「米軍がシーア派を使いスンニ派を虐殺。そのスンニ派から生まれたのがイスラム国」 ~岩上安身による志葉玲氏インタビュー/イラク戦争の傷あとから立ち上がった怪物・イスラム国の正体 2015.1.25

記事公開日:2015.1.26取材地: テキスト動画独自
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(IWJ・佐々木隼也)

特集 中東

 「はじめに2億ドルの支払いという無理難題を押し付けてきて、湯川さんを殺して『脅しじゃないんだぞ』と示し、サジダ死刑囚を引き渡させる。ヨルダンの世論を反発させ、国家の威信を傷つけるという一石二鳥です」

 2015年1月25日、岩上安身のインタビューの応じたジャーナリスト・志葉玲氏は、イスラム国(ISIS)の狙いについて解説。イスラム国の前身『イラクの聖戦アルカイダ』時代からのつながりである、かつての同志・サジダ死刑囚を救出することこそが目的だったのかもしれない、と分析した。

 イスラム国は2015年1月24日夜、拘束している後藤健二氏の画像とともに、「身代金を要求せず、サジダ・アル・リシャウィの釈放を求める」とする動画を公開した。動画で後藤氏は、同じく拘束されている湯川遥菜氏の遺体とみられる写真を持っていた。

 志葉氏は、23日にサウジアラビアのアブドラ国王死去が発表され、中東がそのニュース一色になったことを紹介。「人質を殺したというニュースを流してもかき消されてしまうので、時間をずらしたのでしょう」としたうえで、「(イスラム国は)メディア戦術に長けている」と指摘した。

 またインタビューで志葉氏は、20日の人質事件発覚直後に安倍総理が訪問中のイスラエルで行った記者会見について、「イスラム世界全体を敵に回しかねない会見だ」と酷評した。

 当初イスラエルに言及していなかったイスラム国だが、2014年のガザ攻撃でイスラエル軍による残虐な民間人殺傷が知れ渡ると、イスラム世界では穏健派までもが激怒した。これに、イスラム国が便乗するかたちで同年7月に、イスラエルに対して「宣戦布告」したという。

 そうした流れのなかで、イスラエルとの軍事を含めたパートナーシップ締結に動き出し、20日にはイスラエル国旗を背景に「テロに屈しない」と発した安倍総理の会見について志葉氏は、「外務省は誰も止める人はいなかったのでしょうか。人質救出についても、非常に最悪なタイミングの会見だった」と語った。

 中東情勢に驚くほど無頓着に見える安倍政権の外交姿勢。2003年のイラク戦争で、米軍によって80歳の老人も若者も、老若男女かかわらず連れて行かれ、拷問された「現場」を見てきた志葉氏は、「イラクで殺された香田証生氏のご遺体は星条旗に包まれていた。今回は人道支援ですよ、と安倍首相はじめ、外交ルートで言っていても、そんな理屈は通用しない。イラク戦争時の対応でアメリカ側だと思われている」と忠告した。

 志葉氏は自身も米軍にイラクで拘束された体験をまじえ、中東情勢のリアルを語る。そしてインタビューは、この人質事件の背後でうごめく、安倍政権、米国ネオコン、イスラエルの思惑という「核心」に迫った。

■イントロ

  • 日時 2015年1月25日(日)14:00~
  • 場所 神戸サンセンタープラザ(神戸市中央区)

湯川氏の殺害写真、後藤氏の短すぎる渡航日程、多くの不自然な点

志葉氏「イスラム国の残虐性から考えれば今回の湯川氏の殺害もあり得ます。しかしイスラム国はその残虐性故に勢力を拡大してきました。これまでの残虐性から考えれば、湯川氏を苦しめて殺し、その動画を公開するはず。しかし今回は紙質の悪い写真。変則的な感じがします」

岩上「最初の予告動画は合成などとも言われています。気になるのは湯川氏が太っていること。しかしイスラム国は人質に比較的ひもじい思いをさせます。だから湯川氏はもっと前に、8月18日時点で殺されていたのではないか、という憶測も飛んでいます」

志葉氏「今回後藤さんがシリア渡航のスケジュールは非常に短いものでした。これは戦場ジャーナリストの常識からするとかなり不自然。いつ何が起こるか分からないのが戦場。今回後藤さんは湯川さんを助けたい思いを利用され、おびき寄せられたのではないでしょうか」

イスラム世界全体を敵に回しかねない安倍総理の最悪な会見

志葉氏「安倍総理の会見で『それはないだろう』と思ったのが、事件発覚直後にイスラエルで行ったもの。ネタニヤフとの会談で軍事を含んだパートナーシップ締結に向けて動き出していた。イスラム国は昨年7月にイスラエルがガザ攻撃した時に宣戦布告しました。

 それまでイスラム国はイスラエルに言及していませんでした。しかしガザ攻撃で中東圏では日本では報道されない残虐な映像が流れ、穏健派の人まで皆怒りました。これにイスラム国が便乗したかたち。そういう流れの中で、安倍総理がイスラエル国旗の前で会見しました。

 それは、イスラム世界全体を敵に回しかねない会見でした。外務省は誰も止める人はいなかったのでしょうか。人質救出については、非常に最悪なタイミングの会見となりました。

 イスラム世界では被爆国にも関わらず経済発展をした日本は憧れの国です。だから日本人の人質をとるというのは一般のアラブ人からすると抵抗があります。しかしイスラエル訪問のタイミングでやることで、日本とイスラエルは友達なんだと知らしめる効果も狙ったのではないでしょうか」

