【岩上安身のファイト&スポーツ】キックボクシング界の「神童」那須川天心がボクシング界の「怪物」井上尚弥との「ドリームマッチ」を希望!国内史上最高の「異種格闘技戦」に期待! 2017.12.30

記事公開日:2017.12.30 テキスト
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 今日(12月25日)はクリスマスだというのに、朝っぱらから違反者講習会。違法駐車とかで細かく切符を切られて、行かざるを得ない羽目に。問題は仕事で全然寝てないこと。しかも前夜、ウーマンラッシュアワーの村本氏と夜中に突然会って話し込むというハプニングもあり。もうしかし、仕方ないので、このまま寝ずに鮫洲へ行く。ま、何とかなるでしょう。

 起きがけ、なんか、仕事がらみではなくテンションが上がるような情報ないかな、眠気覚ましになるようなやつ、と思ってちょっとググったら、あった、ありました。息抜き領域が格闘技ばかりと異様に狭くなっていることはお許しいただきたい。

 年末31日のRIZINで、キックのトーナメントに出る那須川天心。キック史上最高傑作と呼ばれる神童が、なんとMMAでこのバンタム級クラス最強の堀口恭司と、近い将来、キックルールで戦う可能性があるという。

 那須川は19歳にして、キックの世界でもう相手がいないほどの強さ。ドリームマッチの相手として、K-1の武尊の名前がしばしば上がるし、那須川自身が武尊との対戦を望む発言を何度かしたが、武尊もK-1側も無視一辺倒で、まるでロマゴンとの対決から逃げた井岡一翔や井岡ジムの姿勢を彷彿とさせる。

 格闘技ファンというものは、実にシンプルで、強いファイター同士が最高のコンディションで真剣勝負を戦うのを見たい。どちらが強いのか知りたい、それがすべてなのである。「大人の事情」だか何だか、そんな業界事情で、対戦を求む声にガン無視を決め込むという、そうした姿勢だけで、武尊にも新生K-1にも興味がまったくもてなくなった。

 リングに上がって戦って勝ち負けを決めるのが格闘技だというのに、戦う姿勢のない選手やファンが待望するドリームマッチの提供に積極性を見せない団体には存在価値はない。

 僕も以前は武尊と那須川の試合を見たいと思っていたファンの一人だが、もう関心がなくなった。ファンの論争もいずれ消えてゆくだろう。かつて井上と井岡と戦ったら、という話題がボクシングファンの間でひとしきり盛り上がったが、もう誰も興味をもたない。同様に、那須川vs武尊戦への興味は忘れられてゆくだろう。

 話を戻すが、那須川は、キックとMMAの二刀流を続けていたが、ここにきて、RIZINの舞台でキックの試合をしたい、という再三のアピールが通り、ついにRIZINの大みそかの大舞台で、キックルールでのワンデートーナメントが開催されることになった。その試合も楽しみであるが、その先にある、元UFCファイターで伝統派空手をベースに圧倒的な打撃力を持つ堀口恭司とキックルールで打撃戦をやるという話、ぜひとも実現してもらいたい。堀口も、RAIZINでのMMAのバンタム級トーナメントに、31日、出場する。那須川、堀口とも、このハードな1日をまずは勝ち抜かなければならない。

 那須川には、自身が積極的なアピールをして、自らドリームマッチを引き寄せてしまう強運がある。半分はその自身のアグレッシブさ。もう半分は周囲に恵まれ、かつ対戦相手の運にも恵まれていること。

 現役ムエタイ王者のワンチャローンをバックスピンキックでKOしたり、元ムエタイ王者でかつボクシングの世界王者でもあり、井岡一翔に土をつけたアムナットに、ボディブローでKO。そんなビッグマッチや芸当は、よほどの強運に恵まれなくてはできるものではない。だいたい、試合自体がそう簡単に組まれるようなものではない。

