【IWJブログ】国は「言葉が軽い」 川内原発再稼働をめぐり鹿児島県原子力特別委で議会から批判が噴出 2014.10.29

記事公開日:2014.10.29 テキスト
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 川内原発の再稼働に向けた議論の一環として、10月27日、鹿児島県庁で原子力安全対策等特別委員会が開催された。

 原発再稼働には、鹿児島県と、原発立地である薩摩川内市の「同意」が必要とされている。この日、県庁で開かれた委員会は、「地元同意」へ向けたプロセスの一環で、薩摩川内市ではすでに議会での議論が進み、翌28日、岩切秀雄市長が再稼働に同意すると表明した。

 県の特別委では、午前中に経産省・資源エネルギー庁が、午後は原子力規制庁が参考人として招致され、川内原発の安全性や事故対策をめぐる審議が行われた。政府担当者の説明の後に行われた質疑応答では、質問に立った県議から、住民に依然として不安の声があることや、避難計画、新規制基準の不備を指摘する声が多くあがった。

 以下、その模様を掲載する。

脱原発は「エネルギーの安全保障という面から見ても問題」?

 午前の部は、資源エネ庁の吉野恭司審議官が、福島第一原発が抱える、廃炉作業や汚染水対策などの課題と、日本のエネルギー政策に関する見解を説明した。その後、県議会の原子力安全対策等特別委員会メンバーとの質疑応答に応じた。

吉野審議官「東日本大震災以降、化石燃料の輸入量が増加、原油、石油製品の価格は高い水準で推移し、電気料金も大幅に値上がりしています。2012年度のエネルギー自給率はわずか6パーセントで、エネルギーの安全保障という面から見ても問題があります。

 福島原発の廃炉に向けた取り組みは着実な前進を続けており、汚染水対策、地下水バイパス、多核種除去装備(ALPS)、凍土壁など、インフラ面も整いつつあります。また、避難指示の解除と、福島県民の帰還に向けた取り組みも始まっています。

 安定供給、コスト低減、環境負荷低減に加え、安全性によって支えられた新しいエネルギー基本計画が春に閣議決定され、東日本大震災以降の我が国のエネルギー政策の基本方針が明示されたと言ってよいと思います。

 また、再生可能エネルギー、原子力、石炭、天然ガス、石油、LPガスを組み合わせる『エネルギーミックス』は、それぞれの発電方法ごとの特性に合わせ、安定性、経済性、環境負荷性を踏まえて供給割合を最適化する、という考え方です。

 再生可能エネルギーには今後、需要拡大の余地がありますが、九州では再生可能エネルギー発電設備の接続問題が起こりました。導入が進み、申込者急増のため、需要の少ない春と秋の晴天時、需要と供給のバランスが大きく崩れることとなりました。

 また、コスト高、出力の不安定性、立地制約の克服などが再生可能エネルギーの課題となっています。一方で、省エネルギーという方向への取り組みも強化し、『ゼロエネルギーハウス』や電気自動車の普及を加速化していきます。

 現在、原子力発電所で生まれる高レベル放射性廃棄物の中間貯蔵、最終処分の問題が叫ばれており、地層処分地の選定を進めていく上でも、地元民の同意をもとに、地球科学的な観点、社会科学的な観点の両面からの適性を考慮します」

「原発事故について、どう対応し、誰が責任をとるのか」

 続いて質疑応答へ。

議員A「『100パーセント安全とは言えない』とおっしゃいますが、福島の方の感じておられる不安について、どのように考えておられるか、そして県民の声にどのように答えていくのか、お聞きしたいと思います」

吉野氏「汚染水対策のみならず、火山、テロのリスク対策などを進めており、世界で最も厳しい安全性の基準を満たしており、それについて丁寧に説明していきたいと思います。安全神話を脱し、国民の声に耳を傾けながら、さらにリスクを下げていくつもりです」

議員A「原発の重大事故について、どう対応し、誰が責任をとるのか。事業者に任せていいのか、という不安が国民にはあります」

吉野氏「事故の責任は事業者にあるが、国は原発政策をすすめてきた者として、重く受け止め、社会的責任を果たしていきます」

議員A「福島の状況を見て、何重もの対策を続けてこられたと思いますか。避難計画については、確実に機能するように、国が前面に立って強化を図るべきだと思います。今後の避難計画について、どうお考えなのでしょうか」

エネ庁・森下氏「内閣府が中心となって、地域ごとにワーキングチームを支援してきました。自衛隊、警察、消防を含めて、国としては川内原発の避難計画の充実、強化を引き続き支援していきますので、なにとぞよろしくお願いします」

風向きも考慮されていない「避難計画」への異論

議員B「風向きによって、避難誘導をどうすればよいのかということを考えなければならないのに、『なぜその方向に逃げなくてはならないのか』という意見を聞いています。確実に機能する避難体制を整えていただきたいと思います」

