「テンプレートのような愛国心を煽られ、それを持たない者は反社会勢力と罵られる未来が目に見える」~海外在住の学生有志団体、VOYCE (ヴォイス) による自民改憲草案の全文英訳ページのご紹介 2016.5.21

記事公開日:2016.5.21 テキスト
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 「自民党は緊急事態の名の下に『言論の自由』と『表現の自由』を制限しようと努め、又、自衛隊を”国防軍”にアップグレードしようと試みています」――。

 これは、学生団体VOYCE(ヴォイス)による、「自由民主党による『日本国憲法改正草案』英訳完成に当たっての共同声明」から抜粋した一文です。VOYCE= Voices of Overseas Youth for Civic Engagement(「市民参画のための海外若者有志の声」)は、「日本国内外で起きている様々な政治・社会問題について、日本社会の一員として積極的に向き合っていこう」という意思のもと、留学生ら海外在住の学生を中心に、有志で結成された団体です。(1)政治参加(2)海外への情報発信、そして海外在住メンバーからの情報の(3)フィードバック、という三点を柱に活動しているそうです。

 こうした活動の一環として、2016年3月16日、VOYCEが自民改憲草案の全文を英訳したという情報が、IWJのある会員の方から寄せられました。その後、VOYCEメンバーの方とコンタクトを取り、IWJサイトへのリンクページの作成許可を依頼したところ、ご快諾をいただき、4人のメンバーの方から好意的なメッセージをいただくことができました。

 人権や国民主権など、近代市民社会の根本を否定するこの改憲草案を、日本国外に知らしめるべく、IWJでもかねてより翻訳プロジェクトを構想してきましたが、なかなか全文の完成を見ることができませんでした。学業で多忙のなか、VOYCEによる改憲草案の全訳を始めとする活動は、大変素晴らしいと思います。

※なお、明日の自由を守る若手弁護士の会(あすわか)でも、緊急事態条項を含む自民改憲草案の一部英訳を行っています。こちらもご覧ください!

 4月14日に起きた熊本地震の翌日、15日の記者会見で菅義偉官房長官が「極めて重く大切な課題」と発言するなど、緊急事態条項制定へのシナリオは静かに、しかし確実に現実のものとなってきています。そんな今だからこそ、多くの人にこの条項を含む改憲草案の危険性を知っていただきたく、下記に、VOYCEのホームページと改憲草案の全文英訳のリンクページ、VOYCEメンバーからのメッセージを掲載します。VOYCEからも直接許可を得ていますので、ぜひご拡散をお願いいたします。

VOYCEによる緊急事態条項英訳 (※自民党憲法改正草案 98条、99条)

 VOYCEによる自民改憲草案の英訳から、緊急事態条項に該当する98、99条の全文を転写します。

 ※以下、VOYCEからの事前許可のもと、http://www.voyce-jpn.com/#!ldp-draft-constitution/px2wuより転載

 Chapter IX: State of Emergency [Draft (New)] (Declaration of a state of emergency) Article 98. In the event of armed attacks on our nation from abroad, disturbances of the social order due to internal strife, etc.,large-scale natural disasters due to earthquakes, etc., or other states of emergency as determined by law, the Prime Minister may, when deemed particularly necessary, issue a declaration of a state of emergency through a cabinet meeting, as provided by law.

 Prior or subsequent approval of the Diet must be obtained for the declaration of a state of emergency, as provided by law.

 The Prime Minister must cancel the declaration of a state of emergency through a cabinet meeting, as provided by law, when:

 A resolution of disapproval has been made in cases mentioned in the preceding paragraph.

 The Diet resolves to cancel the declaration of a state of emergency. No longer deemed necessary to continue the said declaration of a state of emergency due to changes of the situation.

 Moreover, when intending to continue a declaration of a state of emergency for more than one-hundred (100) days, prior approval of the Diet must be obtained for each one-hundred (100) days.

 The provision of the second paragraph of Article 60 shall apply to the Diet approval mentioned in the second paragraph and the latter part of the third paragraph. In this case, “within thirty (30) days” in the said paragraph shall be read as “within fifty (50) days.”

 [Draft (New)] (Effects of the declaration of a state of emergency) Article 99. When the declaration of a state of emergency has been issued, the Cabinet, as provided by law, may enact cabinet orders having an effect equivalent to that of law, and in addition, the Prime Minister may make necessary expenditures or other dispositions and may issue necessary orders to chief executive officers of local governments.

 Subsequent approval of the Diet must be obtained for the cabinet orders and dispositions mentioned in the preceding paragraph.