 さらにこの神童は、二刀流だけでなく、三刀流も狙っているフシがある。ボクシングである。天心のボクシングテクニックはハンドスピードやパンチ力だけでなく、ディフェンス力、フットワークともに卓越している。特にサウスポーの構えからの左ストレートのカウンターはずば抜けているし、サウスポーながらオーソドックスの相手右の脇腹へのレバーショットも打てる。

 アマへ転向して東京五輪へ、という話もなくはないそうだが、天心本人は、ボクシングのレジェンド、メイウェザーと、UFCの二階級王者コナー・マクレガーのような異種格闘技のビッグマッチを目指したいと公言している。とはいえ、そのターゲットとなるボクサーは誰なのか。これまで天心は誰の名前もあげなかったが、なんと「イサミ」というメーカーのカタログの巻頭インタビューで、名前をあげていた。

 天心がドリームマッチの相手としてあげた名前が、なんと現WBO世界スーパーフライ級王者の井上尚弥選手!

 こんな壮大なアドバルーンが、格闘技グッズのカタログメーカーの巻頭に載っていて、誰の目にも触れない(それは言い過ぎか)なんてこと、あっていいのか、とテンション上がりまくり。当の井上は、対戦相手がことごとく逃げまくる状況で、同階級の統一戦もできない。

 同階級のWBA王者ヤファイは、「巨額の経済保証がなければやらない」と、井上と戦えば自分が負けて全てを失う前提でその補償を求めつつ断っている。IBF王者のアンカハスも、自分から井上に挑戦状を2度も叩きつけておきながら、またしても逃げた。

 このスーパーフライ級には、PFP1位に君臨していた「ロマゴン」ことローマン・ゴンザレス、そのロマゴンを2度続けて破り、実力を証明したWBC王者のシーサケット、そのシーサケットに挑戦が決まっているエストラーダ、さらにクアドラスなど、実力派、人気スターがそろっている。彼らと井上とのカードは日本のファンだけでなく、世界中のファンが見たいと願っているカードだ。

 しかし、井上はこの面々の中で、アンカハスだけしか興味がなかったらしい。ボクシング専門誌で、「アンカハスが一番強い。アンカハスとなら無理なスケジュールでも統一戦をやりたい」と、来年2月に米国カリフォルニアで行われる「Superfly2」というビッグイベントへの参加に前向きな姿勢を示していた。

 しかし、アンカハスが別のプロモーションと契約して、同大会への出場を見送ったことで、この統一戦は流れ、同時に井上尚弥は、あっさりと「スーパーフライ級卒業」を決めてしまったようだ。

 年末のヨアン・ボワイヨとのV7戦を無事クリアしたら、2018年には一階級上げて、バンタム級で三階級制覇を挑むつもりであるという。スーパーフライ級のきら星のごときライバル達との試合が見られないのは残念ではあるが、井上を敬遠している、というのでは仕方ない。

 井上尚弥選手の評価に関しては、以下のツイートも御覧いただきたい。

井上尚弥がP4P7位。ちょっと評価されすぎではないか、とファンながら心配にもなる一方、米国の最も権威あるリング誌の評価。すごい、としか言いようがない。

 また、我々ファンの目と、一流ボクサーの目というのは違うもので、井上は「シーサケット、アンカハス、ヤファイの中なら、やっぱりアンカハスと一番やりたいんですよ。実力的に強いなと思うのはアンカハス」(BOXING BEAT 2018年1月号より引用)と見ていた。へえー、そうなのか。シーサケットよりもロマゴンよりもエストラーダよりも、井上の目から見ると、アンカハスが上なのかと驚いたが、それがプロの目というものなのだろう。

 その「一番強い奴」とやれる目処が立たないなら、さっさとバンタムへ行く、というあたりが、商売っ気やとらわれやこだわりがない井上らしい、とも思う。

 スーパーフライ級で相手がいなくなった井上は、年末の7度目の防衛戦を最後にバンタム級へ上げる予定。ここには山中から王座を奪ったネリもいるし、ネリとの再戦で王座を奪還できれば山中との日本人対決も期待できる。11秒という世界最短KOを記録したゾラニ・テテもいる。その上、那須川も。

