県民健康管理調査「甲状腺検査」説明会(南相馬市) 2012.11.18

記事公開日:2012.11.18取材地: テキスト動画
このエントリーをはてなブックマークに追加

(IWJテキストスタッフ・松田/奥松)

 2012年11月18日(土)15時30分より、福島県南相馬市のロイヤルホテル丸屋において、福島県と福島県立医科大学による「県民健康管理調査『甲状腺検査』説明会」が行われた。同大の放射線医学県民健康管理センター甲状腺検査部門長の鈴木眞一教授が検査の概要を説明し、東京電力福島第一原発事故による放射線の影響について、健康リスクが低く、がん発症の心配が少ないことなどを強調した。

■全編動画
※開始後16分まで縦横比が歪んで見づらくなっております。何卒ご了承ください。

  • 日時 2012年11月18日(土)15時30分
  • 場所 ロイヤルホテル丸屋(福島県南相馬市)

 「甲状腺検査」説明会は、東京電力福島第一原発の事故を受けて実施されている、子どもへの甲状腺検査の概要を説明するものである。小児甲状腺がんへの理解促進と県民の不安解消を目的として、県内各地で行われている。

 鈴木氏はこの検査の趣旨を、「小児甲状腺がんの疫学調査は、これまで日本では行われていない。そのため、子どもの甲状腺のしこりの有無を超音波によって検査して、その状態を把握し、保護者の不安解消と甲状腺の変化の有無を生涯にわたって見守る」と述べた。また、「実施者は、甲状腺医療に関わる学会の専門医や技師に限る。1次検査は、判定委員会で複数の専門医による合議で結果を決める」など、検査の信頼性について説明した。

 1次検査の実施状況については、「2012年8月末現在、対象者10万1385人のうち、受診者8万3289人で、受診率は82.2%であった。判定は、5ミリ以下の結節(しこり)や20ミリ以下ののう胞が認められるA2判定。あるいは、それらが認められないA1判定。5.1ミリ以上の結節や20.1ミリ以上ののう胞が認められるB判定。ただちに2次検査を要するC判定があり、これまでの検査結果として、2011年度はがA1判定が64.2%、A2判定が35.3%、B判定は0.5%、C判定は0%であった。2012年度はA2判定が43%、B判定が0.6%、C判定が0%である」と報告した。

 鈴木氏は「通常の診療や研究では、3ミリ以上ののう胞を所見とするが、検査では1ミリ以下まで捉えている。通常通りに3ミリ以下を所見なしとするとA2判定の35%は16%まで低下する」などと、検査の精度が高いために、のう胞の頻度が高く出ることを解説した。さらに、甲状腺がんの特徴として進行が遅く、5年生存率は9割と高いため、2~3年後でも対応ができること、45歳以下など、若年であればあるほど回復の見通しがよいことなどを挙げ、「現時点で、子どもに甲状腺がんの増加が起こる可能性は低い。のう胞1ミリ以下でも検出する検査体制で、長期間にわたって甲状腺の状態を見守り、不安を助長したり、逆に過剰診療にならないよう努めていく」と述べた。

 最後に質疑応答が行われ、鈴木氏と、同センター国際連携部門の丹羽太貫特命教授が答えた。A2判定が出た子どもの母親からの、「発病を避けるためには、どうするべきか」という問いに、鈴木氏は「検査体制はしっかりしている。一般的・健康的な生活習慣に努めてほしい」と応じた。また、「安心といわれる一方で、比較的正確な情報が入ると思われる医師や教育・行政関係者の子弟が、県外などに避難している現状をどう考えるのか」という問いには、「個人的な印象としては、なぜそうするのかわからないが、それぞれの考え方だろう」と答えるにとどまった。

 そのほか、「検査結果の情報公開の手続きを、簡便にしてほしい」という要望や、県の放射線健康リスク管理アドバイザーの山下俊一同大副学長について、「安全安心を執拗に強調するその発言を、信用する市民はほとんどいない。県立医科大学だけではなく、民間の調査機関なども活用すべきだ」といった声も上がった。

IWJの取材活動は、皆さまのご支援により直接支えられています。ぜひ会員にご登録ください。

新規会員登録 カンパでご支援

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です