「安保法案は、国民と憲法に対するクーデター。日本に対する中東の信頼を打ち砕く」 〜中東研究者105人が安保法案に反対するアピールを発表 2015.8.10

記事公開日:2015.8.17取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根)

※8月17日テキストを追加しました!

 「安保法制は明らかに拙速で強引だ。自衛隊の派遣先は中東になる。ゆえに、憲法学者の次に、中東研究者が意見表明をする必要性を感じた。普段、声明を出すことをしない研究者たちが、今回、これほどまとまったのは、国民と憲法に対するクーデターという危機感があったからだ」──。安保法案に反対する中東研究者がアピールを出したことについて、世話人を務める千葉大学教授の栗田禎子氏は、このように説明した。

 2015年8月10日、中東研究者による安保法案に反対するアピールが、東京都千代田区の参議院議員会館にて行われた。中東研究者105名が賛同者(呼びかけ人33名含む)として名を連ね、「私たちも憲法学者に続く」と、安保法案に反対を表明した。

 政府・与党の説明では、安保法案は日本国民の命とくらしを守るとされているが、中東研究者のアピールでは、「戦後日本外交の基本であった平和主義の原則を投げ捨て、大国主導の戦争に追随し、資源への自己中心的野心をむき出しにするような姿勢は、日本に対する中東やアジア、世界の民衆の信頼を打ち砕き、『国益』を損ない、むしろ日本の市民の生命と安全をこれまでにない危険にさらす」と厳しく断じている。

 会見者たちは一様に、「これまで欧米諸国と一線を画し、戦争に加担せず、中東への民生支援を続けてきた日本が築いた信頼関係を、安保法案は崩壊させる」と大きな懸念を表明した。

記事目次

■ハイライト

  • 発言者 長沢栄治氏(東京大学)、黒木英充氏(東京外国語大学)、栗田禎子氏(千葉大学)、辻上奈美江氏(東京大学)、宮田律氏(現代イスラーム研究センター)、ほか
  • 日時 2015年8月10日(月) 13:30~
  • 場所 参議院議員会館(東京都千代田区)

中東諸国との信頼を打ち砕く安保法案

 開会の挨拶では、世話人の1人である東京大学教授の長沢栄治氏が、「私たちは、中東研究者としての社会的責任感から、このアピールを発した。かつてのイラク戦争への対応など、日本の中東政策への反省がなく、かつ無理解のある中で、今回の安保法案が出されたことに対する反対表明だ。また、中東の人たちの対日感情の良さ、信頼感など、今までの友好関係が大変なダメージを受けることを危惧する」と述べた。

 次に、中東研究者による安保法案に反対するアピール文を、千葉大学教授の栗田禎子氏が読み上げた。

 「わたしたちは、中東の政治・社会・歴史・文化等の研究に携わり、日本と中東の相互理解と友好のために努力してきた立場から、現在国会で審議中の『安全保障関連法案』には重大な問題があると考えます」

 憲法9条による戦後日本の平和主義は、長く欧米による植民地支配下にあった中東では、とりわけ好意的に受け止められており、それに反する安保法案は、海外諸国からの日本への信頼を損なうものであること。アメリカ主導の大規模戦争は、主に中東地域が対象で、大国による軍事介入がもたらす悲劇に学ぶことなく、アメリカへの戦争協力を拡大する政策は誤りであること。集団的自衛権の行使が認められる具体例として、ホルムズ海峡の封鎖(=石油供給の停止)が挙げられているが、資源確保のために海外派兵をするのは植民地主義、帝国主義の論理であること。

 これら3つの要点を挙げた上で、「平和主義の原則を投げ捨て、大国主導の戦争に追随し、資源への自己中心的な野心をむき出しにするような姿勢は、日本に対する中東やアジア、世界の民衆の信頼を打ち砕き、『国益』を損ない、むしろ日本の市民の生命と安全をこれまでない危険にさらすことにつながる」と指摘した。(全文はウインドウに掲載)

安保法案を「根こそぎ取り去る大改革」と表現した安倍首相

 続いて、呼びかけ人たちのスピーチに移った。東京国際大学名誉教授の宮治美江子氏は、「日本を戦争に巻き込む法案には断固、反対する」と切り出し、1945年5月25日の東京大空襲で、九死に一生を得た戦争体験を語り、安保法案が導く将来の日本を憂慮した。

 アジア・アフリカ研究所会員の平井文子氏は、「小学校3年の孫が、『悪いところ』という言葉に、『イスラム国だ』と即座に返してきて絶句した」と話し、「正義対仮想敵、デーモンと戦う二項対立的な思考が、ゲーム、アニメ、映画などで早い時期からパターン化され、人々に刷り込まれている」と危惧。「研究者には、それを丁寧に解きほぐす務めがある」と述べた。

 シリア・レバノン近現代史を研究する東京外国語大学教授の黒木英充氏は、「今、多くの国民がたとえようのない違和感、反発を強めている」とし、このように懸念を表明した。

 「今回の安保法制は、完全にアメリカのためだ。今年(2015年)4月末、安倍首相は米議会での演説で、『徹頭徹尾、アメリカのリバランスを支持する』と言った。安保法制を『戦後初めての大改革だ』とも述べた。英文では、『根こそぎ取り去る(sweeping)大改革』と表現し、かつ、日本の国会審議前にもかかわらず、『この夏までに成立させる』と約束までした。

 礒崎陽輔首相補佐官は、大分で、『9月中旬までに成立させる』と発言。それに対して、鴻池祥肇参議院特別委員会委員長が、『参議院は、衆議院でも、官邸の下部組織でもない』と苦言を呈した。これは、日本国民の誇りを傷つけられたも同然だ」

 安倍首相の演説では、グアムの米軍基地再編のために3500億円を、思いやり予算以外に支出し、オスプレイ17機など合計1兆2929億円をアメリカだけに拠出する、とも述べている。黒木氏は、それが日本の国立大学すべての運営費交付金(1兆645億円)を上回る金額であることを指摘し、「結果的にアメリカの戦争の尻拭いだ。すでにサウジ、シリアなど中東諸国はアメリカの言うことを聞かずに動き出している。つまり、アメリカについていけば大丈夫、という状況ではなくなった」と警鐘を鳴らした。

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  1. 武尊 より:

    この頃思う事。
    皆さん声を上げるのが遅いです。
    若しかして、若しかしてですよ。態と遅くなってから声を上げているんじゃないですよねェ??
    殆ど決まっちゃってから声を出しても、効果薄いよなァ、とお盆明けの雨の中思う今日この頃、、。

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