【安保法制国会ハイライト】給油した戦闘機が非人道的な市民殺りくをする危険性は 〜福島みずほ議員が追及!明らかになる後方支援の「違憲性」 2015.8.29

記事公開日:2015.8.29取材地: テキスト
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(IWJテキストスタッフ・富田)

特集 安保法制

 「対テロ戦争」を標榜しながらも、米兵らによって、中東の一般市民への攻撃も行われていたことは、すでに多くのメディアが報じる「イラク戦争の実相」だ。戦場に送り込まれた兵士らは精神に異常を来たすことも多く、一般人を殺すことに、ある種の「快感」すら覚えるとの指摘も、大勢の専門家が認めるところである。

 集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案が成立すれば、この実相が、自衛隊員にとって無縁でなくなる──。2015年8月25日、参議院の特別委員会で社民党の福島みずほ議員が追及を行った。

 質疑ではさらに、自衛隊による米軍などへの後方支援における給油の問題も追及。燃料補給の対象となる戦闘機に、「クラスター爆弾や劣化ウラン弾が搭載されていないことを、どうやって確認するのか」との福島氏の質問に、中谷元防衛相らは、「事前の調整、また、必要に応じて相手方に問い合わせることで確認が可能である」と繰り返した。

 この答弁に対し福島氏は、「いちいちチェックできるはずがない」と指摘。日本が給油した他国の戦闘機が民間人をみな殺しにするケースもあり得る、と口調を強めた。

 また、福島氏は、1997年11月20日に、大森政輔内閣法制局長官が、「(後方支援は)憲法上の適否について慎重に検討を要する問題」と発言していることなどに触れ、安保法案の違憲性を強調。「これは、現・自民党政権が、今までの自民党政治を踏み潰していることになる」と安倍総理に迫った。

 以下、福島議員の質疑の全文文字起こしを掲載する。

8月25日、参議院特別委での福島議員の質疑

福島議員「まず、イラク戦争の実相についてお聞きします。(資料提示)これは、2007年のイラク戦争の実態が、2010年にウィキリークスによって暴露されたもの。本来は動画なんですが、それを写真にして翻訳しました。

(音声部分の内容は)ひどいもので、『トンマめ』『みな殺しにしてやる』『やったぞ、アハハ、やつらを撃ったぞ』『さあ、撃たせてくれ』と。つまり、(米兵らは)ある意味で高揚しながら、市民らを殺りくしている──。これがイラク戦争の実相であり、(表向きでは)対テロ戦争を掲げながらも、実際の現場では、市民の大量殺りくが行われたんです。

 (集団的自衛権の行使が可能になり、自衛隊が)海外で米軍の後方支援をしていくことは、こういうこと(=殺りく行為)に弾薬を提供していくことになるんじゃないか。総理は、こういったイラク戦争の実相をご存じなのか」

安倍総理「イラク戦争については、国連決議に基づいて多国籍軍が武力行使をしたわけですが、いずれにせよ、日本自体は、後方支援をしたのではなくて、イラク復興の支援を行いました」

福島議員「戦争法案が成立すれば、後方支援と称して、米軍(の殺りく行為)に加担していくことになるんじゃないか。それは、自衛隊員の(PTSD=心的外傷後ストレス症候群という点で)リスクが増す、(現場での)被害者が出るということのほかに、私たち日本が(殺りく行為の)加害者になることを意味するんじゃないか。

 アメリカは、すでに、国防費を10年間で50兆円、あるいは3年の間に5兆円減らす、さらには兵力を減らす方針を打ち出しています。つまり、日本の政府・与党は、戦争法案、戦争の下請法案を(今国会で)通すことで、米軍の(規模縮小の)肩代わり、そしてリスクの肩代わりを行おうとしているんじゃないか。日本が提供する弾薬の向こう側には、殺される市民らがいるのではないか、ということを強く申し上げたい。

 次に、周辺事態法の抜本改悪法案である重要影響事態法案についてお聞きします。周辺事態法の別表の中に、『物品および役務の提供には、戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油および整備を含まない』とありますが、なぜでしょうか」

中谷元・防衛大臣「武力行使との一体化と見なされないように、現に戦闘行為が行われている現場においては、対応を実施しないようにしています。

 この判断において、戦闘活動が行われている、また行われようとしている地点との、当該行動がなされている場所との地理的な関係、また当該行動の具体的な内容、そして他国の武力の行使の任に当たる者との関係の密接性、そして協力しようとする相手の活動の状況など、諸般の事情を総合的に勘案して判断しており、こういう時に、現に戦闘行為が行われている現場では支援活動を実施しないということで、このような場所で給油ができるということは可能であると判断している」