森下氏「常に改善の余地があるという考えのもと、国と鹿児島県の連携で避難訓練を行い、住民の声を聞きながら、さらなる計画の改善を目指していきます」

議員B「どこの説明会でも住民の不満が沸騰しています。避難時間シミュレーションを鹿児島県ではどこでもやっているが、私の考えでは、風向きの影響を反映した避難計画こそが必要だと思います」

森下氏「5キロ圏内の住民は放射能が漏れる前に、どれだけ早く退避できるかが大事だという考えのもと、計画を作っています。モニタリングをし、どの方向の線量が高いかを把握し、そこを通らない形をつくるという臨機応変な対応の精度を上げていきます」

議員C「避難訓練については、全体のうち、わずかな人々しか参加していませんが?」

森下氏「総合防災訓練に関しては、国の関係機関がどう動くか、ということの訓練をしてきています。住民の声を聞きながら、結果を評価していきたいと思います」

住民がもっとも懸念する「避難計画」への説明責任は果たせているか

議員D「避難計画について、住民説明会で多くの疑問の声が寄せられました。その声を含めた議論がなされているのでしょうか?」

森下氏「はい。ワーキングチームで9月の防災会議にかけました。いただいた声を反映して計画が作られました」

議員D「そのような解決策が住民に届いていないのが現実。バスが何台、運転手が何人必要、ということが決まっていないのでは。また、運転手自身もご家族が大変な状況にいるのに、バスの運転に従事できるのか、ということも問題ではないでしょうか。

 屋内退避についても疑問が出ています。子供をもつ親の職場に電話がかかってきて、『警戒事態』と聞いたなら、回りにいる人がいっせいに『大変だ』ということになるでしょう。住民の不安感情を汲んだものでなければ机上の空論でしかないのでは」

森下氏「全体として『共助』が必要という思想のもと計画が作られています。みんないっせいに逃げるのではなく、放射能発生源に近い住民から、段階的に逃げるという考え方が示されています」

議員D「計画は計画です。住民感情に配慮しなければいけないと思います。11月にも住民説明会が予定されているので、しっかり声を聞いて、何をすべきか考えてほしいと思います」

国は「言葉が軽い」

議員C「私は福島第一原発を訪れ、人の住めない場所になってしまった広大な範囲の土地を眼のあたりにしました。あの事故をどのように認識されているのでしょうか」

吉野氏「さまざまな問題があり、安全神話に陥っていました。福島の事故を出発点として、インフラ整備の取り組みをひとつひとつ進めていきたいと思います。賠償や帰還できない人への対応、経済の復興についても、国が後押ししていきたいと考えています」

議員C「言葉が軽い、という印象を感じます。あの重大な結末について、責任の認識はどのようなものでしょう」

吉野氏「私自身、重いものでした。エネルギー基本計画の出発点として、福島の復興、再生をなるべく早く、と考えています」

議員C「いわき市、浪江町を見に行き、住民と意見交換会をしてきました。浪江町はゴーストタウンでした。住民は自治体、国に強い不信感があります。福島の現状を見て、国は責任感をもって対処できていると言えるのでしょうか」

吉野氏「さまざまな声があるということは承知しています。長い時間がかかるが、着実に復興計画を進めていくしかないと考えています。福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想やロボットの活用など、新たなプランを用意しています」

議員B「国民に信じてもらえると思いますか?」

吉野氏「信じていただけるよう、こちらも耳を傾けていくしかないと思います」

議員B「私は信じてもらえないと確信しています。住宅、家計、教育、医療、福祉など、全然、解決していません」

使用済み核燃料の処理問題をどうするか

遠嶋氏「国が責任を持つというのは簡単ではないと思います。リスクはゼロにしなければと私は思います。使用済み核燃料については、もうすでにいっぱいになっているが、これからさらに増える一方です。どう考えているのでしょうか」

吉野氏「具体的には、中間貯蔵庫の容量を増やしていく、ということです。その上でプルサーマルを増やしていきます。最終処分場に関しては、地上処分を前提に考え、候補地を探しています。すでに17,000トンの使用済み核燃料が存在します」

議員C「六ヶ所村も使用済み核燃料がパンパンになっています。今後も間違いなく増えていきます。こういう状況のなかでは、再稼働すべきではないでしょう。経済産業省には再検討していただきたいと思います」

「福島の事故収束の見通しは立っていないが…」

議員D「福島の事故収束の見通しは立っていないように見えます。『着実な前進』という表現について、どういう見解なのでしょう」

吉野氏「福島の廃炉には30~40年ほどかかります。そこへ向けての取り組みが始まっているというほどの意味です。使用済み核燃料プールから燃料を取り出すという作業をスケジュールにのせていきたいと思います。必要ならば、海外の叡智や広い見聞を集め、研究をしていきたいと考えています」

議員D「4月に福島第一原発の中に入りました。汚染水については現在、収束よりは拡大中であると私は考えています。

 地元の範囲について、また、地元という言葉の概念について、今後、国が整理していくということはないのでしょうか」

吉野氏「あくまで地域それぞれの実情にあわせた範囲を定めていただくことになります」

議員E「再生可能エネルギーの買取制度について、需要と供給のバランスが崩れたというが、『再稼働をしないとこうなる』というようなものとして、電力買い上げを中止した、という見方についてはどう思われますか」

