インタビュー配信からIWJ取材結果をまとめて再構成!~都知事選重要争点の財源問題を徹底議論!山本太郎候補の「都債15兆円起債! 1400万都民に現金給付10万円!」は実現可能か!? 2020.7.3

記事公開日:2020.7.3 テキスト
このエントリーをはてなブックマークに追加

 6月30日の岩上安身による明石順平氏インタビューでは、7月5日に投開票を迎える東京都知事選を目前に、その行方を探るため、岩上安身と明石順平氏による議論が行われた。

 都知事選候補の政策比較では、6月27日に「Choose Life Project」が配信した都知事選候補討論会から、宇都宮健児氏、小野泰輔氏、小池百合子氏、山本太郎氏4人に対するアンケートへの回答を比較。宇都宮氏と山本氏の回答が10項目すべてでまったく同じになったことや、小池氏の公約が財源などに触れない曖昧な標語ばかりであることから、都知事選の最重要論点のひとつは「財源」であるとして議論は進んだ。

 財源に関して特に今回、耳目を集めたのは、山本太郎氏の「コロナ対策として総額15兆円の都債を発行する」との発言である。告示前にされたこの発言に対して、絶賛する声、可能性を疑問視する声など賛否両論が広がり、話題となった。そのため岩上安身とIWJは、山本太郎氏自身から、その主張を聞くべく、インタビューの申し込みを複数回にわたって行ったが、その都度断られ続けた。山本氏とIWJの付き合いは長いが、山本氏がMMT論に傾いて以降、山本氏に直接、取材をすることができなくなっている。今回もまた、同様だった。

 6月17日にIWJで配信した「宇都宮健児氏インタビュー」でも、他の都知事選候補との比較の中で山本太郎氏の「都債15兆円」発言を取り上げた際、岩上安身がこれは不可能なのではないかと、疑問視した発言を巡っては、山本太郎氏やれいわ新選組を支持する方々から反論が寄せられた。そのため岩上安身とIWJは、山本太郎氏自身から、その主張を聞くべく、インタビューの申し込みを複数回にわたって行ったが、その都度、断られ続けた。山本氏とIWJのつきあいは長いが、山本氏がMMT理論に傾いて以降、山本氏に直接、取材をすることができなくなっている。今回もまた同様だった。

 そこで、今回の明石氏との議論の中では、都債(地方債)に関連する規定をひとつひとつ丁寧に取材、立候補後の山本太郎氏の発言等と合わせて徹底検証を行うことになった。

山本氏は総務省に確認して「東京都が20兆円の地方債発行が可能」との見解を示したが、IWJによる総務省への取材では事実確認できず! 地方財政法第五条も確認!

 山本氏が「東京都は20兆円の地方債発行が可能」、「総務省に確認した」と発言していることについて、IWJは総務省地方債課に問い合わせた。

 しかし、取材に応じた総務省地方債課の前田氏は「少なくとも、私はそのような話を聞いておりません」とし、「東京都は財政上可能だとか不可能だとかは、案件を精査しないとお返事ができません」、「地方債は、使途については厳しく制限されています」との回答に留まった。

 前田氏の「地方債の使途については厳しく制限されています」との発言は、地方財政法第五条による制限を示している。地方財政法第五条では、地方債の使途をいわゆるインフラ事業の経費に限定している。

