【IWJブログ】(岩上安身緊急号外)井伊直弼は殺され、吉田茂は生き延びた。安倍晋三はどうなるだろうか。 2013.3.16

記事公開日:2013.3.16 テキスト
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(岩上安身)

特集 TPP問題

 日米関係とは、つまるところ不平等条約の押しつけと、それに対する屈従、抵抗の歴史である。

 TPPを「第三の開国」とはよく言ったものだ。これは第三の不平等条約の押しつけ、国家主権のさらなる喪失、米国への隷属の深化に他ならない。

 「第一の開国」は、1858年(安政5年)に結ばれた日米修好通商条約だった。

 1853年(嘉永6年)、ペリーが四隻の黒船とともに来航し、「開国」を要求してから5年後のことである。日本側に関税自主権のない不平等条約であった。

 なぜ、幕府はアメリカに押しきられて不平等条約を結んでしまったのか。

 アメリカの総領事タウンゼント・ハリスが、清に対して侵略戦争を行なっていたイギリス、そしてフランスなどが、日本を侵略する可能性がある、と巧みに脅し、安全保障のためにアメリカと条約を結ぶ必要性がある、などと説いたのである。今日の日本の安全保障のために日米同盟の深化が必須であり、そのためにTPPの締結が必要、というロジックとほとんど変わらない。

 勅許を得ずして日米修好通商条約を結んだとして、大老・井伊直弼は、国内の攘夷派の反発を買い、それに対して大弾圧で応じた。世にいう「安政の大獄」で、吉田松陰らも処刑された。その井伊は1860年に暗殺された。「桜田門外の変」である。

 「第二の開国」は、言うまでもなく、米軍の占領とその継続を指す。1945年の太平洋戦争の敗北、ポツダム宣言受諾と無条件降伏、米軍による日本占領を経て、1951年9月8日にサンフランシスコ講和条約とともに日米安保条約が結ばれた。講和条約の締結が終わり、日本は独立国家として主権を回復したことになっているが、日米安保と日米地位協定(当時は行政協定)の定めによって、米軍は撤兵せず、日本に駐留し続けた。

 外国軍によって占領が継続されている日本が、独立国であるはずがない。日本はみせかけだけの半独立国、事実上の保護国に他ならない。

 日米安保条約の目的が米軍による日本の防衛である、というのも眉唾である。米側の代表をつとめたジョン・フォスター・ダレス(のちの国務長官)は、日米安保の目的について、「我々が望む数の兵力を、望む場所に、望む期間だけ駐留させる権利を確保させること」と述べている。

 アメリカはいつ、どこで安保条約に調印するか、9月8日の講和条約調印の前日まで日本側代表団に教えなかった。

 結局、この安保条約には、当時の首相・吉田茂が一人でサインした。

 米側代表団の一人、アリソン(のちの駐日大使)は「もし日米安保条約が調印されたら、日本側代表団の少なくとも一人は確実に殺されるだろう」と言ったが、吉田は殺されることもなく、戦後保守本流の礎を作った大政治家などとして、今なお持ち上げられている。

 かくて日米安保体制は、「戦後国体」として、戦後70年のうちに深く根をおろし、定着してしまったかにみえる。

 「第三の開国」たるTPPは、「神聖不可侵」の「戦後国体」の如き日米安保体制の上に、米国の権力と資本にとってさらに「都合のよい国」「使い勝手のよい国」に日本を改造するための究極の不平等条約である。

 関税自主権は再び失われる。司法権も大幅に損なわれる。国内の各政策には、米国からの干渉・介入が常態化する。「内国民待遇」を保証された米国発のグローバル資本は、国土をも手に入れていく。法制度だけでなく、文化も言語も米国に都合のよいものに置き換えられ、移民を押しつけられて、「国民」は入れ替えられていく。

 かくて、グローバル資本の専制のもとに、独立した主権を持つ国民国家としての「日本」は失われてしまう。


 IWJはTPP問題について、菅政権以降、TPPを慎重に考える会を始め、キーパーソンへのインタビューや抗議行動など、繰り返し取り上げてきており、中継してきた動画配信の数は200本を超えます。これらは、ほとんど既存メディアで報じられることはなく、IWJがほぼ独走して報じてきたものです。

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「【IWJブログ】(岩上安身緊急号外)井伊直弼は殺され、吉田茂は生き延びた。安倍晋三はどうなるだろうか。」への1件のフィードバック

  1. ponta より:

    所詮黄色人種であるアジア人は白人に対して劣位にあるのです。それでも今まで日本人はアジアの中ではよく頑張ってきた方だと思います。フィリピンの姿を見るとアメリカ企業にいかに搾取され続けて来たがよくわかります。また、中南米の国々もアメリカの裏庭としてよく耐えてきたと思います。ある中米人は、国会の中にもアメリカの手下が議員として入り込んで国を動かしていると言っていました。それは国民の誰もが知っている事実でした。国家とは一体なんでしょうか?
    尊厳をなくした母国の姿はもう見たくありません。日本人をやめようかと思うこのごろです。
    尚、モンサントは日本のコメを狙っています。そのために22年前に三菱化成に共同研究を持ちかけてきました。
    TPPで日本のコメもいつかGMOになるかもしれません。

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