「不平等がテロを生む」――戦闘で他国の人を殺しても罪に問われない国と、殺せばテロリストと呼ばれる国がある現実~私たちは中東の平和にどう貢献できるのか 2015.2.6

記事公開日:2015.2.18取材地: テキスト動画
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(取材・記事:松井信篤、記事構成:安斎さや香)

特集 中東

※2月18日テキスト追加しました!

 「貧困がテロを生むというのは少し違う、正確には不平等がテロを生むのです」

 ヒューマンライツ・ナウ(HRN)、日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-NET)、日本ビジュアル・ジャーナリスト協会(JVJA)、イラク戦争の検証を求めるネットワークの4団体共催による「緊急集会:後藤健二さんらのシリア人質事件を受けて今考える ~私たちは中東の平和にどう貢献できるのか~」が2月6日(金)、東京都豊島区の豊島区民センター(コア・いけぶくろ)にて開催された。冒頭には湯川氏と後藤氏、そして、イラク・シリアで犠牲になられた方々へ黙祷が行なわれた。

 登壇者は以下の通り(着席順)。伊藤和子氏(弁護士、ヒューマンライツ・ナウ事務局長)、安田純平氏(フリージャーナリスト)、佐藤真紀氏(日本イラク医療支援ネットワーク〔JIM-NET〕事務局長)、綿井健陽氏(ジャーナリスト・映画監督、アジアプレス・インターナショナル所属)、志葉玲氏(ジャーナリスト、イラク戦争の検証を求めるネットワーク事務局長)、豊田直巳氏(ジャーナリスト、日本ビジュアル・ジャーナリスト協会〔JVJA〕会員)。ヨルダンからは、高遠菜穂子氏(イラク支援ボランティア)がSkype中継で参加した。

■ハイライト

  • 発言
    伊藤和子氏(弁護士、ヒューマンライツ・ナウ事務局長)/安田純平氏(フリージャーナリスト)/佐藤真紀氏(日本イラク医療支援ネットワーク〔JIM-NET〕事務局長)/綿井健陽氏(ジャーナリスト・映画監督、アジアプレス・インターナショナル所属)/志葉玲氏(ジャーナリスト、イラク戦争の検証を求めるネットワーク事務局長)/豊田直巳氏(ジャーナリスト、日本ビジュアル・ジャーナリスト協会〔JVJA〕会員)
  • ヨルダンから 高遠菜穂子氏(イラク支援ボランティア、Skype中継)

世界中がシリアの現状を放置した結果、20万人の死者

 後藤氏と2014年に知り合ったという安田氏は、「後藤氏は明確にアサド政権の空爆によって人々が死んでいると言っていたが、(TV番組は)全部切っていた」と話し、メディアは、後藤氏が取材した中でも、子どもや女性のシーンのみを使用していたことに、同じジャーナリストとして大変な侮辱と感じたという。

 シリアでは、アサド政権の空爆や反対勢力との衝突が拡大していき、「どうしたらいいかわからない」と、世界中がこの現状を放置した結果、20万人もの人々が亡くなる事態になっていると、安田氏は話す。

 あらゆる人々を巻き込んで泥沼化している状況が現在のシリアであり、難民の中には、生活ができないためにイスラム国に行くしかないという者までいるという。イスラム国は、石油施設などを占領下に置き、実質的な利益のある所を狙って勢力が拡大したと安田氏は説明。加えて、こうした状況を見放してきたことが、被害をここまで拡大させてしまった最大の原因だと断言した。

残虐な映像が流れると、さらに残虐に報復をするという現実

 後藤氏と同じように民放TV局などでリポートをしている綿井氏は、殺害予告や遺体などの映像の取り扱われ方に残念に思うという。

 ベトナム戦争時には、映像や写真は殺すなというブレーキになって、反戦運動につながっていたと綿井氏は指摘。しかし、現在では残虐な映像が流れると、さらに残虐に報復をするというアクセルになっていることを綿井氏は危惧している。

