「晩発性障害について、今後も声を上げていく」仙台高裁判決報告会 ~5.8 キツネにつままれた「仙台高裁話法」の判決(決定)を読み解き、未来を提示する緊急の判決報告会(第1回目) 2013.5.8

記事公開日:2013.5.8取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・阿部玲/奥松)

 2013年5月8日(水)17時45分より、東京都千代田区の参議院議員会館で、「5.8 キツネにつままれた『仙台高裁話法』の判決(決定)を読み解き、未来を提示する緊急の判決報告会(第1回目)」が行われた。ふくしま集団疎開裁判において、低線量被曝による晩発性障害を認めつつも、避難の権利については認めなかった仙台高裁の判決を、光前幸一弁護士と柳原敏夫弁護士は「不可解」と評し、それぞれの解釈を示しながら総括を行った。

■ハイライト

  1. 元裁判官の目から見た判決の評価
  2. 寸劇「判決前夜の3人の裁判官たちの討論風景」
  3. 科学裁判と憲法裁判から見た判決の評価
  4. 1年前、DV防止法裁判で女性が「すぐに逃げないのは緊迫感に欠ける」と救済を斥けた、疎開裁判の判決の裁判長の価値判断について<資料 DV防止法の保護命令に腰重く「裁判官は被害軽視」(東京新聞2013.9.16)

 福島第一原発事故から約3ヵ月が過ぎた2011年6月24日、ふくしま集団疎開裁判の弁護団は、福島県郡山市の小中学生14名を原告とし、郡山市に対し、年間1ミリシーベルト(以下mSv/年)以下での教育を求める仮処分を申し立てた。同年12月16日、福島地裁郡山支部はこれを却下したが、弁護団は仙台高裁に即時抗告。1年以上という異例の審理の末、2013年4月24日、仙台高裁は申し立て却下の判決を下した。

 弁護団のひとりである光前弁護士は、これまでの経過を振り返り、次のように述べた。「同じ却下でも、福島地裁郡山支部と仙台高裁では、理由がまったく違う。郡山支部は『低線量被曝による晩発性障害の実証的な裏付けはない。文部科学省が定めた20mSv/年が、暫定的な安全の目安となっている』と、現実の健康被害も晩発性障害も否定した。しかし、仙台高裁は『環境省や郡山市は1mSv/年以下を目標に除染を行っているが、現状は超えてしまっている。抗告人は、低線量の放射線に間断なくさらされている。チェルノブイリ事故後に児童に発症した健康被害に鑑みれば、長期間、継続的に放射線にさらされることで、福島第一原発周辺に居住する人々、とりわけ児童の生命・身体・健康に、ゆゆしい事態の進行が懸念される』と、晩発性障害の可能性を認めた」。

 しかし、仙台高裁がここまで健康被害を危惧しながら、疎開の必要性を認めなかったことについては、光前弁護士は「理屈の付け方が稚拙」と切り捨てた。「高裁の理由は、『除染の効果は限定的だから、郡山市民は被曝から容易には解放されない。中長期的には懸念が残るものの、ただちに不可逆的な悪影響があるとまでは、証拠上、認め難い。ただちに影響はないので、郡山市が、ここで教育活動をすることは違法ではない。集団移住による友人関係を重視したとしても、本件はあくまで個人の権利に基づく裁判なので、他人の動向を斟酌できない。疎開という言葉で裁判に訴えることはできない』というものだった。つまり『転居は誰も妨害していないから、自由に転居してください』ということだ」と述べた。

(…会員ページにつづく)

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