「故障した航空機をそのまま飛ばすようなもの」後藤政志氏、原発新安全基準を批判―「原子力規制を監視する市民の会」アドバイザリーグループ 5人の元原発技術者が「新安全基準骨子案」の問題点を暴く

記事公開日:2013.4.2取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・久保元)

 2013年4月2日(火)、衆議院第二議員会館で、「『原子力規制を監視する市民の会』アドバイザリーグループ5人の元原発技術者が『新安全基準骨子案』の問題点を暴く」が開かれた。主催は、「原子力規制を監視する市民の会」。元東芝・原子炉格納容器設計者の後藤政志氏は、再稼働の見切り発車を認めようとしている原子力規制委員会の方針を批判。「故障した航空機をそのまま飛ばしているようなものである」と指摘した。

■ハイライト

  • 出席者 「原子力規制を監視する市民の会」アドバイザリーグループメンバー、小倉志郎氏(元東芝原発技術者)、後藤政志氏(元東芝原発設計技術者、元ストレステスト意見聴取会委員)、滝谷紘一氏(元原子力技術者、元原子力安全委員会事務局技術参与)、田中三彦氏(元パブコック日立原発設計技術者、元国会事故調査委員会委員)、藤原節男氏(元三菱重工原発設計技術者、元原子力安全基盤機構検査員) 他
  • 日時 2013年4月2日(火)
  • 場所 衆議院第二議員会館(東京都千代田区)
  • 主催 原子力規制を監視する市民の会

滝谷紘一氏の発言要旨

 重大事故時における原発敷地境界の線量評価法律規則への適合性について。原子炉設置が適切かどうかは、立地審査指針で評価される。現在の目安線量は100mSv(ミリシーベルト)とされている。一方、福島第一原発での敷地境界線量は、事故直後から3月末までの20日間で最大値234mSvを記録。さらに、事故直後の4月1日から翌年3月31日までの1年間では956mSvを記録した。つまり、福島第一原発は、立地の不適応を自ら実証したことになる。

 新安全基準骨子案では、「総放出量は国の要求値以下」と記載しているが、敷地境界線量評価には言及していない。検討チームの配布資料では「敷地境界での線量評価は、安全性向上のための評価の中で、格納容器の機能が維持されている場合およびフィルターベントによる大気放出の場合に行う」と記載し、限定条件付きの評価と位置づけている。また、安全性向上のための評価は、電力事業者が自主的に実施し届け出ることとしている。こういう状況を私は看過できない。限定条件なしでの重大事故境界線量は、基準内に収まらないから限定条件を付けたのだろう。「立地条件の不適合隠し」ではないか。

 これを裏付けるような検討ができないかと思い、私は重大事故時における敷地境界線量を推算した。ベントフィルターを通過してしまう希ガスに注目し、炉内に蓄積された全量が排気筒から放出されるケースを想定した。その結果、BWR(沸騰水型軽水炉)、PWR(加圧水型軽水炉)ともに、2000~9000mSvに達することがわかった。すなわち、立地審査指針の100mSvを大幅に超過する。単純な計算だが、この推算レベルのベントをするということになる。私は、立地条件は不適合の疑いがあると思っている。原子力規制委員会に対し、立地許可申請の安全審査の計算手法において、詳細な線量評価の実施を求めていきたい。

小倉志郎氏の発言要旨

 シビアアクシデントとは、「設計基準事象を大幅に超える事象であって、安全設計の評価上、想定された手段では適切な炉心の冷却または反応炉の制御ができない状態であり、その結果、炉心の著しい損傷に至る事象、これをシビアアクシデントという」と定義されている。私は「シビアアクシデント対策」や、これについての「審査指針の骨子」はおかしいと思う。シビアアクシデントが起きたら、住民は必ず被害を受ける。シビアアクシデントがあることを前提にした「対策」や「骨子」の議論をするのは、私は間違っていると思う。

 僕が技術者だった頃、どんなことがあっても燃料棒の被覆管の健全性を保ち、冷却できるようにすることが求められた。シビアアクシデントは許されていなかった。ところが、2006年に、新しい耐震設計審査指針ができた際に、原子力安全・保安院から電力各社に対し「残余のリスク」という形で紛れ込んできた。すなわち「シビアアクシデントが発生したときの評価をしなさい」という指示が出た。その段階で、日本の安全規制はなくなったに等しい。シビアアクシデントを許すという段階で、規制しないのと同じである。設計審査指針には、「シビアアクシデント対策」などと書かずに、「シビアアクシデントは許さない」という記述を入れるべきである。そうでないと、基準の体(てい)を成さない。