身代金から、人質交換要求へ――イスラム国の真意とは

志葉氏「今回、安倍総理の外交というのは落第点ですが、安倍総理だけが悪いのでしょうか。日本のここ12年位の外交の積み重ねが、今回の事件につながっています。そもそもなぜサジダ死刑囚が後藤さんとの交換条件となりうるのでしょうか。

 サジダ死刑囚はイラク人です。イスラム国の前身『イラクの聖戦アルカイダ』時代からのつながりのため、かつての同志を救出する、ということこそが目的だったのかもしれません。

 はじめに2億ドルの支払いという無理難題を押し付けてきて、湯川さんを殺し、『脅しじゃないんだぞ』と示し、サジダ死刑囚を引き渡させる、ということではないでしょうか。ヨルダンの世論を反発させ、国家の威信を傷つけるという一石二鳥です。

 サウジアラビアのアブドラ国王が亡くなり、中東はそのニュース一色になりました。人質を殺したというニュースを流してもかき消されてしまうので、時間をずらしたのでしょう。メディア戦術に長けていると言えます」

岩上「日本政府は、子育て支援3千億円が払えないのによその国に何億ドルと払う、これはどういうことなのか。社会保障をバンバン切って、親イスラエルにお金をばらまいている。国内から声が上がらなければいけません」

志葉氏「2004年10年、イラクで殺された香田証生氏のご遺体は星条旗に包まれていた、ということを思い出してほしいと思います。今回は人道支援ですよ、と安倍首相はじめ、外交ルートで言っていても、そんな理屈は通用しない。イラク戦争時の対応でアメリカ側だと思われています」

米軍による民間人への拷問 ――志葉氏の見た戦場

志葉氏「米軍の掃討にあった地域は老いも若きも男なら全員連れて行かれて拷問されています。殴る蹴るの暴行をして『お前はテロリストだろ』と言い、80歳の老人にも、ローティーンにも拷問をしています。私がこの目で見たことです。

 私が米軍に拘束された時、『お前はスパイに違いない』と言われ、捕虜収容所に入れられました。

 巨体の米兵が私の頭に銃を突きつけてきて、『お前の命なんて俺達の気分次第でどうにでもなる』と言われました。日本人でさえこうなんだから、イラク人の場合、推して知るべしでしょう。私の通訳はイラク人だったので、エビ反りの体勢で直射日光の砂漠におかれます。イラクは地球上で一番気温が高い地域です」

「テロリスト掃討も復興支援」!? 防衛省のあきれた見解

岩上「安倍首相は集団的自衛権の行使容認の時、『アメリカは日本の民間人を助けてくれる』とずっと言っていますが、そんなことはありえない。また、イスラム国のメッセージのなかに、イラク戦争で日本は米軍要員を輸送した、と言っています。これは名古屋高裁で違憲とされています」

志葉氏「防衛省に問い合わせしたところ、『テロリストを掃討し、イラクの状態を安定させるのも復興支援でしょう』と開き直っていました。イスラム国も、メインの人員は『イラクの聖戦アルカイダ』だと覚えていなければなりません。シーア派もスンニ派も、自分たちに歯向かうものは殺します」

岩上「カリフ制なので、国境も宗派も越えて、君臨するというのがイデオロギーなのですね」

戦場を知らない無責任なネット言論

岩上「元内閣官房副長官補・柳澤協二氏にインタビューしたところ、安倍首相が辞任することが、この事件を解決するための一つの道筋だという妙案が出されました。しかし、ネット上では爆発的な炎上があり、某新聞でも批判が載りました」

志葉氏「トップが起こした不祥事だから、トップが辞めるというのは当然ですよね」

岩上「後藤氏の母上への誹謗中傷があり、『畜生』という言葉を使うものがあります。ツイッターであっても、度を過ぎた中傷、脅迫、名誉毀損が成り立ちますので、言葉には気をつけましょう。

 石井孝明氏が『身代金として2億ドル払うなら、その額でチームを作り、日本人に手出ししたイスラム国関係者を殺して歩くのが効果がありそう』と言っています。そんなことができると思っているのでしょうか」

志葉氏「世界最強の軍隊の米軍でさえ、現地の人たちを敵に回すと勝てない。戦場を甘く見ています。戦場のPTSDがひどいのです。米軍の帰還兵が一日20人自殺で死んでいます。あるいは犯罪、酒やドラッグに走ってしまう。ベトナム戦争、朝鮮戦争でも、復員兵の問題があり、そのケアはアメリカもお手上げ状態で、目を逸らしています」

アメリカのネオコンの思惑――日本の自衛隊派遣への道すじ

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“「米軍がシーア派を使いスンニ派を虐殺。そのスンニ派から生まれたのがイスラム国」 ~岩上安身による志葉玲氏インタビュー/イラク戦争の傷あとから立ち上がった怪物・イスラム国の正体” への 1 件のフィードバック

  1. 清沢満之 より:

    2010/08/10 山崎淑子さんインタビュー
    http://iwj.co.jp/wj/open/archives/1430
    2010/09/05 明らかにされた米政府のトップシークレット?!――ブッシュ政権による愛国者法で初めて起訴、投獄され、拷問を受けた元CIA協力者スーザン・リンダウア氏に岩上安身が聞く
    【特別寄稿】安倍首相の「人道支援」発言とNGOの軍事利用 ―救援者、それともCIAスパイか―(米川正子 元UNHCR職員・立教大学特任准教授)
    http://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/cia

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