 面白いではないか。まだ、ボクシングでは那須川は井上の相手ではないと思うので、那須川選手には、大橋ジムへ出稽古に行って、ぜひぜひバンタムクラスとしてスパーリングしてもらいたい。那須川本人も、「パンチの技術は全部そうですし、フィジカルも負けています。体幹とか凄いですし、ああいう選手になることが目標ですね」と、まだまだ実力は井上選手の方が上とリスペクトの言葉を述べていた(ISAMI Original Catalog&Magazine2017 vol.27号より)。

 井上は雑誌の対談相手の田中恒成にも、ジムへおいでよ、一緒に練習しよ、スパーリングしようよ、と気軽に誘っていた。草野球に誘うようなこの気楽さ、気軽さで。たぶん那須川にも同じように「おいでよ」と言うことだろう。

 井上が練習しようよ、スパーリングしようよ、と誘ったときの、「ええっ、いいんですか」という田中の驚きぶり。田中も二階級制覇王者。只者ではない。が、井上の前だと、すっかり弟分。2人の対談が実に面白い。井上は試合以上にスパーで強く、井上とスパーしてボコボコにされた選手らによる「被害者の会」が結成されるとか(笑)。

 この対談、面白いのでぜひどうぞ。田中もいつかは井上と、と思っているはず。

 ここに那須川も絡むと実に面白いのに。KO率100%のレコードを続けるフライ級王者の比嘉も絡んでもらいたい。

 那須川、数年だけ、ボクシングに専念しないかな、と思う。その後でもキックや格闘技には戻れる。まっすぐ前を見て戦う気持ち満々の若者の言葉を聞くと、すごく元気になれる。

 年末31日には、本当は田中恒成と田口良一選手がお互いのラストフライ級のベルトをかけての統一戦が予定されていた。それが田中選手のケガで流れたのは惜しい限りだったが、田中は、どうしても自分で謝りたくて、名古屋から東京のワタナベジムまで足を運び、練習が終わるまで外で待って、終わって出てきた田口良一にわびたという。このエピソードひとつで、本当に統一戦をやりたかったんだろうな、という両者の思いも、自分の怪我で流してしまって申し訳ないという田中の思いも伝わって、胸にひびいた。

 統一戦をすれば、しかも日本人同士であれば、勝者がすべてを得て、敗者はすべてを失う。そうしたリスクに、しかし立ち向かうのが格闘技の勝負に挑むものの心意気である。

 田口はかわりに、八重樫からベルトを奪った強豪のミラン・メリンドとの統一戦を、この31日に戦う。勝つにしても、負けるにしても、ぎりぎりの高みを目指して戦う男たちは美しい。そして微笑ましい。井上だけでなく、田中についても、今回の件でいっぺんにファンになった。

 毎年大みそかといえばTBSで防衛戦を中継するのが恒例となっていた井岡一翔は、WBA世界フライ級タイトルを謎の返上。今年、グラビアアイドルと結婚してから一切、練習もせず、ついには試合も王座も放棄。いまだにファンに対して本人が正式な説明も発表もない。一時は失踪説も流れたというのに、自身で何も発言しないのは無責任この上ない。

 何年間も大晦日に井岡の防衛戦を生中継して来たTBSにも、広告代理店にも、スポンサーに対しても、申し訳ないと思わないのだろうか。無責任の極みであり、ボクシングのチャンピオン以前に、一人の社会人として失格である。仮に井岡がカムバックすると言い出しても、もう2度と、テレビ放映はできないだろう。世の中を舐めるのもいい加減にしたほうがいい。井岡にはファンに対しても、何も説明していない。本当に失礼な話だ。

 呆れ返るのは、全て責任を放り投げて、何の説明もしようとしない井岡が、完全に世の中から隠遁した、というわけではなく、自分の新妻のインスタ上には、幸せそうな表情で、おいしいものを食べた写真が日々、掲載されていることである。

 彼を本気で応援してきたファンは本当にバカにされた気分だろう。

※2017年12月25日付けのツイートを並べて加筆し、掲載しています。

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