第三回 国民的議論に関する検証会合 2012.8.28

記事公開日:2012.8.28取材地: テキスト動画
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(IWJ・阿部)

 2012年8月28日(火)、中央合同庁舎4号館で行われた「第三回 国民的議論に関する検証会合」の模様。6月末に内閣官房国家戦略室が提示した「エネルギー・環境に関する選択肢」に対しては、約8万9千件にものぼるパブリックコメントが寄せられた。この他に、全国で約1,300人が参加した意見聴取会や、討論型世論調査(DP)、各マスコミの行った世論調査、ニコニコ動画が行ったユーザーアンケートなどの資料をもとに、戦略の具体化、政策の決定のための検証が行われた。座長は古川元久国家戦略担当大臣。座長代行として、枝野幸男経済産業大臣細野豪志環境大臣兼原発事故の収束及び再発防止担当大臣が出席。

■全編動画

※今回、固定カメラなのは、内閣官房国家戦略室の意向による。

  • 司会進行役 下村健一 内閣官房 内閣広報官室 内閣審議官
  • <座 長>古川 元久 国家戦略担当大臣
    <座長代行> 枝野 幸男 経済産業大臣 、 細野 豪志 環境大臣兼原発事故の収束及び再発防止担当大臣
    <構成員>
    稲井田 茂 一般社団法人共同通信社編集局総合選挙センター次長
    小林 傳司 大阪大学コミュニケーションデザイン・センター教授
    佐藤 卓己 京都大学大学院教育学研究科准教授
    曽根 泰教 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授 慶應義塾大学 DP(討論型世論調査)研究センター長
    田中 愛治 早稲田大学理事・政治経済学術院教授 Global-COE「制度構築の政治経済学」拠点リーダー
    松本 正生 埼玉大学経済学部教授 埼玉大学社会調査研究センター長
  • 日時 2012年8月28日(火)
  • 場所 中央合同庁舎(東京都千代田区)
  • 主催 内閣官房国家戦略室 伊原、末藤、内野、水谷 TEL:03-3581-9280

 まず国家戦略室の伊原氏より、ひと通り資料の説明がなされる。その後、小林氏が何点か質問を投げかけた。以下は各氏の発言要旨。

「資料1-1に、各調査の特徴として様々な調査法が列挙されているが、これは手法の一般的な説明なのか? 今回の取り組みの説明なのか?不明確。特に討論型世論調査(以下、DP)は、最初の電話調査段階でも全国の縮図の母体集団にはなっていなかったと私は理解している。固定電話は、新聞社などのRDD(電話による無作為調査)でも使われているが、そちらは補正されている。DPでは補正が行われていないため、若年層のアンダーリプリゼントが起こっている。(注:under represented 「過小評価された」 「標本として不十分である」 ライフサイエンス辞書)
 また、2P(ページ)目のDPの説明文の3行目、『世の中全体に対して望ましい方向での議論がなされやすいという懸念』という表現は、世の中全体に対して望ましいのであれば懸念する必要がないわけで、趣旨がうまく伝わらない。
 全体として『民意の把握』が強調されているが、これは『国民の意見を測定をした、次のフェーズは対話?』そういう理解でよいのか?
 我々は未来の選択の議論をしているのだから、若年層のアンダーリプリゼントをもっと掘り起こすべき。 60~70代の意見がたくさん出ているようなもので測定して決めてしまって良いのか?今回とは別に若い世代が何を考えているのか?をもっと測定し、その上で年齢の高い世代を対話を行う必要がある。」

下村審議官「 一般的な説明か?今回のか?という質問の答えとしては『今回の』になる。」

古川大臣「(民意の把握…について)今回の調査をもとに戦略をまとめたら、国民の皆さんと対話を続ける。対話、そして国民参加に向かう第一歩だと理解して頂きたい。」

下村審議官「今回は測定をした。プロセスとしては、次に決定がくる。」

曽根氏「RDDを否定すると、新聞社の調査はほとんど否定になる。むしろ補正をかけないというやり方が一般的。(携帯電話を主に使う)若年層を捉え切れないというのは仮説。たぶん5%ぐらいは捕捉できてないかもしれないが、固定にかけても、携帯の人に後から接触できるようになっている。携帯の層が全部漏れ落ちるわけではない。意見の大きな人に意見が引きずられるというのも、学説的には否定されている。」

