「TPPで、日本が他国に対して加害者になることもある」 〜「ほんまやばいでTPP」2.16シンポジウム 2014.2.16

記事公開日:2014.2.16取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ 関根/奥松)

特集 TPP問題

 「TPPは、1%の多国籍企業が生き残るためにあるのは明らかだ。農家のみならず、日本国民の主権すら奪われる」「日本人は、自分の身に何か起きてからでないと動かない。もう少し、目や心を開いて、危機感を抱いたほうがいい」──。

 2014年2月16日、大阪市中央区の市立中央会館で「『ほんまやばいでTPP』2.16シンポジウム」が行われた。予定されていたゲストの萩原進氏は昨年末に亡くなられ、また、もう1人のゲスト、大野和興氏(農業ジャーナリスト)は大雪のために来場がかなわず、主役を欠いた集会になったものの、松原康彦氏(三里塚決戦勝利関西実行委員会)、山口千春氏(市東さんの農地取り上げに反対する会事務局長)、大湾宗則氏(米軍Xバンドレーダー基地反対近畿連絡会共同代表)が、それぞれの立場から持論を展開した。また、1分間アピールでは、北上哲仁氏(川西市市議議員)、木村真氏(豊中市市議会議員)、安藤眞一牧師、大阪の震災がれき処理の説明会で逮捕された韓基大氏など、さまざまな人々がアピールを行った。

■全編動画 集会1/2

■全編動画 集会2/2

■全編動画 デモ(途中まで)

  • 集会 音楽 趙博さん/実行委員会から/山口千春氏(市東さんの農地取り上げに反対する会事務局長)/大湾宗則氏(米軍Xバンドレーダー基地反対近畿連絡会共同代表)/アピール/音楽 はちようび
  • デモ 大阪市立中央会館 → なんば
  • 日時 2014年2月16日(日)13:30~
  • 場所 大阪市立中央会館(大阪府大阪市)

黙祷で始まったシンポジウム

 冒頭、今日のゲストに予定されていた、三里塚芝山連合空港反対同盟・北原派事務局次長の萩原進氏(昨年12月21日永眠)を偲んで、全員で黙祷を捧げた。呼びかけ人の西山直洋氏のスピーチののち、趙博氏の弾き語りが会場を和ませた。

 続いて、松原康彦氏が「TPPは、アメリカでも多くの人々が反対している。1%の多国籍企業が生き残るために、TPPがあるのは明らかだ。そして、TPPによって、耕作者の権利を守る農地法などが、すべて取り払われてしまう。農家のみならず、日本国民の主権すら奪われる」と述べ、その危険性を並べ立てた。

日本だけが被害者になるわけではない

 次に、山口千春氏がスピーチをした。「自分は、非正規雇用の医療従事者で、組合運動もできない。TPPは農業だけの問題ではない。暮らしを丸ごとひっくり返すものだ。日本の健康保険制度も、企業参入の障壁とされてしまう」。

 「また、TPPは、決して日本だけが被害者になるわけではない」と語り、日本の製薬会社が作る薬が、副作用が強いため、国内では使用が制限されているのに、アメリカでは認可されている例を挙げて、「日本企業も、隙あらば儲けようと海外を狙う。日本がTPPを使って、アジア諸国に対して加害者になることもある」と指摘した。

 また、労働問題に関して、「アメリカでは労働組合が強く、労働者を守ってくれるが、最近では『労働の自由』ということが言われている。それは、被雇用者と雇用者が、直接、契約を結ぶ形態で、結果的に労働条件が悪くなり、労働組合も弱体化する。こういうシステムも、市場を占めていくだろう」と懸念を表明した。

大地を耕す権利を奪う「国策」

 山口氏は、自身が参加する、市東さんの農地取り上げに反対する会の活動を説明した。「市東さんは小作人で、長年耕してきた農地は、成田空港の拡張予定地内にあった。7年半前、成田空港側から『土地の賃貸契約を切りたい』という申し出があったことから、耕作する権利を守るための闘いが始まった」。

 「市東さんは、戦争、農地改革、空港建設という、各時代の国策に翻弄されてきた」とし、農地問題の背景、成田空港側から土地明け渡しの裁判を起こされたこと、裁判での不可解なやり取りや、空港側が証明に用いた偽造文書の存在などを語った。「しかし、千葉地裁での一審は敗訴してしまった」と述べて、会場の参加者に市東さんへの協力を求めた。