 地方財政法の該当部、第五条一項は以下のとおり。

(地方債の制限)
第五条の一
 地方公共団体の歳出は、地方債以外の歳入をもつて、その財源としなければならない。ただし、次に掲げる場合においては、地方債をもつてその財源とすることができる。
一 交通事業、ガス事業、水道事業その他地方公共団体の行う企業(以下「公営企業」という。)に要する経費の財源とする場合
二 出資金及び貸付金の財源とする場合(出資又は貸付けを目的として土地又は物件を買収するために要する経費の財源とする場合を含む。)
三 地方債の借換えのために要する経費の財源とする場合
四 災害応急事業費、災害復旧事業費及び災害救助事業費の財源とする場合
五 学校その他の文教施設、保育所その他の厚生施設、消防施設、道路、河川、港湾その他の土木施設等の公共施設又は公用施設の建設事業費(公共的団体又は国若しくは地方公共団体が出資している法人で政令で定めるものが設置する公共施設の建設事業に係る負担又は助成に要する経費を含む。)及び公共用若しくは公用に供する土地又はその代替地としてあらかじめ取得する土地の購入費(当該土地に関する所有権以外の権利を取得するために要する経費を含む。)の財源とする場合

 インタビュー中の議論において、岩上安身と明石順平氏は次のようにコメントした。

岩上「山本さんはコロナ対策で15兆円の地方債を発行すると。後の負担はどうするのか?」

明石氏「負担の話は必ずセットでしなければなりません」

岩上「健全財政やっている自治体は、黒字は東京だけ。トントンは愛知県のみ、あとの45道府県は全部赤字です」

岩上「自治体の債務は結局は住民の税負担になる」

明石氏「とにかく負担の話をしない。すると叩く」

山本氏は「コロナ禍を災害とみなして地方債を発行」と発言! 災害対策基本法二条の解釈を巡り、IWJは内閣府と総務省へ電話取材!

 山本氏は「地方財政法第五条一項では地方債を発行できる用途として、その四号に『災害応急事業費、災害復旧事業費及び災害救助事業費の財源とする場合』と書かれています」、「政府は、災害の定義(災害対策基本法第二条)の『異常な自然現象』に新型コロナウイルス感染症が含まれるか否かについては答弁をしていません」、「国の方針とは異なるにしても、都として『災害(異常な自然現象)』とみなし、地方債を発行していく考えです」と発言している。

 災害の定義が示されている、災害対策基本法二条は以下のとおり。

災害対策基本法
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 災害 暴風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、崖崩れ、土石流、高潮、地震、津波、噴火、地滑りその他の異常な自然現象又は大規模な火事若しくは爆発その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する政令で定める原因により生ずる被害をいう。

 IWJでは内閣府へ取材し、「災害関連法に新型コロナが当てはまるのか」を問い合わせた。

 しかし、内閣法制局には「お答えできない」との回答しか得られず、代わって内閣府防災担当へ取材を行った。

 取材に応じた内閣府防災担当の宮崎氏は「結論としては『当てはまらない』ということを内閣府防災担当として答えている」と回答した。

 さらに、「新型コロナ対策として地方債を起債できるのか?」という点を確認するため、IWJでは総務省に問い合わせた。取材には総務省地方債課の橋本氏が応じた。

IWJ「コロナ対策で地方債を起債できるか?」

橋本氏「地方財政法で、公共事業費など、建設事業に限定されている。今の状態では、コロナでは起債できないと承知している」

IWJ「地方財政法第五条一項四号で地方債が起債された実績はありますか?」

橋本氏「あります。直近では、(激甚災害に指定された)熊本地震などです」

IWJ「コロナを『災害』に含められるのですか?」

橋本氏「今のところ(総務省では)災害には含めていません」

IWJ「法解釈の変更でできるのか?」

橋本氏「含めるために、必要な法解釈や法改正がありえるのか、ということから検討が必要です」

IWJ「都知事・都議会が独自の法解釈で、国の災害救助法や地方財政法を超える条例を作れるのですか?」

橋本氏「それは難しい。都か国会からご要望をいただいて、総務省で案を作成し、国会で審議する、という順番になる」

 インタビュー中、取材結果を踏まえて岩上安身と明石順平氏は次のようにコメントした。

岩上「災害に対しての法体系、感染症に対する法体系は別々に存在しています」

明石氏「別次元の話です」

岩上「一緒くたにして論じているが、実は、地方財政法の縛りと、災害対策基本法、災害救助法の法体系の話は、別々に論議しなければならないのではないかと思います」

明石氏「同じ『災害』という言葉を使っているから同じ意味をなす、というロジックですが、出発地点で政府の方が法解釈を示してしまっているので無理と断言すべきでしょうね」(4月28日の衆議院予算委員会において、新型コロナ担当の西村康稔経済再生相は、コロナ対策に災害救助法を使うべきではないかという立憲民主党枝野幸男氏の質問に対して、「法制局と早速相談したが、災害救助法の災害と読むのは難しいという判断だ」と答弁した)

