福島第一のトレンチ止水壁、不完全だが一定の効果はあったと評価するも、工事が遅延すれば凍土遮水壁工事にも影響~東京電力記者説明会 2014.11.21

記事公開日:2014.11.21取材地: テキスト
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 2014年11月21日(金)19時から原子力規制庁記者控室にて、海水配管トレンチの止水工事やサブドレンピットの状況について記者向けの説明会が行われた。東京電力は「止水は完全ではないが、一定の効果はある」と評価。止水ができなくてもトレンチ水平トンネル部分へグラウド充填を開始することを発表した。

■全編動画

  • 日時 2014年11月21日(金)19:00~
  • 場所 原子力規制庁(東京都港区)

凍結止水は不完全だが、グラウド充填で閉塞を開始する

 2014年11月21日(金)15時から、原子力規制委員会「第29回特定原子力施設監視・評価検討会」が開催された。東京電力は懸案事項である”海水配管トレンチの建屋接続部止水工事の進捗”、”サブドレン等の状況”について規制委に報告し、議論が進められた。その内容を記者向けに説明、質疑を受けるもの。

 止水工事の結果、「完全な止水が確認できていない」が、「間詰め充填により一定の効果は上げたもの」と判断。「滞留水が存在する状態でトレンチ本体の充填・閉塞を実施する」ことが決まった。

 トレンチ本体の充填・閉塞は、新たに開発した流動性の高い”水中不分離グラウド”と呼ばれる特殊なセメントを流し込んで行う。このセメントは、水のように流れトレンチを埋めて固まるような性質のもの。縦穴となる”立坑”部分の底から水中不分離グラウドを流し込み、立坑を繋水平トンネル部分を埋めていき、閉塞する。最後に立坑部分も閉塞する計画だ。

残る放射能の影響は少ないと評価

 水中不分離グラウドが固まる時、ある程度の汚染水を内部に取り込んでしまう。また、トンネル部分に砂などがあり、それらが汚染水とともに残ってしまうことも考えられる。トレンチ内にある汚染水は約5000トン。水中不分離グラウド内へ固定化される水量は約50トン程度で、砂など約25トンが残ると東電は推定している。

 これら汚染水中に含まれる放射能はグラウド内に固定化されるため、流出リスクは非常に小さいという。しかし、作業上の被曝の影響が考えられる。東電は、閉塞の確認や、凍土遮水壁工事の際にボーリングでコア抜きをした場合の被曝について考察し、表面線量は30μSv/h程度で、2号機トレンチ付近の地表の線量160μSv/hに比べ、5分の1程度と評価している。

12月下旬に状況を評価する工事を予定、遅延は凍土遮水壁工事に影響

 工事は、連休明けの11月25日から水中不分離グラウドの充填を開始、12月中旬ごろまでにトンネル部分を充填する予定だ。固まるのを待ち、12月25日頃に次回の「特定原子力施設監視・評価検討会」で状況を報告、議論する。年明け後には、残る立坑に充填する予定だ。

 トンネル部分は凍土遮水壁工事区間と交差しており、充填閉塞できなければ凍土遮水壁の凍結工事が開始できない。凍土壁のスケジュールは変更しておらず、東電は1月下旬ごろまでにはトレンチトンネル部分を閉塞しなければいけない状況に追い込まれている。

 さらに、3号機のトレンチは、凍結管をさしこむ穴を掘りこむ”削孔”の段階で、具体的な止水には至っていない。2号機の結果を見て、凍結で壁を作り止水するか、いきなり水中不分離グラウドを充填するかの検討に入ることを考えている。

 凍土遮水壁のスケジュールへの影響のみならず、閉塞できなければ、汚染水の閉じ込め対策そのものを見直さなければならないことになる。

<資料>
 第29回特定原子力施設監視・評価検討会

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