「日本製の部品を使った戦闘機が、ガザの人々を殺すことに」 〜岡真理氏、志葉玲氏がパレスチナの状況を語る 2014.5.14

記事公開日:2014.5.14取材地: テキスト動画
このエントリーをはてなブックマークに追加

(IWJテキストスタッフ・富山/奥松)

 「ガザでは1日16時間停電が当たり前。エジプト側との地下トンネルがほとんど封鎖されたので、今では物資もなかなか入ってこない。生きることへの破壊が進行している中で、精神を蝕まれていく者も多い」──。

 2014年5月11日、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が来日した。この来日では、日本とイスラエルの経済・軍事・セキュリティ協力分野の連携強化を目指すとされている。これに対し、5月14日、「ネタニヤフ来日に抗議する5.14京都集会」が、京都市左京区の東山いきいき市民活動センターで開かれた。パレスチナ問題に詳しい岡真理氏(京都大学人間・環境学研究科教授)とジャーナリストの志葉玲氏が、パレスチナ人に対する構造的暴力が行われている実態を解説した。

■全編動画

  • 発言 岡真理氏(京都大学教員、アラブ文学)、志葉玲氏(ジャーナリスト)
  • 日時 2014年5月14日(水) 19:00~
  • 場所 京都市東山いきいき市民活動センター(京都府京都市)

パレスチナ問題はイスラエルにとって「存在しないもの」

 今年の3月、8年ぶりにパレスチナを訪れたという岡氏は、現地の状況を説明する中で、ガザでは180万人、西岸地区では270万人ものパレスチナ人が、完全封鎖の下に置かれている状況を語った。「8年ぶりに訪れて痛感したのは、もはや、パレスチナ問題は、イスラエルにとっては存在しないということ。イスラエル社会におけるパレスチナ人は3級市民として扱われ、世界に1100万人いるパレスチナ人のうち、600万人は難民状態に置かれている」と指摘した。

 続けて、シリア内戦によって難民となったシリア人に対しては、国連が支援をする一方、パレスチナ難民は「別枠」とされて、非常に困難な状況にある実態を解説した。

 「第2次世界大戦後、最大規模の難民問題であるパレスチナ問題が、西岸地域の占領、ガザ地区の封鎖など、イスラエル建国から66年経って問題が細分化され、複雑化している状況だ。これにより、根源にある問題が見えにくくなっている」。

 このように語った岡氏は、「これが、占領のノーマライゼーションである」と指摘し、イスラエル国家の歴史そのものが占領の歴史であり、あらゆる事柄が既成事実化している、とした。

表面化しない構造的暴力

 岡氏は「ガザには、物理的な暴力だけでなく、封鎖や占領などによる構造的な暴力も存在する」と言う。

 「私が3月に入った時、ガザでは1日16時間停電が当たり前だった。われわれと同じような都市生活を営む中で、電気やガス、生活物資が止められることを想像してほしい。生きることへの破壊が進行している中で、精神を蝕まれてドラッグに手を出す者も多い」。

 「このような構造的暴力は表面化せず、長期にわたって現地の人と同じ生活をしないと、この暴力性はなかなか理解することができない」と述べた岡氏は、2011年、ガザに長期滞在していたイタリア人ジャーナリスト、ヴィットリオ・アリゴーリ氏が誘拐、殺害された事件について、次のように語った。

 「彼は2008年のガザ攻撃で、外国人にだけ脱出が許可された時も、ガザに残って実態をレポートし続けた。彼が殺害されて以来、ガザに入る人権活動家やジャーナリストは『安全のために』行動を制限されるようになった。私は、アリゴーリ氏の事件は、ガザ封鎖の現状を隠したいイスラエルの画策ではないかと考えている」。

 その上で岡氏は、「今、パレスチナで行われている暴力は、パレスチナ人の、パレスチナ人としての、生の諸条件を破壊し、じわじわと生命を破壊していくような暴力だ。スペシオサイド(Spaciocide=空間的殺戮)であり、政治的主体性を殺すポリティサイド(Politicide)である」と指摘した。

