コープ自然派京都☆TPP実行委員会 第2弾「TPPのそこが気になる!」日本と世界の食料問題編 2012.6.15

記事公開日:2012.6.15取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・佐々/澤邉)

 2012年6月15日(金)、京田辺CIKビル(商工会館)で「コープ自然派京都☆TPP実行委員会 第2弾『TPPのそこが気になる!』日本と世界の食料問題編」が行われた。

講師の松平尚也氏(NPO法人AMネット代表理事・アジア農民交流センター世話人)は、「日本がTPPに参加すると、あらゆる分野で市民生活に影響が及び、日本の農業が壊滅するだけでなく、アジアの飢餓を増大するなど、世界の穀物消費構造の歪みにさらなる追い討ちをかけることになる」と指摘した。

■全編動画

  • 日時 2012年6月15日(金)
  • 場所 京田辺CIKビル(京都府京田辺市)

 野田首相はTPP参加を発表することは見送ったものの、6月のメキシコ・ロスカボスでのG20で、オバマ米大統領に「参加に向けて日米両国の協議を進める努力をすることを確認」した。これまで貿易・投資の自由化について、調査・研究、政策提言活動をしてきた立場から松平氏は「今回TPP参加発表が見送られた理由の1つは市民の声だ」とし、「市民がまず知ることが大切だ」と力説した。

 講演の前半では、あまたある国際経済交渉の中でのTPPの特異性について、「①二国間協議とは異なり、例外のない関税撤廃を目標としている、②非関税障壁という名で、各国のルールや制度も変更のターゲットになる、③交渉分野が多岐にわたり、参加国の市民の暮らしに直接的に影響する、④交渉はすべて密室で行われているのに、利害団体=多国籍企業には情報が筒抜け、⑤日本の米は対象なのに、アメリカは自国の乳製品を対象外にしようとするなど、不公平さが目立つ」と説明した。

 後半では、TPPを考える時は、特に「世界とのつながりや、食べ物の向こう側」を知ることが重要であると語り、世界の食料問題を解説した。

 松平氏は「日本がTPPで輸入米に頼るようになったら、2.7億人のアジア人が新たに飢餓に陥る」と語った。年間800万トンの米を消費する日本が、安いアジア米に頼るようになったら、それまで貿易率が低く自国消費型だった世界の米事情に大きな影響を与えることになる。

 一方、世界の全穀物生産量は年間23億トンである。「世界中の人口を養うのに充分な穀物があるのに、世界人口70億人のうち9億人が飢餓に陥っており、欧米中心に10億人が肥満状態にあるというアンバランスが生じている。その理由は、穀物消費構造に問題があるから」と松平氏は指摘する。食料となるのは全体の半分にも満たず、あとは飼料、甘味料、バイオ燃料に使われてしまうという。例えば、日本は、世界最大のコーン輸入国で一人当たり年間120キロものコーンを消費しているが、消費者の目には見えにくい。用途の66%が食用肉や乳牛の飼料、21%が清涼飲料水用のブドウ糖液糖になるという。

 日本の年間消費食料9100万トンのうち、輸入は5800万トンを占める。しかし1900万トンは廃棄。これは世界の食料援助量の2倍ともいわれる量だ。

 質疑応答の中では、「3.11以降、『放射能汚染のない海外の米がいいんじゃないか』、『TPPのメリットは米が安くなること』という声を聞く。でも以前大豆ショックもあったように、永遠に好条件で充分な量が輸入できる保証はない。また、田の持つ水の循環機能の価値は数兆円ともいわれ、稲作が減ったことは、台風の大災害のような形で、すでに都市部にも影響していることも忘れてはならない」と、簡単に輸入米に頼ることの危うさを強調した。

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