岡田外相オープン記者会見2 「日米安保ではなく、日米同盟のあり方について、クリントン長官と会談します」 2010.1.8

記事公開日:2010.1.8取材地: テキスト動画
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 2010年1月8日(金)、岡田外務大臣オープン記者会見の模様。外国人の地方参政権とそれに関連する韓国との外交問題についての岩上氏の質問には、政府として正式に議論されていないという理由で回答しなかった。 

前回のエントリーの続き。1月8日、岡田外相オープン記者会見。岡田外相は、「日米安保」と、「日米同盟」を区別し、「同盟」のあり方について、クリントン長官と話しあう、と語った。

 岡田外相いわく、日米の安全保障に関わる関係が、「日米安全保障条約」「日米安全保障同盟」「日米同盟」と3つに分かれる、ということを、私は今まで知らなかった。それがポピュラーな考え方であるのか、それとも岡田流の解釈なのか、私には判断しかねる。

 ただ、自分の勉強不足を棚に上げて言うのは申し訳ないのだが、これまで、「日米安保」と「日米同盟」の違いについて、政府は国民に対して説明不足だったのではないか。ほとんどの国民は、「同盟」と「安保」の違い、しかもそれが3つに分類されるなどということを、理解できていないだろうと思う。

 私が質問の中で引用した孫崎享・元外務相国際情報局長は、「安保」と「同盟」の違いについて、こう述べている。
「2005年10月29日、日本の外務大臣、防衛庁長官と米国の国務長官、国防長官は、『日米同盟:未来のための変革と再編』という文書に署名した。日本ではこの文書はさほど注目されてこなかったが、これは日米安保条約にとって代わったものと言っていい。

 何が変わったか。まずは対象の範囲である。

 日米安保条約は第六条で、『日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため』とする極東条項を持っている。あくまで日米安保は極東の安全保障を確保することを目的としている。それが『未来のための変革と再編』では、同盟関係は、『世界における課題に効果的に対処するうえで重要な役割を果たしている』とした。日米の安全保障協力の対象が極東から世界に拡大された(中略)。

 日米の安全保障協力の対象が極東から世界に拡大されたこれまでの流れは、オバマ大統領の下で、ますます強化されよう。(中略)要請の要は、自衛隊の関与である。オバマ大統領の下、早い段階で、アフガニスタンへの自衛隊派遣が、日本が抱える最大の案件として浮上する。これに日本がどう対応するかが、オバマ政権下の日米関係の緊密度を左右しよう」(『日米同盟の正体』より)

 岡田外相に質問したときに引用した通り、日米安保は、対象となる範囲が極東だが、05年に合意文書がかわされた「日米同盟」となると、その領域は世界全体となる。こうしたことは、一般にはほとんど理解されていない。

 これは目前の問題である普天間の問題にもかかわる。当初の日米合意案である辺野古への移転では、オスプレイ(※V22のこと。オスプレイは愛称)という、ヘリコプターのように垂直離発着が可能な、固定翼機を配備することになっていた。では、このオスプレイとは、何のために必要なのかというと、極東有事のためではなく、中東などの紛争地域に向けて出撃するためなのである。

 今年年頭の「朝まで生テレビ」を見た人は、記憶しているかもしれない。保守派サイドに座っている論客が、「何のためにオスプレイが必要なのか?」という質問に対して、「中東へ向かうため」と、ポロリと語っていた。沖縄の米軍の基地や軍備が日本を守るための基地や軍備であり、どうしても日本自身にとって必要なものなのだと信じこむのは、あまりにナイーブすぎる。
「安保」と「同盟」の違いは、対象領域だけではない。理念や目的も異なる。孫崎氏は、先に引用した『日米同盟の正体』の中出、こう続ける。「次に理念面である。ここでは質的に大きな変化をとげている。日米安全保障条約は(中略)「国際連合を強化することに努力する」として国際連合の役割を重視している。しかし、「未来のため変革と再編」では、こうした傾向は見られない。代わって出てきたのは、日米共通の戦略である。では日米共通の戦略とは何か」

 ここで、孫崎氏は、日本がアメリカに「隷従」させられている状況について、ずばり言及する。
「われわれは、米国に戦略があることは承知している。しかし、戦後日本に確固たる安全保障戦略があるとは承知していない。日本が米国の戦略に従う以外にいかなる共通の戦略があるのか。春原剛氏は『同盟変貌』(日本経済新聞社、2007年)で、「『同盟関係』と言うが、実態は米国が重要な案件を『一方的に決めているだけ』という守屋武昌元防衛事務次官の言葉を紹介している。残念ながら、守屋元防衛次官の発言は、今日の日米安全保障体制の本質をきわめて的確に表したものと言える」

