日本列島のほぼ全域を襲った台風18号は、2014年10月6日（月）、関東地方にも接近し、朝から豪雨のために首都圏の交通ダイヤが大きく乱れた。

　IWJはこの日、台風18号が首都圏を通過したのち、築地市場の移転先である豊洲新市場予定地を現地取材した。先月には、東京都の舛添要一知事が、築地市場に東京都知事として15年ぶりに視察し、豊洲新市場予定地にも足を運んだ。

　現在、東京都中央区にある築地市場は、江東区の豊洲へ移転する予定となっているが、この新市場予定地では数々の問題が生じている。

▲9月16日に視察した舛添知事

広大な豊洲新市場予定地が冠水

　台風18号の影響から、首都圏にも豪雨が降り、豊洲新市場予定地は冠水。広大な土地は、巨大プールと化していた。この新市場予定地は、東京湾に囲まれた埋立地で、地盤も悪く、3.11東日本大震災時には液状化を起こした地だ。

▲豊洲新市場用地

土壌汚染対策工事完了の7街区で油分が浮き出る

　台風18号の影響で溜まった水溜りには、土壌汚染対策工事が完了している水産卸の7街区で、油分が浮いていた。さらに、工事中の水産仲卸6街区でも油分が浮いていた。

▲写真6街区

▲写真7街区

油分にベンゼン、タール、シアンなど有害物質が含まれている可能性も

　現地取材の後、IWJは土壌汚染の専門家と東京都の担当者にそれぞれ電話取材した。

　畑明郎・元日本環境学会会長は、水溜りに浮遊していた油分について、有害物質が含まれている可能性を指摘。次のようにコメントした。

　「地表に油分を含む雨水が溜まっていることは、深部の汚染土壌中の汚染物質が盛土上に染み出していることを意味し、きれいな盛土も再汚染されている可能性があります。油分にはベンゼン、タール、シアンなども含まれています。

　豊洲は埋立地で、水はけがよくない所で起こるべくして起こった現象と思われます。したがって、工事完了後、表層土壌汚染調査を実施すべきです」

　これに対して東京都の土壌汚染対策担当者は、用地の汚染対策について説明し、水溜りの油分に関して、次のような認識を示した。

・用地では、土壌汚染対策のため土を掘っている。そのため、土が崩れてこないよう（押さえる）ジャッキを使っている。
・そのジャッキにはグリス（潤滑剤）を塗っている。
・汚染された土はきれいな土に入れ替えている。地下水も入れ替えている。
・汚染物質があれば、地下に染みこんでいく。したがって下から浮いてきたというのは、そもそもない。
・この油分については、検査はしていない。
・油分はおそらく『点』で浮いていたのでは。

　この東京都の説明に対し、畑氏は、次のように指摘する。

　「グリスのような機械油では、面的に広がる油膜はできないと思います。地表に水が溜まっていることは、地下水位が上昇して地表水とつながっていると考えるべきです。工事前の地下水調査でも、雨天時に地表付近まで地下水位が上がっていました。汚染地下水がすべて入れ替えられたわけではないので、汚染地下水と地表水が混ざった可能性は十分にあります。東京都の回答は科学的でなく、いい加減な回答と思います」

　浮遊していた油分をめぐって、東京都と畑氏の見解には明らかな差異がある。東京都は、油分を『点』状のもので、機械等のグリスだと説明。一方、畑氏は、グリスのような機械油では面的に広がる油膜はできないと、東京都の説明を否定した。

　これについて、日本環境学会の坂巻幸雄氏は、こう解説する。

　「『油膜』状の物質は、1，汚染土壌～汚染地下水由来 2，工事用機器由来（グリス） 3，水酸化鉄（鉄さび）の3つの単分子膜のうち、どれかの可能性が強いと思いますが、正体はサンプルを採取して分析しないと判りません。都としては最も危険な1を否定できない以上、そのチェックをまずすべきでしょう。それをしないで推量でものを言おうとするのは、良くない姿勢です」

　坂巻氏はこう指摘した上で、さらに続けた。