自主避難者への支援打ち切りを後押しする規制庁、明らかに避難の必要がある状況ではないと判断~田中俊一原子力規制委員長定例記者会見 2015.7.22

記事公開日:2015.7.24取材地: テキスト動画
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 2015年7月22日(水)14時30分より、東京・六本木の原子力規制庁で田中俊一・原子力規制委員会委員長による定例会見が行われた。被曝線量の基準について、田中委員長は、「年間20ミリシーベルト以下になれば、国際的に見ても、そこに住みながら、線量の低減化を図るということを言われていて、それでいいと申し上げている」と主張。自主避難に対しては、国がこれまで住宅支援などを行ってきたことを疑問視するなど、委員長自身、自主避難者への支援に消極的な考えがあることが明らかになった。

■全編動画

  • 日時 2015年7月22日(水) 14:30~
  • 場所 原子力規制委員会(東京都港区)

福島第一3号機SFP内がれきの吊り上げ撤去「落とさないことが基本になる」

 福島第一原子力発電所の3号機SFP(使用済燃料プール)に滑落した、重量35トンもある燃料交換機の取り出し作業が今月末に予定されている。現場の線量が高いことから、遠隔操作のクレーンを使い、無人で行う。万が一の場合を考え、吊り上げ時には福島第一では他の作業を行わないことなどが計画されている。

 この作業は、今年2015年の福島第一の作業計画の中で最もリスクが高いと考えられるが、東電はあまり積極的に広報していない。これに対して規制委はどのようにとらえているのか、と記者が質問した。

 燃料交換機は燃料プール中の燃料ラックの上に落ちているので、燃料集合体自体には大きなダメージはないはずだが、田中委員長は「落とさないことが基本になる」と言う。東京電力に対しては「慎重に吊り上げるように取り組んでもらっている」が、個々の作業、吊り上げの方法、遠隔操作といった技術的問題は規制サイドでは見きれないという理由から、基本的には、何かトラブルが起こった時の安全上の観点を見ていくという対応だ。

放射性廃棄物の埋設処分「制度的な対応も必要」

 放射性廃棄物を埋設して処分する方法が規制委員会の検討チームで、年内に規制の骨子を取りまとめる目途で検討されている。多くの核種は10万年管理すると、クリアランスレベルとなる10マイクロSV/年相当濃度以下まで減衰する。しかし、いくつかの核種は10万年後でも非常に高い濃度を維持するため、どのように管理するかが課題となっている。

 田中委員長はこの問題について、埋設した箇所を、再度掘削できないような物理的な人工バリアだけではなく、国家の関与、管理というような制度的な対応も必要だという考えを示した。

 とはいえ10万年後に国家がどうなっているか、人類がどうなっているかは定かでなく、田中委員長も「人類はまだ10万年も歴史がない」と言う。しかし、人類がまともなら、ここに埋設したという知見を継承していける。その努力は必要だと述べた。

自主避難地域、明らかに避難する必要がある状況ではないと判断

 規制庁は、復興庁から支援対象地域の縮小・廃止を検討する上での科学的な見解を求められており、田中委員長と池田克彦規制庁長官の了承の上で、「事実関係として明らかに避難する必要性のある状況ではないという判断ができる」と回答している。

 田中委員長は、被曝線量の基準について、「年間20ミリシーベルト以下になれば、国際的に見ても、そこに住みながら、線量の低減化を図るということを言われていて、それでいいと申し上げている」と主張。自主避難に対しては、国が避難すべき線量ではない、避難する必要はないという判断をしたのであり、避難してはいけないとは言っていない。「個人の判断、個人の責任で避難する分には、別にそれは自由なのではないですか」と述べるも、これまで国が自主避難者に対して、住宅支援などを行ってきたことを疑問視する発言も見られ、委員長自身、自主避難者への支援に消極的な考えがあることが明らかになった。

 現存被曝線量の参考レベルとして、田中委員長は年間5ミリシーベルトぐらいだという考えを持っている。これをもとに避難のルールを決めることは、「今後の福島県民がどのように復興に取り組んでいくかという意味では、非常に重要な課題なので、どこがやるかは別として、国全体として検討すべきものだとは思います」との見解を示した。

 しかし、今後具体的にどういう形で検討を進めるのかは、「今、私が具体的に申し上げる段階ではない」と明言を避けた。

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「自主避難者への支援打ち切りを後押しする規制庁、明らかに避難の必要がある状況ではないと判断~田中俊一原子力規制委員長定例記者会見」への1件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    自主避難者への支援打ち切りを後押しする規制庁、明らかに避難の必要がある状況ではないと判断~田中俊一原子力規制委員長定例記者会見 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/254301 … @iwakamiyasumi
    避難する権利を規制するのが仕事なのか。棄民庁とでも名前を変えたらどうか。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/625079967836037121

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