政府交渉で明らかになった驚きの「規制」実態 「対策を実施するので安全です」と宣言すれば審査はスルー!? 2014.7.29

記事公開日:2014.7.30取材地: テキスト動画
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(IWJ・原佑介)

 日本一火山リスクが高い原発といわれる川内原発は、事実上、原子力規制委員会の新規制基準を満たすと認められ、早ければ10月にも再稼働するといわれている。しかし、敷地内の活断層や避難計画の不備も指摘されており、肝心の火山の影響を過小評価しているとみる火山学者も少なくない。

 7月29日、「原子力規制を監視する市民の会」が原子力規制庁を招き、川内原発の火山審査に関する政府交渉を行った。

■ハイライト

  • 趣旨説明 14:30~15:00/政府交渉 15:00~16:30/事後集会 16:30~17:00

運用期間の定義

 「原子力発電所の運用期間中に火山活動が想定され、それによる設計対応不可能な火山事象が原子力発電所に影響を及ぼす可能性が十分小さいと評価できない場合には、原子力発電所の立地は不適と考えられる」

 規制委の定める「原子力発電所の火山影響評価ガイド」の規定である。「運用期間」とは、原発が稼働している「運転期間」ではなく、「原子力発電所に核燃料物質が存在する期間」とガイドは定めている。

 つまり、「核燃料の処理をどうするか」という問題と向き合わなければならない。

 原発が止まっていても、使用済み核燃料がある限りは冷却しなければならず、その間に火砕流に襲われれば、冷却もままならない。核燃料がある以上、過酷事故はあってはならないというのが、規制委の認識でもあるのだ。

 川内原発では現在、1946体、852トンの使用済み核燃料が保管されている。あと3年も稼働すれば容量オーバーになると言われている。その後、使用済み燃料をどうするのかは、何も決まっていない。核燃料を搬出するにも、大型トレーラー75台の出動が必要と言われている。搬出先も決まっていない。進んで受け入れる自治体など、簡単には見つからないのだ。

運用期間中に火山が原発に影響を与える可能性

 では、「運用期間中に原発に影響を及ぼすほどの火山事象が起きる可能性が十分小さい」というのであれば、規制委や事業者である九州電力は、核燃料を完全に搬出する「運用期間」をどれほどのスパンで考えているのか。

 「燃料が発電所にある期間なので、そういう期間だ」

 「具体的な数字はおいていないが、運用期間、というふうに考えているので、せいぜい数十年。具体的に何年とはいっていないが、そういうふうなオーダー」

 政府交渉で、規制庁はこのように答え、明言を避けた。

 主催者の一人、阪上武さんは「具体的に何年かを想定せずに、火山が川内原発に影響を与えるか否かをどうやって評価できるのか」と指摘したが、規制庁は、答えに窮しながら「事業者の使用済み燃料処理に何年もかかるが、今決められるものではない」、「何年という具体的な感覚では考えていない」と言葉を濁した。

あまりにずさんな規制委の規制

 ガイドでは、「火山活動のモニタリングと、火山活動の兆候把握時の対応を適切に行うことを条件として、ここの火山事象に対する影響評価を行う」と決めている。兆候把握時の対応として、ガイドには次の3点が定められている。

  1. 対処を講じるために把握すべき火山活動の兆候と、その兆候を把握した場合に対処を講じるための判断基準
  2. 火山活動のモニタリングにより把握された兆候に基づき、火山活動の監視を実施する公的機関からの火山の噴火警報が示された場合において、これに基づき対処を実施する方針
  3. 火山活動の兆候を把握した場合の対処として、原子炉の停止、適切な核燃料の搬出等が実施される方針

 九電はこれに配慮し、申請書で「対象火山の状態に顕著な変化が生じた場合は、第三者(火山専門家等)の助言を得た上で破局的噴火への発展性を評価し、破局的噴火への発展の可能性がある場合は、発電用原子炉の停止、適切な燃料体等の搬出等を実施する」と定めた。

 交渉では、驚くべきことが明らかになった。

 「核燃料の搬出にかかる時間は、兆候把握したその時の状況によるが、一概に何年とは言えない」「ガイドに書いてあるように、原子炉の停止や搬出の方針が事業者の申請で示されているので、これで事業者の方針と判断した」――。

 九電が約束する「適切な核燃料の搬出等が実施される方針」の中身が決まっていないのである。つまり、規制庁に対して「燃料搬出を実施する方針です」と宣言すれば審査は通る、「安全です」といえば安全だ、ということか。

 当然だが、具体的な兆候把握時のマニュアルを示さないのであれば、ただの意思表明に過ぎず、安全を保障する担保にはならない。規制庁は、九電にマニュアルを提示させ、それが適切かどうかを判断すべき立場ではないのだろうか。

 搬出の実施方針を定め、核燃料の搬出に要する期間の目安を示さなければ、仮に噴火の兆候を把握したところで、有効な対応がとれるかは場当たり的になるに違いない。これでは、規制委員会が自ら定めた火山影響評価ガイドの方針にさえ適っておらず、新規制基準を満たすことにも疑問符がつく。

「マグマ溜まりは噴火直前の状態ではない」

 九電は、鹿児島地溝全体の大規模噴火には「約9万年ごとの周期性がある」と申請しており、規制委審査書案も、「平均発生感覚は9万年」としている。鹿児島で姶良(あいら)カルデラの大噴火が起きたのは約3万年前と言われているが、だからといって次に噴火するのは6万年後という計算は成り立たず、原発の安全を保障する根拠にはならない。

 規制庁は、「周期性は一概にいえないこともあるので、特に周期性は判断していない」としながらも、「現在のマグマ溜まりは、噴火直前の状態ではないと評価している」と回答した。

噴火の兆候をつかめるのか

(…会員ページにつづく)

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「政府交渉で明らかになった驚きの「規制」実態 「対策を実施するので安全です」と宣言すれば審査はスルー!?」への1件のフィードバック

  1. @ecolinlinさん(ツイッターのご意見より) より:

    原子力マフィア間で長い事の慣習として続いているのかも。でもって、お互いに責任転嫁してるんだから。

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