岩上「山本氏以外にも、コロナを災害に入れてもいいのではないかという人もいる。宇都宮氏やその側近も、そのように考えているようです。しかし、国会答弁では否定されてしまっている。これはいかんともしがたい。どうしてもというなら、正式な手続きを踏んで法改正に臨むべきでしょう」

感染症は「異常な自然現象」として災害に含まれる!? IWJは総務省、東京都、立憲民主党枝野氏にも取材!

 山本氏は自身の東京都知事候補特設サイトの中で、「政府は、災害の定義(災害対策基本法第二条)の『異常な自然現象』に新型コロナウイルス感染症が含まれるか否かについては答弁をしていません」、「内閣法制局にも確認しましたが、
新型コロナウイルス感染症が『異常な自然現象』に該当するか否かについては判断していないということです」、「私達は『新型コロナウイルス』について、仮に国の方針とは異なるにしても、東京都として『災害(異常な自然現象)』とみなし、この災害対策のための地方債を新型コロナ債として発行していく考えです」と述べている。

 IWJでは、新型コロナウイルスの感染拡大を異常な自然現象や災害として扱えるかを総務省と東京都に対し取材した。

 総務省への問い合わせは、まずIWJからメールで質問文を送り、担当となる消防庁防災課の小森氏から電話で回答を得た。

IWJ「災害対策基本法第二条で規定されている災害の定義にある『異常な自然現象』に今回のコロナ感染症など感染症の蔓延は当てはまるでしょうか?

小森氏「感染症は災害対策基本法の災害に当てはまるとは考えておりません。
災害には感染症は含まないと解釈しています」

IWJ「あるいは、同じく第二条の『大規模な火事若しくは爆発その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する政令で定める原因』にコロナ被害は当てはまるでしょうか?」

小森氏「同じくコロナ被害は当てはまらないと考えております」

IWJ「感染症の蔓延が過去に災害とみなされた例はあるのでしょうか?」

小森氏「ありません。(感染症については)基本的には新型インフルエンザの特措法などほかの法律でみているかたちです」

 東京都への問い合わせは、担当となる総合防災部防災管理課へ電話で行った。東京都は「東京都防災ホームページ」において東京都新型コロナウイルス感染症対策本部からの告知を掲載するなど新型コロナウイルス対策を取り扱っている。一見すれば、新型コロナウイルス感染症を災害と認めているからこそ「防災」に含めているように見える。

 東京都への問い合わせは、担当となる総合防災部防災管理課へ電話で行い、竹之内氏から回答を得た。

IWJ「東京都防災ホームページにおいてコロナ感染拡大防止が取り扱われていますが、都として『災害』と認めたから『防災』としているのですか」

竹之内氏「いえ、防災ホームページは、新型インフルエンザ等も総合防災部の所管として扱っていました。条例の制定により総合防災部の所管となりました」

IWJ「総合防災部では、災害とされないことも扱うのか?」

竹之内氏「はい、そうです」

IWJ「災害・防災として、防災ホームページで扱うことになるプロセスは?」

竹之内氏「条例の制定により、総合防災部の所管となりました」

IWJ「東京都知事選候補の山本太郎氏は『東京都で独自に災害指定する』といっているが、前例は?」

竹之内「都道府県単位で災害指定を行うことは、おそらく(前例は)ないと思います」

 「防災ホームページ」の名で災害以外を扱っていることには違和感を覚えなくもないが、「都民への注意喚起」という重要な目的のため、告知窓口を一元化することは合理的とも考えられる。

