「旦那さんから契約すると言われた」「払わなくていいから記入だけ」「過去分はチャラにするから1回だけ払ってくれ」~第55回放送フォーラムで明かされたNHK受信料徴収の「悪徳な手口」 2016.1.31

記事公開日:2016.2.21取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根かんじ)

※2月21日テキストを追加しました!

 「もし、受信料の支払いが義務になったら、不払いは罪になり、NHKへの意思表示ができなくなる」──。

 2016年1月31日、東京都内で「第55回放送フォーラム『受信料支払い義務化』~NHKはどう変わる? 」が開催された。受信料は放送に対する対価ではなく「NHKを支える特殊な負担金」だと定義する立教大学准教授の砂川浩慶氏は、受信料の義務化には整合性がなく、もっと掘り下げた議論をするべきだと主張した。

 政府に批判的な意見を発した有名キャスターの番組降板が相次ぐ中、またしても、高市早苗総務大臣からマスメディアを萎縮させるような発言が飛び出した。「放送局が政治的に不公正な放送を繰り返した場合、電波停止もありうる」(2016年2月8日・衆院予算委員会)というもので、テレビ局への恫喝かと問題視された。

 このような露骨なメディア・コントロールを行う安倍政権の意向をもっとも忖度している放送局が、国民から受信料を徴収しているNHKだと言われている。昨年秋、自民党の小委員会がNHK受信料の支払い義務化を提言、NHKでは検討を始めている。

■ハイライト

  • 勝木吐夢氏(全日本放送受信料労働組合書記長)「受信料収納の第一線はどう考えるか」
  • 砂川浩慶氏(立教大学准教授)「メディア研究者はどう考えるか」
  • 門奈直樹氏(立教大学名誉教授)「BBCの受信料制度は」
  • (講演者交渉中)「NHKの現場はどう受け止めるか」
  • タイトル 第55回放送フォーラム「受信料支払い義務化」〜NHKはどう変わる?〜
  • 日時 2016年1月31日(日)13:30〜16:30
  • 場所 神宮前穏田区民会館(東京都渋谷区)
  • 主催 放送を語る会

「お金は払わなくてもいいので記入だけしてくれ」NHK受信料徴収員の「悪徳な手口」

 NHKには全国68ヵ所の営業拠点があり、そこから業務委託を受け、徴収員1人が約1万世帯を担当し、新規の契約取り次ぎと、1年以上の滞納受信料の集金をする(1年未満の滞納金はNHKメイトが請負う)。口座・クレジット支払いが96.9%(うち17%振込)。転居先不明、死亡などで年間400万件が減少しているが、新規契約が年間453万件(2014年。衛星放送・無料契約含む)で、約50万件が増えている。受信料収益は、2002年が6425億円、2004~2005年は不祥事の影響で6024億円に落ちたが、2015年は6600億円。2016年度予算では6758億円を見込む。

 全日本放送受信料労働組合(NHK受信料の集金・契約業務に従事する労働者の労働組合)の書記長・勝木吐夢氏は、その受信料徴収の実態を、以下のように話した。

 「契約が増えた要因は、地域スタッフを管理する営業職員を減らすため、徴収を外部法人への委託に切り替えたからだ。2015年現在、全国82地区・1176万世帯分を委託、2016年度は91地区・1343万世帯に拡大する。小規模法人も、286地区から309地区に増やして700万世帯以上をカバーし、委託法人だけで、日本の全5700万世帯のうち2000万世帯を網羅するようになる。

 しかし、毎月3000件ほどのクレーム数は減少せず、法人委託に変えて8年経つが、NHK職員の数も減っていない。むしろ法人委託で、営業成績に直結する出来高払いなどが増えたので、徴収員のやり方が強引になった」

▲勝木吐夢氏(全日本放送受信料労働組合書記長)

▲勝木吐夢氏(全日本放送受信料労働組合書記長)

 「強引なやり方」とは、次のような事例だ。

 旦那さんから契約すると言われた、と奥さんに嘘をつく。お金がないと言う人には、「払わなくてもいいので(申し込み用紙に)記入だけしてくれ」と迫る(あとで受信料は請求される)。契約者に無断で衛星放送契約にする(地上波のみの場合に較べて1万円以上高い)。滞納者に「過去の未払分はチャラにするので1回だけ払ってくれ」と騙す──。

 勝木氏は、「NHKは、受信料支払いが義務になれば契約の手間が省けると言うが、今でも高圧的な態度のNHKと視聴者の軋轢が増し、不信感が募るだけだ」と義務化に反対した。

天皇のフィリピン訪問報道の「偏向」にみるNHKの『アベチャンネル化』~「民放の番組制作費は1日あたり3億円、NHKは1日15億円」

▲砂川浩慶氏(立教大学准教授)

▲砂川浩慶氏(立教大学准教授)

 砂川氏は、天皇陛下が第二次世界大戦の戦没者慰霊のためにフィリピンを訪問した際(2016年1月26日~30日)、NHKは日本の犠牲者数51万人は伝えたが、フィリピンの犠牲者110万人には触れず、日本を被害者のように報道したと指摘し、「籾井氏がNHK会長になってから2年、NHKの『アベチャンネル化』は否めない」と苦言を呈した。

 1月12日に総務省に提出された来年度のNHK予算は、初めて7000億円を超えた。内容は、事業収入7016億円(うち6758億円が受信料。それ以外は政権放送などへの国の補助金や著作権での副次収入)。歳出では、受信契約と収納の経費735億円、番組制作費5279億円、国際放送経費302億円となる。

