新原昭治氏「非核『神戸方式』は秘密保護法の対象にならない」と力説 ~米国の身勝手さについても指摘 2014.3.18

記事公開日:2014.3.18取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田/奥松)

 2014年3月18日、神戸市内の神戸勤労会館で、「非核『神戸方式』決議39周年記念集会」が開催され、国際問題研究者の新原昭治氏が講演を行った。この集会は、1975年、神戸市議会で「核兵器積載艦船の神戸港入港拒否に関する決議」が全会一致で採択されたことを記念して、毎年行われている。

 新原氏はまず、60年前の「核兵器」関連の事件を紹介。1954年1月に、神戸港に核兵器を積んだ米軍の航空母艦(オリスカニ)が最初にやって来たこと、さらには、その年の3月には、太平洋のマーシャル諸島ビキニ環礁で、米国による15メガトンの水爆実験が行われ、第5福竜丸をはじめとする日本の漁船など、約1000隻が被爆したことに触れた。

 「これらを受け、日本国内では『核兵器反対』の世論が高まり、反原水爆の市民運動が広がった。米国は、それを嫌った」と述べ、その当時、アイゼンハワー大統領の下、核兵器を通常兵器のように扱うことに執念を燃やしていた米国政府が、日本を「頭痛のタネ」と見なすようになった、と指摘した。

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  • 日時 2014年3月18日(火) 18:30~
  • 場所 神戸勤労会館(兵庫県神戸市)
  • 講演 「非核「神戸方式」とこれからの日本・アジア」 新原昭治氏(国際問題研究者)
  • 主催 非核「神戸方式」決議39周年記念実行委員会

 オリスカニの神戸への寄港は、「1953年に始まった、米国による軍事同盟諸国への、核兵器持ち込みが背景にある」とした新原氏は、日本に高まった反核の機運は、世界的核戦略をスタートさせて間もない当時の米国には、不都合なものだったと強調した。「1957年に発表された(海外駐留米軍が抱える課題をアイゼンハワー米大統領に伝えた)ナッシュ報告には、『核兵器問題で、病的とも言える感情的態度が幅をきかせている唯一の国は日本』と記されている」。

 新原氏は、アイゼンハワー政権が、ある種の対日戦略として打ち出したのが、1958年に策定された「NCND (Neither Confirm Nor Deny)」だと強調。これは、日本に寄港したりする艦船の核兵器搭載を、あえて、否定も肯定もしない政策で、1. 日本同様の核兵器反対世論を、他の同盟国に作らせない、2. 日本国内にさらなる反核の気運が高まることを抑える──という2つの狙いがあると解説した。

核兵器「否定せず肯定せず」の米国、「見ないふり」の日本

 米国内には、その後、だいぶ経ってから、同盟国からの核兵器全面撤退の意義を指摘する声が上がるようになり、1991年には、ブッシュ米大統領が、海外からの大幅な戦術核兵器撤去を発表している。しかし、全面撤去には至らずに、1994年のクリントン政権下で核体制見直しを行い、日本での戦術核兵器保持の継続が決められた。新原氏は「原子力潜水艦に、核弾頭付きトマホーク巡航ミサイルを搭載する能力は、保たれることとなった」と話した。

 「しかし、当時の日本政府はこれを見ないふりをし、それ以後も歴代内閣が『1991年の、戦術核兵器の海外からの引き揚げに伴い、日本への米軍核兵器配備はなくなった』という発言を繰り返すばかりだ」。新原氏は、このように指摘し、「米国は、今なお、NCNDを続けている」と訴えた。

オバマ大統領「プラハ演説」は何だった?

 米オバマ政権については、2009年、チェコのプラハで「核兵器なき世界」への望みを語ったことを評価しつつも、「2010年には『核体制見直し』を発表し、昨年6月には、それに即して『核兵器使用戦略』が示された。そこには、核兵器使用があり得ると書かれている」などと述べ、米国にとってNCNDは、「今なお、必要不可欠な政策である」と強調した。

 そして、「NCNDは、同盟国に『見ざる言わざる聞かざる』を押し付けている点で、米国の身勝手にほかならない」と断じ、非核「神戸方式」を話題に上らせた。

 非核「神戸方式」とは、いわば「非核3原則の地方自治体版」で、1975年から行われている。神戸市は、神戸に寄港する外国軍の艦船に対し、核兵器が積まれていないことを証明する「非核証明書」の提出を義務づけており、提出されない場合は入港を認めない。新原氏は「神戸方式の前では、NCNDが脆さを露呈することになる」と力を込めた。

非核「神戸方式」と秘密保護法

 「これまでに、NCNDを掲げる米国の艦船は1隻も神戸に入港していない。米国の身勝手さの象徴とも言えるNCNDは、構造的な脆さを内包している」と強調した新原氏は、続いて、神戸方式と秘密保護法の関係を論じた。

 周知の通り、特定秘密保護法は「防衛」「外交」「スパイ」「テロ」の4分野で、特定秘密を指定するもの。秘密の漏えいのみならず、内容開示の要求も処罰対象にされる可能性がある。

 そんな秘密保護法の、昨年のスピード成立を受け、神戸の有志らの間に高まったのが、「神戸への入港を希望する外国艦船に対し、非核証明書の提出を求めることが、秘密保護法で処罰の対象になるのではないか」との危惧である。

 これについて、新原氏は「秘密保護法は、最悪の民衆弾圧法であり、一刻も早く廃止されるべき」と主張した上で、「神戸方式は、秘密保護法の対象にはなり得ない」との認識を示し、次のように力説した。

 「対象にはなり得ないし、対象にしてはならない。それを理路整然と語れるだけの世論を、神戸を中心に作ろうではないか。仮に安倍政権が、秘密保護法で神戸方式を処罰したら、国内のみならず、諸外国から非難を浴びることになる。なぜなら、神戸方式はNCND政策を退けるもので、米軍から核兵器に関する『機密情報』を盗むものではないからだ」。

「核兵器なき世界」の実現を阻むものとは

 スピーチ終盤で、新原氏は「核による紛争抑止を、肯定する意見が存在する限り、核兵器廃絶は実現しない」とも訴え、ノーベル平和賞を受賞した物理学者で、平和活動家であった故ジョセフ・ロートブラット氏の見解を紹介した。

 ロートブラット氏は、核による抑止は「核の先制使用もあり得る」との意味があると指摘して、こう述べているという。「もしも、われわれが『核兵器は、非核兵器による攻撃さえも、未然に抑えるために必要だ』と認めたら、紛争が軍事的対抗で処理されるまで、核兵器をいつまでも持ち続けることになる」──。

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