原発再稼働と避難計画は無関係?!〜実効性のない防災計画のまま適合性審査が本格化 2014.3.4

記事公開日:2014.3.5取材地: テキスト動画
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(IWJ・ぎぎまき)

 原発再稼働に向けた適合性審査が、いよいよ本格化する――。

 原子力規制委員会は3月中にも、新規制基準の適合性審査を申請している原発の中から、優先して審査の取りまとめに入る原発を選定する。選ばれた原発は、再稼働へと着実に一歩駒を進めるわけだが、適合性審査をパスしたからといって、その原発が事故を起こさないわけではない。原子力規制庁が、「規制基準を満たした原発でも事故は起きる」(※1)と回答していることからも分かるように、審査にパスしても、原発の安全が担保されるわけではないのだ。

 原発の安全性を確保できないというのであれば、事故が起きたことを想定した上で作成される、地域防災計画が重要になってくる。現在、道府県や自治体は、避難計画等の策定を進めているが、各自治体から悲鳴にも似た声があがっているという。これについて3月4日、市民と原子力規制庁の間で、意見交換がなされた。

■ハイライト
http://youtu.be/2A6b3tZ7OxU

  • 事前集会 13:00~14:00
  • 政府交渉 14:10~15:40

要援護者の避難計画は21道府県、135市町村のうち、1件のみ

 原発事故が起きた際、身体障害者や高齢者など、自力での避難が困難だとされる要援護者については、早期かつ優先的な避難の実施が、原子力災害対策指針により定められている。しかし、鳥取県が暫定版を作成したケースを除き、21道府県、135市町村で要援護者の具体的な避難計画をまとめた自治体はない。

 これについて、美浜の会の島田清子氏が問いただすと、規制庁原子力防災政策課の新保一彦氏は、「要援護者の避難計画が、なかなか取り揃っていないのは事実です」と回答。現状では、事故が起きても、要援護者の安全を守ることは困難だという姿勢を示した。それでも「計画は不断に見直していく。書きもの(計画書)があればいいというわけではない」と続ける新保氏に対し、FoE Japanの満田夏花氏は、「論旨のすり替えだ。書いたものさえ作れないのが現実。ごっちゃにしないで」と厳しく批判した。

 島田氏をはじめ、市民らは独自に、各地域から防災・避難計画に関わる聞き取り調査をしているという。例えば、滋賀県高島市にある体育館は、事故時、約3万人の高島市民が放射性物質のスクリーニングを受ける施設となるが、「万単位の住民を受け入れられる広さなのか疑問だった」と島田氏は話し、体育館の管理人はスクリーニング施設として割り当てられてることさえ、把握していなかったという。

規制庁「20分で避難、物理的に無理」

 その他、電力会社は、重大事故シナリオでは、事故から約20分後には炉心溶融(メルトダウン)が始まると想定している。原発の近くに住む5km圏内の住民は、時間内に避難を終えることができるのか。これについて新保氏は、「5kmという範囲の住民の避難を、20分で完了させるのは、物理的に無理」とコメント。参加者からは、「適合性審査と防災計画の基準に整合性がない」「避難が実施できない審査なんておかしい」という批判が相次いだ。

防災計画と原発再稼働はリンクしない

 しかし実行不可能な避難計画であっても、適合性審査にパスした原発は再稼働が認められる。地域防災計画と再稼働は、法的にリンクしないからだ。

 2012年10月24日の記者会見で田中俊一規制委員長は、「防災計画がなければ、原発再稼働は困難」という見解を示していた(※2)。ところが、2013年の6月には、衆院原子力問題調査特別委員会で、「(防災計画は)稼働判断と直接リンクするものではない」と、態度を一転させた。これは裏を返せば、安全な避難計画を作ることそのものが困難であることを示しているとも言える。

 先月2月21日には、安倍首相が、地域防災計画と適合性審査は無関係だとする答弁書を決定したことが、質問主意書を出した民主党の菅直人元首相のブログで明らかになった(※3)。菅元首相は、「つまり原子力規制委員会は、地域住民の安全が確保できるかどうかは判断しないということを意味する」と綴っている。さらに、「地元自治体が安全に避難することは困難と判断した時には、だれが再稼働について判断するのか」という問いに対しても、安倍首相は明確な回答を避けたという。

 ひとたび原発事故が起きれば、誰がどうやって住民の安全に責任を持つのかー。命の問題が棚上げされたまま、規制委員会は早ければ来週にも、審査のとりまとめを優先する原発を決定する見通しだ。

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