「帰還させたい本心がちらついている」――福島原発事故「避難者支援方針の改定」で政府交渉 ~実態を反映しない放射線測定に市民ら反発 2015.7.29

記事公開日:2015.7.29取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田)

※8月17日テキストを追加しました!

 福島からの自主避難者について、2013年11月に「個人の選択を尊重しなければならない」としながら、2015年6月には「事故当時より放射線量が下がったので、避難指示区域以外から避難する状況にはない」とした原子力規制庁の判断は矛盾するのではないか──。

 このように尋ねられた同庁担当者は、被災者個人の避難・居住・帰還の選択を妨げる性格のものではないと応じたが、市民からは、「そうであれば、『避難する状況にない』ではなく、『帰還希望を阻むものではない』とすべきではないか」との声が上がった。

 原発事故で福島から各地に避難している被災者やその支援者らは、2015年7月29日、東京都千代田区の参議院議員会館で政府担当者への交渉と記者会見を行った。福島原発事故による被災者の生活支援を行う政策、子ども・被災者支援法の基本方針の改定案が、このほどまとめられたが、支援対象地域が、放射線量の低減を理由に、「避難指示区域以外から避難する状況にはない」とされたことで、避難中の被災者らの間には波紋が広がっている。

 市民らは、政府の放射線量の測定の仕方を批判し、この改定案には、避難中の被災者に帰還をうながす本心がちらついている、との見方を呈示。その後の記者会見では、これまでも、政府による被災者への支援が十分ではないことに触れつつ、改定案の撤回を改めて要求した。

記事目次

■ハイライト

  • 10:30~12:00 意見交換会(=政府交渉) ※復興庁・規制庁(調整中)
  • 12:15~13:30 記者会見

放射線量の最大値「非開示」に不満の声

 政府との交渉では、FoE Japanの満田夏花氏が、復興庁が改定案の中で「避難指示区域以外から避難する状況にはない」としていることについて、「その意味合いは、『自主的避難への支援は行わない』ということなのか」と質すと、同庁の担当者は、「『避難する状況にない』と『支援必要性の有無』はイコールではない。避難・居住・帰還という、地元住民のそれぞれの立場に対し、引き続き、支援をしていくことを明記している」と応えた。

 また、支援対象地域が「年間20ミリシーベルトを下回るが、一定線量以上の場所」と定義されている点に照らした上で、「2015年6月25日付の原子力規制庁の文章にある『対象地域が年間20ミリシーベルトを下回ったから、支援対象地域を縮小・撤廃する』は、そもそも不可能なのではないか」との質問には、「附則を加味すれば、『最新の線量に基づいて支援対象地域を決める』となるが、今回の改定では、最新の線量の度合いがどうであれ、支援対象地域はそのまま残し、支援を継続していく旨が明記されている」との回答だった。

 規制庁の文書は、復興庁の求めに応じて出されたもの。福島県の複数の市町村が公表中の、個人線量計(ガラスバッジ)の測定結果では、大部分が年間1ミリシーベルト下回っていると示されているが、これに対し満田氏は、「住民を守る行政の立場に立てば、最大値にこそ、目を向けるべきなのではないのか。最大値を公開していない自治体が多いのであれば、ぜひ、公開を求めてほしい」と注文を付けた。

 満田氏のこの発言に続いて、男性市民が、「最大値を示すデータが十分に揃っていない状況で、『線量の低下』を判断することはできないと思うが」と質問を重ねると、復興庁担当者は、「全体的には、発災時に比べると被曝量は大きく低減していると考えられる」と返した。

 市民側からは、個人線量計による測定は、実際よりもかなり低い数値が出やすい欠点がある、との指摘もあった。

政府は「避難主義」に立つべきだ

(…会員ページにつづく)

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