田中委員長、緊急作業時の被曝線量限度引き上げを提案~2014年度 第18回原子力規制委員会 2014.7.30

記事公開日:2014.7.30取材地: テキスト動画
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 2014年7月30日10時30分より、平成26年度第18回原子力規制委員会が開催された。議題の終了後、田中俊一委員長より、緊急時における作業員の被曝線量限度を現在の累計100mSvから引き上げを検討してはどうかと提案があった。

■全編動画

  • 場所 原子力規制委員会庁舎 会議室A

議題 1 平成26年度第1四半期における専決処理について

 2014年度の第1四半期、すなわち今年4月から6月に処理された委員会への報告が必要な専決処理案件87件について、事務方から委員会へ報告された。今回の報告対象期間では、福島第一原発の実施計画変更認可が6件、RO濃縮水タンクの一部使用の承認などが含まれている。

 前回分の2013年度第4四半期の専決処理は197件あり、4月23日の第5回原子力規制委員会で報告されている。それに比べて半分以下に減っている。

 これは、3月に組織改編を行った際、部長級の役職を新設するとともに、行政文書管理要領を変更した。これまで長官が行っていた専決処理の一部を部長が行うように整理・変更したため、委員会へ報告する件数が減少したと、米谷仁・総務課長は説明した。2月26日開催された第44回原子力規制委員会にて議論されている。

 委員からは特に意見はなく、報告を受けて了承された。

議題 2 米国政府機関等との意見交換等の出張報告について

 7月22日から27日にかけて、田中委員長は米国を訪問、NRC委員長等と意見交換や視察を行った。その状況を簡単に報告した。

 田中委員長はタイトなスケジュールの中、有意義な意見交換ができたとし、意見交換の中で印象に残った箇所をそれぞれ報告した。

 ウィラード・INPO会長からは、ミッション遂行に重要な要件は”独立性”と”NRC等政府の規制機関が強力であること”だと意見を受けたという。日本ではJANSIがINPOを目指しており、その育成に尽力をお願いしたと報告した。

 NRC地区局長からは「長期停止原子炉の再起動、新しいシビアアクシデント装置の作動については十分なトレーニングが必要だ」と意見を受けた。さらに、ジョージア州では州自身がERC(緊急時対応センター)を持っており、「住民に対する責任は自分達が持つんだ」という心構えだということが印象に残ったという。

議題 3 アメリカ地震工学会第10回大会(10th National Conference on Earthquake Engineering)への出席結果報告について

 7月21日から25日にかけて、島崎邦彦委員が米国アラスカ・アンカレッジで開催された、アメリカ地震工学学会第10回大会に出席し、結果を報告した。

 原子力発電所に係る地震・津波工学のセッションが開かれ、島崎委員はそこで、津波についての新規制基準の考え方、川内原発の実例を挙げて防護対策などを説明したという。

 アメリカ地震工学会という名称からも分かるように、サイエンティストではなく、エンジニアの集まりだと言えるとのことだ。

田中委員長、緊急時作業員の被曝線量限度引き上げを提案

 議題の終了後、田中俊一委員長より、緊急時作業員の被曝線量限度の引き上げを検討してはどうかと提案があった。

 福島第一原子力発電所の事故時、緊急作業の被曝限度を累計100mSvから急遽250mSvに引き上げた。その後、原子炉が冷温停止したとの判断を踏まえて、100mSvに戻されている。原子力規制委員会は、現在緊急時作業員の被曝線量限度を100mSvとして規制を行っている。

 田中委員長は、「しかし、それが、それを超えるような事故が起こる可能性を完全に否定することはできないっていうのが、私どもの考え方です。そういった場合においても、その事故をきちっと必要な対応をできるようにする、処置をするという必要があるということであります」と、引き上げを検討すべきだとする理由を述べた。

 福島原発事故の実情や、国際的な基準の一つ、IAEA等では500mSvを上限としていることから、緊急時には現行の100mSvでは低すぎる場合がありうるというのだろう。いざという時に、被曝線量上限を引き上げられるようにと、「原子炉等規制法を所管する立場として、検討をしておく必要がある」として、田中委員長は次のような項目を例示した。

・線量限度の値の妥当性、あり方
・緊急時被曝を受ける作業員の意思を確認する方法
・作業員の研修・訓練
・事後の作業員の健康管理

 「いずれ放射線審議会に諮問するが、まずは検討を進めたい。そのために事務方で叩き台となる資料を作成、データを収集するように」と指示した。

 中村佳代子委員は「数値を扱うことになりますので、非常に慎重に、しかし全員が納得のいく形での議論を、あるいは検討をしていただきたいという風に考えます」とコメント。

 更田豊志委員は「想定のおよばざる所に対する対処についても、リスクがゼロになっているわけではないので、対処についても考えていくということは重要であろうと思います」と概ね賛成しながらも、「現行の適合性審査における基準に影響がおよぶものではないという理解でいます」とむやみな上限の引き上げには釘をさしたともとれる発言をした。

 田中委員長の提案・指示を受けて、事務方にて、国内外の情勢、法的な側面等を整理した資料を用意し、議論することになった。

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