NTTと東電を「家長」とする東芝倒産危機の構造に迫る~半導体や原発で勝負する気など最初からなかった!? 『東芝解体電機メーカーが消える日』著者・大西康之氏に岩上安身が訊く、第二弾! 2017.8.10

記事公開日:2017.8.10取材地: テキスト動画独自
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(取材:岩上安身、文:城石エマ、記事構成:岩上安身)

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※8月16日テキストを追加しました。

 3ヶ月もの間延期に延期を重ねていた東芝が、2017年8月10日、2017年3月期の決算を発表した。監査法人「PwCあらた」の「限定つき適正」の意見がついた決算によると、グループ全体の最終的な赤字額は9656億円で、日本のメーカー史上最大の大赤字になるという。また、債務超過は5529億円もの巨額な金額になった。

 東芝の会見が行われる直前のタイムリーな時間に、岩上安身は『東芝解体電機メーカーが消える日』著者でフリージャーナリストの大西康之氏に、2度目のインタビューを行なった。

 なぜ、「日本のものづくり」はここまで無残に凋落してしまったのか――?

 大西氏は、『東芝解体電機メーカーが消える日』の中で、その状況悪化の主因を、通信事業と発電事業をベースとする「ファミリー構造」の「甘え」にあると喝破する。

 「電話が電電公社しかなかった時代は、電話代を値上げし放題でした。払う側からすれば税金と同じ。そしてそのとき、送電線などを請け負うのが電機メーカーでした。東芝などのメーカーは、実は電電公社の『下請け企業』に過ぎなかったのです」

▲大西康之氏

 大西氏によれば、東芝や日立などの日本を代表する電機メーカーは、NTTを「家長(あるいはお殿様)」とする「電電グループ」と、東電など電力10社を「家長」とする「電力グループ」に加わり、排他的なカルテルを形成して自由競争の厳しさをまぬがれ、「お殿様」が自民党政権の支配する官邸の「指導」で、景気を上げる必要がある、と言われると、潤沢な設備投資資金が投下されて潤う、まるで公共事業のような構造の中で、安穏とした経営ができたのだという。

 そうやって高コストで「ものづくり」をしていたのが現実なので、当然ながらそのような「甘やかされた」経営姿勢では、バブル崩壊以降の長期不況、そして2008年のリーマンショック、2011年の3.11以降の厳しい状況下で、生き残りをかけて必死で戦う韓国や中国勢を相手に勝ち抜けるはずもない。

 それでも、日本のメーカーは「日本スゴイ」の幻想にとらわれ続けた象徴的なのが、スマホ市場が拡大する中での、NTTドコモの「iモード」での失敗だ。

 「ポケットに入れられるインターネットは、iモードが世界初でした。NTTは世界中のキャリアに2兆円もの出資をして、iモードを広めようとしました。しかし、結局世界はスマホへ。日本のメーカーはスマホで必要な技術を全部持っていたが、NTTが『iモードを世界に広める』と言ってやらせなかったため、みんなスマホに乗り遅れてしまったんです」

 大西氏は前回7月21日のインタビューで、崩壊しつつある日本の電機メーカーを、時代遅れの巨大戦艦にしがみついて敗北した第二次世界大戦での旧日本軍に重ね合わせた。「日本スゴイ」の幻想にとらわれ、判断を読み誤った日本のメーカーは、まさに「戦艦大和」をつくって得意満面となっていた旧日本軍とそっくり重なり合う。

 かつて、戦艦大和の建造(現代の価格にすると2680億円)を決めてしまった大蔵省は、87年に「昭和の3大バカ査定」として、戦艦大和、伊勢湾干拓、青函トンネルの3つをあげた。無駄な支出を決めてしまった大蔵省自身の反省の言葉であったはずが、そんな「反省」は、昨今の戦前・戦中賛美の合唱の中で忘れられつつある。

 時代遅れで無能な大和・武蔵などの巨大戦艦を建造したことが、どれほど愚かだったか、忘れかけてしまうと、巨大液晶ディスプレイ工場の建設やiモードに特化した戦略性の著しく欠けた一点豪華の設備投資を行い、「大敗戦」に至ってしまう。そしてその責任を誰も取らない。

 多額の設備投資費(1994年のピーク時でNTTからの設備投資費は年間4兆円!)を手にできる日本のメーカーは、急成長する韓国や中国の企業と本気でしのぎを削りあうこともなく、次々と敗北していく。その中でも東芝は、NTTを家長とする「電電ファミリー」の中でも、東電を家長とする「電力ファミリー」の中でも中核をなし、家電や半導体、原発で次々と失敗をして、今、日本の製造業史上最悪の大赤字を出して、倒産寸前に立たされているのだ。

