「新国立競技場の建設は、誰も幸福にならない公共事業の見本」 ~森まゆみ氏ら有識者が現行案に対して緊急提言「第三者機関による検討を」 2015.6.16

記事公開日:2015.6.23取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・奥松)

特集 新国立競技場
※6月23日テキストを追加しました!

 「今、騒がれている問題は、1年前から指摘されていたこと。1年放置した挙げ句、『屋根が間に合わない』『予算が足りない』となるのは、第三者が公共事業を検証する仕組みがないからではないか」──。

 作家の森まゆみ氏らが共同代表を務める、神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会は、2013年の発足以来、国立競技場の新築ではなく、改修する方向での計画見直しを訴えてきた。旧競技場は2015年初めに解体されたが、同会は2015年6月16日、東京都渋谷区の建築家会館で、「新国立競技場現行案に対する緊急市民提言・記者会見」を行った。

 提言では、現行案を白紙に戻し、首都圏にある既存のスタジアム(横浜、浦和、調布、駒沢など)を活用すること、現行案によって立ち退きを迫られている都営霞ヶ丘アパート住民の居住権の確保、さらに、第三者による検証委員会を設置し、問題のある計画が精査なしに進められた原因を追及することなどを求めている。

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックのメーン会場となる新国立競技場の建設プランについては、2012年秋に建築家のザハ・ハディド案がコンペで選ばれた。しかし、デザイン性重視による予算超過や工期遅れの懸念、風致地区である神宮外苑の景観破壊、周辺住民の立ち退き、交通渋滞やヒートアイランド化による環境への負荷など、多くの問題が指摘されている。

 想定されていた工費1625億円は、現在までの試算では3000億円以上に膨れ上がり、2015年5月、下村博文文部科学大臣は、コストとスケジュールを理由に計画の見直しを発表。さらに、東京都に工費の一部負担を持ちかけ、舛添要一東京都知事に一蹴されるなど、計画は迷走し始めている。

記事目次

■ハイライト

  • 発言者 「神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会」共同代表
    森まゆみ氏(作家、谷根千工房)、多児貞子氏(たてもの応援団)、大橋智子氏(大橋智子建築事務所)、清水伸子氏(一般社団法人グローバルコーディネーター)、上村千寿子氏(景観と住環境を考える全国ネットワーク)、日置圭子氏(地域文化企画コーディネーター、粋まち代表)、山本玲子氏(全国町並み保存連盟)、他
  • 日時 2015年6月16日(火) 18:15~
  • 場所 建築家会館(東京都渋谷区)
  • 主催 神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会

何度も無視されたが、市民として言うべきことは言う

 はじめに、森氏が提言の内容を読み上げた。提言には、1. 現行案をあきらめる、2. 過去の競技場を指針とする、3. アスリートやスポーツ関係者の意見を集約する、4. 周辺を含めた総合的な検証を行う、5. 既存の環境と現在の住民を尊重する、6. 現実の難題を考慮し、誰もが納得できる施設にする、7. 既存施設の活用を検討する、8. 第三者検証委員会を設置する、という8つの項目がある。

 森氏は、「本日、文部科学大臣の下村博文氏と、日本スポーツ振興センター(JSC)理事長の河野一郎氏宛に、この提言を送った」と報告し、同会には3万6000人の賛同者がいることも付言した。

 続いて質疑応答に移った。記者から、「現行案をあきらめて、どうすべきだと思うか」と尋ねられると、森氏は、「元々、私たちは旧国立競技場を改修して使うことを訴えてきたので、その趣旨に沿ったものを希望する。現行案のように巨大なものではなく、神宮外苑の環境と歴史を踏まえた、慎ましくてお金がかからないものにしてほしい。新築か、他の地区にある既存施設の活用か、選択の余地は残っていると思う」と述べた。

 また、「私たちは文科省とJSCに何度も何度も質問や要望を出し、抗議もしたが、ほとんど答えてもらえないまま、2015年1月に競技場は解体された。しかし、最近になって現行案に批判的な報道が続き、文科大臣は計画を縮小すると言い出した。情勢が変化しそうな時に、市民として言うべきことは言っておきたいと考えて、今回の提言を発表した」と説明した。

 建築家の大橋智子氏は、「旧国立競技場が解体されてしまい、私たちの活動も終わりだという声もあった。しかし、会の名称にもある通り、神宮外苑のこの環境を、未来へ手わたすことが重要だと考えている」と述べ、新競技場の建設のために立ち退きを迫られている都営霞ヶ丘アパートの住民との連帯にも言及。「住民にとっては、これからどう生きていくかという、命の問題。最後まで見届けたい」と話した。

誰も幸福にならない公共事業、第三者機関の検証を

 「今、騒がれている問題は1年前から指摘されていた。1年放置した挙げ句、『屋根が間に合わない』『予算が足りない』となるのは、公共事業を第三者が検証する仕組みがないからではないか」と指摘したのは、景観と住環境を考える全国ネットワークの上村千寿子氏である。

 「ロンドン五輪では、第三者機関がすべてのプランを検証した。日本では、JSCが技術的に難易度の高い案を選び、周囲の心配の声をよそに突っ走ったために、予算も時間もオーバーすることになった。誰も幸福にならない、この事例を教訓に、今後は公共事業に第三者機関による検証の仕組みを導入してほしい」

(…会員ページにつづく)

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“「新国立競技場の建設は、誰も幸福にならない公共事業の見本」 ~森まゆみ氏ら有識者が現行案に対して緊急提言「第三者機関による検討を」” への 1 件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    「新国立競技場の建設は、誰も幸福にならない公共事業の見本」 ~森まゆみ氏ら有識者が現行案に対して緊急提言「第三者機関による検討を」 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/249464 … @iwakamiyasumi
    「人からコンクリート」へ加速をつけて逆戻りする安倍政権。もう、沢山だ。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/613309165671309313

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