「安倍政権を支持する若者たちも、憲法改正の被害者になりうる」講演 中谷雄二弁護士 〜秘密保護法を廃止に! 2014.3.29

記事公開日:2014.3.29取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・花山/奥松)

 「対外的な危機感を煽り、国民に我慢を強いる。不満や疑問はナショナリズムで押さえつける。今の時代、一人ひとりがよく考えないと、えらい所に連れて行かれる」──。

 2014年3月29日、三重県津市の三重県教育文化会館で、「秘密保護法に反対する市民ネットワーク・三重」主催の集会が開催され、弁護士の中谷雄二氏が「〈憲法情勢〉と秘密保護法撤廃の闘いの展望」と題して講演を行った。

 中谷氏は、安倍政権による改憲の動きと、その非民主的な進め方に危機感を表明した上で、「しかし、憲法96条の先行改正は大きな批判を受け、強引に進められなくなった。秘密保護法も、廃止を求める運動を盛り上げていくことが重要だ」と力説した。

■全編動画

  • 講演 「〈憲法情勢〉と 秘密保護法撤廃の闘いの展望」 中谷雄二氏(弁護士)
  • 日時 2014年3月29日(土) 13:30〜
  • 場所 三重県教育文化会館(三重県津市)
  • 主催 秘密保護法に反対する市民ネットワーク・三重

改憲派からも「96条の先行改正は卑怯」の声

 中谷氏は、安倍政権が進めようとした憲法96条の先行改正について、「憲法改正のために、まず、96条を先に変えようとした。その提案を公約にして参議院選挙を戦い、圧勝した。しかし、ここには問題がある」と指摘する。「この選挙は、1票の格差訴訟で違憲判決が出ている。だから、実は少数の代表に過ぎないのに、『自分たちは多数だ』と言っているのではないか」。

 さらに、「憲法9条を変えるべき、日本は再軍備すべきだ」という意見の人からでさえも、「96条を先に変えるという卑怯なことを、すべきではない」という批判が起きたことに触れて、「マスコミでも大きな批判が寄せられ、自民党は圧倒的多数で圧勝したにも関わらず、96条改正を正面から言い出すことができなくなった」と述べた。

憲法9条が「解釈」で無意味に

 続けて、9条の解釈改憲について、中谷氏は次のように説明した。「憲法9条の意味内容を考えると、これまでの政府の解釈では、他国から日本が攻められた場合に自衛権がある、ということである。だから、他国から攻められた時、必要最小限の反撃のために自衛隊を持つことができるという解釈。しかし、今、変えようとしている集団的自衛権の行使は、『自分の国が攻められた』という条件を外してしまうことである」。

 「これを外したら、憲法9条に規定されている意味は、まったくなくなる。つまり、自分の国が攻められなくても、仲の良い国が攻められたら、戦争に参加することになる。これは、立ち上がって反対すべきだ」と訴えた。

憲法を改正したいなら、憲法を学ぶべき

 中谷氏は立憲主義について、「安倍首相が言う、『王様が暴走するのを抑えるために作ったのが立憲主義』は、中世時代の立憲主義である。近代的立憲主義は、民主主義でも暴走することがあることを前提にしている。フランス革命以来、民主主義の行き過ぎは、多くの若者を戦争に追いやっている」と話す。

 その上で、「民主主義は、そういう暴走や濫用の危険があるから、それを防いで平和や人権を守るために憲法を定めて、権力に枠をはめるのである。これが、近代立憲主義の最大の意味だ。このことを安倍首相は、まったくわかっていない。憲法改正しようとする人は、憲法を勉強すべきである」と断じた。

国民の不満を「愛国心」で押さえつけるやり方

 安倍政権の今のやり方について、中谷氏は「きちんとした筋道に立って、日本をどうするかという議論はなく、憲法を無視し、法案も多数で強行採決していく非民主的なやり方である。その結果、実際に被害を被るのは、多くの国民。安倍政権の対外的に強硬な姿勢に支援を送っている若者たちも、もちろん被害者になりうる」と警告する。

 「社会保障の改悪についても、憲法25条を完全に骨抜きにして、国民の生命、生活に対して、国が責任を持つという基本を外して、『自分たちで勝手に生きろ』という姿勢だ。このような形で国民の権利を侵害し、福祉を切り捨て、わき起こる国民の不満は、愛国心、ナショナリズムで押さえつけようとしている」。

 そして、「わざわざ他国に対する危機感を煽り立てて、緊張関係を作り出しているのは、日本だけではない。中国も、日本との緊張関係を利用して、ナショナリズムを高揚させている。こうして対外的な危機感を煽り、国民に我慢もやむを得ないと思わせるのだ」と述べた。

 中谷氏は、「われわれは、権利は奪われても仕方がないと思わせられている。本当にそうなのかということを国民一人ひとりが考えないと、えらい所に連れて行かれる、というのが今の時代である」と主張した。

反対の声が、秘密保護法廃止につながる

 秘密保護法廃止に向けた動きについて、「現在、政府は情報諮問会議において、特定秘密の指定、適正評価の運用基準を定めようとしている。ここに日弁連の委員が入った。彼はそこで、非常に活躍している。まず彼は、委員が守秘義務を持たないということを確認した。その上で、会議の内容をブログで公表し続けている。そして、現時点で彼は、秘密保護法の各条項についての詳細な質問をして、その回答を待っている。これを答えさせることによって、適応の歯止めをかける。濫用的な発動を許さない。秘密保護法廃止を求めることが第一であると同時に、濫用による被害者を出さないこと。私たちは、この戦いを同時に進めなければならない」と力を込めた。

 中谷氏は「国会内の情勢を見ると、廃止は無理と思われるだろうが、国民の運動が、今の政府の動向を大きく動かしている。憲法の解釈改憲のスケジュールを変えさせ、国家安全保障基本法案を断念せざるを得ない状態にさせた。国会外における運動の盛り上がりが、そうさせたのである。国民の反対の声が、これを生み出した」と述べ、あきらめずに声を上げていく必要性を説いた。

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