「従軍慰安婦制度が合法」という稲田発言は「虚偽」!「日本軍慰安婦制度は、国内法上も国際法上も明らかに犯罪」――国際人権法学者・戸塚悦朗氏インタビューを再配信! 2016.1.4

記事公開日:2016.1.4取材地: テキスト
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特集 戦争の代償と歴史認識
※本稿はIWJ会員に無料で発行している「日刊IWJガイド」2016.1.4日号より転載し、リライトしたものです。

 IWJ新人記者の城石エマです!大晦日の日にIWJの経理の責任者が体調不良で退職届を出され、年始早々から岩上さんは頭を抱えこんで対策に走り回っているところですが、さらにその翌日は、炎上騒ぎが重なりました。

 きっかけは、岩上さんのツイッターでした。2013年、当時、内閣府の特命担当大臣(規制改革担当)だった稲田朋美氏が、定例会見の場で、IWJの平山茂樹記者から日本軍による韓国従軍慰安婦について問いつめられ、「戦時中合法であったことは事実」と発言をしたことがあります。

 一昨日、2013年のIWJの記事がツイッター上で岩上さんにメンションされ、岩上さんがこの時の稲田氏の発言に対し、「戦時中合法だったというのは虚偽」とリプライしてツイートしたところ、タイムラインがあっという間に炎上しました。「何法の何条に抵触するのか」と迫ってくるものまでありました。

 さらに岩上さんの「勉強してから出直せ」というツイートにも、何一つ調べもせず、再度、再々度と噛みついてくる始末。「基本的なことを、なーんにも知らないんだなあ」と呆れていた岩上さんが、スタッフにすぐに指示を出したのが、従軍慰安婦問題に詳しい法律家として知られる、戸塚悦朗氏へのインタビューの再配信でした。

 今から2年半ほど前、2013年6月に、岩上さんが戸塚氏のお宅にお邪魔して行われたものです。「基本のき」の字も分からないネトウヨやその影響圏内にある人に対し、蒙を啓く(もうをひらく)ため、急遽、再配信いたします!

 IWJって、なんというサービスの良さ!

 戸塚氏へのインタビューをご覧いただくと、2年前にIWJの平山茂樹記者が引き出した稲田元大臣の発言が、決して捨て置けないものであることが分かるはずです。従軍慰安婦をめぐる議論で、人権観念が不十分の当時の法律に照らしても、「違法だったか否か」は非常に大事な論点であり、戸塚氏はこの点に見事に答えています。

 従軍慰安婦が、「女性を傷つける非道なものだから断じて許されない」のはもちろんですが、「道義」の話をすれば必ずと言っていいほど、「あの時代には悪いことではなかった」とか、NHKの籾井勝人会長の「(従軍慰安婦は)どこの国にもあった」発言のようなものが出てきます。果ては、「当時、売春は合法だった」などと、「売春」と「従軍慰安婦」の違いも分からず言っている人もいます。

 戦前の当時、道義的な善し悪しは別として、たしかに売春は「合法」ではありました。「娼妓取締規則」という法規が存在し、娼妓となる本人自らが警察へ赴いて、どこで娼妓を行うのか、なぜ行うのかなどを届け出ることで、「商売」が認められたのです。逆に、この手続きを踏まえない性商売は「違法」だったのです。戦前、セックスワークは国家の管理下にありました。「管理売春」と言われるゆえんです。

 「売春」と「従軍慰安婦」の違いは、ここにあります。戸塚氏は、「戦地や外地を転々とし、戦い続ける軍隊についていく業者に、警察が娼妓取締規則で場所を指定することや、業者を警察が監督するなど、できるわけがない」として、従軍慰安婦は「完全に違法だ」と断じています。

 「違法」の根拠はこれだけにとどまりません。売春と従軍慰安婦の大きな違いは、「強制性の有無」です。従軍慰安婦は、明らかに「強制的」でした。「強制」とは、脅しと力によるものだけを指すわけではありません。「お金になるいい話がある」「簡単な仕事だよ」と言われ、ついていったら慰安婦にされた――これも間違いなく「強制」であり、「犯罪」です。要するに、「かどわかし」や「誘拐」によって、女性を売春婦にさせるのは、戦前の、人権意識薄弱な明治憲法下の日本国家においても、まぎれもなく「違法」であり、「犯罪」だったのです。

 戸塚氏によれば、当時の刑法で、「暴行脅迫による連行、すなわち略取と、騙して連れて行った誘拐による連行とは刑法では同じ条文」で、「略取・誘拐」とひとまとめにして「犯罪」とされました。

 従軍慰安婦の多くが、戦地で兵隊とのセックスの相手を強要されるとは知らず、「従軍看護婦になれる」「外地でお国のためになる、よい条件の仕事がある」と騙されて連れていかれ、現地で売春をしなければならないと知っても、逃げ出すことが許されず(これは明らかな監禁。当時も現代でも違法であり、犯罪ですね)、時に力づくで性行為を強要されました。

 従軍慰安婦の悲惨な身の上を聞いた軍人や兵士はたくさんいましたが、個々人で同情はしても、刑法に触れる「犯罪」を、軍として組織的に看過しました。同時に、軍が関与したこの制度を警察も他の文民官僚も看過したわけで、日本という国挙げての「犯罪」であったことは疑いようもありません。

