九電社長が「やらせメール」問題で反省の弁「当時は電力の安定供給というDNAが強く、原子力の安全は配慮していなかった」~第35回原子力規制委員会臨時会合 2014.10.29

記事公開日:2014.10.29取材地: テキスト動画
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 2014年10月29日17時30分から、第35回原子力規制委員会臨時会合として、瓜生道明九州電力社長との安全文化向上に向けた取組みについての意見交換会が行われた。瓜生社長は、「自ら気づかない多くの指摘をいただいた、可能な項目は取り入れたい」とコメントした。

■全編動画 意見交換会

■全編動画 囲み取材

  • 議題1 安全文化醸成を始めとした安全性向上に関する取組について
  • 日時 2014年10月29日(水) 17:30〜
  • 場所 原子力規制委員会(東京都港区)

冒頭、田中俊一委員長が本会合の趣旨を説明

 新規制基準は、「2度と福島第一原発のような過酷事故を起こさない」ことを目指しており、仮に起こっても環境への影響を最小にすることを目的としている。原子力規制庁・規制委員会は、新規制基準のもとでこれまでにPWRが23機、BWR8機の審査申請を受けている。その中で川内原発1、2号機は最初に変更許可を認めたもので、最初に新規制基準適合性審査を認可した、という経緯がある。

 新規制基準は、従来の基準に比べて厳しいものになっている。安全の確保は全てに優先するが、これまでは若干形骸化してきたと規制委員会は感じている。

 原子力発電所の安全確保の第一義的な責任は事業者であり、そのためにはトップマネジメント、リーダーシップが重要だというのが国際的な考え方だと言う田中委員長は、「今日は、そのことを直接確認したい」と趣旨を説明した。

瓜生九電社長「何も対策しないのはかえって気持ち悪い」

 これに関し瓜生道明・九州電力代表取締役社長は、「不確かさがあっても地域影響が大きければ無視はできない。それがまさしく福島第一原発。事業者として当然考えるべきだと思っている。そこまで考えて対策を打つことこそ、企業価値を高めると私は思っている」と応じた。

 更田豊志委員は、「不確かさもあり、発生する確立も低い自然現象に対する”投資”を決断する決心があるのか」と問う。青天井で投資できるわけではなく、将来の不確かさへの投資に抵抗もあるだろうと尋ねた。

 瓜生道明社長は、「結果の影響が大きいならば、いかに影響を小さくするかを事業者は考えるべきだ」と話し、「将来のことでも、何も対策しないのはかえって気持ち悪い」と返答した。

 中村佳代子委員は、説明資料の中に、原子力、電力という言葉はあるが、その中に放射線、放射性物質という言葉がないと指摘。「電力会社は放射性物質を扱うプロ集団だと思っているが、事故が起こった場合の負の要因、それを話さないと安全文化の醸成にはならない」と意見した。

 石渡明委員は、「地質学を40年近くやってきた自分でも、自然現象は分からないことがあり、一筋縄ではいかない」と言う。「モニタリングをやっていれば安全ということではない。九州は火山国、地震のリスクもあり、証拠は身の回りに沢山ある」とし、「それを知って、皆さんが認識することが、1人1人が適切な対応ができる基礎になると思っているので、その辺をよく考えてほしい」とコメントした。

 瓜生社長は、モニタリングや観測だけで、それらをとらえられるとは思っていないと答えた。

 田中委員長が、新しい規制の特徴の一つ、”バックフィット”について事業者からの率直な意見を求めると、瓜生社長は、より運用性や安全性の高い機械の導入を提案したり、法の改正をお願いすることになると思うと意見した。

「JANSIは非常に大事な組織だ」

 日本版INPOであるJANSIについて、田中委員長は、「期待しているが実質的なところがよく見えない」として、今後どうしていきたいか意見を求めた。

 瓜生社長は、JANSI自体はINPOをモデルに、5ヶ年計画を立てており、JANSI自らピュアレビューすることが大切だという。事業者の力量をはかり、お互いを切磋琢磨するしくみを作るのが一番重要であるため、ピュアレビューを自前でできる組織になることが重要だと主張。

