【IWJブログ・特別寄稿】嘘をついているのはどっちだ!? 下村博文・元文科大臣に公職選挙法違反の疑い!「都民ファーストの会」平慶翔氏と法廷闘争に突入か(ジャーナリスト・横田一) 2017.7.19

記事公開日:2017.7.19 テキスト
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(取材・文・写真︰横田一)

 自民党の歴史的惨敗に終わった東京都議選から2週間以上が経った。学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐり、安倍総理や官邸の関与はますます疑いが濃くなる一方で、都議選の結果に大きく影響。選挙後の今も安倍内閣の支持率急落は止まらず、世論調査の中には20%台を割り込んだところもある。

 国会閉会後の6月19日、不信を招いたことを認め「丁寧に説明する」と約束した安倍総理だが、翌月7月10日に開かれた衆参閉会中審査を欠席、説明責任を果たさずに逃げた。一方で、参考人として出席した前川喜平・前文科事務次官は理路整然とした答弁に終始したが、前川氏と政府側の主張は相変わらず平行線を辿ったため、結局、野党は総理出席の集中審議を改めて要求した。

 当初は「必要性を感じない」と拒否していた自民党だが、これ以上、逃げ回っていては支持率の下落が止まらないと踏んだのか、同じ14日の夕方、一転して総理出席の集中審議に応じることを決定した。

 もう一人、「都議選が終わったら説明する」といいながら、逃げ続けている人物がいる。同じく加計学園疑惑で渦中にいる自民党の下村博文幹事長代行だ。

 東京都連会長として先の都議選を戦った下村氏だが、加計学園から200万円の違法献金を受け取っていたのではという疑惑が、選挙の真っ只中に浮上。

 闇献金疑惑を報じた週刊文春発売日の6月29日、急遽、記者会見を開き、「事実に反する」と献金疑惑を真っ向から否定してみせたが、不自然な説明が目立った。さらに、なぜか、情報漏洩元の疑いがあるとして、当時、都議選に出馬していた元秘書の平慶翔氏の個人攻撃を始めたのだ。下村氏はあらかじめ準備していた平氏の退職届と、平氏名義だという上申書のコピーを報道陣に配布。偽計業務妨害の罪などで平氏の刑事告訴まで検討しているなどと述べた。

 下村氏の記者会見の模様はこちらの記事をご一読いただきたい。

 しかし、当の平氏本人も下村氏に激しく反論している。会見で配布された上申書は「偽造文書」だと抗議し、すでに筆跡鑑定も行う意向を明らかにした。今後は法廷闘争に打って出る可能性も示唆するなど、平氏側も強気の姿勢を見せているのだ。7月6日、岩上安身が話を聞いた神戸学院大学教授の上脇博之氏も、上申書は虚偽文書にあたる可能性が高いと指摘している。詳しくはこちらのインタビューをご覧いただきたい。

 それらが事実だとすれば、なぜ、下村氏はそんなあからさまな「怪文書」といえるような文書を偽造したのか。真相はまだ闇の中だ。問題の成り行きを振り返るために、下村氏本人への直撃取材も敢行し続けているジャーナリスト・横田一氏による寄稿レポートを、以下、掲載する。(IWJ編集部)

記事目次

都議選から2週間、いまだ説明を果たさない下村幹事長代行! 平氏の筆跡鑑定の結果はシロかクロか!?

 都議選で小池百合子都知事が代表の「都民ファーストの会」が圧勝する一方、自民党が歴史的敗北をした7月2日、都連会長の下村博文・幹事長代行(元文部科学大臣)は、自民党本部で開票を見届けていた。

 テレビ局の取材が次々と入り、下村氏は敗因について「国政の問題が都議選に影響した」と述べたが、週刊文春の闇献金報道については「加計から献金はもらっていない。選挙妨害だ。法的な手段を考えている」と繰り返し反論した。そして各局のインタビューが一通り終わった後の記者会見でも「選挙妨害」と強調した。

▲下村博文・自民党幹事長代行(7月2日、都議会自民党投開票センター)

――(IWJ谷口記者)今回、歴史的な大敗をすると思われるが、下村都連会長の加計学園からの200万円の闇献金という報道が流れた。他にも稲田朋美防衛大臣の失言、豊田真由子議員の暴言など相次いで自民党の問題が公表された結果が今回の結果につながったと思うが、いかがか。

