【IWJブログ:地球温暖化に対する懐疑論 横浜国立大学教授 伊藤公紀氏インタビュー】 2013.2.14

記事公開日:2013.2.18 テキスト
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 2013年2月14日(木)15時30分から、神奈川県横浜市の横浜国立大学で、岩上安身が伊藤公紀横浜国立大教授へインタビューを行った。伊藤教授は横浜国大環境情報研究院教授。環境物理化学、環境計測科学が専門。以下、インタビューの実況ツイートを掲載します。

インタビューの本記事はこちらです。

■以下、インタビュー実況ツイートのまとめに加筆・訂正をしたものを掲載します。

岩上安身「『地球温暖化―埋まってきたジグソーパズル』や『地球温暖化論のウソとワナ』等、伊藤先生の著書を拝読致しました。私は、クライメイトゲート事件で興味を持ちまして、取材を行いました。温暖化懐疑派と支持派で激しい論争が起こり、いわゆる炎上状態になりました。私は、地球温暖化の話をするとき、どうして、皆太陽のことを言わないのか、と思っていた。そこで、伊藤先生に出会いました」

伊藤教授「IPCCの報告書には問題点がいくつかある。過去の気温データ、ホッケースティック曲線が間違っているなど。気候変動は要因が多く、土地の利用が大きな影響を持ちます。

 原子力の代替エネルギーに石炭を取り上げたい。日本の技術が貢献できる。

 気候問題リテラシーを身につけることが大事です。20世紀の気温上昇の後半部分が、人為現象というのはおかしい。不正確な報道や情報が多い。

 IPCC報告をもとに、CO2削減が叫ばれているが、土台となる情報に疑問も生じている。過去の気温データ、ホッケースティック曲線の破綻。クライメートゲート事件。グレーシャーゲート事件など。

 ホッケースティック曲線の破綻について。今でも、環境省の一部はこれを使っている。グラフの形は、統計処理の仕方で変わってしまう。数学の勉強はしたが、統計解析の専門家はいなかった。マッキンタイアの『ホッケースティック幻想』という本があります。樹木試料の履歴や個性を無視していたり、表皮が剥げて傷ができたあとに成長した樹木を使ったりした。農業牧畜の影響で、湖の水流が変わった。更に、温度が逆に引用されている。学生にやらせたのではないか。解析の失敗を認めようとしなかったのが問題です。有名になって、引っ込みがつかなくなった。大学ぐるみで保護しよう、となった。

 クライメイトゲート事件について。IPCCの報告書の主要な著者が、データ操作や論文レビューへの干渉をしていた。情報が流出したが、誰かはわからない。温度計データと年輪からの推定気温データを1980年付近でつなぎ、後者の低下傾向を隠した」

岩上「温暖化は正しいという人がいるが?」

伊藤教授「不正とみなすかの解釈。ネイチャーの投稿規定で、面白い方がいいというのがある。

 グレーシャーゲート事件について。これは、IPCC報告書におけるヒマラヤ氷河が、2035年までに消失するという情報についての事件です。ヒマラヤ氷河は、実際1971年から2001年までで、約700メートル後退。以降は後退減速傾向。情報ロンダリングにより、専門家が書いたのではない。また専門家のチェックがない。IPCCの報告書は、専門家がチェックするが、指摘があっても訂正なし。審査員より著者が偉い。

 森林の脆弱性を訴えたアマゾンゲートというものもあります。また、農業危機のアフリカゲート、サーモンゲート。国土の半分以上が海面以下としたオランダゲート。飲料水の減少を論じたウォーターゲートなど、同様な事情はあちこちの分野にある。

 本当の気温変化はどうか。気温測定の問題だが、地表気温とは何かというと、『一般基準がない』というのがNASAの答え。通常地上2メートルで測るが、誤差が激しく、夜間の最低気温の変化が誇張される。

 百葉箱は、漆喰やペンキの種類で測定結果が変わってしまう。ラテックスペンキは、赤外線を吸収して温度が上がる。現場をみないとわからない。

 観測サイトは、建物の近さでランク付けされている。ワッツの調査では、全米1200箇所の内、大半が低い。近藤純正東北大名誉教授によると、日本には適正サイトが寿都、宮古、室戸岬しかない。

 都市化の影響の見積もり。NASAは、灯火の明るさと都市化による気温上昇が対応するとした。暖房の影響で、冬だけ暖かくなる。それを地球温暖化のデータに使うのはおかしい。