 騙されて誘拐され、監禁され、意に反して何人もの兵士の性行為の相手をさせられる――。

 これは、戦前において法律によって定められた「商売」としての売春とは全く違います(もちろん「売春」を積極的に是としているわけではありません)。こんな所業を、顔色一つ変えずに「合法です」などと言う人間に、道徳や良心など、ないのかもしれませんね。

 稲田朋美議員(元内閣府特命担当大臣、現在は自民党政調会長)の場合は、良心だけでなく、法律の知識も歴史の知識も欠けているのかもしれませんが。早大法学部を卒業した弁護士のはずですが、「勉強し直せ」というのは、私からも稲田さんに言っておきたいと思います。

 国際法の観点では、「醜業(しゅうぎょう)3条約」に違反していると、戸塚氏は指摘します。「醜業」は「売春」を指します。この条約のもと、女性の売春が禁止されており、日本もしっかり1927年に批准しています。

 さらにさらに戸塚氏による議論は続くのですが、どうぞ全容は1月4日18時30分からの再配信をご確認ください!

 戸塚氏の議論を踏まえた上で、今回の日韓合意を見てみると、この「違法性」への言及がまったくないことが分かります。「日本政府は責任を痛感している」(外務省)としながら、今回の合意で決められたのは、元慰安婦に対する支援財団に「日本政府の予算で資金を一括で拠出」することと、日韓政府で「全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やしのための事業を行うこと」です。

 一方、日韓合意が報じられてほどなくして、韓国の研究者らによる「日本軍『慰安婦』研究会設立準備会」が、政府による「早まった談合」を懸念する表明を発表しました(アジア女性資料センター)。

 準備会は、慰安婦問題の「正義の解決」のためには、「事実の認定、謝罪、賠償、真相究明、歴史教育、追慕事業、責任者処罰」が必要と言います。今回なされたのは、「謝罪」のみです。「事実認定」については、従軍慰安婦があったことを認めるのは当然として、よりはっきりと「『日本の犯罪』であったという事実を認めなければなりません」としています。つまり、事実にもとづいて「違法」であったことを認めよ、ということですね。

 当時の国内法においてすら、弁明の余地のない違法な「かどわかし」を認めず、かつて第二次安倍内閣の一角を占め、「次期総理大臣」とまで言われる稲田朋美・現自民党政調会長の口から、「合法だった」という「虚偽」の発言が行われていたのですから、安倍政権の「謝罪」の値打ちはいかほどのものか、と言わざるを得ません。

 いずれにしても、心身に傷を負いながら何年も屈辱に耐え続けてきた人たちから、100%の許しを得ることなど期待すべきではないと思います。ですが、少なくとも、日本の公的立場にある人々による、「合法だった」という虚偽の発言や「どこの国にもあった」発言が繰り返されること、こうしたことが徹底的になくされない限り、日本政府が「最終的かつ不可逆的に解決」した、などと、胸を張って良いはずがありません。

 今後、日韓政府によるこの「『最終的かつ不可逆的』解決」なるものが、従軍慰安婦被害者らの訴えを退ける根拠に使われていくことでしょう。そうなれば、事態は合意以前よりも悪い方向へいくかもしれません。「アベもようやく世の中のためになることをしてくれた!」などと浮かれることなく、IWJは従軍慰安婦問題と日本政府の挙動に注視し続けます!

 ともあれ、まずは本日(1月4日)の戸塚氏インタビュー再配信をご視聴ください! 18時30分より、チャンネルは1番です!

【IWJ Ch1】

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「「従軍慰安婦制度が合法」という稲田発言は「虚偽」!「日本軍慰安婦制度は、国内法上も国際法上も明らかに犯罪」――国際人権法学者・戸塚悦朗氏インタビューを再配信!」への6件のフィードバック

  1. 仲秋 澄長 より:

    国家の決断した戦争。それに付随する事柄に、違法も適法もない。
    敢えて言えば、「超法規的措置」でもあり、国家は唯一それが出来る。
    戦後においては、ハイジャック犯人の釈放などがある。

    つまりはバカサヨクの戯言であった。

    1. 清沢満之 より:

      こうして、エセウヨクのプロパガンダキャンペーンが今日も続くのであった。 完 (笑)

  2. 仲秋 澄長 より:

    訂正
    釈放されたのはハイジャック犯人ではなく、国内で逮捕された極左(左翼という程のものではない。大した思想もない、あえて言えばサヨク)の過激派。

  3. 仲秋 澄長 より:

    「エセウヨクの・・・」とかのレス、IWJとやらも落ちぶれたものだ。いや、始めからこんなものか。日本のサヨクと呼ばれる連中が何故カタカナでサヨクと呼ばれるのか。それは左翼というお面をかぶっていたからという単純なことだ。

    日本の左翼としては民社党が選挙での支持を得られず解党してしまってからは、サヨクだかなんだか訳の分からんへんてこりんな連中が左翼ではないのに左翼と呼ばれてしまったのが日本の不幸だね。
    つまり日本人自体が左右の違いを理解できなかったのだから、自業自得なのだわ。

  4. 仲秋 澄長 より:

    何をもたもたしているんですか?
    逃げないで早く承認とやらをしたらどうですかね

  5. 女性人権:歴史認識問題研究学者志望者 より:

    「前借(マエシャク)」復活娼妓法でも、娼妓自身が、自己破産宣告を届ければ、廃業し債務から逃れた、

    「どろし意見」なり。そのために、妓楼主は、前借(マエシャク)連帯債務保証人を求めた、のだろう。

    もちろん、資産家連帯保証人は、報酬付きだろうが。青木雄二氏いはく、「保証人だけにはなるな!」

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