 また、山本氏は特設サイトの中で「コロナを政府が災害に政令で指定しろという意見は私達独自のものでもありません」、「国会においても、政府に対して野党第一党の立憲民主党の代表の枝野幸男衆議院議員も含めて3人の国会議員が新型コロナウイルス感染症の拡大と拡大を防ぐための社会経済活動の停滞について、災害対策基本法の「災害」を適用すべきだ、と質問しています」とも述べている。

 救助の種類等を示す災害救助法は以下のとおり。第四項第七条にある「生業に必要な資金、器具又は資料の給与又は貸与」があることから、「災害」指定することによって、地方債で10万円給付などが可能になるという考え方である。

第四条 救助の種類は、次のとおりとする。
 一 避難所及び応急仮設住宅の供与
 二 炊き出しその他による食品の給与及び飲料水の供給
 三 被服、寝具その他生活必需品の給与又は貸与
 四 医療及び助産
 五 被災者の救出
 六 被災した住宅の応急修理
 七 生業に必要な資金、器具又は資料の給与又は貸与
 八 学用品の給与
 九 埋葬
 十 前各号に規定するもののほか、政令で定めるもの

 IWJでは立憲民主党代表枝野幸男氏の政策秘書である神吉氏に、メールで以下の質問を送付し、回答を得た。

IWJ「第1点は、枝野代表は、4月28日の衆議院予算委員会で、『新型コロナウイルス感染症の拡大と拡大を防ぐための社会経済活動の停滞』について、災害対策基本法第二条『災害』を適用すべきだと発言されたことに関してです。

 これは、あくまで国政の場での発言であり、『コロナは災害である』と法解釈を変更することで、この災害救助法を根拠として、国として、施策を打つべきであるとの趣旨の発言という解釈でよろしいでしょうか。

 山本太郎氏の主張している、コロナが災害に認定されたら、地方債を発行して、コロナ対策費にあてることが可能という主張については、同意しているのでしょうか。同意できないとお考えでしょうか。その理由もお聞かせください」

神吉氏「ご指摘の衆議院予算委員会の発言は事実、山本氏の発言については
承知しておりません」

IWJ「第2点は、仮にコロナが『災害』に指定されたとして、この点がクリアされたとしても、地方債の発行は、地方財政法により、インフラ建設に限られるといった厳しい使途制限があり、コロナ対策で、地方債を発行し現金給付に利用することは、事実上不可能なのではないでしょうか。

 災害指定すべき、という識者の中にも、法解釈ではなく、法改正で行うべきだとか、様々な意見があるようですが、この点において、政治家・法律家としてのご見解と、山本氏の主張に賛同できるか否かについてお聞かせください」

神吉氏「山本氏の発言内容、根拠等について詳細を承知しておりませんので回答は差し控えます」

IWJ「第3点は、宇都宮健児氏の山本太郎氏の主張に対する反論です。宇都宮健児氏を応援する立場として、宇都宮氏が30日に公開した「宇都宮けんじ コロナ対策の詳細とその財源対策について」(注:質問時にはIWJが入手した草稿)にある主張に全面同意ということでよろしいでしょうか。不同意な点はありますでしょうか。あればご指摘ください。

神吉氏「立憲民主党として宇都宮健児氏を支援しております」

 インタビュー中、枝野幸男事務所の回答を受けて、岩上安身は「枝野さんに質問したんですが、山本さんに同意しているわけではないようです。枝野さんは国政の場で『法解釈を変えることはできないか?』と聞いたら、西村大臣から『非常に困難だ』と回答を得ているということで、難しいのではないか」とコメントした。

山本氏は「国が同意しないのであれば、都は『不同意債』としてそれを発行」と発言! 元利償還金を国に補填されないことを「痛くもかゆくもありません」としたが金利上昇は想定外しないのか?