 信頼性の高いデータは、ある程度は存在する。20世紀は、温度計データを、木に竹を継ぐように使っている。

 1922年の新聞に、『北極圏が温暖化して困っている』とある。一旦上がったものが下がって、また上がっていると見るべき。森林限界の変化、海底コアの分析。中世温暖期の海表面温度は、現在と同じくらいだったようだ。

 大規模な測定の例。世界の海洋に、フロートが3000個ぐらい浮いている。衛星モニターがあり、定点は必要ない。1984年~2006年において、海表面温度はどの海盆でも上昇。平均値0.28℃。

 大気と海の間における、熱のやり取りも解析している。衛星で気温を測定。酸素分子のマイクロ波を利用。下部対流面5k以下の平均。1980年~2000年に0.3~0.4上昇、ここ15年は上昇なし。

 最近の研究では、海表面温度の上昇は、自然変動といわれている。太陽の光度変化と、火山噴火の影響、二酸化炭素排出量をあわせると気温変化に合う、とIPCCはした。

 海表面温度の変化の要因は、1.大気-海洋間の熱移動の減少、2.海洋の垂直方向の熱移動の増加、3.海洋の水平方向の熱移動は少ないなどから、海表面温度の上昇は、海洋内部の自然変動であるといえる。

 CO2が2倍になると、気温は何度上がるか? モデルと観測の乖離。気候の人たちは、モデルよりも観測がおかしいとしたがる傾向にある。NASAのJ・ハンセン。気候温暖化の父。半分活動家。

 気候感度について。気温の上昇=気候感度×気候強制力。CO2が2倍になると、気候強制力は3.7w/㎡」

岩上「2度上がると、どのような影響があるのか?」

伊藤教授「一種の臨界値というか、象徴。農作物やGDPの見積もりをした人がおり、2度以内ならいい影響がある、というシミュレーションもある。

 水蒸気と雲のフィードバックについて。90%は水が暖めている。CO2が10倍という地質時代もあったので、熱暴走はない。低い雲は冷やし、高い雲は暖める。複雑なので観測は最近。

 海洋-大気大循環モデルについて。非平衡熱力学は、今日に至るまで完成していない。プリゴジーヌは、平衡から少し離れた熱力学を完成させたが、地球は平衡からうんと遠い。平衡から離れていない場合、熱の伝導だけで済む。

 最大エントロピー生成は、非平衡熱力学の1つの案。熱の移動が一番効率的な構造になるのが、主導原理になるのではないか。平衡から少し離れた系はエントロピーは最小。離れた系は大きくなる。

 気候変動と要因の診断について。シベリアの永久凍土の溶けた原因を、ゴアはCO2による温暖化としたが、赤祖父先生は、上に建てた建物の暖房で溶けただけとした。キリマンジャロ山の氷河の後退問題。湿度低下による蒸発。湿度低下の理由として、ふもとの木を切ったせいだという説もある。

 ハリケーンが温暖化で起きると『不都合な真実』にあるが、ハリケーンの上陸数は増えていない。海面温度上昇と熱帯低気圧の増加に関係あるというが、誤差が多い観測による。ハリケーンの被害が増えた理由は、今は海岸地帯や低地に進出している。過去も被害は大きかった。

 海氷面積について。広いので、場所個々で要因が違う。北極温暖化の原因がエアロゾル、煤のためという説。煤は、中国の石炭、ロシアの山火事由来という説がある。ヒマラヤ氷河の場合。汚染物を餌にする微生物の活動で表面が融解している」

岩上「一時情報の検証が必要。データ化されたものは、処理の仕方によって変わってしまう」

伊藤教授「気候は、診断も予測もできない。個別地域に何も言えないので、グローバルにしかできない。気温の変化は合わせられるが、降水量はできない」

岩上「最初に、間違った情報が流れ始めると、途中で検証が加えられない限り、大きな世論や国策になって止められない。これは怖い。早い段階で、抵抗する動き、検証する動きが常に必要ですね」

伊藤教授「日本の行政は縦割りで連絡体制が悪い。欧米などでは、政治家がドクターを持っているのは当たり前です。政治家にドクターをとらせないかと思っている。いい動きにドミノ倒しになる可能性もあります」

岩上「去年から、尖閣の問題が浮上し、ドミノ倒しが始まっている。戦争が始まるのではないか、憲法が改正されるのではないか、と情報のドミノ倒しが起こっている。次回は、先生の専門分野である太陽の影響をお聞きします。今日はどうもありがとうございました」(了)

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