イラクから福島へ ~イラク人医師 フサーム・サリッヒ氏によるイラクの現実の報告会~ 2012.9.7

記事公開日:2012.9.7取材地: 動画
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(IWJテキストスタッフ・大西)

 2012年9月7日(金)、福島県福島市のチェンバおおまちで、「イラクから福島へ ~イラク人医師 フサーム・サリッヒ氏によるイラクの現実の報告会~」が行われた。

 イラクでは、1991年の湾岸戦争と2003年のイラク戦争の際に、米軍によって大量の劣化ウラン弾が使われた。劣化ウランは、ウラン濃縮の際に生成される副産物で、これを砲弾に用いると貫通力が強まるため、劣化ウラン弾は主に対戦車用として使用される弾丸である。

■全編動画
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  • 日時 2012年9月7日(金)
  • 場所 チェンバおおまち(福島県福島市)
  • 主催 子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク

 劣化ウラン弾は、重金属毒性と放射性という2つの毒性を備えているため、扱いが問題視されている。フサーム医師は、イラク南部のバスラという都市にある子ども専門病院に勤務しており、劣化ウラン弾の影響と思われるガン患者や白血病患者の治療を専門にしてきた。この日はイラクの状況を報告し、福島の人たちと意見交換を行った。

 冒頭、主催者の女性が、ウラン238の問題は内部被爆だが、その評価基準は確立していないと説明を行い、「ICRP(国際放射線防護委員会)の基準では、内部被爆は用いられていない。これを科学的に捕らえることが重要で、これは原発事故でも同じです」と、イラクと日本との共通の問題を語った。

 質疑では、参加者から「ガンや白血病のほかに病気の発症はあるか」と質問を受けたフサーム医師が、「流産や死産も多く、またガンも肺ガンや乳ガンなどさまざまで、皆免疫力が低下している」と答えた。さらにイラクでは、劣化ウラン弾だけではなく、ライフラインが整っていないことも問題だと語った。電気や水も十分ではなく、生活レベルが低いことによる複合的な要因で病気が発生しているという。

 最後に、フサーム医師は「放射能の状況について、日本政府は正確な情報を発信しているのか」と、会場の参加者に質問を投げかけた。すると、参加者の女性が「日本政府が発表している内容を国民は疑っている。政府が住んでも大丈夫といっている場所も、私たちはそうは思っていない。どうしたらいいかを日々考えている」と、不安の中で生活していることを打ち明けた。また、別の男性は「専門の先生も、言うことがそれぞれ違う。自分の子どもを守りたい。本当のことを知りたい」と、事故から1年6ヶ月たった今でも、望んだとおりに事が進まない現状を嘆いた。

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