 日本のメーカーの悲劇は自動車産業とて例外ではない。ハイブリッド技術を確立したトヨタは今、世界がEVを主流とする中で、敗北を喫している。大西氏は、悲劇の連鎖の理由を「意思決定のプロセスに合理性がない。本当に勝てるのか?と検証しない。そして失敗から学ばない」と断じた。

 インタビュー後、大西氏とIWJは東芝の決算報告記者会見に急行。綱川智代表執行役社長と平田政善代表執行役専務がマイクを握り、9656億円もの大赤字と5529億円もの債務超過を伝えた。

▲綱川智・東芝代表執行役社長

 記者会見後、IWJのカメラの前で大西氏は、「メモリー事業が売却できないと、二期連続で債務超過になり上場廃止。すると資金繰りができず倒産する可能性は大きくなる」として、「倒産の足音が近づいてきていると見るべき」だと述べた。

 現在、東芝の半導体子会社の売却については、日米韓連合、米ウエスタン・デジタル、鴻海精密工業の3者の間で協議が行われているもののどれも難航。

 二期連続の債務超過を避けるためには、2018年3月末までに売却を済ませなければならないものの、大西氏によると、独禁当局(日本では公正取引委員会、中国では商務部、米国では司法省反トラスト局および連邦取引委員会など)の審査には半年はかかると見られ、逆算するともうそろそろ交渉がまとまらなければ、間に合わなくなる可能性が出てくるとのことである。

 東芝倒産は現実になるのか――? 7月21日に行われた大西氏へのインタビューその1とあわせてご視聴いただき、日本の「ものづくり」神話の凄まじい崩壊の現実を直視し、真剣に多くの人々に問題意識を共有していただきたい。

 同時に、「日本スゴイ」の愚劣なプロパガンダを繰り返す地上波テレビや新聞、雑誌、出版などのマスコミ、そしてそのスポンサーたる、今や崩壊中の経団連傘下の大企業に対し、厳しい批判の目を向けていただきたい。

 大西氏による、日本の電機メーカー敗戦記のシリーズは、今後も続編を予定している。東芝はもうひとつ、軍需産業という隠れた一面もあわせもっている。また東芝以外の大手電機メーカー、日立、三菱、NEC、シャープ、ソニーなどの盛衰のドラマも明らかにしていただく予定だ。

 『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』という、日本軍の敗北を組織論から説いた名著がある(戸部良一他著・中公文庫)。大西氏が東芝の敗戦記を書くにあたって、念頭に置いていたという名著である。

 「失敗の本質」から学ばない者は、同じ失敗を延々と繰り返し続ける。それは日本という国の命運にもつながる。電機メーカーの株主や社員、その家族だけの悲劇ではすまない。系列の下請けや融資してきた銀行、あらゆる機関、人々に影響が出る。東芝を筆頭とする電機メーカーの「大敗戦」は、誰にとっても決して他人事ではない。ぜひ、ご視聴いただきたい。

 以下に、インタビューの実況ツイートを並べて掲載する。

■イントロ

  • 日時 2017年8月10日(木) 12:00~
  • 場所 IWJ事務所(東京都港区)

「みんな自分が東芝を潰したと言われたくない」――東芝に「限定付き適正」意見がついた裏側

岩上「本日は東芝が決算を発表するというタイミングの日に、大西さんにお話をうかがいます」

大西氏「本来東芝は3月末決算で5月には発表しているはずだった。監査法人の『PwCあらた』が東芝の出した数字を認めず正しいとハンコを押さなかった」

岩上「この間東芝は東証二部に転落」。

大西氏「監査法人は原発会社『S&W』の6000億円超の損失がわかったのはもっと前だったのではとして決算やり直しを求めていた。東芝は正しいとしてやり直さなかったので『限定付き適正』。監査法人が折れた。

