【IWJブログ・特別寄稿】「林文子氏から一筆取った」!? 自公推薦候補を応援した民進党・牧山ひろえ議員を直撃! 横浜市長選で民進党は受け皿になることを放棄した(ジャーナリスト・横田一) 2017.8.8

記事公開日:2017.8.8取材地: テキスト
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(取材・文・写真:横田一)

 なぜ民進党は、安倍政権にさらなる打撃を与える絶好のチャンスを、みすみすと逃したのか――。

 蓮舫前代表の辞任を受け、9月上旬に代表選を予定している民進党。7月2日の都議選で惨敗、30日の横浜市長選では与野党対決の構図を作り出すことができず、逆に自公推薦の林文子氏をアシストするという空回りの行動に出て有権者の失望を買った。果たして今度の代表選挙で与党の受け皿となる野党第一党に生まれ変わることができるのか、国民の期待値はかなり低いと言わざるをえない。

 事実、内閣改造前に安倍内閣の支持率が20%代に割り込んだ時でさえも、民進党の支持率が上がることはなく、先月7月のNHK世論調査では、結党以来、最低の数値を記録した。

 横浜市長選では「自主投票」を決行した民進党。神奈川選挙区の牧山ひろえ参院議員は林市長を推し、連日、応援演説でマイクを握った。同党の山尾志桜里衆院議員も同じく、林氏を支援。

一方で、民進党の真山勇一参院議員はカジノ反対を明確に打ち出した伊藤大貴候補の選対本部長をつとめ、真山議員と同じく神奈川県選出の民進党・江田憲司衆院議員も伊藤候補の応援に回るという分裂ぶりを見せた。

 「牧山議員は、カジノ推進で連携する菅官房長官の存在や、『隠れカジノ推進派』という林市長の正体を覆い隠す片棒を担いだのではないか」――

 こう指摘するのは横浜市長選を取材したジャーナリストの横田一氏だ。横田氏は、選挙中、林市長を支援した民進党の牧山議員を直撃。林氏から「一筆取った」と明言した牧山議員だったが、いったい、何を一筆取った、というのだろうか。

 横田氏はほかにも、民進党の蓮舫前代表や林市長本人、菅官房長官にも次々と取材。市長選から主に見えてくるのは、安倍政権に打撃を与えられる絶好のチャンスを自ら逃した民進党の失態である。

 以下、横浜市長選の模様を取材した横田一氏による検証レポートを掲載する。(IWJ編集部)

記事目次

民進党の不可解!カジノ推進法案に反対なのに、なぜ「自主投票」を決行したのか

▲横浜市長選 伊藤大貴候補選対本部長・真山勇一 参議院議員(民進党)

 横浜市長選(7月30日投開票)で自公推薦の林文子市長が「カジノ反対」の新人2候補を破って3選を果たしたが、前民進党市議の伊藤大貴氏の選対本部長を務めた真山勇一参院議員(神奈川選挙区)は、民進党の不甲斐なさに呆れて、こう言い放った。

 「党のガバナンス(統治)が効いてない。(民進党は)絶対、政権なんて取れませんよ!」

 民進党の不可解な対応は、選挙最終盤の7月27日に蓮舫代表が辞任表明をして、水を差したことだけではない。去年12月に成立したカジノ推進法案に反対したのに、カジノ誘致が争点の横浜市長選で自主投票を決め込んでしまったことだ。

 しかも横浜は、安倍晋三首相と一緒にカジノを推進する菅義偉官房長官(神奈川二区)の地元で、維新の本拠地・大阪と並ぶ有力なカジノ候補地だ。しかし都議選で自民党の歴史的惨敗の一因となった加計問題と同様、「安倍首相のお仲間への利益誘導」と見なされて横浜市民の猛反発を受ける可能性があった。

