「戦争国家化の進む今、抵抗する種を撒き続けねばならない」~秘密保護法に危機感を抱くキリスト教の牧師らが宗教弾圧を危惧 2014.12.9

記事公開日:2015.1.14取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田)

特集 秘密保護法

※1月14日テキストを追加しました。

 「戦時中、政府は治安維持法で牧師や信徒を弾圧した。検挙された牧師は134人。今の時代にも、秘密保護法によって宗教弾圧が再現されそうだ」──。特定秘密保護法に危機感を抱くキリスト教の牧師らが、教派の垣根を超えて連帯し、抵抗の意志を示した。

 2014年12月9日、東京都千代田区の御茶ノ水クリスチャンセンターにて、特定秘密保護法に反対する牧師の会主催による記者会見と、施行直前緊急集会「抵抗の時代を迎えて、私たちはどう生きるのか」が開かれた。

 記者会見ではまず、牧師の会共同代表で日本同盟基督教団徳丸町キリスト教会牧師の朝岡勝氏、同じく共同代表で、単立東京めぐみ教会牧師の安海和宣氏が、秘密保護法の施行にあたっての声明発表を行い、同法の廃止を求める意志を改めて強調した。

 呼びかけ人らによるスピーチでは、3.11後の被災地の復興を推進したい国が、被災地の人たちに安心感を植えつけるために、重大な放射能汚染情報を「特定秘密」に指定する恐れがある、といった指摘が聞かれた。

 続いて行われた緊急集会では、ノンフィクション作家の田中伸尚氏が、「闇の中で光を──戦争国家化の中で」と題した講演を行った。今の日本社会を覆う右傾化のムードがいかに危険なものであるかを、田中氏は過去の歴史を参照しつつ説く。いったん戦争が始まってしまえば、社会を正すことは非常に難しく、だからこそ前段階である「戦争国家化の進む今、各人が、戦争国家化に抵抗する種を撒き続けねばならない」と主張した。

記事目次

■ハイライト

  • 記者会見
    • 内容 特定秘密保護法の施行にあたっての声明発表
    • 会見者 朝岡勝氏(特定秘密保護法に反対する牧師の会共同代表、日本同盟基督教団徳丸町キリスト教会牧師)、安海和宣氏(単立東京めぐみ教会牧師)
  • 緊急集会
    • 内容 「抵抗の時代を迎えて私たちはどう生きるのか」
    • 講演者 田中伸尚氏(ノンフィクション作家)、レスポンス 山口陽一氏(東京基督教大学教授)
  • 日時 2014年12月9日(火) 17:00~
  • 場所 御茶ノ水クリスチャンセンター(東京都千代田区)
  • 主催 特定秘密保護法に反対する牧師の会

秘密法施行前夜に「廃止」要求声明を発表

 「秘密保護法施行のイヴ(前夜)に、このような会を開くことは意義深い」──。安海代表のこの言葉で、記者会見はスタートした。

 安海氏は、「昨年(2013年)12月6日に秘密保護法が成立した時、私たちは同法に反対する牧師の会を立ち上げた。そこでは教派間の垣根が取り払われた」と、牧師の会の成り立ちを説明。この1年間の活動については、「節目節目で声明を発表し、秘密保護法撤廃要求の意思を、国会議員や内閣府に文書の形で伝えてきた。また、現状を憂える牧師たちの声を集めたブックレットも出版した」と話す。

 続いてマイクを握った朝岡代表は、牧師の会がこの日に改めて発表した、安倍政権の暴走政治への批判で始まる、秘密保護法廃止を求める声明文を読み上げた。

 「昨年(2013年)12月6日、特定秘密保護法は稚拙な法案審議と強行スケジュールによって成立した。それから1年が経ち、明日12月10日に施行されようとしている。この間、多くの国民の不安や反対の声、国の内外からの重大な懸念の声が寄せられていたにもかかわらず、政府は主権者たる国民の声に謙虚に耳を傾けることなく、法施行に向けての準備を着々と進めてきた」