 In the case that a declaration of a state of emergency has been issued, every person shall be subject to the orders of the State and other public organs issued to protect the lives, bodies and properties of the people, as provided by law. Even in this case, Article 14, Article 18, Article 19, Article 21 and other provisions relating to fundamental human rights shall be respected to the fullest extent. In the case that a declaration of a state of emergency has been issued, the House of Representatives shall not be dissolved, and exceptions for the terms of office and election dates of members of both Houses shall be established, as provided by law. (※転載おわり)

VOYCEメンバーからのメッセージ(1) 「この草案が通ってしまったら、もう後戻りはできない」

 「テンプレートのような愛国心を煽られ、それを持たない者は反社会勢力と罵られる未来が目に見える」  「この草案が通ってしまったらもう後戻りはできない気がします。国防軍という軍隊が日本に設置され、徴兵制も全然ありえてきます。天皇を拝まなければならないような空気が生まれ、人権の概念をより狭め、個人の考えの多様性を認めないよう、君が代と日章旗を尊重するよう教育されるでしょう。

 テンプレートのような愛国心を煽られ、それを持たない者は反社会勢力と罵られる未来が目に見えるようです。でも国民には人権を、とも書いてある。矛盾にもほどがあります。こんなのが私たちの憲法になっていいのでしょうか。憲法って一番高い壁で、加えて鉄壁でなきゃいけないんです。絶対的に国民の味方の防壁でなきゃいけない。でも、自民党改憲草案のほうは穴ぼこで脆く、終いには国がいろいろ言い訳を付けて、政治家たちの抜け穴が簡単に作れるようになっています。

 これじゃなんのための憲法かわかりません。こんなのが通ったら、この国はおしまいです。6月の選挙で闘うしかないと思います。この道しかない。今後どれだけうまく論点をすり替えられても、この憲法の問題だけは絶対忘れないでほしいです。私たち国民は忘れちゃいけないことは、忘れません」

――田中 和琴(たなか・わこと) ニュージーランド、マッセー大学2年生

VOYCEメンバーからのメッセージ(2)

 「海外に住んでいると、いかに日本の大手メディアの情報が偏狭か、よく見える。日本のメディアは肝っ玉と視野が情けないほど狭い。数少ない真っ当なメディアであるIWJには、今後も表現の自由の砦としての責務を果たしていただきたいと思います」

 「海外に住んでいると、いかに日本の大手メディアが流している情報が偏狭しているかがよく見えてきます。国会審議すらろくに中継せず、政治討論を放映しても安倍政権よりの意見ばかりを流すように登壇者を選んだり、編集をしているように伺えます。

 福島での原発事故、および原発再稼働。公権力による表現の自由に対する過度な制限、沖縄での米軍基地問題、9条にとどまらない改憲の動き、株価維持のための公的資金投入による多額の年金運用損失や自民党議員の不祥事と、安倍政権の存続にマイナスな影響を与える情報にはほとんど触れようとしません。国際社会での動向となると、日本に入ってくる情報はさらに質が悪く、TPPや中東情勢、欧州での政治動向に関してきちんと理解しようとしている日本人報道関係者が果たして存在するのか、と思わず疑ってしまいたくなります。

 日本のメディアは肝っ玉と視野が情けないほどに狭い。そのような中、IWJのような決して規模的に大きくない報道機関が安倍政権の圧力に屈することなく、多角的な情報、真実を報じようと奮起している姿には脱帽する思いです。自由民主主義においてメディアの担う責任は非常に大きいと私は考えています。

 個人一人ひとりが正しい判断をし、日本という国を国民が舵取りしていくためには多面的な情報を容易に得られる必要があります。日本国内において、数少ない真っ当なメディアであるIWJには個人的に感謝と応援をするとともに、今後とも表現の自由の砦としての責務を果たしていただきたいと思います」

――内田 貴也 (うちだ・たかや)アメリカ合衆国、コロンビア大学博士課程2年生

VOYCEメンバーからのメッセージ(3) 「国民全員が平和と軍備、未来について考える良い機会です」

 「改憲草案や安保法制は容認しがたいものです。と同時に国民全員が平和と軍備、未来について考える良い機会です。なにがベストか、それぞれ考えていきましょう!」

――大橋 永理(おおはし・えり) カナダ、マウントアリソン大学1年

VOYCEメンバーからのメッセージ(4) 「現在、安全保障関連法の英訳に協力してくださる方を募集中。国内外の専門家からフィードバックをもらい、参院選前のタイミングでリリースする予定です」

 「先日、VOYCEで完成させた憲法改正草案の英語版をアメリカの某大学の法律学者に送信してフィードバックを要請したところ、安全保障関連法の概要も英訳してはどうかと、逆に提案を受けました。平和安全法制整備法だけで88ページとかあって超長いです笑。

 3、4人ですぐに英訳出来る量ではないので協力してくださる方を募集しています。みんなのプロジェクトとして一緒に取り組めることが出来れば良いと思っています。プロジェクトの趣旨としては、既に私たちが完成させた完成憲法改正草案と併せて日本国外の専門家の方たちに見てもらいフィードバックを得る (フィードバックをまとめたものは参院選の前の絶妙なタイミングで国内メディアにリリース) という感じです。

 憲法の改正草案のように見本となる文書がないので、全容の英訳が実現するかどうかについてはなんとも言えませんが・・・。日本に住む人たちはもちろんのこと、 憲法改正は、在外邦人や海外で学ぶ留学生の方たちの生活にも深くかかわってくる問題です。海外のメディアや教育機関、人権団体等、各方面に発信することは大切ですが、しっかりフィードバックを受けてその貴重な外からの声を有効に活用してゆけるといいですね!」

――村中 千廣 (むらなか・ちひろ) カナダ、マウント・アリソン大学4年生

以上

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