 江田憲司代表代行(神奈川8区)は7月8日、地元の集会でカジノと加計問題の共通点について、次のように訴えた。「(去年12月の)カジノ法案の強行採決でも、安倍官邸と維新が連携、公明党を置き去りにした。『岩盤(規制)にドリルで穴を開ける』と言って加計に落ちるように開けたが、カジノでは横浜と大阪だけの穴を開けようとしている」。

 IWJでは2014年に、日弁連元副会長で長年にわたりサラ金などによる多重債務問題に取り組んできた新里宏二弁護士に、岩上安身がインタビューを行った。新里氏は「日本人の男性の9.6%はギャンブル依存症。そのような状態でカジノをやっていいのか」と警鐘を鳴らしている。

新潟県知事選から何も学んでいない!蓮舫前代表「県連の決定を尊重する」

 横浜へのカジノ誘致の是非を問う与野党激突の構図にすれば、民進党・前衆院議員の野党統一候補が勝利した仙台市長選(7月23日投開票)に続いて、横浜市長選でも自公推薦に勝利する可能性は十分にあった。なぜ民進党は、安倍政権にさらなる打撃を与える絶好のチャンスを逃したのか。8月3日の蓮舫代表会見で単刀直入に聞いてみた。

▲前民進党代表・蓮舫氏(7月18日の代表会見で、写真:IWJ)

――(横田)(去年12月の)国会でカジノ法案の時に党首討論までして「反対」を訴えた民進党としては、まさにカジノを争点とした横浜市長選で、自主投票ではなく反対派候補を推薦する与野党対決の構図に持ち込むべきではなかったか。実際に江田憲司代表代行は「『伊藤大貴候補を党として支援・推薦しましょう』と(党執行部に)提案した」と聞いているが、なぜそういう形にならなかったのか。

蓮舫代表「基本的には、市長選挙ですから県連の決定を私達は尊重する立場です。今回の神奈川県連は『自主投票』という形で決めていますので、いま言った前提は当てはまらないと思います」

――民進党が「何をするのかわからない政党」と言われている中で、国政でカジノ反対を打ち出したからには、地方選とはいえ、県連任せにするのではなくて党(本部)も積極的に関わって争点づくりするべきだったのではないか。

蓮舫代表「組織論としては違います」

 正直言って唖然とした。新潟県知事選の時と同じ言い訳を繰り返すだけで、当時の教訓を活かそうとする姿勢が皆無であったからだ。

 原発再稼働が最大の争点となった去年10月の新潟県知事選でも、民進党は民意の受け皿になることに失敗した。

米山隆一知事(当時は候補)が再稼働反対を掲げて立候補したが、民進党新潟県連は自主投票の方針を変えようとせず、党本部(蓮舫執行部)はその意向を尊重した。党内から「推薦すべきだ」という声が出ても耳を傾けず、蓮舫代表会見で私が何回も質問しても、「新潟県連の意向を尊重」という紋切型の回答しか返って来なかった。

 ただし新潟県知事選では、蓮舫代表を含めた民進党国会議員が自主的に新潟入りをして米山氏を支援、「実質的な野党統一候補 対 自公推薦候補(森民夫・元長岡市長)」という与野党対決の構図となった。自公推薦候補の応援をする民進党国会議員は皆無であったためだ。

▲新潟県知事・米山隆一氏(2016年9月28日、岩上安身のインタビューで)

 しかし今回の横浜市長選では、与野党激突の構図を民進党が崩す形となっていた。牧野ひろえ参院議員(神奈川選挙区)や山尾しおり前政調会長(愛知7区)ら、民進党議員がわざわざ林氏を支援、逆に江田代表代行や真山参院議員らは共産や自由や社民と共に伊藤氏を応援する分裂状態となったからだ。

 横浜市民の圧倒的多数はカジノに反対している。その民意の受け皿になる役割を民進党は放棄したともいえるのだ。

 実質的な野党統一候補が自公推薦候補を破った新潟県知事選と同様、横浜市長選でもカジノ反対候補が逆転勝利をする可能性は十分にあった。原発と同じようにカジノ誘致への反発は非常に強く、小樽市長選(2015年4月26日投開票)では自公と民進党と連合が推す現職市長が、カジノ反対の新人候補に敗れる大番狂わせが起きていた。