 もし『限定付き適正』を出さなければ、東芝が上場廃止になって倒産ということもありうる。そうなると結果的に監査法人が潰したと言われてしまう」

岩上「今日の記者会見でやり直しを発表する可能性は?」

大西氏「ないと思います。監査法人、取引所、メインバンクの押しつけ合いに。みんな自分が東芝を潰したと言われたくない。でもリスクは取りたくない」

岩上「粉飾なのだから刑事問題では?」

大西氏「その可能性も。ウエスチングハウスをめぐってはSECが調査中」

岩上「今日の東芝の会見はIWJも中継に行きます。終了後には大西さんに解説もお願いいたします」

経産省が「オールジャパン」を目指したジャパンディスプレイ シャープから顧客を奪い自身も大赤字の無残

岩上「さて、ジャパンディスプレイが4000人弱リストラという話も」

大西氏「液晶は設備投資の打ち合い。体力勝負です。ジャパンディスプレイは東芝と日立とソニーの液晶部門を統合。経産省が『韓国と戦う』ということでお金を入れた。経産省はシャープも入れてオールジャパンにしたかったが、その当時のシャープは元気だったので突っぱねた。しかし、その翌年に経営悪化し、台湾の鴻海(ホンハイ)に身売りするハメになりました。経営悪化の原因を作ったのはジャパンディスプレイ。ジャパンディスプレイが価格競争に入ったことでシャープの客を取った。しかし結局大赤字に」

岩上「そして従業員削減」

大西氏「しかも美味しいマーケットは全部韓国、中国に取られている。今最も利益を出している電化製品であるハイエンドスマホと言ったらアップル、サムスン、台湾メーカー。日本はなし」

岩上「経産省の責任も問われるのでは?」

大西氏「もちろん。国が面倒を見てくれるということで甘い経営をしてきた。国も雇用が大事だからと税金を出す」

「iモード大東亜共栄圏」を作ろうとしたNTTの失敗はまさに「戦艦大和」の失敗そのもの!

岩上「背景には電機メーカーのファミリー構造が」

大西氏「電話が電電公社しかなかった時代は電話代を値上げし放題だった。払う側からすれば税金と同じ。送電線などを請け負うのが電機メーカーだった。パナソニックもNECも下請けだった」

岩上「94年のピークまで設備投資費年間4兆円を山分けしていたと」

大西氏「日本のガラケーは電話代も、電気料金も同じ悪名高い総括原価方式です。かかった設備投資や人件費など原価を足して利益を乗せ頭割りをした料金を好きにつけてよかった。そんな料金を黙って払う客は、民間の世界にはいない」

岩上「スマホが出てきてガラパゴス化しました。なぜスマホ対応できなかったんでしょうか?」

大西氏「日本のメーカーはスマホで必要な技術を全部持っていたが、NTTが『iモードを世界に広める』と言ってやらせなかった」

岩上「『iモード大東亜共栄圏』を作ろうとしていたんだ」

大西氏「NTTは2兆円をもって世界中のキャリアに出資したがみんなスマホへ。おかげでファミリーのメーカーだけはみんなスマホに乗り遅れた」

岩上「iモードは何がすごかったのか?」

大西氏「ポケットに入れられるインターネットとしては世界初だった。画期的だったが全部NTT仕様だったので真似しようと思ったらドコモに教わるしかなかった。ドコモはiモードで海外企業に教えようとした。そのために2兆円もの金を使ってしまった。しかし、スマホはパソコンで作られた技術をモバイルに持ってきているので、圧倒的に楽」

岩上「ドコモ帝国を作ろうとした」

大西氏「トヨタのハイブリッドも同じ。技術はすっごい難しいからみんな作れない。そうしているうちにみんな作れるEVが出てきた。普及させるために技術はオープン。安いのが出てきてマーケットの裾野が広がり、プレミアムがものすごい儲かる」

岩上「iモードは今どうなっています?」

大西氏「お荷物に。スマホに行きたいけど使っている人がいるからやめられない」

岩上「戦艦大和状態ですね」

大西氏「意思決定のプロセスに合理性がない。本当に勝てるのか?と検証しない。そして失敗から学ばない。iモードから学んでいればハイブリッドの失敗はなかったはず。ドコモの経営者や総務省は責任も取っていない。ドコモが海外で配った2兆円だって、もとは電話代という税金。ユーザーは怒るのが筋ですが怒らない」

「有機EL」の商業化に最初に乗り出したソニー…しかし経営悪化で中国・韓国勢にシェアはまるごと奪われた!

岩上「電力ファミリーのように、排他的なカルテルを作るところが記者クラブそっくりですね。経済記者はそういうのがわからなかったのですか?」

大西氏「わからない。経営者の夜回りをして、次の出資先を聞き出すのが仕事。戦中と一緒ですよ、『ドコモ連戦連勝』と。今、日経の記者時代に書いていたものを読むと恥ずかしい。有機ELは高いし、すぐ壊れると、日本のメーカーは二の足を踏む。一方韓国と中国は2~3年前に思い切って有機ELに投資を振った。なかなかうまくいかなかったものの、去年アップルが有機ELにすると言ったことで、サムスンとLGに勝負あり」

岩上「うわあ…」

(…会員ページにつづく)

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