 日米の「同盟」とはいうが、米国の一方的な決定に、日本はただ追随してゆくだけの関係なのである。これが日米同盟関係の、偽らざる現実である。

「オバマ大統領の下、安全保障面で日米関係は緊張するだろう」と、孫崎氏は著書の中で続ける。昨年3月に同書を出版した段階で、現在の事態を予期していたかのように――。
「しかし、ここにひとつの懸念がある。これまで日本が政府レベルで米国に約束したことと、国民の認識には大きなギャップがあるということだ。

 国民のどれくらいの層が、日本は米国の戦略に沿って中東など世界規模で軍事展開をする約束をしていることを認識しているだろうか。ほとんどの人は認識していないのではないか。日本政府は一方で米国に文書で明確に約束し、他方で国民にはこの文書の意義をさして説明していない。(中略)この合意によって日米同盟関係は明らかに変質した。この文書は、日本が日米共通の戦略の下、中東などに自衛隊の派遣をすることを当然のものと想定している。既存の合意と国民の認識のギャップは必ず日米間にギクシャクしたものを生む」大多数の国民の理解を得ないところで、日米同盟の変質が起こっている。それは非常に危ういことだ、という孫崎氏の主張に、私は深く同意する。

 我々は、あまりにも日米同盟の実態を知らなさすぎる。この点では、こうした問題について、広く国民に知らしめ、論議を呼び起こす役割を怠ってきた、もしくは現実の隠蔽に荷担してきたともいえる大手メディアの責任も、きわめて大きい。「日米安保ではなく、日米同盟のあり方を話しあうため」と、岡田外相は言っていたが、記者会見に出席していた記者たちは、私以外には、誰もこの点に注意を払うことはなかった。

 日本が今後、対米追随を深めてゆくのか、米軍の戦略とは一線を画して日米安保の原点に立ち戻るのか、あるいは独立自尊(?)の自主防衛の道を模索するのか、それは国民全体の議論にゆだねられるべきだが、いずれにしても、まずはこれまでの経緯と現実を知らなければ、話にならない。

 我々の運命は、我々自身が決めることである。

 岡田・クリントン会談で話しあわれる日米同盟のあり方とは何か、その正味の中身を、国民に開示してもらいたい。

 岡田外相への3番目の質問は、近々始まる通常国会にも法案が提出されるという。外国人地方参政権の問題である。

 ひとりの議員、政治家として、この問題をどう考えているか、賛成なのか、反対なのか、うかがいたかったのはもちろんであるが、もうひとつ、この法案の正否は、果たして日韓関係に、どんなプラス、あるいはマイナスをもたらすのか、外相としての見解をお聞きしたかった。

 この日、鳩山首相が近いうちに訪韓し、韓国との間で「同盟」問題を探るというニュースが流れたばかりである。日本と韓国は、米国と共に重要な軍事同盟間にあるように理解されていることが多いが、実は、日韓の間には同盟関係は存在していない。

 将来、日本と韓国の間で同盟関係が結ばれるとしたら、それはそれで、日本の安全保障に貢献するのかもしれないが、こうしたテーマが急浮上してきたことと、この在日外国人の地方参政権の関与については、何か関わりがあるのか。その点を問いたかったのである。

■全編動画

岩上「フリーの岩上です。よろしくお願いします。
 外国人の地方参政権の問題についてお聞きしたいと思っております。通常国会が始まりますと、この問題が、法案として出されるかどうかということが本当に重要な課題になってくると思うんですけれども、永住外国人の方々の母国の動向というものも気になるところです。

 多くの方が韓国の方が多くてですね、その韓国政府はどのように考え、日本と韓国の外交関係にこれはどのような影響をもたらすのか、この参政権を与える与えないということ、どちらにしてもですね、先ほどの同盟深化みたいな話もありましたけれども、いったいどんな影響が出てくるのかということを、二つですけれども、閣僚として、それから議員としてですね、この地方参政権、付与するべきか否かということについて、お考えと、それから外務大臣として、この法案がどのように外交関係に影響、プラス、あるいはマイナスをもたらすのか、そのご見解をお聞かせ下さい」

岡田「この問題は、まだ政府として正式に議論をしておりませんので、正式に決める段階では私も外務大臣としてお話をさせていただきたいと思いますが、現時点であまり、先走った話はしない方がいいというふうに思っております」

 このテーマについての質問は、あっさりと肩すかしをくらわされた(笑)。
 政局にもからみかねない、重要なテーマだけに、軽々しくは言質を取られたくなかったのであろうが、物足りない。外国人参政権に賛成するか、反対するか、態度決定をする前に、そもそもなぜこれが必要なのか、そして仮に実現したら、この国の内外にどのような影響がありえるのか、そうした検討がぜひとも必要である。

 このテーマがオープンに、かつ冷静に議論されることを、国民の一人として、私自身も望む。そのためには、この国の中枢を担う中核政治家の一人として、情報をもっと開示していただきたいと思う。

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