「令和新時代に新憲法を」の大合唱が始まる!? 国民投票の前に発議を食い止めねばならない!海渡雄一弁護士、詩人アーサー・ビナード氏らが緊急事態条項と切迫する改憲発議に警鐘! 2019.4.27

記事公開日:2019.4.30取材地: テキスト動画
このエントリーをはてなブックマークに追加

(取材・文:上杉英世)

◆ヤバすぎる緊急事態条項特集はこちら!|特集 憲法改正
※2019年5月7日、テキストを追加しました(5/9注・加筆)。

 平成から令和への代替わりを迎える直前、10連休の初日となる4月27日、東京ウィメンズプラザで、シンポジウム「改憲のもう一つの危険な狙い・自民党草案(緊急事態条項)」が行われ、海渡雄一弁護士、詩人のアーサー・ビナード氏、物理学者の小沼道二氏が登壇した。

▲右から小沼道二氏、アーサー・ビナード氏、海渡雄一弁護士(IWJ撮影)

 知識人による平和問題に関する意見表明のための会である「世界平和アピール七人委員会」に名を連ねる小沼道二氏は、「総理が『緊急事態だ』と言った瞬間から、日本国民は何も言えなくなる。沖縄県知事も、抵抗できなくなる」と、辺野古情勢にも照らし合わせて、緊急事態条項導入の危険性を訴えた。

 詩人のアーサー・ビナード氏は、「新しい令和の時代にふさわしい憲法を!」というキャンペーンが連休明けにも始まるだろうとして、これに対して、一人一人がコピーライターになる「一億総広告代理店」で対抗する必要があると訴えた。

 今年2月にトランプ大統領が、メキシコ国境との壁建設を強行するために国家非常事態宣言を発したが、これについては、ビナード氏は、予算確保のためのパフォーマンス的側面が大きいとして、「ナチスドイツによる国家非常事態宣言とは性格が異なる」と述べた。しかし、安倍政権が狙っているのはパフォーマンス型ではなく、ナチス型の非常事態宣言だ。

 また、4月の大阪スワップ選挙で圧勝し、今や改憲「斬り込み隊」としての正体を露わにする維新について、ビナード氏は、米国国民の不満や怒りを巧みにすくい取るトランプ大統領と、政治手法においては共通点を認めた。しかし、従来の米国政治の枠組の「アウトサイダー」として振る舞うトランプ大統領と、橋下徹氏や維新とは本質的に性格が異なるのではないかとの見解を示し、市民が「対抗的に見抜く力が必要」と語った。

 海渡雄一弁護士は、戦後の歴代自民党政権がどこも手をつけなかった最高裁の裁判官人事にまで介入するなど、安倍政権が明らかに独裁政権化していることを指摘した。そして安倍政権による改憲発議のタイミングは、夏に予想される衆参W選の後なのか、それとも連休明けに「時代は変わりました」と言って突然発議への動きを始めるのか、「基本的にはわからない」と語った。

 改憲を発議されても「国民投票で打ち破ればいい」という見方がある(※1)ことについては、海渡弁護士は強い懸念を表明した。「もしそうなったら、そこでがんばるしかないが、その前に発議を食い止めなければいけない」と述べた。

記事目次

■ハイライト

  • 司会 天笠啓祐氏(ジャーナリスト)
  • 講師 アーサー・ビナード氏(詩人)/海渡雄一氏(弁護士)/小沼通二氏(世界平和アピール七人委員会委員)
  • タイトル シンポジウム「改憲のもう一つの危険な狙い 自民党草案(緊急事態条項)」
  • 日時 2019年4月27日(土)13:30〜16:30
  • 場所 東京ウィメンズプラザ(東京都渋谷区
  • 主催 「緊急事態条項」を知る実行委員会(武谷三男史料研究会、現代技術史研究会M分科会、people21)

安倍政権が改憲発議に踏み切るタイミングは?「わからない」!

 シンポジウム冒頭で海渡雄一弁護士は、秘密保護法、平和安全法制、そして共謀罪が通った現在、「国家総動員体制に欠けてるのは憲法9条の改正と、緊急事態条項だ」と述べ、いつ行われるかわからない安倍政権による改憲発議に、強い警鐘を鳴らした。

海渡雄一弁護士「安倍政権は自衛隊明記、国家緊急権、教育無償化、参院合区解消の4つを改憲の柱としています。後ろの二つは、訳わからないものにするためにくっつけたようなものですね。教育無償化は憲法改正じゃなく法律で実現可能ですし、そもそも、それに反対してきたのは自民党ですから。

 彼らがどのタイミングで改憲発議をしてくるかは、基本的には『わからない』です。皆さんが10日間の連休に浮かれている間に、(連休明けの)5月7日になると『時代は変わりました。令和新時代に新憲法を!』と突然しゃべりだす可能性が、あり得ると思う(※実際に5月3日の改憲派の集会で2020年に改正憲法の施行を目指すことについて、「今もその気持ちに変わりはない」と発言している)。天皇退位、即位などもあり、スケジュール的に厳しいと言われますが、夏の参議院選挙で勝負をかけてくる可能性はあります。

 国民投票は、参院選と同時は厳しいにしても、その後かもしれません。『衆参同日選挙をやって、2/3を獲得して一気にやってしまう』、ここ数日、こういった情報も流れています。『国民投票で打ち破ればいい』と、皆さん思うかもしれないが、それは、ものすごく厳しい闘いになる。

 TVをつけたら『新憲法Yes!』という宣伝ばっかり流れてくるはずなんですね。彼らは湯水のように金を使える。そして『平等に流さなくていい』と、民放連が言い始めてます。おそらく広告枠は全部、電通が買い取って改憲派ばかりを流させる。我々が一生懸命CM作っても、夜中に流せる予算しかない。一般の人は『やっぱり改憲の時代なのね』と、流されてしまうかもしれません」

ワイマール憲法の改正手続きを踏んだ授権法がワイマール憲法を殺した!