松本氏(DPについて)12,000人が電話に出てくれても、討論に来てくれたのは285人 (全体の2%)。裏側に98%がいる。そこをどうケアするか?そもそも討論の前に、日常的な自己学習の場をどう提供するか?という問題もあり、可視化された情報が必要。いきなり討論ではなく、まず悩んでもらうのが大事。」

稲井田氏「RDDは、国民の声を聞くモデルになるように、とは思っているが実際上は中々そうならない。20代、30代電話に出てくれない。しかしそれで結果が大きく違うかというと、実際上はない。選挙の際の候補者の支持率を見ても、実際上はそう変わらない。

小林氏「私が言ってる若年層とは必ずしも20才以降ではない。義務教育を受けた16才以上を入れてもいいのではないか?」

佐藤氏「討議することに慣れた人と、そうでない人がいる。学校教育の場でも、そうしたスタイルに慣れるような教育をすべき。未来社会への熱意も、大きく変わるだろう。」

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下村審議官「今回は恣意的じゃないか?と言われないよう特に注意をした」

曽根氏「インターネットというのは、普段は同質的な人の会話。DPをやって、初めて自分と違う意見の『他者』を発見する、それに驚く。インターネットでは狭い世界に行ってしまう。」

小林氏「資料1-1の6P、含意4の上 『これからの社会のあり方、ビジョンを示して欲しい』とあるが、多くの国民は『示して欲しいのではなく、議論したい』のではないか?」
この意見に対して枝野大臣が深くうなずく

佐藤氏「安全とは何か?の議論もいる。安全という言葉を軽く使うことが政府の不信を招いた。」

小林氏「パブコメの使い方について、どういう原案を出すのか?ということも、国民と議論しなければいけない。結果ありきで原案を変える気がないなら、対話などしない方がいい。同様の国民的議論の抽出を、政府だけがやって、なぜ国会はやらないのか?」

細野大臣「こういう議論の時の、ある種の詰め切れない部分があると思うのは、資料1-1の5Pの分析『これを大胆に要約すれば、「原発ゼロ+グリーン推進+ライフスタイル転換+コスト高容認」という意見と、「原発ゼロ以外+原子力人材・技術の確保+安定供給重視+コスト重視」という意見の対立がみえる』という部分。クロスする部分もある。原発ゼロと決めた場合、原発に将来が無いと明確になった状態で、人材を確保していかなくてはならない。国家として責任を持って廃炉をするんですと言って、若い人材を集めるのは困難。事あるごとにこれを申し上げてるので、存続派だと言われることもあるが、そうではない。ゼロと人材供給は両立しなくてはいけない。
 小林先生がおっしゃった、若い世代の声をより聞くべき、というのはその通りだと思う。資料1-2の3Pでみると、若い層が0%支持が多いようにみえる。一方5Pのニコニコ動画のアンケートを見ると、若い層の方が原発存続の意見が多いように見える。これはどう見れば?若い人はどういう傾向があると見ればよいのか?

国家戦略室 伊原氏「3PのDPの調査を見て頂くと、20-25%シナリオは20代で21.4%(40~50代は11.2%、60代は13.4%)。他の世代に比べると多めに出てる、というのがこの資料の見方。」

細野大臣「若い世代をどういう切り口で切るかで随分違うのでは?」

曽根氏「30代と20代は、分けて考えた方がいい。我々の調査(DP)でも、20代は14人しかいない。この人たちの層をもっと増やすべきだというのは、その通り」

細野大臣「30代で0%シナリオ支持が多いのは、おそらく子どもがいるから、ですよね」

稲井田氏「わが社の世論調査では、20-30代は15%シナリオが多い」

最後に司会進行役の下村氏が「小林先生の『未来の話をしてるんだから、もっと若い人の…』はその通り。政府が対話していくうえでの、非常に大きなポイントとなる」と述べて会を閉める。その後、座長である古川国家戦略大臣の言葉は「国民の代表である我々政治家が政策を決定する。政策を決定してから対話がまた始まる」というものだった。

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