 朝岡氏は、「秘密保護法を単体でとらえるのではなく、同法が(安倍政権が進めている)国づくりの流れの中に存在する、と認識することが大切だ」と発言した。

 日本を「戦争をする国」につくり変えることの一環に、秘密保護法の施行があると言い継ぎ、同法には(1925年に制定され1945年に廃止された、市民による政府批判を弾圧した)治安維持法と似た部分があると強調して、こうも述べた。

 「やはり牧師だった私の祖父は、治安維持法で逮捕され、身柄を拘束された。秘密保護法案が出された時は、頭で考えるより先に、身体に拒否反応が走った」

放射能汚染関連の情報が標的になる

 その後、牧師の会の呼びかけ人たちが、順番に秘密保護法の問題点を論じていった。

 川上直哉氏は、仙台キリスト教連合世話人であり、被災支援ネットワーク・東北ヘルプ事務局長の立場から、「全域が放射能被曝地である東日本大震災の被災地には、特定秘密保護法に反対せざるを得ない現実が横たわっている」と訴えた。

 そして、「今年(2014年)8月、NHKの報道によれば、水に溶けず、マスクを透過し、ガイガーカウンターでは捕捉されない放射線を発するウランを主とする物質が、被災地全域を覆う範囲に飛散している可能性があるという。だが、こうした報道を話題にしにくい空気が、被災地には漂っている」と報告。被災地からの避難ではなく、被災地の復興へと世論が誘導されている中では、復興への士気向上の妨げになるネガティブな情報は「特定秘密」に指定される恐れがある、との認識を示した。

 続いて、日本バプテスト連盟泉バプテスト教会牧師の城倉啓氏は、市民らの間に漂うあきらめムードにクギを刺した。「秘密保護法がつくられてしまった以上、今さら何を言っても遅い、という声が聞かれるが、それは間違いだ。同法は憲法違反ということで、裁判所に訴えることは可能だし、また、国会に働きかけて廃止にする法律を通すことだってできる」と強調。「しぶとく戦ってこそ、宗教者だ」と言い重ねた。

「ホーリネス弾圧」再来の恐れ

 「ホーリネス弾圧事件」を取り上げたのは日本ホーリネス教団・川越高階キリスト教会の杉浦紀明氏だ。

 この事件は、戦時中に政府が、治安維持法でホーリネス系の教会の牧師や信徒を一斉に弾圧したことを指す。検挙された牧師は134人、そのうち起訴された者は81人、重刑や獄死者1人、閉鎖された教会の数は約300とされている。

 杉浦氏は、「政府に弾圧を受けた教会関係者らは、戦後70年になろうとする今も、その時の心の傷が癒えていない。戦後生まれの私は、戦後憲法の下で同じようなことはあるまいと長年思っていたが、安倍政権は日本を『戦争をする国』に引き戻そうとしている」と述べ、「今の時代に、宗教弾圧が再現されそうだという危機感を抱いている」と表明した。

 記者からの「牧師という立場で秘密保護法に反対することに、どんな意義があるのか」との質問には、朝岡氏が「日本の社会では極めて少数派である牧師たちも、秘密保護法を問題視しているというニュースが呼び水効果を生めば嬉しい」と発言。城倉氏も「宗教者が集まって秘密保護法に反対すれば、世間の耳目を集めやすいと思う」と話した。

2016年の参院選が歴史の分水嶺に

 記者会見が終了し、田中伸尚氏の講演に移った。元新聞記者の田中氏はまず、「私は学者ではないし、法律家でもない。秘密保護法の問題点を専門的に解析することは私には不可能」と前置きし、「近代の日本の歴史に照らしながら、今の日本がどういう状況に置かれているのか、という切り口で話してみようと思う」と続けた。

 「プロテスタント系の牧師さんたち約560人が秘密保護法に反対していると、牧師の会から説明があった。560人という数が、キリスト教者全体の中でどれだけの比率を占めているかはわからないが、少なくない人数だと思う」

