦争はありません。それは、微生物もそうですし、植物も動物も人間もそうです。今、我々がやらなければならないのは、多国籍企業に対してお金を与えることをストップすることです。

 では、(代わりに)どこに投資するのか?

 それは、環境や未来の世代をリスペクトする(=尊重する)ところです。1円たりとも多国籍企業にお金を渡してはいけない、ということではなく、どんなに小額のお金でも、誰にあげるかを選んで欲しいと言いたいのです」

私たちの武器はお金と発言力

岩上「グローバリズムや新自由主義の支配する21世紀にあって、我々ができる抵抗のかたちはどういうものでしょうか?」

ジョー「私は、2つの武器があると考えています。1つはお金です。もう1つはコミュニケーション、発言力です。

 周りの人たちを説得するためには、言葉を使わなければなりません。私たちは発言力を持っています。もちろん、多国籍企業も、同じ2つの武器を使っています。しかし、私たちのほうが有利なのは、ずっとずっと多数であるということです。

 ひとつ、例を言いましょう。私が1番好きな環境映画は、黒澤明監督の『七人の侍』です」

岩上「『七人の侍』が環境映画というのはどういうことでしょうか?」

ジョー「舞台となる農村は、毎年毎年、収奪されています。それに対して2人の農民が、『NO!』と言うわけです。そして、7人の素浪人(すろうにん)を説得して(野武士退治を依頼し)勝利をおさめます。

 我々は、単に生物をリスペクトするだけでなくて、戦わなくてはなりません。搾取しようとする捕獲者に対して、『NO!』と言う勇気を持たなくてはならない。そういう意味で、私はこの映画をエコロジカルな映画だと思っています」

岩上「あなたの映画に込められたメッセージに、我々日本人は勇気づけられると思います」

ジョー「そう願っています。ガンバッテ(日本語で)」

岩上「『世界が食べられなくなる日』は、6月8日(土)から東京・渋谷のアップリンクで公開されます。ぜひ、皆さんも映画をご覧いただきたいと思います。ありがとうございました」(了)

■映画『世界が食べられなくなる日』公式サイト
http://www.uplink.co.jp/sekatabe/

■渋谷アップリンク
http://www.uplink.co.jp/
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「【IWJブログ】映画『世界が食べられなくなる日』の監督に遺伝子組み換え作物の危険性を聞く ~ジャン=ポール・ジョー監督、独占インタビュー!」への2件のフィードバック

  1. 都筑正次 より:

    遺伝子組み換えや、モンサントに対して今感じていることが、そのまま語られていることに感激しました。ぜひこの映画を見たい。何かを買うときや、お金を使う時にその先にあるものに注意をして安さや、見てくれや周りの評判などに惑わされないようにして、大事なものや、人や、企業などに自分のお金が回っていくように意識を高めていきたい。

  2. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見より) より:

     TPPと遺伝子組み換え作物はセットです。

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