田中三彦氏の発言要旨

 新安全基準骨子案を詳しく読むと、「これはいけないんじゃないか」と腹の立つことがいっぱいある。実際に設計していない人たちの絵空事みたいな話ばかりである。私はひとつの矛盾を感じている。我々のような技術者の見解が、新安全基準を補強することはあるかもしれない。もし、新安全基準をツールとし、再稼働に使われるのであれば躊躇してしまう。福島事故から学ばなければならないのは、やはり「止める」ということだ。再稼働を止めていく方向に舵を切らないと、事故から何を学んだのかわからない。舵を切らないための新基準策定には根本的に反対である。

 特に問題なのは、敦賀原発1号機と美浜原発1号機である。いずれも、日本に原発の構造技術基準というものが存在していない頃に造られた古い原発である。従って、化学プラントの技術基準をそのまま使用して造られている。こういうものに新安全基準を適用するのは論外である。日本に原発の構造技術基準(告示501号)ができたのは1970年である。敦賀原発1号機と美浜原発1号機にはこれが適用されていない。告示501号は、アメリカが1963年に策定した基準を和訳して策定したもので、誤訳や意味が曖昧なままの箇所も存在した。日本は1970年にようやく原発の構造基準を定めたが、アメリカは翌1971年に基準を大幅改定した。日本はそれとは関係なく1980年までアメリカの1963年版に相当する古い基準が延々と使われたという事実がある。

 驚くべきことに、日本は1979年まで耐震設計審査指針を一切持っていなかった。それまでに設計された原発は恐ろしく耐震性が低いということである。1980年代までに建設された原発に新安全基準を適用してはいけない。古い原発には、設計者の意図が十分に理解されていない設備やシステムが存在する。しかも当時の図面すら残っていない。パッチワークのように、後から色んなものをつけていく。福島事故でも、操作方法がわからない設備が複数あった。機器やコンピューター、制御システムが古いことや各施設の脆化など、老朽化の問題もある。これを個別に見ていくのではなく、まずは1980年代までに造られた十数機の原発は全部「終わり」(廃炉)とし、その上で話をすべきだ。

藤原節男氏の発言要旨

 私は、福島第一原発3号機の爆発について、1回目は水素爆発で、2回目と3回目は核爆発だと推定している。多くの専門家も、「3号機は核爆発だ」と言っているのに、今回の新安全基準骨子案は、核爆発や使用済核燃料プールがどうなったかという話も何ら書かれていない、旧態依然とした基準のままである。

 3号機が核爆発である理由は、(1)水素爆発の場合は白煙しか出ない。(2)プルトニウムが米国まで飛散。爆発で高温になりプルトニウムが気化した可能性。(3)3号機の屋根が超高温でひん曲がっている。(4)使用済燃料プールオペレーションフロア上で燃料棒被覆管の破片を発見。水素爆発は水面上で発生するので、燃料棒に損傷があるのはおかしい。(5)爆発でできたキノコ雲から落下してきた破片が巨大。(6)4号機オペレーションフロアにおける露天の工事で、3号機側に衝立(ついたて)を立てている。3号機側の高放射線を遮へいするためと東京電力は説明している。以上6つの理由から核爆発であると判断した。核爆発の防止対策が書かれていない新基準はダメである。

後藤政志氏の講演要旨

 「ベント前提」の規制基準は間違っている。ベントの際の放射性物質捕捉は、フィルター性能に依存するし、フィルターは故障もする。そもそも、格納容器の大きさが小さすぎるということが問題である。本来、格納容器とは、配管が切れたときに、放射性物質を中に閉じ込める機能を持つ。それが機能しなくなるのは、「破綻」しているということ。容器設計から変えなければならない。

 スロッシング(地震動による液体の揺れや移動)の問題も、非常に重要である。基本的に、これを耐震設計の中に入れなければ、物(建物・設備)は壊れなくても、設備が機能しなくなる恐れがある。原発施設への航空機の衝突事故やテロも当然考慮すべきである。確率論で見ることはやめてほしい。「事故が起こる可能性は小さい」というように、確率論をベースにするルールは非常におかしい。

 新安全基準骨子案では、「原子力規制の信頼性を『より』高めるため」と称し、重要設備の設置に猶予期間を設けているが、これは最悪である。発生する可能性が小さくても大規模な事故に繋がる可能性は確実に存在する。猶予期間を設けて運転してしまうということは、故障した航空機をそのまま飛ばすのと全く同じ。こういうものをこのまま認めるとすると、原子力規制の根幹を揺るがすことになる。許しがたい。

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