海渡弁護士「自民党が最後までこだわっている4項目の中に、政府への権限集中、主権制限を決めた緊急事態条項が入っています。そして、緊急事態条項を憲法に記載すべき、という意見があるわけです。

▲ナチス全権委任法を議決したドイツ連邦議会

 麻生さんが『ナチスを見習ったらどうかね』と言いました。『知らないうちに憲法が変わっていたんだ』と。彼のあの発言、まったくデタラメで、ワイマール憲法というのは、ナチスが倒れるまで有効でした。憲法が変わったわけじゃないんです。しかし、ナチスの授権法によって憲法は実質上、停止させられていたわけです。『そういう状態を作ればいいんじゃないか』、と麻生さんは言ってるんでしょう

 国家緊急権が最も猛威を振るった例として、海渡弁護士はナチスの授権法について説明した。

海渡弁護士「1933年1月、ヒトラーが首相になった時点で、ナチスは少数与党でした。そこで、国会を解散する。国会解散ばっかりやるというところが、安倍総理と似ています。この選挙中の2月27日に、ドイツ国会議事堂放火事件が発生し、それを口実に、国中の共産主義者、社会民主党員を逮捕しました。

 そして『民族および国家の危難を除去するための法律案』(全権委任法・授権法)を、国家人民党と共同で提出しました。これは、形式的にはワイマール憲法の改正手続きを踏んでいますが、謀略と弾圧によって、憲法を圧殺した瞬間でした。麻生副総理が言ったように決して、憲法が『ある日気付いたら変わっていた』わけではありません」

国家緊急権のオンパレードだった大日本帝国憲法!

海渡弁護士「では、大日本帝国憲法はどうだったか? 緊急勅令制定権、戒厳状態を布告する戒厳大権、非常大権、緊急財政措置権などが定められており、国家緊急権オンパレードの憲法でした。

 戦前に、戒厳令が大きな人権侵害を引き起こした事例があります。1923年9月1日の関東大震災の翌日、9月2日に政府は、帝国憲法8条に定める緊急勅令によって戒厳令を布告し、翌9月3日には、東京、神奈川全域に拡大しました。その中で朝鮮人、中国人に対する大虐殺事件が起きました。軍が実際に虐殺した事例もあるが、多くは自警団と呼ばれる民間人が起こしたと言われています。

 戒厳令にもとづく命令遂行の目的として『不逞の挙に対して、罹災者の保護をすること』が挙げられています。不逞の挙、とか言われると、何か戦乱のようなものが起きているというふうに思いますよね? 現実に、その4年前に朝鮮半島では、3.1独立運動というのが起きています。

 そこに軍の戒厳令が敷かれると、『朝鮮の人が独立のために、蜂起するんじゃないか』という恐怖感、疑心暗鬼を生みます。『ただごとでないことが起こってるから戒厳令が出てるんだ』『戒厳令だから、何をしても許されるんだ』と。

 我々も最近、大きな災害を体験しましたが、こういう恐ろしいことは起きていません。国家緊急権なんていう馬鹿ことは考えずに、普通の災害時の対応をしたわけですよね。もちろん、たくさんの情報が隠されて、原発事故の実態も明らかにならなかった部分もあります。しかし、もしも国家緊急権なんてものを導入した後に大災害が起きたら、と考えたらゾっとします」

人権保障の「例外」を作る緊急事態条項!安倍政権は命がけで改憲に打って出てくる!?

海渡弁護士「ドイツの戦後の憲法は確かに、国家緊急権を決めています。しかし、『緊急事態条項をできるだけ制約する』『議会に権限を留保して、様々な安全装置をつける』ということを考えた規定になっています。今回、自民党が考えてるものには、そういうものは、一切含まれていません。

▲安倍総理(2017年10月7日IWJ撮影)

 緊急事態条項というのは、どうしても濫用される危険性があります。権力の座にある者が、バランスの取れた抑制を欠いている場合、まさに今の日本がそういう状態ですが、そういう政権に国家緊急権などを与えてしまえば、取り返しがつかないことになります。

 ここで、安倍政権がやったことを振り返ってみましょう。最初にやったのが、国家安全保障会議と内閣情報局の設置。これは戦争遂行機関、大本営の復活です。そして、人事局による高級官僚の人事権を梃子に、官僚を言いなりにしてきました。最高裁の裁判官人事にも介入し、弁護士会推薦を受け入れず、政権の意向を体現した人物を指名(※2)。これは、戦後の自民党政権がどこも手をつけてこなかったことです。

 もし、衆参同日選で彼らに衆参両方とも、自民と維新まで含めて2/3を超える多数を与えてしまったら、彼らは命がけで改憲に出てくるでしょう。発議させた後に国民投票で葬るというのは、もしそうなったら、そこでがんばるしかないが、その前で食い止めなければいけません。『自衛隊は認めても、日本が戦争になるのは嫌だ』という保守的な市民を味方にして、改憲発議を阻止する戦線を築きましょう」

トランプ大統領も憲法は尊重!米国の憲法改正と自民党改憲は全く違う!