 豊田氏は、日本人2名の殺害予告の映像が出た際、2人の命を救う目的で、日本ビジュアル・ジャーナリスト協会(JVJA)が声明を出したと報告。「2人が助かることは、中東の和平につながると、私たちは考えている」旨の構成だったという。豊田氏は、シリア・イラクで投票権は当然ないが、自衛隊を海外に送るという安倍政権に対しては一票があり、デモを行なうことができるという判断材料を国民に提供できるのが、ジャーナリストの仕事だと語った。

緊急支援の必要性が高まる一方、混迷極まるイラクの現実

 難民支援活動を行なっている高遠氏からは、ヨルダンより電話での報告がなされた。自らのできることとして、高遠氏は緊急支援の調整を現在も行なっている。

 2014年にイラクは、イラク戦争後で最悪な事態をむかえ、非常に短期間で何十万人もの避難民を出している。それに対して日本政府は、イラク西部における武力衝突により発生した国内避難民に対する、緊急無償資金協力を国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)を通じて行なっていた。この模様は国営放送でも放送され、住民は非常に感謝していたという。

 しかし、今回の安倍首相による人道支援の発言に関しては、現地でも反発・疑問の声が多かったようだ。人道支援は、「対イスラム国にする」と発言したことで、イラク政府に資金が渡ってしまうことを、住民は懸念している。

 資金が武器や空爆に化けてしまうと考える人々も少なくなかったと、高遠氏は語る。

 「これは、避難民や難民の為の人道支援なんだと説明を続けたが、(住民からは)だったらイラク政府にお金を回すのは疑問だと言われました」

 イラクには、難民省にあたる省庁が存在するが、イラク政府の腐敗は世界でもトップクラスで、イラク政府の関係者すら、人道支援に「(日本の)協力を要請するのは止めた方がいい」と高遠氏に告げているという。

 しかし、一方でイラクは、今後ますます緊急支援の必要性が増える状況にある。こうした状況を踏まえ、支援は、UNHCRや赤新月社にするのがベストだと高遠氏は考えている。ところが、イスラム国側は国際NGOなどのスタッフにも脅迫や殺害行為をしているため、極めて困難な状況下での人道支援を強いられている。高遠氏は、イラクでの緊急支援の必要性が高まっている現状とともに、現在も混迷の一途をたどるイラクの現実を伝えた。

難民キャンプ長期化がもたらす疲弊

 佐藤氏は、日本政府による人道支援2億ドルの内訳について、イラクは9000万ドル、シリアは3300万ドルとなっているが、受け入れ側の透明性の問題から、全ての資金がイラク政府へ渡ることはまずないと言及。シリアに関しても、資金がアサド政権に渡ることはなく、国連などを通じた支援になると伝えた。これについて安田氏は、資金が支援にきちんと使われるかをチェックすることが必要だと主張した。

 続いて佐藤氏は、ヨルダンの現状について報告。ヨルダンは、2012年から同国に移動してくるシリア難民の支援を行なっている。現在、難民を受け入れるのが厳しくなっているが、怪我をした人だけは、入国できるという。

 ヨルダンの難民キャンプは、一時20万人を超え、現在でも10万人を超す巨大な難民キャンプとなっている。「そうなるとヨルダン自体が保たない」と佐藤氏は指摘する。さらに、難民キャンプでの生活が長期化し、貧困の度合いが進むなどのストレスで、キャンプ内の治安が悪くなってきていることも懸念されている。佐藤氏は、難民を受け入れている地元民が疲弊しないよう、サポートをしていくことが大事であり、そういった現場への継続的な支援のために、「どう関心を繋いでいくのか」、放置せずに支援していく必要性を訴えた。

戦闘で他国の人を殺しても罪に問われない国と、戦闘で他国の人を殺せばテロリストと呼ばれる国

(…会員ページにつづく)

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“「不平等がテロを生む」――戦闘で他国の人を殺しても罪に問われない国と、殺せばテロリストと呼ばれる国がある現実~私たちは中東の平和にどう貢献できるのか” への 1 件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    「不平等がテロを生む」―戦闘で他国の人を殺しても罪に問われない国と、殺せばテロリストと呼ばれる国がある現実~私たちは中東の平和にどう貢献できるのか http://iwj.co.jp/wj/open/archives/230815 … @iwakamiyasumi
    この矛盾を問い続けなくてはならない。日本も当事者なのだ。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/600220192178769920

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