京都にも「お国のため」に米軍基地ができる

 京都府京丹後市に、米軍のXバンドレーダー基地ができることに警鐘を鳴らしている大湾宗則氏が登壇した。大湾氏は沖縄出身で、在日米軍問題に詳しい。大湾氏は、まず、沖縄の基地抗争から語り始めた。「名護市長選では稲嶺氏が勝ったが、すでに、キャンプシュワブ基地内に道路ができ、基地の敷地内から建設を進めようとしている」と状況を説明した。

 「9月に、名護市議会議員選挙がある。現在は15名の市議が稲嶺市長派だが、1人でも欠けたら市長解任動議を起こされてしまう。11月には、沖縄県知事選。今の副知事が立つだろう。沖縄闘争は、大事なところにきている」。

 そして、京丹後市航空自衛隊経ケ岬(きょうがみさき)分屯基地内にできる、米軍のXバンドレーダー基地について説明した。「この計画は、2012年8月、野田内閣の時に決まった。建設予定地の土地借り上げ料は、農地なら一反あたり5000~8000円が相場だが、防衛省は30~40万円を提示。60人の地権者は全員、陥落した。最後まで反対していた人も、『村八分になるぞ。それに、お国のためだ』という脅し文句に屈してしまった」。

沖縄と同じことが起きる可能性を考えるべき

 大湾氏は「Xバンドレーダーとは、周波数がとても細かく精度の高いレーダーのこと。青森県車力分屯基地のXバンドレーダーは、ハワイの米軍基地を防衛するために配備された。経ケ岬への配備は、グアムの米軍基地を、北朝鮮から防護する目的だ。大陸間弾道ミサイルを阻止するために、PAC3とSM3迎撃ミサイルがあるが、さらに高い高度で迎撃できる、最新のサードミサイルに対応するのがXバンドレーダーだ」と説明した。

 「日本政府は、東アジアの緊張を高めておいて、さらに軍備を増強するつもりだ。今、自衛隊は、オスプレイなどの米海兵隊の軍備を買って、海兵隊の代わりになろうとしている。京丹後市にも米軍基地ができて、沖縄と同じことが起きるかもしれない。日本人は、自分の身に何か起きてからでないと、わからないし、動かない。もう少し、目や心を開いて、危機感を抱いたほうがいい」と力説した大湾氏は、「さまざまな国策に苦しむ当事者たちと手を結びたい」と述べて、スピーチを終えた。

顔認証カメラの実験が始まる大阪駅

 1分間アピールの口火を切ったのは、北上哲仁氏。川西市議会が、政府に特定秘密保護法の慎重審議を求める意見書を提出したことなどを話した。次に木村真氏が、自らが行なう、特定秘密保護法への反対活動を報告した。また、「JR大阪駅では、通行人の顔を撮影して追跡する顔認証カメラの実験が、4月から始まる。国が、監視管理型の社会を徹底しようとしているものだ」と断じた。

 労働組合関係者は「アメリカの新自由主義経済路線を、日本に持ち込むことで、中小企業の保護、労働者を守る法律などは、全部取り払われるだろう。政府は、雇用者が労働者の移動をスムーズにできるための労働法改正を目論んでいる」などと懸念を表明した。

 続いて、2012年11月13日、大阪市此花区の区民ホールで行われた、東日本大震災のがれき試験焼却の住民説明会で、建造物侵入容疑で逮捕された韓基大氏が、自身の正当性を訴えた。

 元高校教師は「日本維新の会が決めた、君が代斉唱の義務を、憲法違反だと告発した。生徒を、社会に出てから路頭に迷わせないためには、愛国教育を学校でしてはならない」と持論をアピールした。

差別、格差、殺戮のない世界を

 宝塚で行っている、福島の子どもたちの保養運動の報告と、福島での小児甲状腺がん発症の問題についての訴えがあった。また、安藤眞一牧師は、TPP、沖縄辺野古基地建設問題、市東さんの土地闘争などについて、熱く語った。

 休憩後、ロックバンド『はちようび』が、ライブ演奏を行ない、最後に呼びかけ人の1人、浄土真宗大谷派の僧侶、青栁林氏が閉会の挨拶を述べた。青柳氏は「仏法の理念は、すべての人々が、差別、格差、殺戮のない世界を作っていくこと。俳優の故三国連太郎氏の言葉に『人間には、さしあたっての無難を願う心がある。それを国家権力が上手にからめ捕って騙していく』というものがある。騙されずに、どう生きていくのか、どんな国を作るのか、考えていきたい」と話し、閉会となった。シンポジウムの出席者は約250名、と報告された。

 閉会後、デモ参加者たちが外に集まり、大阪市立中央会館から長堀通り、御堂筋からなんばへ向けて、TPP反対と脱原発を訴えながらデモ行進をした。

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