 広島在住の詩人、アーサー・ビナード氏は、母国アメリカ合衆国の憲法改正がどのように行われてきたかを説明し、自民党の言う「改憲」が、全く別の現象であることを鮮明にした。

アーサー・ビナード氏「今手元に、アメリカ合衆国憲法と独立宣言があります。完璧とはとても言えないけど、人類の歴史の中で考えるとなかなかよくできた憲法です。その後、この憲法は、句読点も含めて誰一人いじってません。

 トランプですら、大統領に当選して国連総会がニューヨークで開かれた時に、「世界で一番由緒正しい、一番価値のある、一番古い憲法を持った国へようこそ。我々アメリカ人は、240年経った、世界で最も古い現役の憲法を何よりも誇りに思ってます」と言ったんです。日本では、誰も報道してないけどね

▲アーサー・ビナード氏(IWJ撮影)

 だからこの憲法を触ったら、アメリカ人は怒ります。じゃあ、修正はどうするのか? それは、現実と噛み合わなくて修正が必要になった時、手続きの高いハードルを超えて成立した場合に、憲法の後に修正条項としてつけるんです。

 もちろん、ルーズベルト政権、トルーマン政権、アイゼンハワー政権、ケネディ政権、ニクソン、カーター、あ、フォードもいたね。みんな憲法違反ばっかりやってるんだよ。彼らが憲法を無視して、このとんでもない大米帝国に成り下がったんです。

 『国民の言論の自由はそれを保証する。報道の自由はこれを保障する。集会・結社の自由はこれを保障する』それが最初の修正条項です。憲法本文に明記していない基本的人権を、増やしていくことで修正するんです。『奴隷制を終わりにする』というのも、後ろにくっつけた修正条項。女性の参政権もそうです。

 禁酒法もそうなんです。『お酒はやめます!』と言って。でも10年ぐらい経って、大多数の人は酒飲みたいから、その次の次の修正条項が、『やっぱり酒飲んでもいい』です。だから、アメリカ合衆国憲法を読むと、歴史のドアホの地層が全部見えるんです。そして、それが消えないんです。

 消えないし、結果的に流れは、より多くの権利を保障するという方向です。『憲法はいじっちゃいけない。だけど修正はする』。これ、自民党が言ってる改憲と同じですか? だから、辞書引いたら、頭が腐りそうになるんです。同じ言葉をつかって、全く違う現象を表して、しかも、さも世界と共通の認識があるように見せかけてるから」

プロイセン憲法を真似た大日本帝国憲法は、人類の歴史の中で最低の憲法、「愚民のトリセツ」だった!

アーサー・ビナード氏「大日本帝国憲法と今の憲法、中身はほとんど共通点がありません。大日本帝国憲法は憲法じゃないんですよ。あれは、権力者が使う道具箱。下々の者を餌食にするためのマニュアル。「愚民のトリセツ」です。それを、伊藤博文とか井上毅(いのうえこわし)という小物たちが、プロイセン帝国憲法の直訳として持ってきた。人類の歴史の中で最低の憲法が、プロイセン帝国憲法と大日本帝国憲法です

 憲法は本来、権力を縛るものだから、大日本帝国憲法を憲法と呼んじゃいけない。でも正式名称が憲法だからややこしいですね。僕は、『違う呼び方考えなきゃ』と思って、ある時友人の家で飲んでたら、つまみが出てきた。カニの香りがするけど、カニが全然入ってない。『あ、これが大日本帝国憲法か!あれ、カニカマ憲法だったんだ』と気がつきました。読むと憲法風味たっぷりなんですが、中身が全然憲法じゃない。

▲改憲を呼びかける自民党のチラシ(IWJ撮影)

 改憲の流れが本格的に政権から来た時に、『新しい令和の時代にふさわしい憲法!』と売り込むコマーシャルを、洪水のように浴びることになると思うんです。だから、『一億総広告代理店』の時代に入らなきゃ。一人一人が、コピーライターとして動かなきゃ、維新、自民の憲法破壊には対抗できません」

日本国憲法は本当に世界の中で「異常」なのか?