下村博文氏「私自身のことは選挙妨害と思っております。すぐに記者会見を開いて事実を説明いたしました。しかし、週刊誌に出たということは選挙にマイナスになったことは事実だと思います。それぞれの都議会議員の政策や主張なりが十分に都民に届く前に、国政の問題で大きくマイナスになってしまったことについては、候補者の方に心からお詫びを申し上げたい」

――(横田)今の関連で週刊文春の報道について会見を開き、元秘書の都民ファーストの会から出た方(平慶翔都議)は「(後述する上申書の)筆跡が違う」と言って、会見内容を否定されているが、どうお考えか。

下村氏「必要であれば筆跡鑑定をして、しっかりと説明をしたいと思います」

――(横田)「あの文書(上申書)は偽造だ」と元秘書の方は言っている。
しかも加計学園の疑惑自体も「説明が不十分ではないか」という声もあるが、その点についてはいかがか。

下村氏「筆跡鑑定については『先方が(筆跡が)違う』というのであれば、どんなふうにでも(法的な)対応をしていただきたいと思います。(加計学園問題の)説明については今後も丁寧に、しっかりと内容についてはお答えしたいと思っています」

 上記のように、「都議選が終わったら丁寧に、しっかりと説明する」と明言していた下村氏だが、投開票日から2週間以上経った今も記者会見を開いていない。そんな中、7月11日発売の『フラッシュ』7月25日号に「小池チルドレン平慶翔都議『筆跡鑑定』でシロ!」と銘打った記事が出た。

 6月29日の会見で下村氏は、記者団に平氏の署名入りの二種類の文書を配布した。一枚が使い込みやパソコン持ち出しを認めた「上申書」で、もう一枚が「退職届」で、二つの文書の署名が一致しているのは明らかとして、下村氏は「上申書は本物」と説明していた。

▲記者会見で下村氏が配布した「退職届」。平成26年に、平氏が私設秘書から公設秘書へ肩書きが変更になった際に作成され、署名されたもの

▲記者会見で下村氏が配布した、平慶翔氏の署名がされているとする「上申書」。上申書作成が平成28年8月10日、項目5の「ノートパソコンを隠した」と記載した日付が、平成28年12月21日と、なぜか上申書作成の日より未来のものである(報道番組に指摘されて下村氏は平成27年と訂正)。また先の退職届にあった押印もない

 しかし、フラッシュに筆跡鑑定を依頼された筆跡研究開発センター代表の朝倉太郎氏は「資料A(退職届)にある筆跡と資料B(上申書)にある筆跡は、別人による筆跡である可能性が高い」と結論づけた。これを受けて同誌が「『上申書は偽造』。それが事実なら、偽造に関わった人物が、私文書偽造同行使罪などで刑罰に問われかねない」と指摘したのはこのためだ。

平氏の虚偽事項公表罪? それとも下村氏の虚偽告訴罪や虚偽事項公表罪? 下村・平両氏の対決はそのまま国会議員と都議の地位をかけた訴訟合戦に!?

 忘れてはならないのは、この上申書が都議選の真っ最中に配布されたことだ。

▲都議選で板橋選挙区から出馬し、当選した「都民ファーストの会」平慶翔氏

 「都議選に勝った平慶翔が怒りの告発『私は下村博文の罪を刑事告訴します』」(「週刊現代」7月22日・29日号=10日発売)で平氏は、「上申書は捏造された」「選挙妨害をしたのは下村氏」と主張、法廷闘争に打って出ることを予告している。実際、「虚偽事項公表罪(公職選挙法第235条第2項)」には、「当選を得させない目的をもって公職の候補者に関し虚偽の事実を公にし、又は事実をゆがめて公にした者は、4年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金」とある。「下村氏は平候補に関するウソの上申書を配布して当選させないようにした公職選挙法違反」と訴えるのは当然の対応とみえるのだ。

 もちろん下村氏が平氏や週刊文春を訴えることも考えられる。6月29日の会見で下村氏も、次のように法的措置を予告していたからだ。

 「元秘書がパソコンを隠し業務を妨害した事実についても上申書の中で謝罪もさせています。週刊誌が入手したのが事務所のパソコンに入っていたデジタルデータであったとするなら、内部の犯行である可能性が高く、パソコンを一時隠し持っていた元秘書にも大きな疑惑を持たざるを得ません。偽計業務妨害などの刑事事件として告訴するべく、弁護士に相談しているところです。