福島議員「質問への答弁になっていない。私が尋ねたのは、現行の周辺事態法の別表では、なぜ、『戦闘に行く戦闘機に給油できない』としているのか、です。(時間がないので)先に進めますが、現行法ではできないとしているのに、重要影響事態法案では、なぜ、できるようになるか。現行法では憲法上の理由から給油ができないとしているんですよ。

  次の質問に移ります。重要影響事態法での後方支援に相当する戦闘行為は、国連決議、安保理決議を要件としていないという理解でいいですね」

中谷大臣「 はい、それはその通りですが、その前の質問に私が回答していない、という指摘についてですが、作戦戦闘行動のために発進準備中の航空機への給油および整備については、ニーズがなかったということで支援内容には含まれませんでした」

福島議員「ニーズがなかったのではなく、憲法上の理由もあったんですよ。──で、(話を戻しますが)その国連決議、安保理決議を要件としていないということですが、つまり言いたいのは、重要影響事態で後方支援する時に、正当性を担保するものが何もない、ということなんです。日本が提供する弾薬には、クラスター爆弾、劣化ウラン弾も含まれるのに、です。

 中谷大臣にお聞します。発進準備中の(米軍の)戦闘機に給油をする場合、その戦闘機にクラスター爆弾や劣化ウラン弾が搭載されていないことを、どうやって確認するんですか」

中谷大臣「日本は、クラスター弾につきましては、もう全廃しており、給油などについては、対象国から要請を受けた時点で、支援内容などについて必要な調整を行い、その際に給油を受ける戦闘機がいかなる武器弾薬を搭載しているかを確認すると考えています」

福島議員「いちいちチェックができるんですか」

中谷大臣「わが国の立場を、関係国に対してあらかじめ明確にした上で、実際の後方支援活動を行うと考えている。その上で、どのような弾薬が搭載されているのかにつきましては、事前の調整、また必要に応じて相手方に問い合わせることで、確認が可能であると考えております」

福島議員「 ミサイルを搭載している場合でも、給油するわけですよね」

中谷大臣「クラスター弾、劣化ウラン弾は、わが国は保有をしていないし、想定をしていないということで、その意思を明確にしています」

福島議員「私は、『その戦闘機がミサイルを搭載していても、給油するのか』とお聞きしたんです」

中谷大臣「法律的には可能です」

福島議員「除外されるものは何ですか」

中谷大臣「核兵器、生物兵器、化学兵器といった大量破壊兵器、また、(国際)条約によって禁止されている兵器は、わが国は運びません」

福島議員「私が聞いているのは、給油の対象である戦闘機がミサイルを搭載していてもオーケーなんでしょうか、ということ。そして、劣化ウラン弾やクラスター爆弾を搭載しているのかを、実際にチェックできるのか、ということです」

中谷大臣「事前に調整をし、確認をするということは先ほど答弁をしたとおりです。また、国是といたしまして非核三原則を堅持しており、核兵器不拡散条約、また、生物化学兵器の禁止条約も批准している。従って、核兵器を含む大量破壊兵器は今後とも保有をすることはなく、これを運ぶということもないということです」

福島議員「違う。聞いているのは、給油をされる戦闘機が、その兵器を搭載していないことは確認できないでしょう、ということなんです。(そういう現実的な問題が横たわっている中で)それら兵器が使われたら、どうするんでしょうか。

 (さっき紹介した)イラク戦争の実相を思い出してください。つまり、日本が給油をした戦闘機が、このような形で民間人をみな殺しにする、(現地を取材中の)ジャーナリストもみな殺しにする。そういうことだって、起き得るわけじゃないですか。これを、どうやって止めるんですか」

安倍総理「給油についてのお尋ねでありますが、給油するにあたっては、わが国として主体的に判断するものであり、クラスター弾や劣化ウラン弾を搭載した戦闘機へ給油することは想定していません。そうしたわが国の立場を、関係国に対してあらかじめ明確にした上で、実際の後方支援活動を行うことになると考えています。

 後方支援活動を行う際には、支援対象国からの要請を受けた時点で、支援内容などについて、必要な調整を行うこととなる。その際に、給油を受ける航空機がいかなる武器弾薬を搭載しているか、クラスター弾あるいは劣化ウラン弾、ましてや核兵器、大量破壊兵器を搭載している場合は、給油しないということは、すでに申し上げた通りです」

福島議員「戦争の現場で、いちいちチェックできるんでしょうか。大変疑問です。

 次に、(安保法案の)『憲法無視』についてお聞きをいたします。横畠祐介内閣法制局長官にお尋ねしたい。昨年7月1日の閣議決定以前に、集団的自衛権の行使について合憲であるとした政府見解はありますか」

