「身勝手な愛国心は始末が悪い」──孫崎享氏×鈴木邦男氏の対談本刊行イベントで岩上安身も交え「今の日本の右傾化」に危機感 2014.12.14

記事公開日:2014.12.14取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田)

※2015年4月7日テキストを追加しました!

 「右派の評論家が、『慰安婦は世界のどこにでもあった。だから、諸外国が反省するなら、日本も反省する』といった発言をしていたが、それは、万引きして捕まった中学生が口にする理屈と同レベル」──。鈴木邦男氏はこのように力を込め、今の日本への批判を繰り返した。

 元外務省国際情報局長の孫崎享氏と、新右翼団体「一水会」最高顧問の鈴木邦男氏の対談本『いま語らねばならない戦前史の真相』(2014年10月、現代書館)刊行記念イベント、「孫崎享×鈴木邦男×岩上安身『2014‒2015 ニッポンの分かれ道』」が、2014年12月14日、東京都内で開かれた。孫崎氏と鈴木氏のトークセッションの司会を、IWJの岩上安身が務めた。

 リベラル派の評論家と新右翼という異色の取り合わせながら、2人の話は何度も共鳴。批判勢力が不在に等しい中で、安倍政権が改憲へと突き進むことを異口同音に案じた。

 孫崎氏は、「米ソ冷戦の終結により、米国は自国利益追求のエゴをむき出しにし、日本にも無理を強いるようになった。その圧力に日本の外務省が完全に屈している」と言及。90年代以降、「日米関係さえ崩れなければ、それ以外のことはどうでもいい」という価値観が外務省を支配し、日本のアジア外交を粗雑なものにしていると強調した。

 自民党の改憲草案では、公務員による拷問などは「絶対にこれを禁ずる」とする現行憲法第36条から、「絶対に」が削除されている。これについて、鈴木氏は「愛国無罪」という言葉を使って、愛国心があれば何をやってもいいという考え方が社会を支配することへの懸念を語り、「その愛国心が、身勝手な思い込みによる愛国心であれば、なお始末が悪くなる」とした。

 もとより両者の意見が衝突する場面も見られた。伊藤博文の暗殺を巡り、孫崎氏が、暗殺者の安重根を英雄視する風土が韓国社会に定着していることに異を唱えると、鈴木氏は、「韓国でそんな持論を披露したら、反感を買うのは当然だ」と反発。壇上の空気は一瞬、ぴんと張りつめた。

記事目次

■ハイライト

「鈴木邦男がリベラル派」に映る時代

 約400人を収容できる会場は、ほぼ満席状態。岩上安身は客席に目をやりつつ、「これだけ大勢の人が集まったということは、この対談本への期待がそれだけ大きいということだろう」と明るく語り、「今日は、本に載っていない話題も積極的に取り上げていく」とした。

 岩上安身が、「2人は異色の取り合わせだが、どんな理由で本を作ることになったのか」と切り出すと、最初に応じたのは孫崎氏だった。

 「今の日本は、大変な勢いで右傾化が進んでいるが、鈴木さんは違和感を覚えているに違いない、と考えたのが大きな理由だ」と述べ、新右翼の鈴木氏がリベラル派に見えるのが、今の日本である、とした。

 「鈴木さんが、安倍政権を批判すれば、それはインパクトになる」と孫崎氏が言い重ねると、「私は孫崎さんが書いた『戦後史の正体』(2012年7月、創元社)に新鮮さを感じた。外交官として、日本の外交の裏を知ることになった人が書いているだけに、説得力もあった」と鈴木氏。今回の対談本の話が持ち上がった時、自分の中にある近代史がらみの数々の疑問を、孫崎氏にぶつけてみたいと思ったという。

右翼は安倍政権をどう見ているか

 岩上安身は、このイベント開催日が衆院選の投開票日に重なったことから、「自民党が大勝しそうな情勢で、新聞各紙は『300超の議席獲得』と占っている。仮にそうなったら、憲法改正の可能性がぐんと高まる。改憲自体は、かねて鈴木さんが悲願としてきたものだが、鈴木さんは、今の状況をどう見ているのか」と問いかけた。

 鈴木氏は、やっと自分たちの悲願が達成されると思っている保守派や右派の人たちは多い、としながらも、「私は、『今は憲法を改正すべき時ではない』とあちこちで発言しており、これに対しては、かなりの反発の声が届いている」と回答し、次のように口調を強めた。

 「今の永田町には、いくつもの政党が存在するが、力のある野党は存在せず、実質的には自民党による単独支配の状態だ。『非武装中立』や『有事駐留』という言葉を口にしようものなら、『この非国民が』と非難の集中砲火を浴びそうな空気が、社会のほぼ全体を覆っている」

 さらに、「憲法さえ変えれば日本のすべてが良くなる、憲法が諸悪の根源だ、という考え方は、学生時代の自分にあったもの」と言い重ねる鈴木氏は、改憲は必要条件であっても十分条件ではないと強調し、「日本は、40年前の私のレベルに退化したように思える」と揶揄した。

 鈴木氏からは、「右翼の中にも、『(今回の衆院選で)今の自民党に勝たせすぎるのは良くない』という声がある」との発言もあった。「彼らの言い分は、『安倍政権に強大な力を持たせたら、日本は一段と米国の言いなりになってしまう』というものだ」

冷戦終結後の外務省──「日米関係さえ崩れなければいい」

 孫崎氏が、「外交では、日本の利益が相手国にとってもプラスになる、つまり相手国の価値観から判断しても、日本がその件で利益を得ることは理に叶っている、ということが強く訴えられねばならない。だが、今の日本の外交には、その点が大いに欠落している」と語ると、「それは、外交官が劣化したということか」と鈴木氏が尋ねた。

(…会員ページにつづく)

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「「身勝手な愛国心は始末が悪い」──孫崎享氏×鈴木邦男氏の対談本刊行イベントで岩上安身も交え「今の日本の右傾化」に危機感」への1件のフィードバック

  1. うみぼたる より:

    あけましておめでとうございます。
    昨年の饗宴Ⅴは物見遊山ではとても参加できませんでした。私はいまだにカルチャーショックから抜け出せません。
    2部のパーティはキャパシティぎりぎりだったのではないでしょうか。
    その2部のパーティで孫崎さんのお話を聞き逃してしまい、こちらの動画を再視聴しました。
    韓国で安重根のお話をしたくだりがハラハラします。
    日本の初代総理大臣伊藤博文氏の暗殺はショック・ドクトリンにもなったでしょうし、福沢諭吉氏の影響もあるのではないかと思いました。ザビエルさんとかグラバーさんとか、国民が気がつかぬうちに何をどこまで画策していったのでしょう。

    宗教を利用した戦争と、その宗教の鎧を脱ぐために奮闘した人がいて、歴史や文化があります。
    饗宴Ⅴのカルチャーショックからまだ抜け出せません。

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