 1950年代から、核兵器問題などへの積極的な発言を続けてきた物理学者・小沼道二氏は、日本国憲法の異常性を強調する安倍政権に対し、歴史的観点から反論した。

小沼道二氏「今から100年前に、何ができたか。国際連盟ができました。ワイマール憲法も、ちょうど100年前にできたんです。第一次世界大戦は、とても悲惨だった。毒ガスが、兵士だけじゃなくて市民にも深刻な影響を与えました。国際連盟の規約には『これからは戦争はしないんだ』と書いてあります。

 フランスとアメリカの協議から始まって1928年には、パリ不戦条約も締結されましたが、それにもかかわらず第二次世界大戦が起きました。どうして起きたかというと、自衛権が抜け道になったんです。

 私は『自衛権がない』と言い切るつもりはないんですが、安倍総理の言う自衛というのは、『地球の裏で風が吹くと桶屋がもうかる』という話です。世界の裏側で何か紛争が起こると『日本の安全にかかわるんだ』と言うんです。

 第二次世界大戦が終わって国連ができました。国連の規約にも、もう戦争してはいけないと書いてある。でも、アメリカはやってますよね。アメリカだけを悪く言うつもりはありませんが。ともかく、『戦争してはいけない』ということは、100年前から世界は言い続けてきた。抜け道もあったけれども。

 だとすると、日本の今の憲法がおかしいんじゃないんです。世界が遅れてるんです。日本は戦争に負けたという、ある面では大変な事態を乗り越えて、今や最も自慢すべき広げるべき憲法を持ってるんです。しかし安倍政権は、完全に昔に戻そうというか、昔以上にしようとしてる。

 私は、安倍政権は完全に、緊急事態条項先取り政治をやってると思います。三権分立なんて今、どっか行っちゃってますよね。国会はぜんぜん内閣をチェックできてない。司法も、大事な判断は避けて逃げてるでしょう?」

▲物理学者・小沼道二氏(IWJ撮影)

緊急事態条項によって、人権は完全に停止する!

海渡弁護士「そもそも緊急事態条項は何なのかを、簡単に説明します。自民党案の第73条の2として『大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定を待ついとまがないと認める特別な事情があるときは、内閣は、法律で定めるところにより、国民の生命、身体及び財産を保護するため、政令を制定することができる』とあります。普通だったら法律でやらなければいけないことを、内閣だけで決めて、人権が制限できるようにしてしまう

 そしてこれは、今回自民党が改憲発議で出そうとしている条文の案です。『内閣総理大臣は、わが国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要であると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる』と。

 それから、99条の3項が怖いですね。『当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない』。例えば、戦車を通すために、『この家はつぶす必要がある』となれば、つぶすことができる。簡単に言うと、完全に人権が停止した状態になります

 この場合においても、『憲法十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない』と書いてありますが、これは大嘘ですね。そういうものは完全に無視してやれるんですよ、と言ってる条項だと思います。それが、緊急事態条項です

改憲後に原発事故が起きたら、市民には考える余裕など与えられない!

 自民党が繰り返し、巨大災害を、緊急事態条項導入の口実として使っている点について、海渡弁護士は福島原発事故の経験から、その欺瞞を訴えた。

海渡弁護士「311が起きた時は菅さんが首相で枝野さんが官房長官だったんですが、国民の多くは『手際が悪くてうまくやれなかった』と言ってますね。僕は、あの時に安倍政権だったら、もっと恐ろしいことになったと思います。まず、いまだに炉心溶融がなかったことにされてるかもしれません

 2011年3月13日に、東電の清水社長が『想定外の津波だったから不可抗力で、当社には責任ありません』と言いました。あの時、『そんな主張は認めない!』と枝野さんががんばってくれたんですよ。もちろん、うまくいかなかった点も多いです。官僚によってずいぶんサボタージュもされたでしょうからね。

 国家緊急事態が定められていて、自民党政権下であの件が起きていたら、もっと悲惨なことになっていたと思います。福島の汚染地図など作ったら、作ったこと自体が国家秘密を明らかにしたとか言ってね。ロシアは長い期間、そういう状態になっていました。そんなことになりかねなかったと思います」

アーサー・ビナード氏「僕も同感です。次の原発事故がこの政権で、しかも改憲が進んだ状況で起きたら、もう『市民が目覚めて、原子力を止める方向に世論が動く』とか、そんなおめでたい次元では済まないと思います。それこそ、『原子力に文句を言うやつはぶっつぶす』ぐらいの動きになると思います

 あの時、あの政権だったから、国民が少しは考えてデモを起こして、『自分たちが騙されてた』ということに気づく余裕が持てました。次に事故が起きた時は、もうそんな余裕は与えられないと思います。恐ろしいことになると思う」

災害にはパッケージ法が整備されおり、国家緊急権は百害あって一利なし!

小沼道二氏「緊急事態条項は、要らないだけじゃなくて、あったら困るんじゃないかと思ってます。日本ではいろんな災害がしょっちゅう起こるもんだから、すでに災害対策基本法というのがあるでしょう?」

▲西日本豪雨被害で被災した広島県呉市安浦町の集落(2018年7月24日、IWJ撮影)

海渡弁護士「あります」

小沼氏「それに、大規模地震対策特別措置法というのができたでしょう? それから、原子力災害対策の特別措置法もできましたよね?」

海渡弁護士「はい」

小沼氏「それなのに『緊急事態条項が要るんだ』という宣伝が、どうしてできてるのか、それが僕にはわからない。仮に災害が起きた時に、総理大臣に権力集中なんかしたら、現場が見えない人が判断の実権を握って、原発の状況がもっともっと悪くなると思うんです

海渡弁護士「小沼さんのご意見に大賛成です。日弁連に、災害対策に特化した災害復興委員会というのがあります。実は、憲法本部というのもあるんだけどそれより先に災害復興委員会の方が、この緊急事態条項に反対したんです

 ずいぶん生々しい言い方をすると、沢山の人が死にかかってる時に、『どの人から救うか』という判断をしなければいけない局面って、必ず考えられるわけです。そんな時に上層部が何か言っても、絶対うまくいかない。現場の行政スタッフなり医療スタッフがその場その場で判断して、その後、責任を問われないという仕組みを作らない限りは、うまくいかないんです。

 小沼さんが今おっしゃったような、災害関係の法律というのも、実はそういう枠組みに使うことができる。そういうパッケージ法ができているのに、その上に国家緊急権なんか作っても、百害あって一利なしです。そういう意見書は、かなり前の段階で、日弁連は出してるんです(※3)

現役自衛官が平和安全法制を違憲と訴え!

