【岩上安身のツイ録】 イエズス会の狙い「植民帝国の拡大」は現代にも通ずる 2013.3.11

記事公開日:2013.3.11 テキスト
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 走りながら充電するのが、僕らのような 仕事の基本スタイル。

 ほんの少しの合間を見つけて本を読む。

 昨夜から、藤木久志著『天下統一と朝鮮侵略〜織田・豊臣政権の実像』を読んでいる。

 前半は信長の苛烈な一向一揆に対する戦争・ジェノサイド。根切り、撫で切り。凄絶そのもの。これが信長の実像。

 自らが地上の神であることを信長が宣言した、その19日後、明智光秀に討たれる。本能寺の変。その光秀も秀吉に討たれる。西国を制した秀吉は、東国に根を張った徳川家康と睨み合い、停戦に。その状態のまま、関白となり、西方に侵略の踵を向け、九州を攻め、その勢いで朝鮮侵略を図る。

 この際、秀吉が手なずけようとしたのは、九州に集中していたキリシタンと、小西行長、高山右近、黒田如水らキリシタン大名。朝鮮から明への侵略に彼らを動員しようと目論んだのだが、その背景をなしたのはイエズス会の宣教師らとローマ教皇、ポルトガル国王の「植民帝国の拡大」の企みだった。

 イエズス会の宣教師コエリョやフロイスらは、大阪城中に秀吉を訪ね、「大陸侵略のあかつきには、九州の全キリシタン大名を秀吉に味方させようとか、ポルトガル船をもって協力しようと申し出」た。それは「いかにも植民帝国を背景とするイエズス会らしい露骨なものであった」と藤木氏は記す。

 イエズス会の狙いは、まず大名・領主など、身分の高い富裕層を改宗させ、次に「奴隷のような農民」をひとまとめにキリシタンにからめ取ることだった。ポルトガル側は、鉄砲(最新兵器)を供給すること引き換えに、高価な銀、漆器、男女の奴隷を得るという略奪貿易で莫大な利益をあげた。

 この構図、今日にも当てはまるようで気味が悪い。新自由主義というドグマを掲げたシカゴ学派は、さしずめ現代の「イエズス会」である。ミサイル防衛網などを押し付けられて、銀や漆器の代わりに略奪されているのは、金融や保険の市場(医療保険分野のアフラックの独占)、知財の強化などだ。

 だが、現代と少々違うのは、秀吉がキリシタン禁制を出す点である。日本人を奴隷買取りしてきた点も含めて詰問し、キリスト教の布教禁制と貿易政策を切り離す。秀吉の政治的実績を過剰に評価する気は全くないが(特に朝鮮半島侵略とその際の容赦ない虐殺・略奪・拉致・略取は信じがたいほど残酷で到底許されるものではない)、こうした西洋からの圧力や干渉を排除できるだけの実権があったわけだ。そんな権力がいまの日本にはまったくみあたらない。

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