【岩上安身のツイ録】台湾とウクライナ、国民国家を形成できなかった国の悲劇 2014.4.11

記事公開日:2014.4.11 テキスト
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特集 IWJが追う ウクライナ危機
※4月10日の岩上安身の連投ツイートを再掲します。

 明日、台北で呉叡人さんという政治思想史の先生にインタビューを行う。この方の書いた評論が刺激的である。タイトルは「賎民宣言ー或いは、台湾悲劇の道徳的な意味」。その冒頭には、ヘーゲルの「世界史においては、国家を形成した民族しか問題にならない」という言葉が掲げられている。

 刺激的で挑発的な論文のタイトルは、ヘーゲルの「歴史哲学講義」から引用したこの差別的なテーゼへの全身での応答に他ならない。植民地にされてきた民族の、自虐のようでも、開き直りのようでもある、激しい異議申し立てである。

 台湾は、よそ者に代わる代わる支配されてきた、という歴史がある。オランダ、スペイン、鄭成功、清、日本、そして蒋介石の国民党。国民党の保護者としての米国、そしてこれからはひょっとすると大陸中国。サービス貿易協定に対して、なぜ、学生たちは反乱を起こしたのか。

 立法院占拠という荒業を学生たちがやってのけ、それを社会が広く支持したことの意味は、深く歴史に根を探らなくてはならない。「主権」の器としての「国家」をもてない民族の苦しみを理解しなければ、立法院の内外で起きたドラマを理解することはたぶんできない。

 そして、国民国家を形成できなかった国の悲劇が、ユーラシア大陸の西側でも起きている。まさに分裂の瀬戸際にあるウクライナの政変である。私はキエフでの政変がクリミアに飛び火した段階から、次の第3幕はウクライナ東部の分離独立の動きになるのではないか、と予測してきた。

 そうはならない、と思っていた人も多いと思うが、この一週間ばかりで、ついに東部のハリコフやドネツクといった重要都市では、親ロシア派住民が市庁舎などを占拠し、共和国宣言を発するなどのレベルに到達した。国は東部と西部とでバラバラの有り様である。

 これを、国民国家であった経験に乏しいウクライナの悲劇である、という観点から論じる論評や分析があまりに少ないことには驚かざるをえない。ウクライナは、第二のポーランド分割になる懸念があるのではないか、という懸念も、飛躍しすぎだというお叱り覚悟で何度か口にしてきた。
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「【岩上安身のツイ録】台湾とウクライナ、国民国家を形成できなかった国の悲劇」への1件のフィードバック

  1. うみぼたる より:

    ウクライナの状況は岩上さんが早くからご指摘されていましたが、ノーム・チョムスキー氏への質問が実現できなかったことが今更ながら悔やまれます。ウクライナの問題が米国の世論に与えている影響や、ノーム・チョムスキー氏がこの問題にどのような関わりを持っているのか聞きたかったです。
    呉先生との対談は、日本への憂いと、私が今まで全く知らなかったことばかり。日本の独立のことも。

    台湾から戻られて体調が優れない様子ですが、ユーカリオイルは喉の炎症や呼吸器の不調にも効果がありますが岩上さんは血圧が高いのでおすすめできません。(スタッフの方々のインフルエンザの感染予防や室内空気の浄化には有効です。)
    ラベンダーオイルは高い血圧を下げて炎症を鎮めて呼吸を楽にするので、合いそうなのですが。
    対症療法の前に、睡眠不足の解消が先かと。

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