横畠内閣法制局長官 「そのような政府答弁は承知しておりません」

福島議員「(そう、)政府見解はないんですよ。昭和47年見解と砂川判決(を集団的自衛権行使の合憲根拠にする)なんて笑止千万ですよ。

 そして、憲法無視の2点目、──後方支援についてですが、(当時の)大森政輔内閣法制局長官の、こんな見解があります。武器弾薬を含む補給ということについて、武力行使と一体と見なされるか、という質問に対するもので、1997年11月20日のものです。彼は、ニーズはないと言っていますが、重要なのは、『憲法上の適否について慎重に検討を要する問題』と発言している点です。

 そして、3点目が駆け付け警護に関するもの。これは、従来の憲法解釈の変更が必要ということでよろしいですね。2011年10月27日、公明党の議員が尋ねているのに対し、梶田信一郎内閣法制局長官は、『従来の憲法解釈を前提にする限り、駆け付け警護を認めることについては憲法上問題がある』としています。

 南スーダンPKOにおける他国軍部隊への物資給油の要請を、国連から受けましたが、2014年11月14日の記者会見で、菅義偉官房長は、『政府部内において、各国の対応状況や実施時期、法的側面などについて総合的に検討した結果、今回の支援要請については慎重に対応することにした』と述べています。

 以上のコメントのどれもが『憲法』を重視しているんですよ。にもかかわらず、今回の安保法案、つまるところ戦争法案は、憲法を踏みにじるものじゃないですか。これは現自民党政権が、今までの自民党政治を踏み潰していることになる。総理、いかがですか」

安倍総理「たとえば駆け付け警護ですが、いわゆる駆け付け警護では、これまでは、駆け付け警護に伴う武器使用について、国家または国家に準ずる組織に対して行った場合は、憲法9条が禁じる武力の行使に該当する恐れがあるとされてきました。

 今般のPKO法改正では、参加5原則が満たされており、かつ派遣先国および紛争当事者の受け入れの同意が、わが国の業務が行われる期間を通じて安定的に維持されると認められることを要件として、駆け付け警護を行うことができるようにしてあります。

 このような要件を前提とすれば、国家または国家に準ずる組織は、すべて自衛隊の受入れに同意をしているわけであります。国家または国家に準ずる組織が、敵対するものとして登場してこないことは明らかです。仮に当該同意が安定的に維持されると認められなくなった場合は、当該業務を中断の上、終了することとなります。

 こういった点から、自衛隊が憲法の禁ずる武力の行使を行うことはなく、駆け付け警護の実施が、憲法9条との関係で問題になることはありません」

福島議員「今まで問題があると、憲法上疑義があるという理由からやってこなかったことを、今回、全部踏みにじるんですよ。こんな憲法破壊は許されません。

 続いて中谷大臣にお聞きをします。大臣は、7月8日の衆議院の特別委員会で、重要影響事態から存立危機事態に移行する場合もあり得る、と答弁をされています。重要影響事態から存立事態に移行する場合があるということは、重要影響事態そのものも、極めて危険だということにはなりませんか」

中谷大臣「存立危機事態は概念上、重要影響事態に包含をされるものであり、重要影響事態として認定をされた状況が、さらに悪化して、存立危機事態の要件を満たすこともあり得るわけですが、移行については、あくまでも法律の要件を満たすか否かによって判断されます。

 存立危機事態は、武力を用いた対処をしなければ、わが国が武力攻撃を受けた場合と同様、深刻かつ重大な被害が及ぶことが明らかな状況で、重要影響事態から存立危機事態に至った場合は、防衛出動を命じられた自衛隊は、わが国を防衛するために必要な武力の行使ができる。ただし、存立危機事態でのわが国の武力の行使は、あくまでも、そのような深刻、重大な被害を及ぼすことが明らかな武力攻撃を排除することに限られます。

福島議員「後方支援をしていて、相手方から攻撃を受ければ中止する、停止する、避難すると言われますが、(実際には)そんなことできないですよ。中谷大臣がおっしゃる通り、重要影響事態から、要件を満たせばですが、存立危機事態に移行し、(現場は武力行使に)突入していくんですよ。政府が存立危機事態に当たると認定すれば、そのまま突入できるんですよ。国会の事前承認もなく、極めて危険なことです。

 今日は、特に後方支援についてお尋ねしました。まさに日本が(米軍などに)武器弾薬を提供し、かつ給油をする先に何があるのか。『日本は、被害者にも加害者にもなるべきではない』ということを申し上げ、私の質問を終わります」(了)

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