「環境省には相手にされない。地元に的を絞り、民主的に進めることで白紙撤回を実現できた」──「塙町のバイオマス発電との闘い」講演学習会 2015.2.13

記事公開日:2015.3.13取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根かんじ)

※3月13日テキストを追加しました!

 木質バイオマス発電とは、山に放置された間伐材など、利用されない木材を燃料に使う火力発電で、太陽光や風力と違って、天候に左右されない再生可能エネルギーとして注目されている。福島県の塙町(はなわまち)で、2013年に持ち上がった木質バイオマス発電所の建設計画は、県内の森林除染で生じた木材を有効活用するとされ、総事業費60億円の半分を福島県の復興基金を使って、2014年後半には稼働する予定だった。

 しかし、福島第一原発事故で、山林にも放射性物質が飛散していることから、塙町の住民らは焼却による健康被害や、放射性物質が濃縮される焼却灰処理の不安を訴え、建設反対運動は町長のリコールにまで発展。計画は白紙撤回された。

 2015年2月13日、福島県郡山市の教職員組合で、鮫川村の指定廃棄物焼却炉の停止を求める仮処分の第4回審尋後、講演学習会「塙町のバイオマス発電との闘い──どの様にして白紙撤回できたか」が行われ、反対運動の先頭に立った、塙町木質バイオマス発電問題連絡会の吉田広明氏と金澤光徳氏が講演を行った。

 吉田氏は、「住民の意見を割れさせようとする妨害は、度々あった」としながらも、1. テーマを絞り込み、最初から最後までブレなかったこと、2. 組織化を図る段階で、メンバー各自が得意分野で仕事を分担したこと、3. 活動を5ブロックに分け、各地区代表を立てて指令系統を作り、情報の取りこぼしがないよう努めたこと、などを挙げて、「住民同士でバランスの良いコミュニケーションがとれるように気をつけた」と語った。

 さらに、「環境省には相手にされないと思ったので、地元に的を絞り、町長、議会と折衝を続けて、なるべく民主的に進めることに努めた」とした。会場からは、「塙町で白紙撤回できたことで、全国で繰り広げられている同種の市民運動の大きな励みになる」という声が上がった。

記事目次

■ハイライト ※イントロ動画です。録画開始後、3分45秒ごろに開会します。

  • 講演 吉田広明氏(バイオマス発電連絡会代表)・金澤光徳氏(バイオマス発電連絡会事務局員)「塙町のバイオマス発電との闘いーどの様にして白紙撤回できたか」ほか
  • 日時 2015年2月13日(金)14:45〜
  • 場所 郡山市教職員組合(福島県郡山市)

他の市町村は辞退した発電所計画

 まず、郡山市議会議員の駒崎ゆき子氏が、「鮫川村の焼却炉問題での環境省の強引なやり方は納得できない。堀川さん(同意書を捏造された地権者)の裁判を、私たちは支援していく。この勉強会で、塙町の事例を学びたい」と話し、吉田氏と金澤氏による講演に移った。

 吉田氏は、「塙町の木質バイオマス発電のことを、2013年2月7日付『福島民報』のスクープ記事で知った。寝耳に水だった」と述べ、それまで住民説明会も何もなかったことに憤り、このように続けた。

 「当時、(話題になったていたのは)工事が進む鮫川村の仮設焼却炉の問題ばかり。木質バイオマス発電に関しては、情報がほとんどなかった。総工費60億円で、半分の30億円は県の復興基金からの補助だというが、内容はまったくの非公開。さらに、道路整備などの隠れた事業も見え隠れしていた」

 当初、福島県は、この事業計画を他の市町村にも打診していた。しかし、すべての自治体が辞退して、最後まで手を上げていたのが塙町の菊池基文町長だったという。「4ヘクタールの平場の土地、1日80トンの給水、二車線の搬入路の確保などが開発条件で、それに合致したのが私の住む、水源地がある地域だった」と吉田氏は言う。

「焼却灰は東電が買い取る」「国を信じてくれ」──強引な説得工作

 計画された焼却施設は、年間11万2000トン、1日340トンが処理できるもので、今、塙町にある焼却所の6.8倍の規模。50万都市の、郡山市の処理量に相当する。菊池町長は「雇用が生まれる。(間伐材が片付いて)山がきれいになる」とアピールしたというが、施設から出る焼却灰の保管、その移転場所についても、町の説明は二転三転していたという。

 吉田氏は、「挙げ句の果てには、焼却灰を東電が買い取る、とまで言い出したので仰天した。町長は『国を信じ、県を信じ、われわれを信じてください』と言う。本当に強引だった」と語った。

 また、東日本大震災の前に作られた、白河ウッドパワー木質バイオマス発電所を、吉田氏らが見に行ったところ、放射能汚染度が高いバーク材(樹皮)と他のチップとを混ぜていたという。当初、この町ではバーク材は燃やさないと説明していたが、「それも疑わしい。結局、24時間稼働する施設なので、夜中にバークを持ち込まれてしまえばチェックのしようがない」と吉田氏は不信感をあらわにした。そして、「白河の施設では、敷地外のU字構で測った線量の最高値が、毎時0.9マイクロシーベルトだった」と告げた。

 さらに、「福島県内の各地で、同様の施設の建設計画があり、東北の木が全部なくなる勢いだ。塙町復興交付金事業計画(2013年3月)には、『きのこホダ木、汚染されたバーク、震災がれきの焼却』と明記してあったが、当時、すでに木質系がれきは燃やされて、存在しなかったはずだ」と疑問を口にした。

町長リコール請求──翌日、白紙撤回に成功!

(…会員ページにつづく)

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