上杉隆 新春講演会「総選挙2012から2013へ」 2013.1.21

記事公開日:2013.1.21取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・花山/奥松)

 2013年1月21日(月)18時30分より、北海道札幌市の、かでる2・7で「上杉隆 新春講演会『総選挙2012から2013へ』」が行われた。上杉氏はマスメディア、官僚、TPP、原発、放射能問題など多くの話題に触れ、多様な言論空間を形成することが問題の進展につながると述べた。

■全編動画(20:20~ 2時間16分)

  • 講演 上杉隆氏(公益社団法人自由報道協会代表理事)
  • ゲスト 鈴木たか子氏(新党大地)
  • 日時 2013年1月21日(月)18:30~
  • 場所 かでる2・7(北海道札幌市)
  • 主催 上杉隆講演会実行委員会
  • 協賛 SHUT泊、脱原発をめざす女たちの会北海道、福島の子供たちを守る会北海道

 上杉氏は、昨年の12月16日に、衆議院総選挙の裏で何が隠されていたのか、と切り出し、「この日、世界的に重要な会議が日本で行われていた。それはIAEAの閣僚級会議で、福島県で開催され、世界的に大きなニュースになっていたが、日本ではほとんど報道されなかった」と話した。そこで交わされた覚書の内容について、「福島県内では、小児甲状腺がんの疑いなどの症例が確認されている。この、福島県民の健康管理調査などについて、なぜかWHOではなく、健康や医療とは関係のないIAEAと、福島県から業務委託された業者の立場の福島県立医大が、協力の覚書を交わした。つまり、そこには、福島県や日本政府あるいは厚生労働省、そして、なんといっても福島県の住民や一般の人々が入ってこない。住民自治、そして政治を無視した決定が行われた」と説明した。

 さらに、報道の問題点として、「ヨーロッパの新聞では、『この会議の日程は突然決まり、拙速である』『話し合いの内容が見えない。勝手に覚書を交わして、中身も決めずに外だけ決めた』などと、否定的な見解で扱われた。これに対して、日本での報道は、『いよいよIAEAが、福島県に原発事故に対応する事務所を作る』『除染や原発事故に対しては、IAEAが主導するので安心』という論調の記事ばかりだった」と述べた。

 次に、数日前に起きたアルジェリア人質事件の報道について、上杉氏は「日本のメディアだけが、とんでもない報道をしている」と指摘した。「ほとんどの報道を見ると、自分たちで取材した内容が皆無。朝日新聞も一面トップの記事は、フランスの新聞、あるいはアルジャジーラや中東のニュースサイトからの情報を使っている。そして一番驚くのは、これだけ書いて、自社の特派員のいる場所をカイロとしていることである。カイロはアルジェリアから相当離れている。ジャーナリストは現地に行くのが仕事。しかし、アルジェリアは基本的に危ない地域なので、日本のテレビ・新聞などの報道機関は、特派員に『行くな』と言っているのだ」と説明した。

 続けて、上杉氏はイラク戦争当時の状況を振り返り、「イラク戦争が開戦した時、アメリカやイギリスなど敵対国を含めた、ほとんどすべての国、日本と韓国以外のすべてのジャーナリストが、バグダードを目指した。そして、何人も亡くなり、怪我もした。にもかかわらず、事実を伝えたい一心で、皆バグダードを目指した。これがジャーナリスト。つまり、危険な仕事である。ところが同じ日、日本のテレビ・新聞の記者が何をしたかというと、全員バグダードから脱出した。日本の記者だけである」と語った。「日本の記者は、そうやって危険なところから逃げる、という評価を世界中からもらっている。ジャーナリストが真実を伝えるのではなく、政府の言いなりになって、政府の言う通りに報じるのだ」と批判した。

 鈴木氏は、衆議院総選挙への出馬について、「2世議員ということで、たくさんの批判を受けてきた。これまでの2世議員たちが、国のため、支えてくれた人たちのために、汗を流していたならば、世襲や2世議員に対するネガティブなイメージは付かなかったと思う。それならば、私が、国のために働く2世議員の新しいモデルになりたい、と考えて出馬した。実際に、この選挙戦は自分だけのためであれば、最後まで戦い抜けなかったと思う。がんばれたのは、守りたい故郷があり、故郷の大地で、額に汗して働く皆さんの生活があるからである。この選挙戦で、改めて肌身を通して教えられた」と話した。

 上杉氏から「北海道が抱える問題、特にTPPおよび泊原発の問題は、次世代の子どもたちに影響を与える。どういう考えを持っているか」と問われると、鈴木氏は「TPPに関しては、私と新党大地は一丸となって断固反対している。TPPというと、メディアでは1次産業、特に北海道の場合は酪農を守ることだけが論点にされているため、若い人たちがTPPに興味、関心を持っていない。これは、政治家の発信力の悪さだと思う。また、先進国と途上国の関係性を勉強してきたが、たとえば、アメリカは、発がん性が高くて国内では使わない農薬を、諸外国に売っている。そして、その農薬を使った農産物を第三国から輸出させている。こうしたことが、国際化と言われる中で実際に行われていることも加味して、TPPは子どもの健康や将来を考えると反対すべきである」と回答した。また、原発問題については「政治家であれば、課題に対してどうするのか考えて、指針を示すのが役割である。自民党も民主党も代替案を出さないが、新党大地だけは原発を稼働させないため、サハリンからの天然ガスをパイプラインで供給する、という代替案を出している」と述べた。

 上杉氏は、TPPに関して、「情報通信分野の完全解放を条件として、賛成である」と表明し、「それが、マスメディアのクロスオーナーシップ、再販制度、記者クラブといったものを解体するために必要である」との認識を示した。しかし、「その実現に関しては、懐疑的である」とも述べた。また、「TPPにメキシコ、カナダ、台湾、マレーシアが参加することも、日本にとってプラスに作用する」と語り、アメリカの言いなりになる危険性のある、事実上の日米2国間交渉から、本当の意味での多国間交渉になることへの期待を込めた。

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