 山本氏は自身の東京都知事候補特設サイトの中で、「国が同意しないのであれば、都は「不同意債」としてそれを発行します」、「こうなると、元利償還金を国からの地方交付税で補てんされることはなくなりますが、そもそも地方交付税をもらったことがない東京都にとっては痛くもかゆくもありません」と述べている。

 これに対し、岩上安身はインタビュー中、「超法規的な行為に喝采が集まるのは危険。山本さんはリベラルな人だけど、財政だけはものすごく強硬。不思議です」とコメントした。

 また、IWJでは、エコノミストの田代秀敏氏に実際に都が地方債を不同意債として発行した時の見通しについて取材を行った。

IWJ「不同意債の発行について教えてください」

田代氏「不同意債については、(地方債にはつきものの)国の暗黙の保証すら、『不同意』ですのでありません。さらに金利は上がり、都の負担は増え、現在の都債残高約8兆円の、持続性に支障がでます」

 田代氏への取材結果を受けて、岩上安身と明石順平氏は次のようにコメントした。

岩上「都債自体の金利が上がってしまう懸念があります。山本太郎氏の話には金利の話が出てこないように思う。『文藝春秋』2月号に掲載された論文にも、金利という言葉がでてこない」

明石氏「金利は恐ろしい。借り換えをしていくと、既存の債権についても金利が上がっていく」

山本氏は「地方債を日本銀行に引き受けさせる」と発言! MMTを想起させる「日銀直接引受」は実現可能か!? IWJは日本銀行、エコノミスト田代秀敏氏に取材を決行!

 山本氏は自身の東京都知事候補特設サイトの中で「超健全団体の東京都債なら多くの金融機関が欲しがるでしょう」と述べている。しかし、6月28日に行われた東京青年会議所主催のネット討論会では、「東京には必要ないかもしれない」としながら「日銀に対して地方債を買いとれって言うことも突き上げていこうと思っています」、「日銀というのは子会社なんですね、国の。日銀に対して利益が入ってきたら、これと諸経費さっ引いたら、全部国庫に戻るんです」と述べた。

 MMT(現代貨幣理論)では国債を中央銀行(日本でいえば日本銀行)に買わせて世間に流通する通貨を増やすという考えがあり、山本氏は都知事選の地方債発行についてはMMTの考えにもとづくとは明言していないものの、ネット討論会の発言から、その根底にはMMTの考えがあることがうかがい知れる。また、山本氏は都債発行に関する発言の中で「金利」について述べていない。

 MMTをベースとしていると思わせる都債発行のあり方について、岩上安身と明石順平氏は以下のようにコメントした。

岩上「金利が実際どうなるかという問題もあります」

明石氏「市場を無視してはいけない。現実問題、消化しきれない。日銀は買わない。基本、国債ですら直接引き受けをしていない。財政法で禁じている。国債でさえ、いわんや地方債をや」

岩上「日銀が国債を引き受けていると言っているが、それは間違い?」

明石氏「一度市場が買ったものを日銀が買うと言った脱法的借金をやっていると。しかし、これは国の政策、異次元の金融緩和の一環としてやっている。そして、大事なのは、一応は市中消化していると言うところが重要。そのスキームに民間の金融機関が協力してくれないと成り立たない。インチキをすると、為替相場もどかんと落ちる」

岩上「政府と日銀が一体化した途端に」

明石氏「MMT論者が皆無視しているのは、通貨の価値を決めているのは為替市場なんです。直接引き受けに手を出してお金を発行し過ぎたら、通貨の価値が下がり、予測して円売りが起きてしまう。

 物価というのは物やサービスと通貨の交換比率の話ですから。通貨が無限に発行できるのは当たり前なんです。発行し過ぎたら価値が下がるので、中央銀行をわざわざ作って発行しすぎないようにしている」