海渡弁護士「今、平和安全法制が憲法違反だという裁判が、日本全国で行われています。その多くは一般市民が、戦争に巻き込まれたら市民の平和的生存権が侵害されるんだ、と訴えてるんですが、この中にたった一つだけ、自衛官が原告になってるものがあるんですよ。

 茨城県の陸上自衛官が、『存立危機事態で、防衛出動命令を出された時には、自分は死ぬ危険性がある』と。だから、『この命令に従う義務がないということを事前に確認してください』っていう裁判を起こしたんです。この裁判は東京地裁が却下判決をしたんですけど、2018年1月31日に東京高裁が、『そういう事態は十分あり得る』として、東京地裁に差し戻したんです(※4)

 『自衛隊が憲法違反だなんて言ったら自衛隊員がかわいそう』と安倍総理は言いますが、自衛官自身が、『平和安全法制と改憲によって、自分たちの命が今までより危うくなる』と訴えているんです。僕はこの裁判、『勝てばいいな』と、『勇気ある裁判官がいてくれたらいいな』と思ってます」

ビナード氏「その裁判、直接は関わってはおられない?」

海渡弁護士「関わってないです。ただ、この裁判で素晴らしい判決を出してくれた東京高裁の裁判長は、杉原則彦さんという人なんです。僕の司法研修所の時の同期だった。とてもいい裁判長です」

大々的な戦争よりも、安倍政権の野望はむしろ内向き!?

ビナード氏「安倍政権の改憲に反対する時に、よく『戦争ができる国にしようとしている』と言われます。それは間違ってないけど、安倍政権は大々的に海外を侵略する戦争は想定してないと思う。日本政府はそこが狙いじゃなくて、『なんでも政府が決めればできる』という状況を作りたいんだと思います

 武器の先買いにも見られるように、飛び道具をどんどん買って防衛予算をどんどん増やし、軍の存在と軍の権限、そしてそこに集まる権力をどんどん増やす。それによって日本国民を抑えようとしてるんじゃないでしょうか。

 だから、安倍政権の野望はむしろ内向きで、10年経っても100年経っても、政権交代すらできないような、そういう体制を作ろうとしてるように見える。『戦争できる国になったらいけない』とか『自衛隊が海外で命を落とす危険性が高まる』ということは、想定する必要があるんだけど、そこだけ見てると、政府の狙いがつかめない気がします。みなさんはどう思われますか?」

海渡弁護士「僕は、こういうことが起きると思う。実際にアメリカ軍、多国籍軍と一緒に紛争地域に行って、平和維持活動をする。しかし抵抗してくる勢力もいるから、そこで戦闘状態になるかもしれない。そこで殉死する人が出たら、もう、戦争に反対することはできなくなるわけです。戦争に反対するってことは『尊い犠牲を無にすることだ』と決めつけられちゃうわけです。

 戦前の場合も満州事変が起きるまでは、戦争反対を言えたんですよ。満州事変が起きた時に政府は『中国軍が襲ってきた』と大嘘つくんですね。自分たちで謀略しかけてるのに。そこで亡くなった人が出たり、爆弾なんとか勇士(※5)と呼ばれる人も出てくる。そうすると、戦争反対なんて一切言えなくなって、どんどん軍の人間が幅を利かせるようになってしまう」

日本は戦争したくてもできない!?

小沼氏「ビナードさんは、日本の今の方向は、必ずしも戦争に行くんじゃないだろうとおっしゃった。実はね、行こうと思っても行けないんですよ。日本の国は今、少子高齢化です。子どもの数がどんどん減って、つまり10年後20年後の大人の数が、どんどん減る。しかも年寄りの割合が増えるんです。『誰が戦争に行くの?』って言ったら、いないんですね。本当にいないんです。

▲IWJ撮影

 もう一つ、日本は慢性赤字でしょ? その慢性赤字を、返す気がないんです。返す気がないから、ツケで10年先まで大量の武器を買う。アメリカから言われると100機買ってくる。そんな状況でお金がないから、本来戦争できないはずなんです。

 もうひとつ言うと日本は狭い。中国は、日本が攻めると、どんどん下がっていったんです。もちろん、市民は残って悲惨な目にあったけども、軍隊は、政府はどんどん内陸に下がっていった。ソ連も、ドイツが東へ進んでくると、どんどん工場を東に移したし、市民もどんどん疎開した。日本はそんなことできないでしょ?」

テロ対策を口実に安倍政権が野党より先に脱原発もあり得る!?