吉野氏「それはありません」

議員D「住民への説明について、質疑応答の時間が少ないと思います。『数時間スライドを見ただけでは分からない』と市民が言うのならば、もっと時間や回数を確保すべきではないでしょうか」

吉野氏「機会が与えられたときは、地元の方と、相当、綿密にディスカッションしています」

議員D「『与えられたなら』とおっしゃいますが、市民に求められれば聞くおつもりなのですか」

吉野氏「そのようにいたします」

「新規制基準はこれまでの基準を大幅に強化、事故の教訓を踏まえた…」

 続いて午後の部は、原子力規制庁の市村知也管理官が川内原発の新規制基準適合性審査の結果について説明した。その後、県庁の原子力安全対策等特別委員会メンバーとの質疑応答に応じた。

市村知也管理官「新規制基準は、これまでの基準を大幅に強化し、東京電力福島第一原子力発電所の事故の教訓を踏まえたものとなっています。

 地震、津波などの共通要因による安全機能が喪失し、被害の進展を食い止めることができなかったという反省から始まった基準作成であったということができます。

 新規制基準は、事故防止策の基準強化とともに、重大事故、人為的な航空機による衝突など、テロが発生した時に対処するための基準をも盛り込んでいます。

 審査結果については、地震によって安全機能が損なわれない設計にするために、最新の知見をふまえた新基準に適合していると判断されることとなりました。以下、個別の審査事項について述べます。

 カルデラを監視対象として、火山ガイドを踏まえ、火山灰などの降下火砕物に対して安全機能が損なわれないことが川内原発では確認できました。

 また、洪水、台風、竜巻、凍結積雪、落雷、地すべりなどの自然現象のみならず、人為現象への対策にも対処していると認められます。航空機落下、ダム崩壊、爆発、近隣工場の火災などが想定対象となっていました。

 さらに電源の強化について、外部からの発電所への送電系統のうち、少なくとも2回線は独立していること、という基準に適合しており、重大事故を防止するための電源を確保できる、と認められます。

 重大事故の発生を想定した対策としては、稼動を『止める』、『冷やす』、『閉じ込める』、『抑える』ための対策がそれぞれ用意されており、放射性物質の拡散を防ぐものとして機能するものと確認されました。

 以上のハード面、設備面だけでなく、体制、手順、訓練など、ソフト面での対策も完備されており、この点で見ても、新基準に適合すると考えられます」

「リスクは確かにゼロではありません…」

 続いて、質疑応答へ。

議員F「地元・日置市の住民説明会に参加したが、はじめてこの話を聞いた人には難しかったのではないでしょうか。旧基準との違いは何なのでしょうか」

規定庁・佐藤氏「先述したとおりの大幅な改正をいたしました。事故の防止に加え、事故が万に一つ起きたとしても対処できる被害の拡大防止という、大きく二つにわけた拡充した内容になっております」

議員F「福島の事故が収束していないという意見は多いが、どのように考えられますか」

佐藤氏「基本的な事故の進展は回避されております」

議員F「新規制基準のもとでも『100パーセント』安全とは言えないのですね?」

佐藤氏「リスクは確かにゼロではありません。大事なのは、リスクを常に低くしていく技術です。基準をつくるにあたって、諸外国の制度を参考に、わが国の現状に見合う形で作りました」

議員G「私も説明会に参加しました。あの雰囲気の中で感じたことは、『絶対安全』と言われない限り、住民は何を聞いていいのかわからない、ということです。事故は起こさないという前提が忘れられ、逃げ道を用意しているだけのようです。

 説明会場で厳しいことを聞かされるのはつらいことだと思います。でも国民は何を望んでいるのでしょう? 自動車事故や火事が絶対起こらないとは言えないということとは根本的に違うのですから」

佐藤氏「規制をする以上、事故を起こさないということを望まれているということは、重々承知しております。『絶対(安全)か?』と聞かれたら、『限りなく絶対に近い』ということでご理解いただきたいと思います」

議員D「リスク低減につとめる、ということは、まだリスクがあるということでしょうか」

佐藤氏「残されたリスクがあるということを肝に銘じて海外の知見を取り入れたり、事業者に『こういう場合大丈夫か』と問い詰めたりしていきたいと思います」

説明会で「理解するのは難しい」と言いながらアンケートで「分からなかったところに丸をつけろ」と指示

(…会員ページにつづく)

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「【IWJブログ】国は「言葉が軽い」 川内原発再稼働をめぐり鹿児島県原子力特別委で議会から批判が噴出」への1件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    【IWJブログ】国は「言葉が軽い」 川内原発再稼働をめぐり鹿児島県原子力特別委で議会から批判が噴出 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/194494 … @iwakamiyasumi
    ”息を吐くように”、嘘をつくのだから言葉も軽いはずだ。当然、国民の命も軽く見ている。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/527446108868329472

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