 田中委員長は、「彼等のピュアレビューの能力アップを早くやっていただきたい」。それができる状況で初めて、事業者は状況が確認できると考えており、「我々も期待するところは大なので、協力サポートは惜しまない」と述べた。

 瓜生社長は「JANSIがあることで良い面や悪い面を切磋琢磨しながら、向上に繋げると思っているので、非常に大事な組織だと思っている」と答えた。

使用済燃料の保管、管理は乾式キャスクの方が安全ではないか

 「使用済み燃料はプールに貯蔵するより、乾式キャスクに入れて、そこら辺に転がしておいた方が安全ではないか」と更田委員が主張し、田中委員長も「使用済み燃料は安全確保とセキュリティ面から是非取り組んで欲しいというのが私からのお願いだ」と重ね、巨大噴火兆候があった時に備え、運搬用キャスクの準備をしてほしいと意見した。

 瓜生社長は、「まだ乾式をどこで置くかとか、粗々の思いはあるが、今ここでではちょっと…」と言葉を濁した。

田中俊一委員長「1年に1回ぐらいこういう機会を持ちたい」

 中村委員は、安全文化の取組みを続けることに対し、モチベーションが必要だと言う。「仕事の慣れはいいけど、馴れは安全文化を劣化させる」と述べ、安全文化向上の為に、仕事に対してモチベーションとなるよう、事故を起こさないことに貢献したことについて、「何らかの手当てを考えてはどうか」とコメントした。

 瓜生社長は、人材育成の中、人の活用方法をしっかり考えていきたいと受けた。

 田中委員長が「良い意見交換ができたと思う。最後は社長から意見を聞いて終りたい」と言うと、瓜生社長は、「私達の気づかない、色んな指摘を教えていただいたのは非常によかった。取り入れられるものは取り入れたい」と返した。

 田中委員長が「1年に1回ぐらい、こういう機会を持ちたい」と話し、意見交換会は終わった。

囲み取材

 会談終了後、瓜生社長のぶら下がり取材が行われた。

 初めての規制当局と事業者トップとの意見交換会が行われたことに対して、瓜生社長は、「有意義な対話だった。我々が気づかないことへの指摘もあった」と率直な感想を述べ、規制当局と事業者との間で、「今日のような会合は、今までなかった」と話し、率直な意見交換ができる場であり、「これを土台にもっと発展してほしい」、今日はその第一歩だと感想を述べた。

 委員からの意見については、中村委員からのモチベーションの向上についてや、更田委員からの現場と規制当局とのホットラインを直ぐに取り入れたい考えを示した。特に現場と規制当局とのホットラインは「事業者としてもお願いしたいぐらいだ」とコメント。

 一方、使用済燃料の取り扱いに関しては、「六ヶ所が機能しないと使用済燃料プールの余裕もいつかは満杯になる」とし、中間貯蔵施設も検討してきたが、いつ、どこで、はまだ決まっていないという。サイト内での乾式キャスク貯蔵は、「当然視野に入れて検討している」という。

 説明会の”やらせメール問題”の言及がなかったことに対して瓜生社長は、「当時は電力の安定供給というDNAが強く、原子力の安全は配慮していなかった、それも含めて反省している」と弁明。リスクコミュニケーションを地域の安全から安定供給という、これまでとは逆の切り口に変えたことをアピールした。

 これまでの事業者中心の考えを天動説だと揶揄する瓜生社長は、「天動説は原子力村の世界、それでは世の中通じない」と考えを一新したことを示した。

 また、新規制基準の審査が公開の場になっていることに対しては、「後で、他社のも見られるのはとても良いことだ」とコメントした。

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