 2人のカジノ反対候補を予備選実施などで一本化、「カジノ誘致イエスかノーか」を問う与野党激突の構図に持ち込めば、小樽市長選の再来も夢ではなかったのだ。

民進党が連敗食い止めに助け舟!? 菅義偉官房長官は安堵の表情

 野党第一党の迷走に救われたのが、安倍自民党だ。都議選(7月2日投開票)で歴史的敗北を喫し、仙台市長選(7月23日投開票)でも野党統一候補に敗れたが、横浜市長選では三連敗を回避できた。7月31日付の読売新聞が「自民現職勝利に安堵」と報じたのはこのためだ。

 林市長に当確が出た直後の20時半すぎ、選挙事務所に当選祝いで現れた菅官房長官の笑顔がすべてを物語っていた。すぐに林市長と並んだ囲み取材が開始。その様子はIWJが中継した。

▲林氏の再選を祝う菅義偉官房長官(左)と黒岩祐治神奈川県知事

 菅官房長官は林氏の圧勝を「大変うれしく思い、ほっとしている」と述べ、カジノについてもこう語った。

――林市長はカジノについて国の動きもみながら丁寧に合意形成といいますか、市民の話を聞いてとおっしゃいましたが、菅先生としては林市長に対してIRについてどのように話を進めていくのでしょうか。

菅官房長官「市長は選挙に出馬する前の記者会見で、『検討していきたい』ということでした。そういう方向で市長として全体の流れを見ながら方向性を決めていくということだと思います」

 ただし林氏の公約にはカジノについて「依存症対策やIR実施法案など、国の状況を見ながら、市として調査・研究を進め、市民の皆様、市議会の皆様の意見を踏まえたうえで方向性決定」と明記してあった。しかも様々なアンケート調査では「横浜市民の圧倒的多数が反対」という結果ばかりが出ていた。「全体の流れ」を見ていけば、「カジノ誘致はしない」という結論に至る可能性も少なくないだろう。そこで、選挙事務所を後にしようとする菅官房長官を直撃、こう聞いてみた。

――(横田)横浜市民はカジノ反対の声が多いのですが。

菅官房長官「そうですか」

――反対でも進めるのですか。

菅官房長官 (無言のまま立ち去り、車に乗り込む)

(…会員ページにつづく)

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  1. 鈴木俊哉 より:

    横浜市長選の問題は、民進党が割れたこと以上に、反カジノ派が2人出たことでしょう。新潟知事選を見れば、民進党が自投票でも反対派を1人に絞れば勝てた。横浜市長選では、後から表明した伊藤候補に他の野党は付いたが、何と結果は3位。長島候補は、泡沫候補では全然無く、ほとんど同数とは言え、野党の付いた伊藤候補よりも強かった。野党は盲目だったという以上に横浜市民を騙したようにも見える。そして重要なのは、反カジノ派同士の話し合いが見られない(あったかどうかわからない)。なぜか?この点を解明していただきたい。

  2. 志田 匠 より:

    カジノがで問題なのは、依存症もさることながら大金を投じても決してガンガン儲かる
    もんじゃないということです。そもそもカジノの顧客への還元率は90%以上。
    よって継続的に運営していくためには、飲食店街やアトラクション、あるいは
    テーマパークなど周辺施設を充実させていく必要があります。とりあえず作れば、
    海外からも波のように人が押し寄せ/泉のようにカネが湧いてくるなど、恐らくは
    お馴染み広告代理店やイベント屋などに焚きつけられたとんでもなく浅はかな素人考えで
    あって、勘違いも甚だしいです。結局カジノ法って、あのバブルの誘因になったリゾート法の
    リバイバルなんですよ。そんなものにまたぞろ税金を投じて「官」が入り込んでいく余地など
    ないというより、税金を託された立場の者が安易に踏み込んではならない領域であることを
    もっと訴える必要があります。

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