「アパルトヘイト国家」イスラエル

 次に、志葉氏がマイクを握った。「先日、アメリカのケリー国務長官が非公開の会合で、『中東和平を放棄するなら、イスラエルはアパルトヘイト国家になる』と言ったことを、日本のメディアは『失言』と報じた。しかし、本当に失言だろうか」。

 こう疑問を呈した志葉氏は、「広義の意味でのアパルトヘイトとは、ある人種的民族的集団に対して、人権を抑圧し、弾圧すること。つまり、イスラエルのやっていることは、アパルトヘイト以外の何ものでもない」と断じた。

 さらに、「南アフリカがアパルトヘイト政策をとっていた時、国際社会は南アフリカへの武器輸出を禁じた。ところが、今、安倍政権は武器輸出三原則を葬り、イスラエルへの武器輸出を可能にした。これは、非常に恥ずかしいことだ」と批判し、「日本製の部品を40%も使った戦闘機(F35)が、ガザの人々を殺すことになりかねない」と危惧した。

兵器の恐ろしさを世界に伝えるのが日本の役目では?

 続いて、イスラエル軍によって両親を殺された少女が、「日本人は良い人々だと思う。どうか、イスラエルに武器を売らないでください」と訴えるメッセージを紹介した。そして、現地ガイドから「広島、長崎を経験した日本が、なぜ、こんな愚かなことをするのか。兵器の恐ろしさを世界に伝えるのが日本の役目ではないか」と言われたことを振り返って、「まったく、その通り。日本人として顔向けできない」と述べた。

 志葉氏は、2009年のガザ攻撃の際、パレスチナの一般家庭にホームステイして取材活動を行っている。志葉氏が会った現地のジャーナリストは、爆撃で亡くなった子どもたちについて、涙で話すことができなくなったという。また、ガザの封鎖により、病人が専門的な医療が受けられないこと、才能ある若い世代のチャンスが奪われている実態などを語った。

 志葉氏は「安倍政権とネタニヤフ首相との結びつきに対して、日本の市民が連携して、しっかり反対の声を上げていかないと、なし崩し的に現地に自衛隊が送られる状況もあり得る」と危機感を表明。最後に、パレスチナの少女が停電の中で、「きっと明日、パレスチナに自由が訪れる」と歌う映像を映してみせた。

IWJの取材活動は、皆さまのご支援により直接支えられています。ぜひ会員にご登録ください。

新規会員登録 カンパでご支援

関連記事


“「日本製の部品を使った戦闘機が、ガザの人々を殺すことに」 〜岡真理氏、志葉玲氏がパレスチナの状況を語る” への 5 件のフィードバック

  1. @mkshigaさん(ツイッターのご意見より) より:

    イスラエルが購入しようとしているF35ステルス戦闘機の40%は日本の部品 武器輸出3原則の変更の影響はこういう所
    【京都】ネタニヤフ来日に抗議する5.14京都集会 ―岡真理氏、志葉玲氏 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/139781

  2. @ebitiri_rieさん(ツイッターのご意見より) より:

    日本とイスラエルの経済・軍事・セキュリティ協力分野の連携強化を目指すとされている。
    2014/05/14 【京都】ネタニヤフ来日に抗議する5.14京都集会 ―岡真理氏、志葉玲氏(動画) http://iwj.co.jp/wj/open/archives/139781

  3. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見より) より:

    この二人の話を日本人は聴かなくてはいけない。無知や無関心が「罪」という時代に僕らは生きている。

  4. @yagiutinaさん(ツイッターのご意見より) より:

    岡真理氏 シリアのパレスチナ難民は、再難民化。しかもシリア難民は国連が救済。パレスチナは別枠で、パレスチナ難民救済事業機関の管轄。ジリ貧で困難な状況。

  5. @masako_u1さん(ツイッターのご意見より) より:

    安倍政権は武器輸出三原則を葬り、イスラエルへの武器輸出を可能に。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です