 週刊文春についても、都議選中に記事を掲載すること自体が選挙妨害であり、内容が名誉毀損に当たると考え、告訴することを準備しているところであります」。

 上申書の真偽をめぐって両者ともに一歩も引けない法廷闘争となるのは確実だ。もし下村氏が配布した上申書が「本物」であれば、平氏は「使い込みをしていない」というウソをついたことになり、虚偽事項公表罪に抵触する可能性が出てくる。逆に下村氏が都議選中に明らかにした上申書が「偽造」されたもので、その上で、平氏を偽計業務妨害罪で訴えれば、虚偽告訴罪や虚偽事項公表罪となる可能性が高い。

 口先だけで「訴える」と言うばかりでなく、本当に告訴するかどうか、どちらが告訴に踏み切るかで、「ウソをついたのはどちらなのか」、国民が判断する材料となるだろう。

 いずれにせよ、両者の対決は国会議員と都議の地位をかけた訴訟合戦になるのは間違いなく、かつ、その結果として平氏の主張が正しく、下村氏の言い分に虚偽であることが立証されれば、一挙に下村氏が加計学園側から闇献金(賄賂性も疑われている)を受け取っていた可能性が高まる。そうなれば下村氏だけの問題では済まなくなる。安倍総理を筆頭に安倍内閣の閣僚の面々に同様の贈収賄(闇献金などの利益供与)があったかなかったか、改めて問われることになるだろう。

疑惑の本丸! 下村博文・元文科大臣に賄賂罪と公職選挙法違反のダブルパンチ!?

 上申書の真偽は今後の法廷闘争で明らかになるとして、週刊文春発売当日の会見で下村氏が平氏を“使い込み犯”扱いする文書を配布したのは、読売新聞による前川喜平・前文科事務次官の出会い系バー記事と同様、内部告発者の信頼を失墜させることで加計疑惑の本丸から目を逸らさせようとする狙いがあるようにも見える。それは、「(闇)献金をもらった下村氏が文科大臣時代に働きかけをして加計学園ありきの道筋を安倍首相と作ったのではないか」という疑惑である。

 週刊文春が下村氏追及第二弾を出した7月6日、民進党の疑惑調査チームや国対ヒアリングで下村氏の疑惑が取り上げられたのだ。山井和則・国対委員長は、前日(5日)の疑惑調査チームによる日本獣医師会ヒアリングについて、次のように紹介した。

 「(ヒアリングで)日本獣医師会は、『もともとは加計学園獣医学部新設は無理と見ていたが、下村文科大臣になって動き出した。加計学園獣医学部新設の可能性が出てきた』と話していた。実際、2015年6月に政府は国家戦略特区で獣医学部新設を検討する方針を示した」(6日の山井国対委員長発言)。

 下村氏が文科大臣だったのは2012年12月から2015年10月まで。そして山井氏は、この3年弱に獣医学部新設が動き出したことと週刊文春の闇献金報道を次のように重ね合わせた。「(週刊文春の記事によると)加計学園の秘書室長がパーティ券200万円分を持って来た。これが加計学園からの献金だったら、法に触れる可能性があるから敢えて名前を隠しているのではないか」。

 続いて大西健介衆院議員が畳みかけるように、「一般論として、職務権限がある文科大臣が200万円の資金提供を受け、働きかけを行った場合にどうなるのか。収賄罪になるのか」と聞くと、出席していた法務官僚は刑法197条(収賄罪)を読み上げて答えた。「公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、またはその要求もしくは約束をしたとき、5年以下の懲役」。

 戦後最大の疑獄事件「ロッキード事件」では、1976年に田中角栄元首相が賄賂を受取り、航空機購入を働きかけたとして収賄罪容疑で逮捕されたが、もし下村氏が加計から献金を受けた見返りに獣医学部新設を働きかけた場合、同じ刑法197条違反の可能性が出てくるのだ。

▲加計学園からの献金疑惑を否定する下村氏(6月29日)

 なお岩上安身は4月4日と7月15日の2回にわたって、日本獣医学部の北村直人顧問(元自民党衆院議員)にロングインタビューをしているので、あわせてこちらの記事もご一読いただきたい。

(…会員ページにつづく)

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