小沼氏「原発がいっぱいあるのも、戦争できない理由のひとつです。先週かな? 『テロ対策ができない原発は止める』て話が出ましたね」

ビナード氏「あれ、本気なんですか? 規制庁が言ってるんでしょ?」

小沼氏「規制庁がそんなこと、言えるはずがないですよね? だけど言ったでしょ? どうせ原発はダメだと本心では思ってるけども、安倍政権は今まで言ってなかった。でも実際、今、新たな原発作ってないんだから、脱原発方向なんですよ日本政府は」

ビナード氏「上関では、整えてますけどね」

小沼氏「一つや二つじゃダメです。10年経つうちに寿命が来ますから。1/3の電気は原発でまかなうって言うんだったら、今もっと、原発作ってなきゃいけないはず。でも作ってないでしょ? だから脱原発なんだけども。野党よりも先に、『原発を止める』ということを規制庁にやらせる。そして、それを後で、しぶしぶ認めた形にする」

ビナード氏「なるほど」

小沼氏「脱原発政権なんですよ。でも、この中に誰か政府の人が一人でもいたら、『あ、やっぱり見抜かれちゃったからやめ』ってなるかもしれない」

▲右から小沼道二氏、アーサー・ビナード氏、海渡雄一弁護士(IWJ撮影)

ビナード氏「あり得ますね。脱原発というか、しっぽ切りですね」

小沼「うまくいかなかったら、『規制庁、何やってたんだ、何をバカなこと言ってたんだ』と」

ビナード氏「今ちょうど、それを試してるんですかね?」

トランプの国家非常事態宣言はパフォーマンス!? ナチスのそれとは違う!

 司会を務めたジャーナリスト・天笠啓祐氏が、トランプ大統領が今年2月に発した国家非常事態宣言についてビナード氏に説明を求めた。ビナード氏は、従来の米国政治の枠組みからの「アウトサイダー」であるトランプ氏による一連の「ちゃぶ台返し」の一つに過ぎないとして、権力を掌握するためにナチスドイツが発した国家非常事態宣言とは、異質なものであるとの見解を示した。

ビナード氏「アメリカ国防総省が大規模な軍事介入を行う時に、多国籍軍みたいにして、その中で自衛隊が使われる。そういうシナリオはずっとあると思うんです。実際に日米合同演習の中身、自衛隊にやらせてることを見てると、確実に、そういう方向に進んでいる印象を受けます。

 長期計画においては、たぶん、そうだと思うんです。そしてひょっとしたら、長期計画と噛み合ってないのがトランプ政権かもしれません。非常事態宣言を出したのはトランプ政権だけど、トランプ政権自体が非常事態なんですよ。毎日が非常事態。そしてそれが、トランプ政権がいつも叩かれている理由であり、トランプ政権の支持基盤が固い理由でもあるんです

 つまりアメリカ国民が本当に、トランプを選んだんですよ。でも、今までの米国政府を動かしてきた『奥の院』の人たちが、望んだ人間じゃなかった。そうすると、てんやわんやです。何やっても、議会は通らないでしょ? そういう中でトランプは、大統領の権限でできることを、とにかく全部やってる。オバマ政権は、それは一切ないです。ブッシュの時もそれはなかった。だって、『奥の院』の命令がちゃんと通じていたから。

 トランプはもう、何でもやるんですよ。その中の一つとしての非常事態宣言だから、ナチスがやったこととは、ちょっと違うんです。計画性という意味で違う。トランプ政権になって2年半ですが、オバマ政権やブッシュ政権と違うのは、戦争をやってないってことです。米軍は比較的、暇です。米韓合同演習まで中止しちゃった。あんなのコストがかかって馬鹿らしいって。

 どこかで歯止めをかけながら、戦争じゃないところで派手に行動している。そのうちの一つが例えば、イスラエルの首都を認めるとかですね。もちろん、いろんな混乱を招くし死者が出ることもあるから、良いとは思わないですけど。でもそうやって『自分はタカ派である』と、攻めてる姿勢を示しながら、トランプは戦争をやってない。そもそも不動産屋だから、大使館の引越しとか、不動産屋が好むことはやる。

 で、そのうちの一つが壁の建設なんです。『メキシコの人を差別しちゃいけない』とか、みんなそういう次元で語るけど、壁ってそんな問題じゃないでしょ? アメリカの経済を動かしてる多国籍企業、アメリカのこともメキシコのこともカナダのことも何とも思わず利益のことしか考えてない、『奥の院』の支配者やウォール街の大物たちは、今まで、アメリカの国境をザルにしてきたんです。

 そうやってメキシコの人たちを、極端に貧乏にしてきた。そして国内に向けては、いつでもタダ同然の賃金で働く労働者を違法に輸入できるようにして、アメリカ国民の賃金が上がらない状況を作ってきたんです。

 でもそれでメキシコ人の生活がよくなるわけじゃないし、アメリカの労働者は白人黒人も含めて、賃金が永遠に上がらない。地獄ですよ、今の状況は。トランプがそこで『壁を作るんだ!』と言ったら、それで支持されるんです。あまりに最悪な状況だから『じゃ、壁でも作っちゃえ』と。一番困るのはウォール街ですよ。ウォール街を困らせるのは大好きなんです、貧乏人の僕らは。

▲トランプ大統領(ウィキペディア)

 もちろんトランプも悪い。だって米政府だから、良い人が入るわけないでしょう。山口組のトップがいい人って、あり得ますか? ただ、トランプを『ナチスと同じ非常事態宣言を出したから、とんでもない!』と見るのは、アメリカ政治の現実の力学からは、ずれるかもしれませんね」

安倍政権はアメリカ型でなく、ナチス型の非常事態宣言を狙っている!