 日テレ、フジTVなど民放のテレビ局では、番組制作費が1日あたり3億円ほど。それに対し、NHKの番組制作費は1日15億円(人件費も含む)以上で、そのほとんどを受信料で賄っている、と砂川氏は言う。

 「NHKは職員数を1万8000人から1万人まで減らしたが、女性雇用率は15%で低い。そして、籾井氏の役員報酬は年間3092万円。(問題発言が多いので)すぐに辞任すると思ったが、安倍政権が強いことと、外部から招聘するには待遇が悪すぎる(一部上場企業のトップの報酬は平均1億円)ことから、籾井氏は2年も在任。実は、安倍政権も彼の言動のひどさには困っている、と官房長官周辺から漏れ伝わってくる」。

 さらに、籾井氏は就任以来79回、国会に参考人招致されており、参考人には1回ごとに手当2万3200円が支給されるので、「それだけでも、彼は計180万円以上を受け取っている」と言い添えた。

 NHK予算については、過去65回の国会審議での予算採決は全会一致が原則だった。それが籾井会長になると野党が反対し、昨年の参議院総務委員会では賛否同数となり、委員長決裁に至った。今回は、片山虎之助元総務相がいる、おおさか維新の立ち位置次第で、野党が多数派になる可能性もあるという。

支払い義務化で受信料不払いは「罪」に!「NHKへ意思表示ができなくなる」

 2015年9月、自民党情報通信戦略調査会が、受信料の義務化と値下げ、インターネットでの総合テレビの番組再視聴の24時間化など、放送法改正の提言を出した。これを受けて10月1日、籾井氏は賛同を表明。片や総務省は、11月2日、委員に放送事業者を含まない「放送を巡る諸課題に関する検討会」を設置した。

 砂川氏は、「委員に利害関係者がいないのは、大きな改革がしやすいか、役人がやる気がないかのどちらかだ。政府は受信料の支払い義務化を、籾井会長のもとではやりたくないのではないか」と見立てる。

 また、受信料は「NHKを支える特殊な負担金」であり、放送に対する対価ではないと主張。そのため、受信料の義務化には整合性がないと疑問を呈し、「(支えるための負担金なら)視聴者側は、籾井会長がけしからんから払わないと主張し、よくなったら再開すればいい」と述べた。

 「もし、支払いが義務になったら不払いは罪になって、NHKへの意思表示ができなくなる。また、ネット化すると膨大なサーバー費用がかかることについての議論がまったくない。受信料の意味など、もっと掘り下げた議論をするべきだ」。

「政府からの独立性が保てなければ、真実と公平公正な放送はできない」というのがBBCの基本姿勢~サッチャーからの圧力を決然とはね返す

▲門奈直樹氏(立教大学名誉教授)

▲門奈直樹氏(立教大学名誉教授)

 イギリスのメディアと放送制度に詳しい立教大学名誉教授の門奈直樹氏は、公共サービス放送の趣旨は、サービスを提供する放送事業者と視聴者の協和関係で論じられるべきだとし、その根拠は、「全国津々浦々で視聴できること。あらゆる視聴者のニーズに応えている普遍性。さらに、文化的責任を持つこと。そのためには、国家政府からの独立性が必要だ」と述べ、イギリスの国営放送BBCについて語った。

 1990年代より、文化・メディア・スポーツ省(DCMS – Department for Culture, Media and Sport)管轄となったBBC(British Broadcasting Corporation)。その放送認可権は、2003年にコミュニケーション法とともに創設された、オフコム(Ofcom=Office of Communications)という第三者の規制監督機関が受け持つ。BBCの免許は10年ごとに女王の特許状により更新され、更新に先立つ2年前、グリーンペーパー(緑書・政府提案書)を発表。その後、1年をかけて全英の公聴会にて議論を交わした後、政府決定書の放送白書(ホワイトペーパー)を取りまとめる。政府と視聴者で2年をかけて、BBCの放送について検討するのだ。

 「BBCの受信料は政府が決めるが、BBCの予算については国会承認は不要。つまり、政府の関与がない」と門奈氏は言い、このように続けた。

 「1984~1985年頃、当時のマーガレット・サッチャー首相がBBCにクレームをつけ、放送禁止命令を出した。それを受けてBBC会長は、1986年の年次報告書で、『放送が政府から本当に独立していなければ、真実と公平公正の基準を保つ放送はできない。また、そういった評価を確立することができなければ、放送の真の独立はあり得ない』と表明。以後、これがBBCの基本姿勢になった」。

「BBCは私たちのメディアだ」〜イギリス人が受信料を支払う「理由」

(…会員ページにつづく)

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「「旦那さんから契約すると言われた」「払わなくていいから記入だけ」「過去分はチャラにするから1回だけ払ってくれ」~第55回放送フォーラムで明かされたNHK受信料徴収の「悪徳な手口」」への1件のフィードバック

  1. 清沢満之 より:

    〉「旦那さんから契約すると言われた」「払わなくていいから記入だけ」「過去分はチャラにするから1回だけ払ってくれ」ー 明かされたNHK受信料徴収の”悪徳な手口”
    一人暮らしを始めた大学生の頃、NHK受信料徴収員の訪問にうっかり対応し、一度だけ受信料を払った後、二回目以降の訪問の度に居留守を使ってた。そしたらある時、いつものように居留守を使ってたら、徴収員が家のチャイムを鳴らし終えた直後、家の電話が鳴りだし留守電に切り替わり「佐◯急便でーす。お荷物お届けに伺ったんですけどー。いらっしゃいませんかー。おーい。ガチャ」と、誰が来たのか確認のため、そっとドアの覗き窓から一部始終を見てた俺の耳に聞こえてきた。その手口にヒイタ事を思い出す。(笑)

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