岩上「建前だけでも、その一線は守らないといけない。

 戦後はアメリカが優位な状況で、基軸通貨としてドルを発行しました。71年にドルショックで、ドルと金との交換を停止し、ドルは兌換紙幣から不換紙幣に。これからはドルの信用だけで回っていくことし、変動相場制に移行しました」

明石氏「紙幣を無限に発行するとインフレが起きる。そこで中央銀行の役割が重要になってくる」

岩上「70年代、アメリカでもすごいインフレになっていく。それを押さえ込むために出てきたのが新自由主義だった」

岩上「MMTのケルトン教授(ステファニー・ケルトン、経済学者)は、通貨は国家が与えるものと、極めて国家主義的。もう1つは徴税権。インフレ懸念に対しては全然問題ないと言っている。いざとなったら税金で取ると」

明石氏「間違ってないですね。戦後日本はやりましたからね」(1946年に強行された緊急勅令による預金封鎖と財産税のことを指す)

 IWJでは日本銀行に問い合わせ、「地方債を引き受けることが可能か、これまでに実績があるか、引き受けた場合市場にどのような影響があるか」と質問した。

 しかし取材に応じた日本銀行広報課のカシマ氏は「選挙案件でもあり、山本氏の発言の詳細を承知していないので、一切のコメントは差し控えたい」との回答に留まった。

 そこでIWJでは、エコノミストの田代秀敏氏に日本銀行の地方債引き受けについて取材した。

IWJ「日銀が地方債の引き受けをすることができるのですか」

田代氏「日銀は、国債を購入する際、債券ディーラーを仲介として銀行の保有している国債を購入しています。国債は、字の通り『国』が発行している債権なので、国の保証がある債権です。他方、都債は、国の暗黙の保証のみとなります。そのような債権をあえて日銀は引き受けるでしょうか。国の暗黙の保証を受けている地方債が、国の格付けより高くなることは、あまりありません。

 今はいいとして、これから支出も増え、税収も減ることが目に見えている東京都に、仮に発行できたとしてもその債権はリスクが多いように思われ、日銀も引き受けることは難しいと思います」

IWJ「仮に日銀が地方債を引き受けると仮定して、その後どのようになりますか」

田代氏「当然、国債より格付けが低い地方債ですので、金利も高めの設定になり、東京都の負担も増えると思われます」

 インタビュー中、日本銀行の回答を受けて、岩上安身と明石順平氏は次のようにコメントした。

明石氏「日銀がなんで独立しているか意味を考えなきゃいけなくて、『法は人間の歴史の失敗集』なので、日銀と政府を別にしている。

 明治政府が政府紙幣を発行して失敗しているんです。私の本に書いてありますけど。西南戦争の時。他の国も同じ。中央銀行と政府が一体じゃないことに意味がある。

 法制度は必ず意味があるので、立ち止まっていったん考えましょうと強く言いたい。先人たちのメッセージがある。それを外すと痛い目に遭うんですよ」

岩上「人間は愚行を繰り返すと言うじゃないですか。ガルブレイスは『バブルの物語』の中で、『人間は過ちから学ばず、バブルの熱狂をは繰り返す』と説きました。世代が入れ替わると体感がなくなる。人間はなかなか歴史から学ばないということでもあります」

明石氏「私の本では歴史も書いた。最後まで読むと、なぜ歴史を論じたかわかる」

IWJの取材活動は、皆さまのご支援により直接支えられています。ぜひ会員にご登録ください。

新規会員登録 カンパでご支援

関連記事

「インタビュー配信からIWJ取材結果をまとめて再構成!~都知事選重要争点の財源問題を徹底議論!山本太郎候補の「都債15兆円起債! 1400万都民に現金給付10万円!」は実現可能か!?」への1件のフィードバック

  1. 阿木譲郎 より:

    もう、とっくに回答出てるのだから記事を訂正し、山本太郎氏に謝罪してほしい。

    https://taro-yamamoto.tokyo/zaigenqa/
    https://parkseungjoon.hatenadiary.com/entry/2020/07/03/175240

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です