 こう話した田中氏は、「秘密保護法をめぐる市民らの反対行動の大きさは、1969年に登場した靖国法案へのそれに匹敵する」と指摘し、本論に入った。

 靖国法案は、靖国神社を国家管理の下に置くことを規定しており、1969年から計5回、自民党案が提出されるも、いずれも廃案になっている。野党や諸外国の反対に加え、戦前復古を嫌う反対世論の高まりが背景にあった。田中氏は、「秘密保護法についても、市民による反対行動が止んでおらず、それは『闇の中にある光』と言えよう」と語った。

 そして、「今日は秘密保護法施行の前夜に当たるが、時代という観点から見れば、今の日本は『改憲前夜』でもある」とし、「今回の衆院選では、アベノミクスが争点にされているが、憲法改正も争点にならなければおかしい。そして、2016年に迎える参院選は、改憲を争点にした戦後最大の選挙になる」と続けた。

「国民会議」による改憲支援活動が進行中

 田中氏は、今後の見通しと右派の動きをこう話す。

 「マスコミが占うように、今回の衆院選で自民党が大勝したら、安倍政権の『改憲勢力』には明らかにはずみがつく。そして、再来年(2016年)7月に予定されている参院選では、間違いなく改憲が争点になるだろう。安倍首相らを支える右派議員の団体『日本会議』は、2ヵ月ほど前に『美しい日本の憲法をつくる国民の会』を発足させ、1000万人署名を始めている」

 ジャーナリストの桜井よしこ氏、杏林大名誉教授の田久保忠衛氏、日本会議会長の三好達氏の3人が共同代表を務める同会は、2016年7月に実施される予定の参議院選挙で「憲法改正国民投票」の実現と、過半数の賛成による憲法改正の成立をめざして活動をしていくと表明している。

特高警察を復活させるな!

 その後、1956年7月の参院選では憲法改正が最大の争点になった、と振り返った田中氏は、「当時は社会党など革新派(護憲派)が3分の1議席をぎりぎりのところで確保し、改憲を阻止した」と述べ、「それ以降は、改憲志向の自民党が(今回の衆院選を含め)憲法改正を選挙の争点に正面から据えることは一度もなかった」と指摘。その上で、次のように訴えた。

 「1956年当時の日本と、2016年、戦争国家化の真っただ中にあるだろう日本とは、時代背景がまるで異なる。だから今は、『改憲前夜』なのだ」

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“「戦争国家化の進む今、抵抗する種を撒き続けねばならない」~秘密保護法に危機感を抱くキリスト教の牧師らが宗教弾圧を危惧” への 1 件のフィードバック

  1. あのねあのね より:

     日本のキリスト教が、プロテスタントの教会は日本基督教団ばかりであることに1970年代に疑問を持った。その後新聞で、日本基督教団ばかりなったのは戦争と大いに関係があることを知った。日本基督教団の教会の方々も、日本基督教団ばかりに成った事実に対して原因を学習することをお勧めする。当局の不当な宗教弾圧が原因であることをだ。 
     日本基督教団の教会でも故沢正彦牧師が、安息日である日曜日の授業参観への教会員の子女の不参加を認めず休み扱いしたことに対して訴訟を起こした。その前年までは教会員の子女の日曜参観は、宗教上の理由から不参加を認めて休み扱いにしなかったのにである。当時でさえ訴訟を起こしたとたんに電話がひっきりなしに鳴り、名前を名乗らずに罵声を浴びせ、普通の人が団体名も名乗らずに電話口で右翼を詐称したりしたのだ。
     日本基督教団の教会員の方々もこの事実を学習し、今後の弾圧に対して備えて欲しい。政権は平気で嘘をつく連中であふれ、自称クリスチャンでありながら平気で靖国神社を参拝する偽キリスト教信者まで居るのだ。キリシタンの弾圧を知れば判るとおり、一神教に於いて他の宗教の神様を拝むことは有り得ない、作家であろうと、閣僚であろうとだ。

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