ビナード氏「トランプは、ちゃぶ台返しを繰り返すことで、支持されています。それが、現状を壊す方向に動いていれば、僕は決して、トランプが最悪の大統領だとは思いません。自民党が狙ってることと重なって見える部分があっても、ひょっとしたら、実は正反対かもしれません。安倍政権は、トランプ政権になってから困ってると思う。

 『新基地作れ』って、トランプは全然、言ってないのに、辺野古で基地を強引に作ってるでしょ? トランプになったから、『やばい。早くやんなきゃまずい』って言うんで、ガンガンやってる。アメリカからの命令ですべてが動いてると見てると、そこが隠れちゃう」

小沼氏「トランプ大統領が壁の予算を通した時に、下院が否決しましたね。上院も、共和党から造反が出て否決した。でもトランプが拒否権を行使した」

ビナード氏「そうです」

小沼氏「もう一回やろうとしたら、今度は2/3以上の同意が必要だから、行かれない。その代わり裁判所に行くと言うことで、今行ってますよね。そういう機能がアメリカでは今、あるでしょう? ナチスドイツではそれが、規則ではあったけれども、何もできなかった。安倍政権が今やろうとしてるのは、アメリカ型の非常事態じゃなくて、ドイツ型のを、やろうとしていますね

海渡弁護士「昔のドイツの、ですね」

小沼氏「安倍政権が今動いてる方向を見ると、昔のドイツそのものみたいに動いてる。アメリカは、非常事態宣言が出たかもしれないけれども、チェック機能が現実的に動いてる。昔のドイツと今のアメリカ、ぜんぜん違いますね

▲右から小沼道二氏、アーサー・ビナード氏、海渡雄一弁護士(IWJ撮影)

ビナード氏「リベラルな人にしてみれば、トランプの手法は決して素敵じゃない。でも、好き嫌いで見ると見誤ってしまうと思います。トランプは、多くのアメリカ国民が抱えている、不満という次元じゃない、鬱憤や怒りを、実にうまくつかんで、圧倒的に不利な選挙をツイッターで勝ったんです。で、その手法をやめると彼の政権は持たない。だから、次々と手を打つんです。

 これは、きれいじゃないし、おしゃれじゃない。でもある意味、民主主義的ではあります。三権分立が学べる現場ですよ。結果が、民主体制を豊かにするか、弱めるかわからないけど。いちおう、民主体制の、きれいじゃない仕組みまで、学べる状態になってるんです。

 オバマの8年間は、それがなかったんです。結局、実権を使わないから持つんです。オバマは、『象徴大統領制の、若くして選ばれた素敵な俳優』ですよね。トランプはもう、実権をフルに使って何でもやる」

トランプはアウトサイダーだが、維新は自民党の別会社に過ぎない!?

IWJ「ビナードさんにおうかがいします。トランプ政権が従来の大統領と違って、権力の『奥の院』と通じてないというご見解、アメリカ人の心をつかんでいるという点に『なるほどな』と思いました。日本では、自民党以上に憲法改正に非常に前のめりな姿勢を見せている維新が、大阪で圧勝しました。大阪では10年近く、維新が政治を続けていますが、維新もやはり、東京とか中央に対する反感を、非常にうまく利用してきたと思うんです。

 ビナードさんから見て、維新という存在がどう見えるのかお聞かせください。維新は今まで、自民党と対決しているというスタンス、そういうふりをしてきたのですが、今は、ほとんど改憲切り込み隊みたいなことを言ってます。大阪の選挙戦でも、自民党をけしかけるようなことを言ったりしています。そういった動きについてもどう思われるかを、お聞かせください」

ビナード氏「トランプがやってることと、橋下徹さんの手法は、共通点はいっぱいある。そのやり方を、否定するつもりはないです。ガツン!と言うから注目をひくし、嫌だと思う人も忘れられない。だけど技術面や表現のツールで重なる部分があるとしても、トランプと本質的に通じるものがあるのかどうか。それは、僕らが見抜く必要があると思います。

▲橋下徹氏(2015年5月28日 IWJ撮影)

 維新は、僕の見方が間違ってなければ、自民党の下請けだと思います。自民党の分派であって、それを、別会社にしてる。戦略が違うだけで、海兵隊と海軍みたいな形かもしれない。維新と自民党が、別組織だとは僕は思いません。

 トランプが、アメリカの権力の『奥の院』と本当に別物なのか。彼は本当にアウトサイダーなのか? それも僕、わからないです。僕の勘と、少ない情報と、いろんな人に話を聞いて『聖域なき邪推』で考えてるだけですから。『根拠を示せ』と言われたら、『いや、詩人ですから』と答えるしかありません」

 アーサー・ビナード氏が、トランプ政権との共通点を認めながらも、その本質を見抜くべきであると指摘した維新は、改憲への動きを顕在化させている。ビナード氏の「詩人」としての直感が正しければ、維新は自民の別動隊であり、維新が大声で叫んでいる「これから改憲へ向かう」というアジテーションは、安倍自民党の本音の代弁なのかもしれない。

 下記記事を、ぜひご覧いただきたい。

 IWJは、民主主義を瞬殺する緊急事態条項について、これまで継続的に報じ続けてきた。安倍政権による改憲発議の危険が切迫している今、ぜひとも多くの方に、下記コンテンツをあらためてご覧いただきたい。


(※1)改憲を発議されても「国民投票で打ち破ればいい」という見方がある:
 立憲民主党の枝野幸男代表は、2018年8月6日、岩上安身のインタビューに答え、自民党の緊急事態条項について「論外。議論するにも値しない。(改憲発議で出してくる可能性は)ないと思います。それから、国民投票で否決します」と、一蹴している。
参照:
(再掲載)「憲政史上最悪の国会」にした、 安倍政権「7つの大罪」を斬る!~岩上安身によるインタビュー 第892回 ゲスト 立憲民主党代表・枝野幸男衆議院議員 2018.8.6
岩上安身による立憲民主党代表・枝野幸男衆議院議員インタビュー~緊急事態条項ハイライト~2018.11.7

(※2)最高裁の裁判官人事にも介入し、弁護士会推薦を受け入れず、政権の意向を体現した人物を指名:
 15人の最高裁裁判官は、慣例的に職業裁判官出身6、弁護士出身4、検察官出身2、行政官出身2、法学者出身1の構成が続いてきた。また、長官は1979年以降全て職業裁判官出身者が就任してきた。
 弁護士出身者は東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会、大阪弁護士会または神戸弁護士会から1人ずつ、日弁連と各弁護士会との協議のもと、最高裁に推薦した候補者数名の名簿から最高裁が1名を政府に推薦、政府が任命してきた。
 2016年7月に就任した木澤克之氏は候補者名簿に名前があったが、日弁連と最高裁が政府に推薦したのは別の人物だった。官邸は最高裁の推薦しなかった木澤氏を指名。木澤氏は安倍総理の親友、加計学園の加計孝太郎氏と近く、加計学園の監事を務めていた。
 また、2017年2月に弁護士枠で就任した山口厚氏は、刑法学者で弁護士になったのは就任半年前。弁護士会と日弁連が最高裁に提出した推薦名簿に名前はなかった。
参照:
「安倍色」に染まった最高裁判所(FACTA ONLINE、2017年12月)

(※3)そういう意見書は、かなり前の段階で、日弁連は出してるんです:
日本国憲法に緊急事態条項(国家緊急権)を創設することに反対する意見書(日本弁護士連合会、2017年2月17日)

(※4)2018年1月31日に東京高裁が、『そういう事態は十分あり得る』として、東京地裁に差し戻した:
 安全保障関連法に基づく防衛出動で、「出動命令が出ると生命に損害が生じる恐れがある」と主張し、命令に従う義務がないことの確認を求めて2016年、茨城県の陸上自衛官の男性が国を相手取って提訴した。
 一審東京地裁判決は、自衛官の置かれた危険は抽象的なものに留まるとして、現実的な不利益が発生していないことから訴えを却下した。
 1月31日の東京高裁控訴審判決は、「出動命令に従わない場合、刑事罰の懲戒処分を受ける可能性があり、訴えの利益はある」と述べ、審理を東京地裁に差し戻した。
 これに対し国側は二審判決を不服として最高裁に上告していた。
 最高裁は6月27日に弁論を開くことを決定。高裁判決が見直される可能性も指摘されている。
参照:
自衛官の安保出動拒否、審理差し戻し、「司法の黙認が許されないことを示した」猪野弁護士が指摘(弁護士ドットコムニュース、2019年2月4日)
※出動命令に従う自衛官の義務 最高裁、判決見直す可能性(朝日新聞デジタル、2019年4月11日)

(※5)爆弾なんとか勇士:
 「爆弾三勇士」は、「肉弾三勇士」とも呼ばれる。
 1932年の第一次上海事変で、中国の国民革命軍が築いた敵陣へ突入するために、日本陸軍独立工兵18大隊が鉄条網を撤去するための爆薬筒を持って突入し、爆破する作戦を決行。志願者36名から選ばれた江下武二(えした たけじ)、北川丞(きたがわ すすむ)、作江伊之助(さくえ いのすけ)の3名の一等兵が突入し、戦死した。
 新聞各紙が美談として報じ、3名は戦死後2階級特進。映画や演劇、歌舞伎、文楽など、英雄として様々に取り上げられた。
参照:
爆弾三勇士(Wikipedia)

アーカイブの全編は、下記会員ページまたは単品購入より御覧になれます。

一般・サポート 新規会員登録単品購入 330円 (会員以外)

関連記事

「「令和新時代に新憲法を」の大合唱が始まる!? 国民投票の前に発議を食い止めねばならない!海渡雄一弁護士、詩人アーサー・ビナード氏らが緊急事態条項と切迫する改憲発議に警鐘!」への1件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    「総理が『緊急事態だ』と言った瞬間から、日本国民は何も言えなくなる。沖縄県知事も、抵抗できなくなる」

    「令和新時代に新憲法を」の大合唱が始まる!? 海渡雄一弁護士、詩人アーサー・ビナード氏らが緊急事態条項と切迫する改憲発議に警鐘! https://iwj.co.jp/wj/open/archives/447633 … @iwakamiyasumi
    https://twitter.com/55kurosuke/status/1125880006725361664

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です